温泉の権利を巡る法律問題
何年も前、雫石方面に所在する温泉宿が使用している温泉の利用権に関するご相談を受けたことがあります。
その際、温泉権(源泉権)に関する知識が皆無に近かったため専門の書籍も買い求めたりしたのですが、残念ながら温泉に関する相談を受けたのは、その一度だけで、訴訟等に発展しなかったこともあり、本も持ち腐れの状態が続いています。
実際、岩手に戻ってきて10年ほど経ちましたが、温泉権に関する訴訟などの話は聞いたことがなく、全国的にも温泉権に関する訴訟はほとんどないと思われます。
古い記録を整理していたところ、昭和63年に仙台高裁で、盛岡市郊外の繋温泉を舞台とする温泉権を巡る紛争の判決があったことを見つけました(判時1285-59)。
温泉権が鉱泉地(源泉の湧出する土地)から独立した物権としての権利が認められるか、肯定するとして、その公示方法(対抗要件)はどうするかなどといった、この種の問題に関する基本的な論点が対象となったようです。
昨年に亡くなられた先生が当事者の代理人を務めているなど、時の流れを感じさせる面があります。
温泉開発が廃れたせいか、温泉権を巡る紛争もほとんど聞かない状態が続いていますが、温泉地の衰退による廃業、倒産などが続くようであれば、いずれは源泉権の処分やそれを巡る紛争なども生じてくるのかもしれません。