後遺障害の認定申請時での弁護士への相談の必要性

今年は、交通事故の被害者の方から賠償請求を受任する例が多く、後遺障害が生じ、後遺症に基づく高額な慰謝料・逸失利益を請求している事案も幾つかあります。

後遺障害については、交通事故の場合、自賠責保険による認定制度があり、加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社を通じて必要書類を提出し、自賠責調査事務所の審査・認定を受ける方式(事前認定)が一般的です。もちろん、加害者が任意保険に未加入なら、被害者請求という形で、加害者の自賠責保険に請求し、審査・認定を受けることになります。

いずれにせよ、認定された後遺障害の内容、等級に異存がなければ、その認定をもとに、自賠責保険金の支払を受けたり、これで賄われない損害額について、加害者に賠償請求し、争いがあれば裁判所の判断を仰ぐことになります。

これに対し、認定内容に不服がある場合には、医師に相談するなどした上で、自賠責保険の手続の中で異議申立をし、自賠責の判断の修正を求めたり、それが適わない場合には、裁判所に自賠責の判断とは異なる等級等の判断を求めていくことになります。

職業など個別的な事情によっては、自賠責の等級認定を上回る後遺障害の等級評価を裁判所から得られる場合もあり、1、2年前に取り扱った事件で、そのような評価を得て、高額な賠償を勝ち取ったことがあります。

ところで、ご相談を受けた案件の中には、複数の後遺障害が生じている方で、一部の後遺障害に関する自賠責保険に対する認定申請が抜けているという例がありました。

主たる後遺障害については相応の調査、認定が行われており、自賠責保険上の等級認定には影響しない下位等級の後遺障害の認定が落ちているという例がほとんどですが、それでも、裁判上、後遺症慰謝料や逸失利益の判断に影響がないわけではなく、やむなく、異議申立をして認定を求める作業をしています。

そのような意味では、後遺障害の認定が関係する方にとっては、加害者側の損保から示談案の提示を受けて初めて相談されるのではなく、事前認定の資料を提出する段階で、ご相談された方が賢明かもしれません。

例えば、どのような後遺障害があるか、ご認識を簡単に書面にメモ書きしていただき、すでに準備している後遺障害診断書などもご用意の上、それらと後遺障害等級表や認定基準などを照らし合わせ、個々の障害について予測される等級を確認し、申請の漏れがないか、より適切な資料を提出すべきでないかなどを検討するような作業をしてもよいのではと思います。

すべての事案で、そこまでの作業が必要ではないとは思いますが、弁護士費用保険などで相談料などは賄えるはずですので、本格的な準備の要否などを確認する趣旨の簡易な相談だけでも、早めに受けていただければと思っています。