船井電機を上回る壁?を乗り越えた町弁の苦闘とその先に得たもの

船井電機の破産手続を巡る騒動は、報道で多くの方がご覧になったと思いますが、これとよく似た構図の事件の相談を3ヶ月前に受けました。

で、この間、色々と振り回され・・もとい、様々に生じた展開に応じて諸々の手を尽くし、無事に依頼の趣旨を達成できました。

船井電機は、報道でチラ見したところでは、現役員や支配株主?らの中に会社から不正に巨額資産を流出させた者がいて、それを見過ごせないと感じた創業家出身?の役員が準自己破産の申立(取締役会決議が得られない状態で役員個人で行う会社破産申立)を行い、裁判所が即日に認めたものとされています。

私が受任した事件は、A社の創業者B氏が、様々な事情で金融機関への返済などに窮した結果、知人のツテを通じてC氏から融資を受けたものの、期限に返済できず株式全部をC氏に譲渡(代物弁済)し、その後はオーナーとなったC氏の高圧的な態度に耐えながら雇われ社長としてA社の運営を行ってきたものの、万策尽きてA社の店じまいを希望した、という案件でした。

詳細は差し控えますが、このタイミングでA社の破産手続を行わなければ、自身の優先的債権回収を求めるC氏の主導で、金融機関(主要債権者)などから見れば容認し難い偏頗弁済となし崩し的な企業休止(放置)が危惧される状態となっていました。

そこで、船井電機事案と同じく即日開始を実現させるべく、B氏の急な依頼から数日の突貫工事で準自己破産の申立を行ったのですが、裁判所の判断は「支配株主C氏の審尋が必要=即日決定は不可」でした(取締役会の多数派はC氏グループ)。

そうなると当然予測されたとおり、私からC氏への通知が届いた直後にC氏はB氏を役員から解任し、破産の可否を激しく争ってきました。

これにより、B氏はA社の取締役たる地位を失い、準自己破産の申立権を喪失し、申立は失効(不適法)扱いとなります。

しかし、そこで諦める私ではありません。

間髪入れず、A社の債権者という立場で、再度、B氏代理人としてA社の破産申立(債権者破産の申立)を行いました。

そこから先も、裁判所から「支払不能の立証がなければ申立を認めない」との示唆があり、この立証作業に膨大な苦労を余儀なくされるなど色々とあったのですが(一般論として、債権者破産の立証責任は非常に厳しいと言われます)、12月下旬に無事にA社の破産開始決定が認められました。

事案の規模はともかく、法律論的には船井電機事件よりも高い壁を突きつけられ、それを乗り越えた事案と言えます。

創業者であり銀行への巨額の連帯保証債務を負っていたB氏個人の自己破産申立も年末に行い、A社事件で行うべきことの大半を終え、けじめをつけて別の形で再起を目指すB氏もほっと一息ついて年末を迎えることができました。

そして、次の依頼こそが弁護士の報酬、というわけで、年末も、非常に厄介な不動産問題の解決を必要とする「会社の店じまい」案件(不動産処理・売買を通じた銀行債務の返済による会社や役員らの破産回避を目指す事件)の受任などがありました。

年末年始は、それらの仕込みに追われることになります。
来年も、まだまだ楽にさせてはくれないようです。

他にも、今年は、盛岡に来て間もない頃に親しくさせていただいた方からご依頼を受け、実務的には申し分ないと思われる解決を早期に実現した案件など、全体的には多くの事件で良好な成果が得られた一年となりました。

来年も、皆さんのご期待に応えることができるよう、死力を尽くしていきたいものです。