「憲法週間相談」の今昔と一斉無料相談事業の賞味期限
岩手弁護士会では、毎年5月初旬に、大きな会場を借りて一斉無料相談をしています。憲法記念日(5月3日)に因んで「憲法週間相談」と称し、10年以上前から行っており、参加する弁護士数も多く、岩手の「弁護士無料相談事業」としては老舗の1つと言ってよいと思います。
地元のTV番組にも必ず取り上げられており、私も一瞬だけ登場しています(一人でパソコンの画面を仏頂面で見ている姿が映っており、その際、この文章を書いていたことは言うまでもありません)。
http://www.nhk.or.jp/lnews/morioka/6043440661.html?t=1398941550993
この事業は、裁判所も後援している(盛岡地裁に看板も立ちます)ため全国一斉の企画ではないかと思われますが、私が東京で働いていた時期(平成12~16年)には聞いたことがなく、その点はよく分かりません。
なお、参加する弁護士には日当は一切出ませんが、代わりに弁護士会から昼食代が支給されています。
私は、ほぼ毎年参加しているのですが、この事業も最近の相談事業一般に言われているのと同様、ここ数年は「参加する弁護士(供給)は増える一方だが、来場者(需要)は減る一方」という状態が続いています。
今年は、10時に来て12時過ぎまで参加しましたが、午前の部は20人近くの弁護士が参加しているところ、私が来た時点で相談者は弁護士数の半分程度しか来場していませんでした。
早く会場に来た弁護士の順に相談者を配点している(らしい)のですが、私のところまでは相談者の方が廻って来ず、内職で時間を空費して終わるかと思っていたところ、終了間際に配点があり、1人だけ会場に残ってその方に対応する羽目になりました(ゼロよりはましですが)。
ちなみに、去年(25年)の相談会も2時間で配点は1人だけ、その前年(24年)は2人程度との記憶です。
平成17~20年頃は、参加弁護士(現在の約半分)の数倍の相談者が来場し、私も「はい次!はい次!」の野戦病院状態でしたので、ここ数年の業界環境の激変を、こうした光景にも感じざるを得ないものとなっています。
この原因(特に、需要減少の原因)については、社会現象としてのクレサラ問題の終焉(+これに代わる大口需要の不存在)や弁護士激増と各種広告などによる多チャンネル化(他の相談窓口等の拡大)などが挙げられますが、既に多くの方が十分に認識されているでしょうから、殊更に書くほどの話ではありません。
ただ、「大広間での一斉無料相談事業の参加者減少」については、もう一つの要因を考えてもよいのではないかと思われます。
すなわち、「一斉相談」のため、大広間に向かい合わせの机と椅子を多数並べ、一方に弁護士、他方に相談者が座って相談する(応じる)というスタイルになっているのですが、聞き耳を立てる人がいるとは考えにくいものの、少なくとも相談者の姿は周囲に丸見えとなってしまいます。
中身は書けませんが、私が配点された案件も、すでに相手方に代理人が付いていた上に、その代理人が会場のすぐ近くに鎮座していたという案件でした(実際に会ったことはないとのことでしたが、さすがに、気づいた時点でヒソヒソ+記号会話モードにしています)。
少し前までの「おおらかな時代」ならまだしも、こうしたオープンな空間で相談を受けることを嫌がる(個室での相談を希望する)方は、確実に増えているのだろうと思いますし、弁護士会が設営する相談会が上記のようなリスクを内包すること自体、今や批判の対象になりうるのではと思わないでもありません。
ただ、事務局等に、事前に個室かどうか照会があったか、大広間の空間を見て嫌がって帰った人がいるか等について聞いたわけではありませんので、統計的なこととして説明できるわけではありませんが。
私も、ここ数年は、もう参加は止めようかと思いつつ、営業に苦戦している今どきの町弁の1人として、お役に立てるよい出会いがあればとささやかながら期待して、生き恥を晒しているというのが正直なところです。
弁護士会も、参加弁護士数を絞る(或いは予備戦力として事務所待機とする)などした上で、相談ブースを仕切るなどの工夫をしてもよいのではと思うのですが、一旦始めた(長く続いている)ことを止められない(縮小もできない)のは、役所だけの話ではないということなのかもしれません。