記憶の中の迷ヶ平を探して
先日、岩手から遠く離れたツーリングの聖地・迷ヶ平を訪ねました。
そんな場所は知らない、というバイカーの人は、キリストの呪いでも喰らって出直してきて下さい。
私は、たぶん4歳か5歳くらいの夏の日、この地を訪れたことがあります。
その日は何かのイベントがあったようで、沢山の人で賑わっていました。
私が覚えているのは、晴れやかな高原の眩しい木漏れ日と清々しさ。
そして、大量のカブトとクワガタが籠か何かに入れられてウジャウジャしていた光景だけです。
たぶん、子供向けに売っていたのかもしれませんが、それ以上のことは思い出せません。
以来、迷ヶ平に来ればきっとカブトとクワガタのウジャウジャに逢えるはずとの妄念に取り憑かれて幾年月。
いま、私の目の前に広がる夕方の光景は、まるで夢から覚めた後のよう。
しかし。いるじゃありませんか。
きっと、あの頃から、ここにいたんじゃないかとしか思えない、おばちゃんが。
本日最後の串餅1個。おでん1個。
そして、ニンニク味噌1個。
でも、聞けませんでした。
昔、ここに、カブトとクワガタがウジャウジャいましたよね?と。
それは記憶なのか白昼夢なのか、或いは、私ではない誰かの物語なのか。
分からないまま終わらせてもよいのだと、数十年も経たこの地に来て、私もようやく受け入れることができたのかもしれません。
この地を初めて訪れた同行者は、自分はかつてここに来たことがあるはずだ、と何度も述べていました。
それもまた、白昼夢なのか、自分ではない誰かの記憶なのか。
皆さんも、来てみませんか?迷ヶ平。
あなたの記憶の中の何かを探して。
(追伸)
ここは南十和田湖とでもいうべきエリアですが、誰でも知ってる奥入瀬渓流などと異なる観光客が誰も来ない方角であり、手垢のついた観光地だけでないディープな旅をしたい人には、良い場所なのかもしれません。
可能なら、十和田湖高原などと銘打って、新たな観光地開発ができても良いのではと思ったりもしますが。