継続的取引の不当停止を理由とする賠償請求の認容判決
中小企業の方々にとって、経営上、依存度の大きい(売上高に占める割合が大きい)発注企業(往々にして自社よりも規模の大きい企業)がある場合には、突然に取引の打ち切りを通告されるような事態が生じることのないよう、様々なご苦労をなさっているケースが多いのではないかと思います。
そして、万が一、取引中止を通告された場合、それが契約上の定めや商取引上の信義則に照らし、違法不当と言える場合には、取引中止を通告してきた取引先に対し、通告の撤回やそれが適わぬ場合には損害賠償を求めたいということになるでしょうし、そのような紛争は、決して少なくはありません。
ただ、取引基本契約書のように継続的取引を明確に定めた書面を交わすことなく、依存度(中止リスク)の高い継続的取引を行っている企業も多いと思われます。
このような紛争を「継続的取引の不当停止を理由とする賠償請求」などと読んでいますが、往々にして、立証上のリスクも含め、勝敗の見通しを立てることが容易でないことも珍しくありません。
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数年前、小規模な企業の経営者の方から、そのような事案のご相談を受け、事案の内容に照らし、提訴してよいのではと申し上げていたものの、ご本人も悩んだ末に提訴(賠償請求)に踏み切ったという案件を受任していました。
そして、今年の夏に、当方の請求を概ね全面的に認める趣旨の判決をいただき、無事に確定して、相手方企業から支払を受けることができました。
詳細は差し控えますが、そのケースは、売上の100%を依存している発注元の大企業から、正当な理由がないのに突然の停止通告等をされて事業そのものが停止に追い込まれたという案件で、停止の不当性は明らかであったものの、継続的取引を行う契約関係があったとの認定が得られるか見通しが立てにくい案件でした。
なお、継続的取引としての要保護性が認められずに単発的な取引に過ぎないと言われてしまうと、理不尽な理由で今後は発注しないと言われても、賠償請求が当然に認められるとは言い難いと思われます。
また、この種の訴訟では、当該取引が継続していれば得られたであろう1ヶ月間の相当な逸失利益を算定して、それに相当な期間(取引継続が期待できた期間)を乗じて算出するのですが、本件では、同種訴訟の中では、比較的、長めと言える期間が認められてました。
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当事務所にとって「地域内の中小・零細企業が東京などの強大な取引先企業から理不尽な仕打ちを受けた場合に泣き寝入りをしないための闘いをサポートする仕事」は、特に力を入れて取り組んでいる分野です。
そのため、私自身としては、「勝って(お役に立てて)ホッとした」というのが正直なところです。
この種の案件は、事実の立証のほか、裁判官の個性などでも勝敗が分かれるリスクがあるため、悩ましい面は色々とあるのですが、その種の問題が生じた場合やそのリスクがある取引をなさる場合などでは、弁護士への早期の相談を念頭に入れておいていただければ幸いです。