無戸籍者問題と親子関係の存否確認などに関する弁護士の役割
弁護士会で、「無戸籍者の支援及び関連業務を行う弁護士の名簿を作るが、搭載には弁護士会の研修の受講が必須」との通知があり、先日、行われた研修に参加してきました。
といっても、日弁連の「子どもの権利委員会」が8月に行った2時半半の講義に関するDVD視聴研修で、講師の方も一方的にまくし立てるような話し方で、音声の問題もあって聞き取りにくく、大半の時間は配布されたレジュメを読んでいたというのが正直なところです。
なお、11日には日弁連主催の相談会が全国一斉に行われたそうです。
「無戸籍児」は、民法772条(離婚後300日の嫡出推定)の関係で、いわゆるDV夫から逃れるようにして離婚した妻が、出生届を機に、前夫に消息を突き止められるのを避けようとして生じるのが最も多いとされ、また、もう一つの典型として、婚姻期間中に他の男性の子を宿した方が、出生した子が前夫の子として取り扱われるのを避けようとして、出生届を出さないことにより生じることも多いとされています。
無戸籍者は、他のレアケース(認知症問題など両親が役所に届け出るだけの意思や能力等を欠く場合)も含め、法務省が把握しているだけで全国に600人以上いるとされ、推定で1万人に達するのではなどという見解もあるようです。
研修でも散々述べられていましたが、弁護士としては、超不採算の可能性の高い類型の仕事だとは思われるものの、「無戸籍」ではない方の親子関係などを巡る法律問題にも応用の利く事柄であり、それなりに関心を持って拝聴しました。
とりわけ、無戸籍の方を実親の戸籍に記載させるための「就籍許可の審判」については、今回はじめて知ったこともあり、色々と勉強になりました。
私自身、数年前に、「実母が、何らかの事情(婚外子?)で自身の戸籍に子を届け出ず、親族の子として届け出させた(との申出が、実母の死後、子からなされた)という事案」で、実母の財産に関する相続手続の必要から、親子関係を証明して相続手続を行いたいとのご依頼を受けたことがあります。
その件では、親子関係を証明する資料が乏しく(臍の緒はありましたが、DNA鑑定に用いることは無理だと言われました)、正面突破が難しいとのことで、他の方法に依らざるを得ませんでしたが、その際、親子関係の存否証明に関する立証方法について色々と調査、研究したことあり、レジュメにその点について記載があったので、懐かしく感じました。
「無戸籍」に限らず、数十年前の日本では様々な事情から真実の親子関係とは異なる届出がなされたことも多くあり、それが、今になってツケを払えと言わんばかりのように問題になるということは、決して珍しいことではありません。
まして、無戸籍者問題に見られるように、戸籍を巡って何らかの形で子が犠牲になる事態は現在も生じているわけで、そうした問題を放置せず解決に導くことは、少子化云々に触れるまでもなく、現代社会が取り組むべき事柄の一つであることは明らかだと思います。
そうした観点から、地域内で問題を抱えている方について、当事務所にもお役に立てる機会を与えていただければと思っています。
報道によれば、再婚禁止期間(民法733条)と夫婦別姓に関する憲法適合性を判断する最高裁の判決が近いうちになされると見られており、嫡出推定の問題も含む子の利益・権利のあり方という観点も交えて議論が深まってくれれば、なお良いのではと思います。