盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(第2回)
前回に引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの、会場でボツ扱いになり闇に葬られた)レジュメ(資料1)です。
標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため、何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。
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資料1 日本弁護士政治連盟や弁政連岩手支部の「きほんのき」と実情・課題の考察
日本弁護士政治連盟は、日弁連の政策を立法等を通じ政治的に実現することを目的として昭和34年に設立され、昭和期はさしたる活動がみられなかったものの、平成期には、隣接他士業(司法書士・行政書士・税理士・弁理士など)の職域拡大に関するロビー活動に触発される形で全国の弁護士会ごとに支部設立が行われるようになり、岩手支部は平成23年(震災直前)に設立されています。
岩手支部は、発足以来、概ね年に1~2回の頻度で、県内選出の国会議員や岩手県議会議員の方々との懇談会を実施しており、基礎自治体(市町村議会など)との交流は前2者と比べて少ないものの、数年前には盛岡市議会議員の方々との懇談会を実施しています。
他方、首長(知事・市町村長)との懇談会等は、岩手では実施例がありません(他支部=他県等では実施例もあります)し、自治体行政部局との関係でも同様と思われます。
弁政連本部(日弁連会長OBなど重鎮の方々)は、定期的に主要各政党や政府(弁護士出身の政務三役、とりわけ法務省関係者など)との懇談会を行っているようです。
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冒頭のとおり、弁政連の趣旨・目的は「日弁連ないし弁護士業界が、社会正義や弁護士業務の適性確保などの見地から実現したい(すべき)政策(立法=法律・条例等の制定や行政による事業化・予算措置など)を政治部門を担う方々(議員や首長)にお伝えし実現を要請させていただく点にあります(他士業と違い?職域拡大への関心は低そうですが)。
そして、法律実務の専門家集団たる弁護士の団体である以上、単なる「陳情」に止まることなく、条例その他(政策実現のための各種文書)の起案であるとか、条例等の必要性を支える基礎事実(いわゆる立法事実)の収集・分析・報告等、政治部門(議員や首長、行政部局など)との折衝、さらには自分達の陳情だけでなく、政治部門の要請に基づく法律実務シンクタンクの受託者そしてロビー活動の従事者・補助者としての役割を果たすことが期待されていると言えます。
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が、いち末端窓際会員としての私が垣間見てきた限り、岩手支部は言うに及ばず弁政連本部や他県支部などが、その役割を現に果たしているのか判然とせず、実情としては各種議員さん達との単発的な(悪く言えば、その場限りの)懇談会等を続けているだけのように感じています。少なくとも、個別の陳情について、条例等であれ議会の決議等であれ、政策として実を結んだという話を聞いた記憶がありません。
また、岩手支部の過去の岩手県議さんとの懇談会では、関心をお持ちの議員さんが多いテーマ(震災対応、養育費など)を取り上げた際は、多くの質問等があって盛り上がったものの、その議論等が「その後に具体的な政策として生かされた」という話は存じません。
まして、多くの議員さん方に馴染みの薄いテーマ(ご自身の社会生活や議員活動で現に取り扱ったり接することが乏しい事柄。例えば、司法制度改革、刑事法制等)については、担当弁護士の資料に基づく説明を聴取等いただく以上のやりとりは無かったと思います。
所詮、相手(議員側)が強い関心を抱いているわけではない事柄の陳情(説明)ばかり繰り返しても、相手が関心のない(自分=話し手しか関心がない)話題で異性を口説こうとしているようなもので、上手くいくはずもありません。私が今回「内舘市長の政策を取り上げては」と話したのも、まずは聞き手が関心を持つテーマを懇談の対象とすべきでは(相手のニーズに適うサービスから始めるべきでは)と考えたからでした。
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また、弁政連のあるべき活動は、いわゆるロビー活動(ルール策定交渉)や「最近話題の法的論点」について政治家の方々と懇談等することに尽きるものではありません。
地方議会の主要な目的(活動原則)は、地方行政の運営者である首長及び自治体各部局に対し、適切な自治体運営がなされるよう監視や評価を行い働きかけることにありますが(盛岡市議会基本条例2条参照)、議会ないし各議員は、住民の代表者として選挙結果に基づく地域内の民意を適切に反映させる(民主主義)と共に、多数決の横暴・濫用にならぬよう、住民全員の権利擁護や福利(人権保障)も確保する(行政に確保させる)姿勢も強く求められている(それが憲法の地方自治制度に対する付託である)と言えます。
地方自治の本旨(憲法92条)は、団体自治(中央政府からの独立)と住民自治(民意反映)が強調されることが多いものの、根底には「多数決原理と人権保障の調整」という統治機構制度の全体に流れる基本思想を含んでいる=地方政治家はその担い手であることを銘じていただきたいと思います。
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そうであればこそ、地方政府の意思決定権者(首長及び地方議会議員)がご自身の職責を適切に果たすためには、人権保障の「もう一人の担い手」たる法律実務家(弁護士等)との協働(時には緊張関係)が不可欠なのであり、双方(地方政治家と地域内弁護士)は、様々な形で、「互いに関わる(刺激し合う)こと」が求められていると言えます。
米国では国会議員が議員立法などを行うため法律専門職たるスタッフを抱えることが珍しくないそうですが、それを直ちに模倣することは無理でも、例えば、市議会の委員会活動の充実化のため、弁護士会や個別弁護士に協力を求めること(そうしたものを通じて、日常的に業務上の関わりを持つこと)はあってよいはずです。
この機会を「単なる世間話と酒飲みの会」で終わらせないためにも、これを機に、皆さんの方から「よりよい市政のため、弁護士(会)にこうしたことをして(検討して)欲しい」と働きかけていただくことを、ぜひご検討下さい。