人からコンクリートへ、被災地から刑務所へ?

すでに報道などで目にした方も多いでしょうが、現在、沿岸被災地の各地では防潮堤建設が大きく進んでおり、海岸線に沿って長大な壁に囲まれた状態になっている街も珍しくありません。

1月の法テラス気仙の担当日に大船渡で撮影した写真を末尾に貼り付けますが、率直に言って刑務所の壁を想起せざるを得ず、収容所群島などとマイナスな言葉ばかり浮かんでしまいます。

せめて、人目につくところは都会の打ちっ放しのコンクリート建物のようにデザイン性を意識した作りにしようなどと提言する方はおられなかったのでしょうか?

さすがに近年ではこうした防潮堤のあり方に批判の声が多く上がっていますが、今さら撤去しても誰が喜ぶのか、何が失われるのかを考えると、そのようなお気持ちがあるなら着工前にもっと声を上げていただきたかったと思わないでもありません。

言うなれば、

震災直後→人命を守るため防潮堤を作れ!→景観・自然破壊の懸念は少数派のため相手にされず

着工決定=大手建設業者ワー→財政悪化?福祉カット?

数年後、防潮堤の完成に目処が立つ=大手建設業者の仕事がなくなりそう・・

与党サイドの有力者「やっぱり防潮堤は景観破壊で良くない!」(今ココ?)

できて間もなく撤去工事=大手建設業者ワー→財政悪化?福祉カット?

作れと言った人の責任は問われないの?→たぶん・・(原資は国税だし政権交代の見込もないし着工決めたの民主党政権だし?住民訴訟ならぬ国民訴訟もないし)

なんて展開になったりするんでしょうかね・・・せめて、これを教訓に沿岸の自然景観などや政策決定過程や税金の使用に関する責任のあり方について議論が深まればと思いますが。

ちょうど、何かと話題の安倍首相夫人が防潮堤反対の発言をされている記事を拝見しましたが、昭恵夫人ご自身のお気持ちは真っ当なものだろうと思う反面(今に始まったことではなく以前からそうした発言はなさっていたようですし)、上記の理由から利権的なものに利用されてしまうのではないかなどと残念な印象を感じてしまう面もあります。
http://jp.reuters.com/article/idJP2017031201001189

この記事の昭恵夫人の写真は、例の件で心労が溜まっておられるのか、とても疲れ気味に感じられ、講演先が西和賀町というのも総選挙対策で関係者に頼まれてということなのかもしれませんが、ご自身の健康を第一にしていただければと思います。

ともあれ、今後、防潮堤問題については、撤去等を掲げる声が高まることが予測される反面、本日の岩手日報でも「防潮堤の整備が終われば建設業者の仕事は減るだろう」との国交省幹部の発言なるものが掲載されており、誰がどのような立場・動機から撤去等を求めているのか、見定める必要があるのではと思われます。

防潮堤を単純に悪者視するつもりはありませんが、人(特に若者)が海を見るとき、遠く離れた先に自分の可能性が広がっているように感じるのでは無いかと思いますが、壁に囲まれた暮らしをしていると、自分が閉じ込められ、限られた人生の選択肢しか与えられていないような閉塞感に囚われるのではないかと思います。

景観や自然破壊云々もさることながら、そうした形で「被災地はろくでもないところ(だからさっさと離れた方がよい)」というメッセージをこの光景が地域の若者や全世界に発信することにならないか危惧しますし、それだけに「地域住民が秀でたものとして愛し、世界の人が見に来たくなるような防潮堤のあり方」について、災害先進国?に相応しい叡智を結集していただきたいと思わずにはいられません。

ちなみに、岩手弁護士会・公害対策環境保全委員会は、防潮堤問題について何かせねばとは思いつつ諸般の理由から何もやっていないと言わざるを得ない状態ですが、仙台弁護士会では視察調査などを行っているそうです。

先般それに関する記事を頂戴したので、その種の問題に取り組んでいる県内の方などがご覧になりたいとのことでしたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

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