私の「ガンダム体験」と、作品群の根底にあるかもしれない?思想と倒錯

私は、初代ガンダムのTV放送(岩手)時は小学2~3年、人気絶頂の時期が小学4年頃でしたので、当時の二戸人なら誰もが知る「おもちゃのもとみや」に入り浸るなどして、10~20種類前後のプラモデルを制作したほか、一度だけ、ささやかな作品をお店のジオラマ大会にも出品したこともあります。

新商品の入荷日の行列に並んだり、ザクレロの発売日に、下校後に猛ダッシュでお店に着くと、直前に売り切れたとオヤジさんに言われて天を仰いだことなど、様々なことを今も鮮明に覚えています。

そういえば、今、ザクレロのような冬物ブーツを愛用していますが、その代償行動だったりするのでしょうか?

ともあれ、中学になるとガンダムは一旦卒業したため、Zガンダムなど続編は一切見ること無く過ごしており、銀座の独身時代、仕事帰りに新橋のTSUTAYAに入り浸っていた関係で、子供時代の宿題をこなすような感覚で、ZとZZ、逆襲のシャアだけはビデオを借りて見たものの、以後の作品群は一切存じません。

というわけで、ガンダムとはとっくの昔に縁が切れたこともあり、先日「今、上映されているガンダムの映画が、ずいぶん評判が良いから明日行くぞ」と同行者に要求された際も、そんなの知らんよ、勝手にどうぞ、というのが正直なところでした(映画の存在自体、実質知りませんでした)。

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で。鑑賞後。

本作は、「内容は一切書いてはいけない映画」なので、何も書けませんが、私のような子供時代を過ごした方は、見た方がよいというか、見なければダメでしょう、という作品であることは間違いありません。

少なくとも、前半部分は、それが感想というほかありません。

後半部分は「事前にこれを見ればもっと面白く感じる」という作品があるのか存じませんが、後半に登場する、ある人々の雰囲気はZZに近いような、また、作品を通して出番の多い、ある意外な人物の姿は、なんとなくZZのブライトに通じるものがあるようにも思いました。

近時の庵野作品の中では、シン・ウルトラマンに近い面がある(特に前半)と感じましたが、色々な理由(自粛)で、シン・ウルトラマンよりも遙かに面白いと思いました。

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私は数年前から映画を見た際「この作品のテーマは何なのか」と自分なりに考え、時に文章として投稿するのを、ささやかな趣味にしてきました。

ガンダムシリーズは、社会が強く求める事柄(例・武器操縦)に特別な才能を持つ者(ニュータイプ云々)であれ、そうでない者(ハヤト、フラウ達)であれ、若者達を否応なく戦場に引きずり込み、活躍や苦悩などを描いた物語であるというのが、一般的な認識かと思います。

また、エリート(ニュータイプ)の恍惚や悲哀も交えつつ、優秀な者が強力に牽引する社会(最後はああなったシャア総帥)と、そうでない人々が仕切っている社会(アムロは必要やむを得ないときだけ利用され使い捨てられる)のいずれが良いのか、考えてみて下さいねという意図もあるのかもしれません。

今、養老孟司氏の「死の壁」を今更ながら読んでいますが、

「戦前は、汚れ仕事としての残酷な任務に従事する者に覚悟や責任感を持たせるためのエリート教育があったが、戦後には、そうしたものが無くなってしまった(東大云々も技術を教えるだけの組織に成り果てた)」、

と嘆く下りがあります。

私がかつて在籍した司法研修所も、業界技術の指導が重視され、上記の意味でのエリート教育なるものは見かけなかった(少なくとも及び腰だった)ような気がします。

若者が「みんな」のために戦場で苦闘する姿を描いたアニメ作品等(いわゆるヒーローもの)は、政府が「人々を死地に送り出すための物語」を宣伝するのを止めた戦後社会では、エリートであれそうでない人であれ、かつて国家が行っていた教育に代替するものとしての機能があるのかもしれません。

ジブリの鈴木氏は、富野監督は右翼だと評しているそうですが(wiki)、このように考えると、なるほどと得心する面はありますし、こうした分野に根強い人気がある根底には、そうしたものに対する人々のニーズやメンタリティ(思想)があるからなのかもしれません。

まあ、右翼?の富野監督が、米国じみた「連邦軍」の一員として、大日本帝国にちょっと似ているジオン軍を滅ぼすアニメを制作するというのも、演説狂のギレンなどが富野氏の分身だと言われているのと同様、家畜人の物語のような、倒錯めいた香ばしさを感じないでもありませんが・・・

ともあれ、こうした観点も交えて今回の新作映画をご覧になり、その意味合いを考えてみるのも、多少は面白いと思いますよ。

残念ながら、私にはガンダム(初代)を語り合う会からも大河ドラマを語り合う会からもお呼びがかからず、たまにこうした文章を書いたあとは事務所に戻って独りぼっちで書類仕事をする程度の人生しか送れていませんが、すでにご覧になった方も、今後ご覧になる方も、何かの参考にしていただければ幸いです。