平成29年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産
当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、2月前後に業務実績を顧問先に送付し、時間を置いてブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。
今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。
(1) 全体的な傾向など
平成29年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。
ここ数年は①と②の受任が多くなっていますが、③も自己破産や個人再生の受任が増加傾向にあります。企業の取引や内部紛争などに関するご依頼は件数こそ多くないものの、昨年も、大規模な事案を含む様々な事件の解決やご相談の対応に注力しました。
(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援
企業取引に関する紛争の例としては、商業店舗の土地建物の賃貸借に関し問題が生じ、借主が貸主に賠償請求している事案を担当しています。
少し具体的に述べると、商業店舗を営むX社がY社から建物を賃借し店舗経営していたところ駐車場用地の一部がY社ではなく第三者(以前に当該建物を所有していた企業の関係者A)の所有になっており、そのことをYが把握しないまま、Aが当該土地を隣地所有者Bに売却し、BがXに当該土地(駐車場用地)の明渡を請求をしたため、Xはこれに応じざるを得なくなりました。
そのため、Xは、駐車区画の大幅減少を強いられ集客に必要な駐車場用地が確保できず契約目的(店舗経営)が達成できないとして、賃貸借契約を解除し他所に店舗を移転し、移転経費や移転期間中の逸失利益についてYに契約違反を理由に賠償請求をしました。
当方(X)に対しYは「移転の必要はなかった」などと主張し全面的に請求を争っており、現在も裁判が続いています。
他にも、建築瑕疵の是非などを巡り複雑な争いがある建築紛争を建設会社側で受任した事案もあります。
企業の内部紛争に関しては「NPO法人αがA町から大規模な震災復興事業を受託した際、α自身が高額資産の所有者になることができないという行政のルールに起因して、事業の受皿企業としてβ社を設立し、αがAから送金された受託費をリース料名目でβに送金し、βの名義で資産購入とαへの貸与などを行っていたところ、αが破産し、管財人Xが『その資産の所有者はβではなくαだ』と主張し、βに対し資産の引渡しなどを求めた(が、β代表者γ氏には直ちにこれに応じることができない事情があり一定の交渉が必要となった)」という事件(協力関係にあった企業間の財産の帰属を巡る紛争)につき、β社から依頼を受けて対処する案件を担当しました。
これは補助金の巨額不正使用などで世間を震撼させた「大雪りばぁねっと」事件を巡る民事紛争であり、様々な偶然(ややこしい事情)から民事裁判の開始後間もなくγ氏(大雪の代表者ではありません)より依頼を受け、管財人の適正な業務に協力しつつ、γ氏として法律上正当な権利ないし利益の確保(利害調整)を目指すことになりました。
そして、膨大な関連事務を経て主戦場となった事件では1審で勝訴したものの2審で裁判所の勧告に従い和解で終了、という展開を辿りました。
大雪事件では民事・刑事で様々な弁護士が事件に関与していましたが、管財人や大雪の代理人をはじめ、民事事件を担当していたのはほとんどが東京の弁護士の方で、民事事件に関与していた岩手の弁護士は実質的に私だけでしたので、依頼者の正当な利益を図りつつ地元の弁護士として事件の適正解決に貢献するとの気持ちで取り組んでいました。受任から完了まで約2年半を要し、学ぶところの多い事件でもありました。
企業の内部紛争に関しては、他にも、未払賃金などの労使紛争、企業の役員の不正行為が発覚し責任追及をした事件などで代理人として対応しています。企業取引に関しては、中小企業庁の「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者に対する売掛金請求や発注者の不当対応への対処についてご相談を受けることもありました。
(3) 債務整理と再建支援
倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は「総債務額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンがあるため、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」、「銀行に数十万円の借入があり、リスケジュールのため任意整理を希望する方」からのご依頼が増えています。
また、10年以上前に借り入れた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も増えています。
過払金訴訟は時代の変化に伴い依頼を受けることがほぼなくなりましたが、債権譲渡を含む特殊な対応が必要となる事案の依頼があり、業者側も多数の論点について全面対決の姿勢を示しているため、適正解決のため懸命に取り組んでいます。
企業倒産(破産管財)に関しては、平成27年に管財人を拝命した製材等を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復などの事務処理や法的手続が必要となり、平成28年に受任した建設関係の会社についても、多数の不動産の任意売却や不動産利用を巡り錯綜していた権利関係の整理、労働債権の対応など、様々な法的対応に負われました。
また、金融機関に巨額の債務がある一方で他にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受け、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で定める額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現するため、不動産の任意売却などを含め、2年ほど交渉を続けた事案で、昨年に特定調停により自宅マンション(無担保)を処分せず残存させるなど当方の希望に沿う解決を実現することができました。
個人の方の破産管財についても、破産手続以前に親族への無償譲渡行為があり否認権を訴訟で行使し配当を実現した例や個人事業主の方など、幾つかの事案を担当しています。