弁政連岩手支部と階猛議員との懇談
弁護士会では、「弁護士会ないし弁護士が広く共有している政策課題について政治部門(議員、行政等)に働きかけ(ロビー活動)を行うこと」を目的とした「弁護士政治連盟」という団体を数年前に設立しており、私も弁政連岩手支部の会員兼名ばかり理事となっています。なお、弁護士に限らず、税理士や行政書士など文系士業のほとんど(全部?)が「政治連盟」を作って、自己の職域拡大などについて盛んにロビー活動をなさっているのだそうです。
弁政連岩手支部では、これまで1年に1回程度の頻度で地元選出の国会議員や県議の方と懇談会を持ってきたのですが、先般、弁護士資格を有する国会議員の方と懇談しようとの話になり、岩手1区選出の階議員と懇談することになりました(岩手4区の藤原議員にも要請したそうですが、都合がつかなかったと聞きました)。
冒頭、階議員から、ちょうど報道で取り上げられたばかりのNHK会長との議論をはじめ最近の活動や問題意識などが説明された後、弁政連側から幾つかのテーマを挙げてフリートークで懇談するという形になりました。
弁政連側では、法テラス岩手のスタッフ弁護士や他士業絡みの話題を出したものの、準備不足のせいか?さほど盛り上がらず、階議員の活動や政治認識、最近の提出法案、法曹養成制度などを中心に、ざっくばらんなフリートークが中心でした。
階議員は、NHK会長との議論が報道された後、事務所に同議員を誹謗中傷するFAXが山のように届いた話などを例に挙げて、安倍政権下の日本が、自由な言論を抑圧し「国の方針に背くな」と反対意見を萎縮させ封殺しようとする動きが強まっているので、自分はそうした風潮と断固闘っていきたいという決意表明を強く述べておられました。
私自身は、ノンポリ無党派の人間ということもあり、階議員のそうした決意に特に異論もないところではあるのですが、他方で、過去に、某企業の代理人として労働組合に関する紛争の代理人をお引き受けしたことがあり、その際、支援労組を名乗る全国の多数の団体から、その企業に対し時には不穏当な文言を交えて批判する趣旨の大量のFAXが送りつけられたのを目にしたこともあるせいか、「言論弾圧だ」と声高に主張する人達の属する社会の方が、案外、自由に物を言える雰囲気の乏しい、偏狭で権威的・抑圧的・排外的なものであることが珍しくないと感じるところがあります。私のようにどこに行っても窓際会員になってしまう輩に言わせれば、そうしたことも、国会議員さんには押さえておいていただければと感じました。
ともあれ、批判するのが野党の仕事、という見方もあるのでしょうが、私自身は、抽象論よりも相手方が無視ないし放置している深刻な現実を示すような多くの具体的な事実の発掘、指摘をもって、批判的言辞に代えていただければ(抽象的な勇ましい言辞だけだと、最初から同じ結論を支持している方の感情的気分を高揚させる面はあるでしょうが、それに同調しているわけではない者にとっては、そうしたものに冷めた印象を感じていることを表明するのを萎縮させる効果しか生まないのでは)というところはあります。
他方で、現在、立法に向けた議論がなされている様々な法案について党派的立場に関係なく問題として検討すべき課題があることに関し幾つかの指摘があり、そうしたお話は、実務能力に秀でた階議員の面目躍如という印象は強く受けました。
弁政連側(=盛岡の有力な弁護士さん方)は、盛岡市に法テラス岩手のスタッフ弁護士が配置されることに強い反発を持っているのだそうで、懇談の際、某先生が、「何年も前の日弁連と法テラスの議論で、地元弁護士会の同意がなければ法テラス事務所は設置しないと約束したはずなのに、それを反故にされたので納得いかない」と憤慨していたのですが、階議員から、それは、いつ行われた、どのような会合で、誰と誰との間で合意されたもので、その証拠(議事録など)はあるのか、と質問されると何も説明できず、「そうした事実を調べて提示するのが貴方がたの仕事でしょう。自らが汗をかいて努力しなければ、議員に縋ろうとしても、物事を守ったり変えたりすることはできないのではありませんか」と議員に窘められる一幕がありました。
