広告費にばかり金をかけ人材育成をしない企業の末路と消費者の選択

先日、韓国で起きた旅客船の沈没事故を巡って様々な報道がされていますが、その中に、事故を起こした会社(旅客船の運営企業)が、従業員の安全教育(安全訓練)をほとんど行っていなかったという趣旨の記事を見つけました。

いわく、昨年、広告費に約2300万円、接待費に約600万円を支出したのに対し、安全教育の研修費はわずか5万円程度しか支出されていなかったというものです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140420-00000019-yonh-kr

このニュースを見て、ふと思ったのは、「日本の町弁業界でも、最近は、多額の広告費をかけて大規模な宣伝をしているが、本当に宣伝に見合った実力があるのか、覚束ない弁護士(法律事務所)も出てきているのではないか」という点でした。

日本の町弁業界(個人や小規模企業等を顧客とする弁護士)は、10年ほど前は、個人商店(弁護士1、2名程度の事務所)ばかりだったのが、平成18年頃から生じた、いわゆる債務整理特需(過払バブルと呼ぶ人も多いですが、限られた期間とはいえ実需であったことは確かなので、特需という表現の方が適切と考えます)の影響やそれに引き続く業界の大増員(若手の大量供給)の影響で、大きく変容しました。

東京など大都市では、数年前から、さほど経験年数のない弁護士が集まって(或いは、そうした弁護士を集めて)、大きな規模の事務所を作り、TV、ネット、新聞広告など各種メディアを用いて顧客獲得のための宣伝攻勢をするという例も見られるようになり、最近では、岩手でも、そうした光景が身近なものとなってきています。

宣伝広告に力を入れること自体にあれこれ言うつもりはないのですが、曲がりなりにも15年近い経験を持っている身から見れば、受任する弁護士達が、個々の依頼事件を適切に対応しているのか、それに相応しい力を身につけているのか、不安に感じる面がないわけではありません。

とりわけ、消費者金融相手の過払請求の大規模宣伝で集客している事務所に関しては、他の事件のスキルを研鑽する機会をどれだけ持っているのか、他の事件にどれだけ熱心に取り組んでいるのか(さらには、若い弁護士の力量の向上のためどのような取り組みをしているのか)、よく見えてこないこともあり、債務整理特需が終焉した今、そうした事務所が今後どのような展開を見せるのか、業界人として注視しています。

もとより、高いスキルや豊富な経験・知見がないと適切な対応が難しい事案は幾らでもあり、そうした事件で実力不十分の弁護士に依頼等したのでは、依頼者はもちろん受任弁護士も取り上げるべき論点等(依頼者に有利な結果をもたらす法的主張等)を見落とし、結果として、依頼者が法的に適切な利益を受けられなかったり、不当な損失を被ってしまう可能性が高くなります。

もちろん、若手に限らずベテラン・中堅勢にも仕事ぶりに疑問符の付く方がいないわけではありませんが、そうしたことも含め、今後ますます、ご自身にとって、その事件(問題)を任せることができる、信頼するに足る弁護士を選ぶという姿勢(「賢い消費者」であること)が求められることは、間違いないことだと思います。

もとより、私自身、そうした批判の対象とならないよう、また、上記の観点から選ばれる弁護士であるため、現在の習慣になっている地道な判例雑誌のデータベース化をはじめ、今後も研鑽を続けていきたいと思っています。