ウクライナ侵攻の先にある台湾と日本にも迫る戦争の影
1ヶ月ほど前から風雲急を告げる状態が続いていたウクライナ紛争が、いよいよロシア軍の全面侵攻など、最悪の展開の危惧を強く抱かせる形で進んでいます。
ロシアのプーチン大統領は「この地域の住民は自分達と同じ民族で、もともと一つの大きな国である。その中で、敵国側に同調する奴らが自分達に与する仲間を虐げている。だから、地域内の困った奴らを掣肘して仲間を護るのだ」という主張を一連の行動の根拠に据えているように見受けられます。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220224/k10013498841000.html
東アジアにも、これとほとんど同じ論理で、政治体制・価値観を全く異にする隣接小国への軍事行動を望んでいる巨大国家があることは、申すまでもありません。
ですので、ウクライナ紛争がロシアの思惑どおりになることを一番期待しているのは中国でしょうし、そうなれば、そうでない場合と比べて「次は台湾」になる危険が強く高まることも、間違いないだろうと思います。
そして、その先には、第一列島線などに象徴される中国の軍事的拡張と日本との対決という展開もありうるのかもしれません。
或いは、かつての「中国から事実上独立した状態にあった香港」を台湾と一括りにできるのであれば、中国の方が、クリミアやウクライナ東端地域よりも先に「旧領回復と従属化」を現代で成し遂げた先輩にあたるのかもしれません。
この十数年、香港が高圧的に中国化させられた光景を、日本を含む「自由主義」諸国は、口先では非難を繰り返すものの、中国との対決も辞さない実効性ある措置は執らなかったと思います。その光景も、ロシアに影響を与えた面があるかもしれません(ウイグル問題も同様でしょうか)。
台湾侵攻が本当に現実化したときは、旧宗主国・隣接国であり長年に亘り強い友好感情・関係を築いた日本が何もしないというのは考えられず、集団的自衛権の名のもとで、米国と共に何らかの軍事的関与を模索するでしょうし、日本国民自身がそれを希望しそうな気がします。
他方、ウクライナの歴史や現状をみる限り、ロシアと全面戦争してまで同国を護りたいと考える国があるか、よく分かりません。ポーランドはかつてロシアに蹂躙された歴史を持っているので、ウクライナに強く同情的ではないかと思いますが、不思議なほど?一連の報道で何の存在感もありません(波宇両国の関係などは存じませんが、日本と同じく小国の悲哀で、次は我が身ゆえ刺激したくないのでしょうか?)。
この紛争が今後どうなるのか見通せる目は私にはありませんが、NATO勢力=欧米がウクライナの親欧米派を見捨てるような結末になったときは、中国は台湾侵攻でも同じ展開になると期待し準備を進め、日本側も上記(台湾を護れ)よりも萎縮する方向に物事が進みそうな気がします。
逆に、軍事・非軍事を問わず、欧米がウクライナを見捨てずロシアと拮抗する対決状態が長期間続くのであれば、「次は台湾だ、台湾は日本の生命線だ、日本も台湾を護る実効性ある仕組みが必要だ」という議論が高まってくるのではと推測します。
反面、長期戦となれば、中国が本格的にロシアに肩入れするのでしょうから(疲弊した占領地域などへの経済支援でしょうか)、そうなると、いよいよ米欧(とオマケ?の日韓)vs中露の実質的な世界大戦の幕開けになってしまいそうな気もします。
バルカン半島で始まった第一次世界大戦が長い目で見れば大日本帝国倒壊の原因の一端をなしたように、小手先の憲法改正論議など吹っ飛ばされそうな大きなうねりの影が、日本にも忍び寄ってきていること自体は、否定し難いと思われます。