サケ刺網訴訟と人知れぬガンライザー達
控訴審(仙台高裁)で判決を受ける場合、裁判所に出頭することは通常ありませんが、約10年前に岩手県庁のご依頼で従事した「サケ刺網訴訟」だけは、事案の重大さに照らし、判決言渡の立会のためだけに仙台に行きました。
結果は無事に当方勝訴(控訴棄却)で、「小保内のヘマのせいで岩手県政はじまって以来の大混乱が生じる」などという展開にはならずに済みました。
先方(サケ刺網漁規制の反対派住民グループ)は上告したものの、法律論ではなく事実の認定で結論が定まる案件なので、上告の審理対象にはなりにくく、予想どおり上告棄却で決着しました。
当時、書いたことがありますが、この事件は、あまりにも膨大な作業が必要となった一方、依頼主の報酬内規に基づく費用しかお支払いいただけないため、タイムチャージ換算では、現在に至るまで、当事務所はじまって以来の大赤字事件となっています。
といっても、だからといって、反ロースクール運動をなさっている某先生に倣い「県庁の仕事の受任、ダメ。ゼッタイ!」などとネガキャンをしたいわけではありません。
この事件は、県庁自身が利益を得ているわけではないため(争点に関する経済的利益の当事者は、県内ひいては全国すべてのサケ産業の従事者さらには消費者です)、勝ったからといって県庁(依頼者)にさほどの経済的利益が生じるわけではありません。
その上、現在、岩手ひいては全国のサケ産業全体が、この訴訟の原告の方々ではなく地球温暖化などの諸現象に深刻な敗北を喫しており「サケの漁利」自体が全く得られていない(また、この状況が続けば産業のあり方なども再検討せざるを得ないであろう)ことは、当時から盛んに報道され、現在も延々と続いているとおりです。
そのような意味では、当初から勝者なき訴訟という面が否定できない事件であり、それゆえこそ、本件で本当に議論されるべきであったこと(訴訟の争点とは別な事柄)については、現在の状況に即したより建設的な検討や取り組みが、業界関係者はもちろん国民などの広い関与のもと、深められるべきなのだと思います。
この仕事をお引き受けした際は、ご担当の方々に「県内の水産業界の皆さんに、人知れず地元のため闘っているガンライザーNEOみたいな奴がいるんだ!と宣伝して下さい」とお願いしたのですが、あれから約10年を経ても、どこの水産関係者からも、顧問云々は言うに及ばず、相談の依頼(ご紹介)の類も全くありません。
今や某訴訟で岩手県庁(別部局)と2年以上も激闘を続けていますので、そうした話はますます遠い昔話になってしまいました。
というわけで、
「岩手の海をこよなく愛す、真・リアスマリン、爆誕!」
と、昔のことを思い出しては一人我が身を慰めて?いるところです。
平成20年には県北のタラを守るため某隣接県庁と闘い、平成30年にはサケを(混乱から)守るための闘いに明け暮れたということで、この流れだと、令和10年頃には他の新たなサカナを守るための闘いに呼ばれることもあるかもしれません。
他にも、この事件に関しては色々と書きたいことはありますが、まずは、そのときにまた呼んでいただけるよう、ぎこちない笑顔で研鑽を重ねて参りたいと思います。
というわけで、大事なことなので何度でも繰り返しますの一句。
下請の悲哀はイクボス知らん顔
と、愚痴ばかり書いている暇があったら、今夜も仕事仕事・・