私自身は、その問題(法テラス岩手のスタッフ問題)にはさほど関心はなく、物事の判断の決め手となるべき事実と証拠を調査するプロというべき弁護士が、そうした用意をすることなく自分達の利害に関する事項について陳情し、(一応、同業とはいえ)国会議員さんに窘められるのも、残念なことだと思いながら傍観していたというのが、恥ずかしい現実です(本業では、そうした主張立証をきちんとなさっている方々ですから、医者の不養生といったことなのかもしれませんが)。
弁政連に限らず、弁護士会の様々な会合ないし活動自体が、プロ意識の乏しいサロン的体質だなぁと感じる面が多々あり、スタッフ弁護士であれ何であれ、弁護士や弁護士会自体が、もっと激しい試練に晒されるのでなければ、そうした体質自体を変えていくことができないものとして世間に扱われるのではという悲観的?な印象を抱いています。ただ、私自身さしたることもできないまま時間ばかり空費しているという感は否めませんが。
スタッフ弁護士問題については、先日、法テラスから、多額の交通費を要する岩手県内の某支部(裁判所)に出張する際の交通費が一切、我々(契約弁護士)には支給されないとの説明を受けて気が滅入ったことがあり、そういうことであれば、遠方の支部への多数回の出張を要する少額事件などの不採算仕事を、(給料取りなので自己負担がない=交通費も法テラス事務所から支給される)スタッフ弁護士にやっていただく方向で(要するに、盛岡にいるけど専ら盛岡以外の管轄裁判所の仕事をするものとして)、やっていただくのも一つの考えではと思わないこともありませんでした。
ただ、そういう類の要望については、スタッフ弁護士よりも、交通費等の立替制を導入するとか、裁判所の遠隔地審理システムの拡充(双方とも電話会議OKとして出張不要とするなど)に求めるべきことで、そうしたことも含め、実務的な議論を詰めて相応の場に働きかけをしていただければと改めて感じました。
なお、「スタッフ弁護士問題」は、究極的にはいわゆる弁護士自治(法テラス=行政機関による弁護士業界の統制云々)が絡む話なので、折角、議員さんと懇談するのであれば、弁政連側にはそうした大きな話も含めて論点・議論を詰めたり資料を整理してお渡しするなどの工夫があってもよいのではと思いました。
階議員からは、「議員には秘書などのスタッフはいるが、選挙対策の従事で精一杯で、重要法案が目白押しになっているのに、真に政策(法案の当否や立法論など)を考えてくれるシンクタンクのようなスタッフを持つことが出来ないのが残念である」という趣旨のお話がありました。恐らく、そのような営みを何らかの形で弁護士会に期待してのご発言ではないかと感じましたし、弁護士会(弁政連)側も、階議員に限らず、地元選出の議員さんの要望に応じて、法律論が絡む政策課題について論点整理や事実調査、法的検討などを行ったレポートを提出するというような営みを考えてよいのではと思ったりもしました。
ただ、現実問題として代金は無理筋でしょうし、さりとて無償では質の担保に不安があるでしょうから、日暮れて道遠しの感は否めずといったところでしょうか(タダの代わりに、弁政連の政策課題に対し相応の協力を約束いただくといったパターンなら、それなりに実効性があるかもしれませんが)。
ともあれ、弁護士出身である階議員に限らず、国会議員さんとの「ざっくばらんな会合」自体が貴重なものと言うべきでしょうから、発言力のない万年窓際族の私にはさしたることはできそうにありませんが、今後も参加だけは続けたいと思っています。
なお、(特に外に出して困るような話を書いたわけではないでしょうし、そもそもそのような話自体もなかったとの認識ですが)議事録等もない非公開の場のざっくばらんな懇談について、私なりに感じたことを書いたものですので、その点は予めご理解のほど、お願いします。