縄文の遺跡群と北東北のオリジナリティ

「太陽の塔」などで有名な芸術家・岡本太郎は、縄文文化とその出土品などに対し高い芸術的価値を認め、その息吹を伝える北東北や沖縄の人々にも、特別な思いを感じていたことは、よく知られています。

私も、10年ほど前に東北新幹線の車内誌で「岡本太郎が発見した北東北」といった内容の特集を読んでから、岡本太郎への関心が深くなり、ちょうど岡本太郎の再評価の動きが高まってきたこともあって、平成23年にはNHKで放送されていた自伝的なドラマを見たり、東京に泊まりがけで行く機会があったので、青山の岡本太郎記念館に立ち寄るなどしていました。

さきほど、昨年8月10日の日経新聞に掲載されていた縄文文化特集で、パリで民俗学の泰斗に師事した後に欧州から帰国した岡本太郎が、日本独自の文化を求めて最初に京都・奈良を訪問したものの、京都は過去の遺物の集積で奈良は中国のコピーに過ぎないと失望し、縄文土器に接してはじめて、日本独自の文化を感じたという趣旨のことが書かれているのを見ました。

その記事を読んで、ふと思ったのは、京都・奈良については既にその価値が広く認められ、何年も前に世界遺産登録がされているのに対し、縄文文化に関しては、その痕跡を残している場所などが世界遺産登録されたという話を聞いたことがない、そのことは、岡本太郎に言わせれば、真に日本独自と言える文化が世界に紹介され価値が認められていないものに他ならず、とても嘆かわしいことではないか、ということでした(沖縄については琉球王国の文化は世界遺産登録されているものの、縄文文化絡みの登録は無かったと思います)。

そのように考えると、現在、世界遺産登録を目指している「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、縄文文化に関し世界遺産登録を目指している唯一の存在という意味では、これを成就させることは岡本太郎の遺志にも沿うことではないかと思います。

これまで、上記遺産群の運動をしている方々が、岡本太郎(の関係者)側に協力を要請するといった話はあまり聞いたことがありませんが、芸術的な観点を交えて文化の価値への理解を広めるという意味では、大いに意味のあることで、ぜひ、取り組んでいただきたいと思っています。

ところで、上記の記事で取り上げられていた土偶は、長野県茅野市や群馬県で発見されたものでしたが、それらの地域が世界遺産登録を目指しているなどといった話はこれまで聞いたことがないと思って検索してみたところ、最近になって、そのような動きが出てきたようです。
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=33288

私見としては、信州などで著名な土偶が発見されていることは確かですし、地域おこしではなく縄文文化の価値を世界に認めて貰うことが目的でしょうから、「明治の産業遺産群」で北九州などと釜石(橋野高炉跡)が一括りになっているように、北海道・北東北とタッグを組んで、一緒にまとめて世界遺産登録を目指して良いのではと感じますが、いかがでしょう。