裕福ではない司法試験受験生を支え続けた、真法会と法学書院の過去と現在
2~3ヶ月前の話ですが、ある若い弁護士さんからお話を伺った際、「自分は、受験生時代に受験新報(法学書院が刊行する、司法試験受験生のための勉強雑誌)の誌上答練に大変お世話になった」と突然仰ったので、非常に驚きました。
私が学生時代に所属していた中央大学真法会という団体は、私が合格した年までは司法試験の模試(答案練習会。毎年10~3月)を数十年に亘り自前で行っていたほか、受験新報の原稿作成などにも関わっています。
昭和から平成初期、司法試験がまだ牧歌的と言われていた時代、とりわけ裕福ではない(高額な予備校代などを捻出できない)人にとっては、安価で受講できる真法答練は貴重な存在で、そのような体験談は、当時、何人かの業界の大先輩から伺ったことがありますし、他ならぬ私自身が、真法会のおかげで(東京での生活費等を一応別とすれば)ごく限られた経済的負担で司法試験に合格できたことは間違いありません。
答練は、私が運営に関わった(室員として合格までタダで答練を受講できた代わりに、お礼奉公で散々コキ使われた)平成9年度で終了してしまいましたが、受験新報には現在も真法会関係者が様々な形で関わっていると聞いており、答練の精神やノウハウ等は、受験新報誌上で行われている誌上答練に受け継がれていると言われています。
冒頭の若手の先生は、決して裕福なご家庭の出身ではなく、相応に苦学されたこともあったのだそうで、それだけに、誌上答練のお世話になって合格されたというお話を伺い、私自身がその方のお手伝いをしたわけではないものの、答練の設営や採点などに明け暮れていた合格直後の半年間を思い出し、あの文化や精神が、今も多少なりとも続いて、本当に役に立つべき人の役に立っているのだと、感銘を受けるところがありました。
とりわけ、その先生とは、まだほとんど対決等の経験はないものの、その先生の登録後間もない頃から「この新人は、すごい優秀だ」というコメントを複数の方から聞いていただけに、若い頃、大先輩の方から「真法答練のおかげでこの業界に来ることができた」と伺ったときのことが思い起こされるようにも感じ、自分も初心に返るきっかけを与えられたように思いました。
普段、若い世代の方々と接する機会が全くない恥ずかしい身の上ですが、たまにはこうした機会を持つことの有り難みを感じた次第です。