相続と「争族」に関する事前準備
先日ある保険会社さんから相続に関するセミナーを担当してみないかとお声掛けいただき、まだ正式決定ではないものの、来年1~2月頃に県内の数カ所で行うことになりそうです。
まだ時間的余裕はあるものの、色々と考えたことをメモするなどして、それなりに準備を進めています。
そんな事情もあり、先日、相続絡みの本を2冊、立て続けに読みましたので、少しご紹介したいと思います。
以前、平成27年の相続税法改正(増税)に絡んで税務対策などを取り上げた本として、税理士の楢山直樹先生の著作をご紹介したことがありますが、以下の2冊は「法律上の紛争(「争族」に関する論点の具体例)」と「遺品」という、同書では取り上げていないテーマを一般の方むけに分かり易く説明した本ですので、楢山先生の本と併せてご覧になれば、なお良いのではと思います。
ここ1、2年に読んだ本③~様々な法分野・実務など~
●あさひ法律事務所「90分で納得!ストーリーでわかる相続AtoZ」経法ビジネス選書(H27.2)
亡父の自宅を同居の子が相続した事例をベースに、トラブルメーカー役の叔父などの若干の登場人物を交えて、相続を巡って法律上問題となるベーシックな論点を、一般の方向けに分かり易く説明した一冊です。
論点として、相続人の範囲・特定、葬儀費用、相続分、相続財産の特定や遺産分割の要否、遺言の有効性、債務の相続、特別受益(生前贈与等)・寄与分などを取り上げ、登場人物を巡るストーリーを述べると共に、法律や裁判所の考え方について解説を加えています。
一般的な家庭の相続に関して生じうる法律上の論点などについて基本的な知識、理解を深めておきたい方には、大いに参考になる一冊だと思います。
●木村榮治「遺品整理士という仕事」平凡社新書(H27.3)
遺品整理士の資格認定に関する協会を立ち上げ、遺品整理業務のあるべき姿について指導されている先駆者の方が、遺品整理士という仕事を志した経緯や遺品整理の意義などを説明しています。
遺品整理業務の一般的なあり方(あるべき姿)や問題業者の実情などのほか、特殊な対応が必要となる現場(孤独死、賃借物件、遺族が遠方居住など)、「生前整理」の必要性などにも触れられており、弁護士(紛争)や税理士(税)の業務とも異なる、第3の相続問題としての遺品整理及び関連事項につき、基礎的な知識、知見が得られる本として、大いに参考になる一冊だと思います。
とりわけ、「生前からの被相続人の所持品などの整理や、関連する見守りなどの問題」については、被相続人(ご本人)が、親族などと遠く離れて単身で賃借物件などに居住しているケースでは、福祉や医療などとの連携も含め、強く意識されるべきではないかと思われます。
余談ながら、日経新聞の本年8月30日の記事で、いわゆるIT終活(死後のPCやネット上に残存する各種データ等の処理)が触れられており、これも、現代に特有の「遺されたモノの整理」ということができ、それだけに、相続人側はもとより被相続人も適切な「準備」が必要でしょうし、それらを巡る相互の意思疎通を適切な形で行っていく文化が形成されるべきではないかと感じています。