養育費の裁判所算定表に関する増額論争とユニセフ

未成年者など扶養を要する子を養育中の夫婦が離婚する場合、養育を負担しない側(非親権者)は、養育を負担する側(親権者)に対し、夫婦の協議又は裁判所の審判で、子の養育費を支払わなければなりません。

そして、我が国では、裁判所が何年も前に基準表(父母双方の収支をもとに養育費の額を算定するもの)を公表しており、ほとんどの裁判官は、基準表による算定を原則とし、特段の事情がある場合に修正する取扱をしています。

ただ、この算定表については、算出される養育費が、債務者たる非親権者の収入と比較して低すぎるのではないか(特に、非親権者の収入がさほど多くない場合などでは、非親権者の側の生活費が優先され、子の方に、人として生存可能とは言えない金額しか支払われない方向で算定されてしまっているのではないか)という批判が、かなり以前から強く主張されています。

実際、私が取り扱った事件でも、親権者(お子さん)側の立場で仕事をする場合などで、そのように強く感じた経験もあり、債権回収の問題と含めて、議論の進展が待たれるところだと思っています。

これ関して、昨年12月25日の日経新聞の記事で、「ユニセフ(国連児童基金)等が公表した報告書で、日本は、先進31ヶ国のうち、子供の幸福度が6位となっている。但し、教育や日常生活上のリスクの低さが1位となっているのに対し、物質的豊かさは21位に止まっており、経済面で子供がしわ寄せを受けている実態が浮き彫りになった」と報道されていました。

この記事は、上記の「養育費の算定において、債務者(非親権者)の利益が優先され、子の養育費(利益確保)が蔑ろにされている」という批判とよく合致するもので、裁判所の算定表の増額を目指している方々におかれては、こうした調査結果も、ぜひ活用していただければよいのではと思いました。

養育費算定表を巡る議論に関心をお持ちの方は、こちらの記事(東京弁護士会の会員報)もご参照下さい。