平成23年の業務実績の概要(H23.12.30記事再掲)
平成23年から、顧問先に年1回、当事務所の業務実績等に関する概要(事案等は抽象化しています)をご報告しており、ブログでは、顧問先ごとにカスタマイズした部分を除いて掲載しています。
再掲にあたり、体裁等を修正しています。継続中の事件に関するコメントは、次年度(平成24年版)も参照いただければ幸いです。
1 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援
平成20年に受任した「ある団体で、金銭管理を一人で行っていた代表役員による多額の不明金問題が生じたため、団体が役員に金銭返還等を求めた事件」で判決があり、概ね請求を認容する趣旨の判決を得ました。双方とも控訴し、23年末現在も控訴審が続いています(24年に勝訴的和解)。
また、「県外から岩手に進出した著名企業が、現地子会社を設立する際、地元でスカウトした経営者に子会社を任せたものの、後日その経営者と企業との間で紛争が生じ、企業が経営者に対し巨額の損害賠償等を請求した事件」で、地元の経営者の方から受任し、全面勝訴して解決しました。
その他、以下のような事件を手掛けています。
・取引先B社が顧客との関係で背信的な行為をしたため、A社がB社に損害賠償を請求した事件(B社から相当額の和解金の支払を受けて解決)
・下請取引に関する売掛金請求訴訟(一次下請の倒産に伴い、二次下請会社が元請会社に対し、二次→一次の売掛金の保証をしたことを理由に保証債務の履行を請求した事件。勝訴確実とみられたが、訴訟中に元請会社が破産してしまい、残念ながら回収不能で終了)
2 債務整理と再建支援
平成23年も、高利金融業者に対する過払金請求や引直残高が生じる場合の和解交渉、多重債務の方の自己破産、個人再生などを多数手がけました。ただ、グレーゾーン金利問題の沈静化に加え、若手弁護士の激増や東京の弁護士等の宣伝活動による受任競争の影響から、22年までと比べ、この分野の受任は大幅に減少しました。
法人の自己破産等(申立代理人、管財人等)も、幾つかの事件の取扱いがあったものの、件数は前年度までと比し大きく減少しました。全国的な傾向であり、金融円滑化法(返済猶予)の影響などによるものとされています。
反面、破産手続を終えた企業で後日に残務処理の必要が生じたため、清算人として残務に従事するなど、これまで取扱いの少ない特殊な企業倒産処理に携わる機会が幾つかありました。
震災に関し、津波で生活基盤を奪われ、巨額の住宅ローンが残存したものの、共済金等の支払により多額の現預金が残存した方について、自己破産を申し立てると共に、震災の特殊性等を考慮し、裁判所の一般的な基準を大きく上回る金額を手許に残すことができた例もあります。
3 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援
平成23年から、交通事故に関する受任が非常に増えました。前年末に某損保会社さんから加害者側でのご依頼を受けるようになったのですが、被害者側でも、弁護士費用保険を活用し受任する機会が増えています。
過失割合を争う物損事案が多いですが、後遺障害の評価を巡る争い(自賠責の基準を上回る認定等級を主張するもの)に加え、自賠責への対応(被害者請求や後遺症等級認定の異議申立)、仮払仮処分などを含めた対処を必要とする事件も受任しています。
また、交通事故以外でも、スキー中の事故に関する賠償問題を受任し、過失割合等を検討した例もありました。
4 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決
相談や簡易な通知のみの案件も多いですが、変わった例として、「数十年前に土地を購入したが、移転登記手続を失念したまま、売主が死去して相続人が数十名になってしまった件」で、買主の方から依頼を受け、相続人の方々に事情を説明し、それらの方々を被告とする訴訟を行って、買主への登記手続を命ずる判決(手続のため必要なもの)を受けたケースがあります。
5 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決
平成23年から、離婚や男女関係に関する訴訟の依頼を受ける機会が多くなりました。男女間のトラブル(不貞行為を理由とする慰謝料請求など)の対処依頼が増えており、慰謝料を巡る判例や法理論を調査、検討することが多くなっています。
また、事情の変化(減収や当事者の再婚等)に伴う養育費の減額請求や婚外子の方に関する認知等の手続など、親子間の法律問題についても受任事件がありました。養育費については裁判所の基準表だけでは算定ができない論点を含むものがあり、適正額の算定のため様々な調査を行いました。
成年後見では、申立代理人を手がけたほか、裁判所から後見人就任の依頼があり、財産管理等のほか、選任申立の直前に生じた契約上のトラブルを巡る訴訟の対応を行いました。
相続分野では、遺留分減殺請求訴訟を1件、遺言の有効性が問題となる訴訟を1件手がけており、いずれも、当方の主張をベースとした勝訴的な和解で終了しています。
また、相続放棄をしたものの、被相続人(亡父)が行っていた事業の関係で、放置できない事情があったため、私が相続財産管理人となり事業の関係者や債権者などへの対応を行った例もあります。
6 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務
行政が当事者となる事件では、税法上の処分の違法性を理由とする民事訴訟を納税者側で1件、国賠請求訴訟を行政側で1件、受任しています。
刑事事件については、被疑者国選制度の導入に伴い、捜査段階から否認事件を含む多数の事件に対応しています。
その他の業務としては、震災後、月1、2回の頻度で沿岸被災地の無料相談(避難所や弁護士会等が開設した相談会の担当)に従事しており、場所等は変わったものの、現在も続けています。