15年以上前に消えた名物駅弁と、今も放置されたままの課題
平成19年4月に旧ブログに投稿した文章の再掲です。詳細は差し控えますが、店じまい(店主さんの引退)の手伝いをさせていただく中で感じたことを書いたものです。
今年も食品関連の会社さんの破産申立を行いましたが、先日、事件記録を読み返したところ、惣菜関係の多数のレシピを有していたとのことで、本来なら、そうした「直ちに値段はつかない(管財人等による現金化には馴染まない)かもしれないが、誰かが生かせるであろう無形資産(様々なレシピ・ノウハウなど)」を簡易に保全・保存できる方法(Web等を通じた情報収集・管理センター的なもの)があればと、残念に感じてしまいます。
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JR一戸駅には、山口松山堂の「ロースカツ弁当」という数十年間親しまれてきた名物駅弁があったという話を、新聞で知りました。
残念ながら、今年の3月一杯で閉店してしまったそうですが、話を聞きつけて全国各地から食べにきた人がいたそうです。
恥ずかしながら、隣町の住人でありながら最近まで全然知らなかったこともあり、3月中旬に実家に行ってきた帰りに、買って帰って食べましたが、確かに、名物駅弁といわれるだけのことはある美味しさでした。
子供のころ一戸町内に住んでいた小説家の高橋克彦氏は、4食分買って4回連続して食べていたそうですが、確かに貧しい田舎ではそれだけ食べたくなるような味ではないか(妙に飽きのこないものがあった)と思いました。
現在、岩手県北の貧困等の拡大が特に問題視されていますが、このような「全国に知名度のあった町の宝」を何某かの手段を講じて保存することはできなかったのか、惜しまれます。
例えば、心ある若手経営者等が製法を学びに行って、何某かの形で(例えば地元のレストラン等で提供するとか、盛岡の駅弁業者等が継承するとか)存続させることはできなかったのでしょうか。
また、一戸町役場は、自ら金を出すことまではできなかったとしても、そういった後継者を募るようなキャンペーンをすることはできなかったのでしょうか。
今からでも、できることはやっていただきたいです。
こうした「(役所主導ではなく)自然発生的に生まれた地域文化遺産」を存続・継承できるかどうかで、その地域の真の地力の有無が明らかになると思っています。
(平成19年4月5日)