ここ1、2年に読んだ本④~歴史系~

前回の投稿に引き続くプチ書評シリーズの第4回です。

【歴史系・歴史小説など】

司馬遼太郎「播磨灘物語1~4」講談社文庫

言わずと知れた、大河ドラマ「軍師官兵衛」の原作的な位置づけというべき作品であり(相違点は幾つかあります)、とても読み応えのある本です。恥ずかしながら、大河ドラマは「徳川家康」以降の8割ほどの作品を見ているのですが、原作を読んだことがほとんどなく、下手をするとこれが初めてかもしれません。

ちょうど、ドラマの放映初期の頃に読んでいましたので、小説とドラマの違いなども楽しみながら拝読しました。また、小説の最後も、官兵衛と家康の統治者としての路線の違い(商業的合理主義=ゼニ(商人・流通)の経済と、土着的な封建体制=コメ(農民・土地)の経済)と、それぞれが時代にどのように選ばれたか(戦国の混乱を終結させる力として前者が必要とされ、長い平和の時代を迎える際に後者が必要とされたこと)を印象づける内容となっており、現代に応用する上でも、色々と考えさせられるものがあったように思います。

また、3巻で、「戦では敵によい最後を飾らせよ」という記載があるのですが、この部分などは、勝ち筋の事件を受任した代理人にとって要諦の一つのように思われ(敗北する運命にある相手方に、尋問では裁判官の面前で言いたいことをそれなりに言わせるなど、ある程度、華を持たせるようなことをして和解などの逃げ道も作った上で、それすら拒否した場合に、やむなく判決で結果を徹底的に知らしめる、といった類です)、そうした観点からも参考になるところが、司馬遼本の魅力だろうと感じています。

余談ながら、この本も、学生時代に古本屋で買い込み、約20年も積ん読状態を続けてきたもので、配偶者の度重なる「捨てろコール」を無視し続けて良かったと思いました(笑)。

呉善花「韓国併合への道 完全版」文春新書

幕末から日露戦争後に生じた韓国併合までの朝鮮史を、激動の時代に国家と民族を守ることができなかった李氏朝鮮の国家や政府、社会全体への批判的な視点を交えて説明した作品です。

併合後の日本の統治や従軍慰安婦を巡る議論など近時の問題についても触れており、筆者のスタンス(韓国の出身の方ですが、敢えて自国に厳しい視線を向けています)への留意も必要かもしれませんが、「隣国・日本は欧米列強と肩を並べることができたのに、どうして朝鮮は国際社会の渦に呑み込まれてしまったのか」を知る上で、また、「国家の存立を米国の軍事力に依存している」という点で、当時の朝鮮に近い面がないとは言い切れない現代の日本であれ他の国であれ、同じ轍を踏まないようにするには何に留意すべきかという点について、色々と参考になる一冊だと思います。

半藤一利ほか「昭和陸海軍の失敗」文春新書

この本については、長くなりましたので、稿を改めてご紹介します。

磯田道史「天災から日本を読みなおす」中公新書

映画化された「武士の家計簿」(私は本も映画も未見ですが)の原作者である歴史学者の方による著作で、古代や中世に我が国で生じた大きな災害(大地震、噴火、津波など)が当時の社会にどのような影響を及ぼし、人々がどのように行動したか、資料などに基づき興味深く論じている一冊です。

秀吉政権の倒壊や佐賀藩の軍事大国化に天災が影響していることなど、歴史上の大きな出来事に災害が強い影響を及ぼしているという説明には、関心をそそられずにはいられない面がありますし、津波に関して詳細に述べられている最後の2章は、震災を経験した岩手県民には、色々と考えさせられる箇所が多々あると思います。

「富士山が噴火すれば火山灰が何日も降り注ぐので、ゴーグルは必須」という下りは、岩手山の場合、私をはじめ多くの人がスキー道具を持っているので大丈夫ですが、関東・東海(富士)や鹿児島(桜島)などの方は、留意しておいた方がよいかもしれません。先日、桜島を巡って緊迫感のある報道がありましたが、その際、「ゴーグルを買い占めて現地で売れば儲かるのでは?」と思わずにいられないものがありましたが。
上記のほか、井沢元彦氏の「逆説の日本史」シリーズも、大学3年頃に初めて読んで、語り口の見事さもさることながら、それまで放置していた歴史系の関心を掘り起こしてくれたことなどから、今も最新刊が出版されるたびに、購入して読んでいます。

このシリーズは、私の周囲にも「実は愛読者」という方が何人かおられるようで、先日、盛岡北RCの飲み会で、Kさんが「歴史上戸」と化して、「逆説」や高橋克彦氏の著作などにつき熱く熱く語っておられました。

余談ながら、ここで取り上げた4冊を見ると、「播磨灘」が安土桃山、「韓国併合」が明治~戦前、「昭和陸海軍」が大戦期、「天災から」が古代や江戸期(と現代)などを主に取り上げており、偶然の産物だと思いますが、我ながら、日本史に関しては、各時代をまんべんなくフォローするバランスの良い?読書生活を送っているような気がしてしまいます(自画自賛)。