日吉の丘のラ・サールと函館山のカール・レイモン
盛岡の川徳デパートでは、例年、11月頃に北海道フェアを行うことが多いのですが、その際、「函館カール・レイモン」のソーセージ等が販売されるときは買物に行くことが多く、今年も何点か購入して帰りました。
私は平成元年から4年まで函館ラ・サールで高校生活を過ごしましたが、以前にも書いたとおり、勉強もダメ、運動もダメと、何一つ取り柄のない、のび太以下の有様という鬱屈とした日々を送っていました。
そのせいか、高校(及び併設の寮)は、函館中心部の東端にある湯の川温泉から北側の丘を20~30分ほど歩いたところにあるのですが、1、2年生の頃は、高校のある日吉町から逃げるようにして、日曜の朝に丘を下って湯の川温泉の停留所から市電に乗り込み反対側の函館山の麓まで行き、フラフラと散歩しては日暮れ頃にやむなく寮に帰る、ということが何度かありました。
その際、気に入って昼食利用をしていたのが、当時はレストランとして営業していたカール・レイモンのお店(レイモンハウス)でした。
私は、高校に進学(合格)した際、母から「褒美に海外旅行に連れて行ってやる」と言われ(海外経験のない母自身の希望でもあったとは思いますが)、高校1年の夏に、母と二人でドイツなどヨーロッパ数カ国を巡る10泊程度のパックツアーに参加したことがあります。
その際、主要な行き先になった西ドイツ南部(ロマンチック街道のローテンブルクほか)の光景が懐かしくて、それと同じ外観・内装になっているレイモンハウスのレストランで、ドイツ料理(実際に注文したのは800円程度のソーセージ等のランチセットでしょうけど)を食べ、ハリストス正教会など元町界隈の異国情緒に接するのが、ささやかな精神衛生の手段になっていたように思います。
そんなわけで、私にとっては、レイモンハウス(レストラン)が函館時代の数少ない「思い出の場所」で、最もお気に入りの場所と言っても過言ではないのですが、残念ながら、建物の外観こそ維持されているものの、何年も前にレストランは閉鎖され、現在は売店兼軽食コーナーという設えになっているようです。
http://www.raymon.co.jp/brand/pavilion.php
ただ、それだけに、「子供の頃の故郷の自然の風景」と同じく、失われたゆえにいつまでも美化?されたまま心に残る光景となっている面もありますし、「カール・レイモン」が盛岡に来ると買いにいかずにはいられなくなるのも、「高校時代を懐かしんで」という一語だけでは片づかない、あの頃の自分への屈折した執着のようなものがあるのかもしれないと思ったりもします。
そういえば、中学時代から世捨て人志向があったせいか、高校1、2年生の頃は、語学に強い大学に進学し、ドイツに留学してそのまま現地で仕事をする人間になりたい(日本には帰りたくない)と思っていました。今も、そんな自分はどこに行ってしまったのかと寂しくなることもあります。
恥ずかしながら、高校卒業後、函館には一度も足を踏み入れない状態が続いており、そろそろ家族連れでとは思っていますし、どうせ行くのなら、その頃に行かなかった観光地だけでなく、高校から1時間ほど坂道を上って垣間見た「函館の裏夜景」なども見に行けたらと思っているのですが、いざ足を踏み入れてみると、ふとしたきっかけで、封じ込めていた幾つかの感情が溢れてくるなどということも、あるのかもしれません。