奨学金に関する残念な相談事例と改善策

奨学金制度については、近時、利用者たる若者が高額な借入金(学費)の返済を継続することができず、過酷な負担を強いられている方も一定数あるとして、日弁連などが制度の改善などを求めています。

さきほど、制度の運用に従事する支援機構の理事長の方への取材記事(上の双方)が載せられていましたので、過去に相談を受けたことなども思い返しながら拝見しました。

5年ほど前、「奨学金が200万円、他の借入が200万円(高利融資なし)」という20代の方の相談を受けたことがあり、破産又は再生をお勧めしたのですが、「奨学金は父が連帯保証をしており、父に督促等が生じる事態は絶対に嫌」ということで、あれこれお話したものの、残念ながら任意整理も含めて受任に至らなかったということがありました。

その際は、連帯保証絡みの通例として「(お父さんも含めた債務整理という事案でなければ)奨学金はお父さんが機構に返済しつつ、ご自分でお父さんに返済するという方法で、解決してはどうか」といったことなど(或いは、その上で機構にもリスケジュールなどを提案すること)を説明したのではないかと思いますが、とにかく、お父さんとトラブルになることを非常に忌避しており、奨学金に関しイレギュラーな事態が生じることをひどく恐れている様子が感じられました。

奨学金制度について軽々に批判するつもりはありませんが、他にも、自分は進学後すぐに中退してしまったが、親に無理を言って連帯保証人になって貰ったので、どうしても自力で返済しなければならない(ので債務整理的な解決は望まない)と仰る方のお話を聞いたこともあり、若い世代に残念な負荷が生じる例が一定程度あることは確かなのだろうと思います。

そして、それらの事案から感じられるのは、様々な事情があるにせよ、親御さんから学費の面倒を見て貰うことができず、奨学金の連帯保証という形ですら絶対に迷惑はかけられないと感じ、結果として自身が強い負荷を引き受けている若い世代が一定程度いるという事実であり、軽々に親御さんを批判するのは適切でないにせよ、家族内の「自助」が適切に機能していない面があることは、間違いないはずです。

連帯保証の当否という問題(親族ではない良質な民間事業者による低利の連帯保証制度の導入とか、住宅ローン特則類似の制度の導入なども視野に入れて)もさることながら、貸手責任(機構側)や融資金の利用者責任(学校側)という観点(審査等の強化や問題事案での返金や債務カットなど)も含めて、借主たる若者にばかりしわ寄せをさせないような適正な融資及び債権管理などの仕組みが検討されるべきではないかと感じました。

記事の末尾にあるように、奨学金制度に助けられて人生を切り開き、制度に強く感謝している方も沢山おられるでしょうから、それだけに運用の杜撰さ?で生じる弊害を除去するための仕組みについても真剣に考えていただきたいところだと思います。

時折、独居状態など日常的には身寄りのない質素な生活をしていた高齢の方が、ご自身の有意義な目的に使うこともないまま、数十年以上に亘って預金を続けていたであろう高額な金融資産を遺して亡くなられ、近親者などの間で紛争などが生じるケースについて相談を受けたり受任することがあり、中には被相続人と何の接点も無かったり義絶状態にあるような方のところに高額な相続財産が転がり込んでくる例も拝見することがあります。

そうした事案を拝見するたび、我が国にも不合理な形での冨の偏在が相応にあり、果たしてそのままでよいのかと思わずにはいられない面があります。

余談ながら、ちょうど、日銀が「民間銀行が日銀に預入する場合は手数料を取る」というマイナス金利政策が報道されていましたが、上記のような「遊休資産」を抱える銀行の多くが、有意義な形で預金を生かすことをしていないのであれば、良質な形でリスクに挑んだり、そうした営みを通じて善良な若い世代に適切な資金が行き渡るような流れができてくれるのであれば、望ましいことではないかと思いました。