大人同士のいじめ事件と、残念な光景に挑むお気の毒な弁護士
この仕事(マチ弁業)をしていると、時折、
「人を食いものにして(巧妙に利用して)暴利・悪銭を得ようとする類の人と、その御仁に依存・従属し搾取された残念な人との争い(往々にして、後者が搾取された利益を取り返そうとする類の紛争)」
に遭遇することがあり、私の場合、前者にはご縁がなく、後者の方々が、とても酷い状態になってから、なんとかして欲しいと門を叩いてくることが通常です。
で、この種の紛争の常として、前者が自身の搾取を正当化しようとする外形(形式的証拠)を何らかの方法で作っていることが多く、この種の紛争が、事業者間・個人間で生じる(ので、消費者契約法の出番もない)ことも相俟って、やる気のない裁判官に遭遇してしまうと、後者がどんなに酷い目に遭っていても、あんたがそれを了解したんでしょ、などと形式論理で前者を勝たせてしまう危険が十分あります。
よって、この種の紛争では、そうした「ろくでなしな外形証拠(往々にして、当方ご本人が押印等してたりする)」をどうやって打ち破るかがテーマとなりやすく、そのためには、詳細な実質論や裏付けとなる事実関係を、独りよがりな価値判断ではなく、裁判官が勝訴判決を書くには何を積み上げるべきかも考えた上で、法廷に届ける作業をしなければなりません。
往々にして「この残念な物語を、きちんと裁判官に伝えて正しい事実を踏まえた判断をしてもらうべきだ(相手方のろくでなしな主張事実を放置してはいけない)」と感じることも多く、結論として、受任弁護士が(やる気の無い人を除き)塗炭の苦しみを余儀なくされることになります。
この種の話は、2~3年に1回くらいの頻度で出逢いがあり、現在も、膨大な作業に追われ続けた受任事件があります。
平たく言えば「大人同士のいじめ事件(それも、カネや力のある人が絡んでいる)」であり、諸々の理由から今回も何が何でも負けてたまるかという気持ちで死力を尽くしてきました。
近年、心身の緩やかな衰えを感じるようになりましたが、この種の作業に没頭したときは今も徹夜仕事を繰り返しており、俺もまだ捨てたもんじゃない、と感じたりもします。
で、我々の業界では、長文は書くなとか情緒的な文書を書くなとか散々言われますが、この種の事件では肚の奥に色々な事柄が溜まるせいか、決めゼリフ言いたい病から逃れることができません。
というわけで、その際に提出した準備書面から一言。
「被告の主張は原告に隷属を強いるものに他ならず、法的に正当化されることがあってはならない。それは、法の正義に反することが誰の目から見ても明白だからである。」
この種の事件は、タイムチャージ的には大赤字が不可避ですが、先般、山浦もと最高裁判事(弁護士出身)の「お気の毒な弁護士」を拝見し、「まだまだ俺も修行が足りん」と、自分を慰めて作業に向かうことにしています。
ただ、解決まで3~4年かかった数年前の事件では、運良く大成功を修め、奇跡的に採算の合う仕事ができたので、「お気の毒だが欲界と資金繰り地獄から逃れられぬ田舎のマチ弁」としては、また僥倖に恵まれないかなぁ・・と、そればかり考えてしまいます(笑?)。