債務整理費用を巡る「ぼったくり」の光景と、岩手弁護士会良心価格基準の残念な終焉(前編)

債務整理を巡っては、都会の一部の弁護士が「依頼者を食い物にしている」と言わざるを得ない非常に不適切(不合理)な業務をしていることが問題となっており、このブログでも何度か取り上げています。

ただ、昨年、それとは別に、「札付き」と言われているところではない、世間的には著名な法律事務所について、「それはあまりにもぼったくりではないか」と感じたことがありましたので、事務所名を伏せつつ、具体的な話を述べたいと思います。

私は15年前には年数件程度の大小様々な規模の破産管財事件の配点(指名委嘱)を裁判所から受けていましたが、若い弁護士さんが増えて育ってきたせいか?何年も前から、少額管財の配点が1年に1回あるかないか、という程度まで落ちぶれました。

不祥事等を起こしたわけでは全くなく、仕事ぶりで苦言を呈されたこともないので、どうしてなんだろう?と不思議ないし悲しく思う日々となっています(私だけに限った話ではないようで、それだけが救いですが・・)

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ともあれ、ここ2~3年は広告でおなじみの都会の有名事務所(以下「α社」といいます。イニシャルではありませんし、特定の事務所を示唆するつもりはありません)が申し立てた免責調査型の少額管財事件(報酬は最低額の10万円)を、年に1回だけ配点される程度になっており、昨年も同様でした。

ご本人=対象事件の破産者(若い独身男性)は、記憶では、法テラス扶助の対象になるのではと思われる程度のご収入(月20万円前後)で、ギャンブルにのめり込んでさえいなければ、同時廃止(書面審査のみで終了=管財手続にせず)になるだろうという、厄介論点のない、フツーの個人破産案件でした。

数年前にα社の申立事案を見たときは、色々と漏れが多くあれこれ追完を求めた記憶がありますが、今回はケチを付けるべき点は特段見当たらず、提出書類などを拝見しながら、昔に比べて同社の仕事ぶりも進歩したなぁ、などと感じつつ、浪費事案のお約束で、債権者集会までの毎月のご本人の家計表を出して貰いました。

すると、毎月のように同社に対する数万円~10万円もの支払が表示されているのに気づきました。

給与差押事案(差押解除のため受任直後=報酬未払でも破産申立をすべき案件)でもないのに、委任費用が未済のまま申し立てたのだろうか?(それはそれで偉いなぁ)と思って通帳履歴も読み返したら、申立前にも、それなりの支払(送金)がある。

なんじゃこれは、と思ってご本人に聞いたところ

総額で70万円、あと10万円を支払うことになっており、冬のボーナスで完済予定なんですよ。えぇ、α社さんには大変よくしていただきました。大変ですが、頑張りますっ!

という、やりがい搾取の光景にも通じるような、さわやかなご返事をいただいたので、私から、

この事件の管財人報酬って10万円なんですよ。α社の報酬は60万円になりますね。この事件でそんな報酬をとるなんて聞いたことないです。ウチに限らず、岩手の大概のセンセイなら25~30万円前後だと思いますよ。

と言ったら、崖から突き落とされたようなご様子で、絶句していました。
(管財予納金額の説明は受けていないようでした)

さすがに、ぼったくられてお気の毒ですね、などと追い打ちをかけるようなセリフは自粛しましたし、現在の実務の実情からは、α社に公序良俗違反等を理由とする過払金訴訟をやるべきですよなどと唆すことも相当ではないと言わざるを得ず、まして、開始決定後の金銭授受に管財人が干渉することもできないので、それ以上余計なことを言わず、電話のやりとりを終えました。

ただ、「破産者の経済的更生も役割の一環とする」はずの管財人として、何もしなくてよいのだろうか?という疑問はあり、裁判所に、定型書面群と共に上記のやりとりがあったことを別途報告しましたが、予想どおり、「ウチは知らんよ」との残念な返答がなされたのみでした。

この経験(案件)をそのまま放置してよいのだろうか?というのが、今回の投稿のきっかけであり、考察やその後の対応については次号(中編・後編)で述べます。