法テラス気仙の落日?と「被災地」無料相談事業の行方(後編)

前回の続きですが、今回は、「法テラスの無料相談事業」に力点を置いて書いてみようと思います。

法テラス気仙での相談はすべて無料ですが、岩手の多くの方がご存知のとおり、無料相談ができるのは法テラスだけではなく、岩手県内では当事務所をはじめ法テラスと契約している県内の全ての弁護士(法律事務所)が、原則30分の無料相談に対応しています。

法テラスは、本来は「低所得者などの支援のための公的機関(税金で運営する組織)」なので、無料相談等には一定の所得制限があるのですが、被災3県や青森県八戸市など幾つかの沿岸被災地域では、震災後に制定された法テラス特例法により、震災当時にこれら対象地域の居住者であった方なら、資力等を問わず、また対象事項を問わず(刑事を除く)、無料相談を受けることができるようになっています。

ちなみに、先般の熊本大地震でも、すでに同様の特例法が定められたと聞いています。

この制度は平成27年に延長され、現在は平成30年3月までとなっているのですが、この制度が再延長されるのかどうかも、被災県で活動する弁護士にとっては大きな関心事となっています。

ただ、確かな筋から伺ったところでは再延長の見込みは絶望的で、残念ながら平成30年で終了することが確実視されているようです。

この制度が導入される直前には、弁護士会(盛岡)の相談センター(有料)ですら閑古鳥が泣きそうな状況になっていましたし(これは、他の都道府県でも同様の現象と聞いています)、当事務所に来所いただく相談者の方々にとっても、無料で相談できるということで気軽にご利用いただいている面もあろうかと思います。

ですので、この制度が廃止された場合は、既に全国各地で生じている光景のように、有料に戻す=相談者が激減するリスクを負うか、完全無料(自腹)とするなど事務所の経営(存続)リスクを覚悟するか、選択を迫られることになりますが、いずれにせよ、町弁の事務所経営上は大きな打撃になることは間違いありません。

個人的には、いっそ発想を転換して法テラス無料相談(無条件30分)の制度を全国的に導入してはと思わないでもありませんが、その場合、現在とは比較にならぬ膨大な財源が必要になり、かつ、それを捻出する政治力を弁護士業界が有していないことも間違いないでしょう。

或いは、日弁連が法科大学院(LS)と決別し、LSへの国からの補助金を撤廃させ無料相談の財源に廻せとの運動をしてはいかがかと思ったりもしますが、「LSへの補助金のせいで司法修習生の給費制度が廃止されたので、補助金を撤廃するのなら給費制をこそ復活させるべき」と仰る方も少なくないようですので、遠からず、「国から弁護士業界に流れてくるお金(パイ)」の争奪を巡り醜い争いが生じたり、それに伴う業界の衰亡などという現象も生じることがあるのかもしれません。

そうした意味でも保険制度による費用問題の解決が何年も前から求められていたというべきなのですが、それを怠ってきたツケを、我が業界は今後ますます負っていくことになりそうで、ため息ばかりが増す有様です。

(写真は4月の担当日の際に撮影したものです)

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