中小(小規模)企業支援に関する弁護士の役割と現実
昨日、日弁連の主催で中小企業に関する支援のあり方を官庁や県内商工会議所などの支援団体と協議する趣旨の会合があり、参加してきました。
といっても、参加者が具体的な支援業務の内容や基盤整備を角突き合わせて議論するようなものではなく、主催者等の挨拶、日弁連の宣伝ビデオの上映や他県の支援事例の発表と参加団体の方々などから弁護士会又は個々の弁護士への要望に関する意見な述べられるといったやりとりが中心でした。
日弁連は「(増やしすぎた町弁」の食い扶持対策もあってか、中小企業支援のキャンペーンに力を入れているのですが、残念ながら、私の実感する範囲では、「日弁連(弁護士会)のお世話になって、中小企業の方々から相談や依頼を受けた」という経験がほとんどなく、多くの企業の方々は、東京などを含む有力なベテラン・中堅弁護士の方に、様々な人脈・パイプを通じて顧問や事件依頼を行っているのが実情と思われます。
恥ずかしながら、このブログでも何度か書いているとおり、私自身は中小(小規模)企業の方々をサポートする仕事を多数お引き受けしたいと思っているものの、人脈の無さなども相俟ってごく限られたご縁しか持てず、ボスの信用で顧問先の企業法務的な仕事が次々と舞い込んできた(それを精力的にこなすことに充実感を感じていた)東京のイソ弁時代に戻りたくなることも少なくないという恥ずかしい有様です。
それだけに、日弁連が、その種の取り組みを熱心に行い、企業の方々の意識改革や利用のための基盤整備を行っていただけるのであれば、ぜひお願いしたいとは思っているものの、今回の会合も、抽象的なキャンペーンの類に止まり、企業側が直ちに飛びつきたくなるような具体的なメニューの提示などはあまりなかったように感じました。
例えば、この種の話題では、「何を相談したらよいか分からない」という意見がよく出されるわけですが、このような仕事をしているといった小規模企業一般、或いは業界ごとの具体的な相談事例集などを整理、作成して、業界の会合などで簡単にPRするような機会でも設ければよいのではないかと思うのですが、そうしたところまでは議論は進まなかったようですので、その点は残念に思います。
とりわけ、小規模企業の様々な業務については、紛争性が少ないなどの事情から、簡易な相談や書面作成などは他士業が多くを担っている(それで需要者側から特に不満が表明されているわけではない)という実情があるでしょうから、「弁護士に頼んだ方が遥かにメリットがある」と言えるような何かがなければ、実効性のある話にはなりにくいと思われます。
そうした意味では、皮肉めいた話かもしれませんが、数年前に撤廃されたグレーゾーン金利(法定金利と約定金利のダブルスタンダードがあり、約定の高利貸付の返済が困難になれば、信用情報登録と引換えに、法定金利計算による債務減額・過払金請求が可能になる)の問題は、「弁護士に頼めば決定的なメリットが生じる」という意味では非常に判りやすい話であり、それを元に戻すべきだとは思いませんが、今後、何らかの制度や運用を作ったりする際には、参考にしていただきたいものです。
また、「得意分野を知りたい」「費用が高い、不透明だ」といった話も出ていましたが、この点は、このブログでも過去に書いたと思いますが、要するに個々の弁護士に関する適切な情報開示(経験、知見、取り組みなど)や相性などに関するマッチング、双方の採算性の確保を考えた費用設定などで一定の解決が可能な話であり、マッチング等のため汗をかく人、汗をかける場の設定などが求められていることなのだろうと思っています。
そうした意味では、私も、もっとお役に立てる場を持ちたいと思いつつ、兼業主夫の悲しさか、それ以前のキャラや器量の問題か、長い間、弁護士会でもJCでも幽霊部員を続けてしまったことなどから、汗をかきたくても人の集まる場に上手く入っていけない悲しさがあり、どうしたものやらと悲嘆に暮れているというのが情けない現実です。