尋問で決めゼリフを言いたがる華々しい?弁護士と、それが似合わない地味な奴

相手方関係者に攻撃的な態度で接するのを好む弁護士の中には、反対尋問の最後に、詰問調で責め立てるような質問を一気呵成に畳みかけるように行った上で、「証人は、こんなロクでもないことを言ってましたということで、尋問を終わります」などと、わざわざ決めゼリフを述べて締め括る人がたまにいます。

そうした尋問を格好良いと思うか何酔ってんだコイツと思うかは、好みの問題や聞き手の立場もさることながら尋問の巧拙・奏功次第であることは申すまでもなく、巧妙な尋問によって決めゼリフを言われてもやむを得ないほど証人が粉砕されてしまえば何も言えませんし、そうでなければ滑稽なものでしかありません。

先日の裁判で関係者の尋問があり、相手方代理人の一人である新人弁護士が当方の担当者への反対尋問でそうした挙に及んでいたのですが、弾劾が奏功したわけでもないのに無理にそうした「証人を誹謗する決めゼリフ」を述べていました。

さすがに裁判所も苦言を呈しましたが、私も、その御仁の尋問態度の悪さに対する腹立たしさもあり思わず大声で「そんなことは言ってない!」と叫んでしまい、かえって裁判長から「静粛に」と窘められてしまいました。

我ながら他人の稚拙な尋問は軽くあしらう老獪な姿勢が求めらるとは思っているのですが、人間的成熟なるものは遠い彼方のようで、「反省だけなら・・」の類の汗顔の至りです。

見苦しい決めゼリフではなくとも、相手方関係者に対する糾弾ありきの態度が強すぎて、単なる信用性の弾劾に止まらず、証人の証言を過度に歪めようとしたり、人としての尊厳を蹂躙しようとするような姿勢が垣間見える弁護士はそれなりにいますが、そのような方の中には別な場で「憲法擁護!」などと叫ぶ人もいたりしますので(もちろん、その種の方だけのことではありませんが)、色々な意味で残念な感想を抱かざるを得ません。

私は良くも悪くも朴訥な仕事しかできない地味系の町弁ですので、反対尋問では、相手方の主張に関する具体的な矛盾点や問題点の指摘に止めて、相手を誹謗したり当事者間の感情的対立を煽ることは極力差し控えるよう心がけており、それが、遠回りでも本当に憲法の本質=人間の個人としての尊厳を踏まえた紛争解決のあり方ではないかと信じて、徒に言葉を弄ぶことなく努力を続けたいと思っています。

まあ、単に私がパフォーマンスが不得手だということに尽きるのかもしれませんが・・