環境マネジメントシステムと田舎者の違和感

半年ほど前の話になりますが、「全国弁護士会・環境マネジメントシステム・サミット」なる会合が東京で行われ、私も岩手弁護士会の担当者?として参加してきました。

これは、環境問題に熱心に取り組んでいる全国の幾つかの弁護士会が、自会の活動報告をしたり、環境省のご担当などを交えて活動のあり方などを協議することを目的とした会合で、主に、「エコアクション21」の審査を受けて正式にKES(環境マネジメントシステム)を導入している弁護士会(と日弁連)が対象となっているものです。

そのため、KESの(相応に大変らしい)手続や事務作業に耐えうる規模の弁護士会が対象ということで、日本第二位の広さなのに会員規模は全国最小クラスである岩手弁護士会は、(よほど酔狂な人や特殊なカリスマでもいない限り?)導入できるはずもなく、私の知る限り、会内で導入が議論されたこともありません(というか、私以外にKESを知っている人もいないのかもしれません)。

というわけで、私もさしたる関わりはなく、「意識高い系?の弁護士会の取組を拝見した」程度の参加に止まったというのが正直なところです。

会合では、最初に環境省の方の講義や国内でKESの普及実務などに携わっている財団法人の方の講義等がなされた後、幾つかの弁護士会の取組の報告と意見交換、という形で進みました。

その際、熱心に取り組んでいる主要な(大規模な)弁護士会の方々から、省エネなどに取り組んで相応の成果は挙げ、内部でやるべきことはそれなりに尽くした感がある反面、それを対外的な影響力としてつなげる(地域内の様々な企業・団体などとつながりを持つなど)ことができていない、という話が出ていました。

これに対し、財団法人の方から「金融機関は、割と熱心にKESに取り組んでいるようだ」とのコメントがあったのですが、それを聞いた瞬間、金融機関なら、KESを「取引先の情報収集のネタ」として活用するインセンティヴがあるのかもしれない、と思いました。

すなわち、金融機関は、多額の融資をしている(または行う予定の)貸付先企業の経営の健全性(利息収入と元本返済の見通し)に強い利害関心があり、当該企業の経営に関する様々な情報を欲しているはず(そうあるべき)です。

ただ、「貴方(貴社)との融資取引を続けて大丈夫か心配なので、調査や確認のため会社の様々な内部情報を教えて欲しい」と露骨に伝えるのが憚られる場合に、経営調査の口実?として「KESの導入支援です」と伝えて了解を得ることができれば、表向きはKESらしい?環境配慮云々の話をしつつ、それと並行して、その会社(融資先)の運営状況を調査・確認し、「この点も改善を要するのでは?」と申し入れることができるのではないかと思います。

そのような観点で見れば、弁護士もKES(導入支援或いは意見交換など)を入口(突破口)として企業法務などの業務の受注(各種法的リスク調査とその対応支援など)につなげることも可能なのでは・・と思わないではありません。

ただ、KES(エコアクション21)の登録や保持には少なからぬ事務負担があるとのことで、当事務所はもちろん岩手弁護士会のような小規模な組織では、よほどの熱意がない限り、厳しい面があるかもしれません。

現に、今回の「サミット」でも、東京の三弁護士会や京都、福岡など比較的、規模の大きい(沢山の人員を抱えた)弁護士会が主に取り組んでいるとのことでしたが、田舎者の目線で見ると、「環境保護」に関するテーマについて、「環境という利益」の消費者というべき大都市圏の方々ばかりが熱心に取り組み、地方=生産サイドの弁護士(会)がさほど関わっていないという光景そのものに、少し違和感というか残念な感じもしました。

震災(原発事故)をはじめ、全国で生じた様々な残念な光景に接するたび、日比谷公園に、原発被曝廃棄物(汚染廃棄物)や各地の不法投棄事件で埋設された廃棄物を積み上げて「私たちのせいでこうなりました」とでも書いた看板を立てればと思わずにはいられないときもありますが、都会の方々には、省エネなどに限らず、地方に「都会のエゴによる負の遺産を押しつけない」ことに強く結びつくような取り組みを、実際に生じた光景を直視した上で進めていただければと思っています。