債務整理費用を巡る「ぼったくり」の光景と、岩手弁護士会良心価格基準の残念な終焉(中編)
個人の債務整理(自己破産)を巡り、担当管財人として偶然知った申立代理人(依頼先弁護士。著名事務所)の費用(60万円?)について「これは幾ら何でもぼったくりなのでは」と感じた案件に関する投稿の中編であり、以下では、報酬基準を巡るルールや考察を書きます。
この点、個人の債務整理については、日弁連(に基づく各弁護士会)の報酬基準があまりに大雑把(雑)なので、東京(弁護士会クレサラ相談センター)では20年以上前から報酬基準が定められており、着手金と報酬金という二本立てですが、総額では「任意整理は4万円、自己破産は40万円以内、個人再生は60万円以内、というのが標準額となっています(引用記事の46頁。他に引直計算の減額報酬の定めもありました)。
https://niben.jp/niben/books/frontier/frontier201805/2018_NO05_44.pdf
かくいう私も、東京時代(H13~H16頃)は「東京基準」のお世話になりましたが、当時から、依頼者の事情に応じ着手金程度の金額しかいただかずに申立した案件もありましたし、引直計算の減額はいただかない扱いにしていましたので「他の弁護士より良心的だ」として、受任中の依頼者の「借主友達」の方を紹介いただいたこともありました。
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これに対し、岩手弁護士会(消費者問題対策委員会)では、平成17年頃に債務整理の報酬基準が策定され、例えば、サラ金の一般的な任意整理は1件2万3000円(税別。以下同じ)、個人の自己破産は20~30万円、個人再生は30万円(+α)程度と定めており(過払回収報酬は裁判外の解決なら回収額の1割、訴訟は2割)、当事務所も基本的にそれに準拠してきました。
これは、当時・現在の東京の一般的な債務整理の受任費用(上記参照)の概ね5~7割の金額であり、東京などの方が聞けば驚くような?金額ではと思われます。
前編での、私の説明(前編のα社はぼったくりではとの感想)もこれに基づくものです。
ちなみに、収入等が限られている(ほとんど無い)方のための法テラス立替制度は、これよりもさらに大きく低い金額であり、当事務所の依頼者層も、それを利用せざるを得ない方が多数を占めています。
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ともあれ、上記の岩手弁護士会(消費者委員会)基準は、一般向けに公表されているのかは存じませんし、その後の内部の周知もほとんどなされてなかったものの、会内(委員会内だけ?)では相応に浸透し、策定された方々をはじめ、当時、膨大な債務整理案件を受任していた多くの弁護士が、概ねそれに準拠した価格で受任されていたと認識しています。
会員個々の価格設定を拘束・強制する趣旨ではなく尊重して欲しいという任意的なルールだったと思いますが、現在も、当事務所に限らず、概ね同水準の金額を自社サイトで明記されている方は何人かおられます(逆に、それと全く異なる=東京基準の金額を明示するサイトを見つけることはできませんでした)。
余談ながら、私が東京から岩手に戻って(登録替え)してきたのが平成16年で、東京三会の基準額よりもかなり下回るものだったので、最初は面食らったのですが、当時、あまりにも債務整理が多く、過払金案件も膨大にありましたので、
この単価で全然喰っていけるね、岩手の所得水準云々からも、この単価が正しいよね(美味しくて安い定食屋が一番だよね)
とすぐに思うようになり、以来、受任数が激減した現在に至るまで、当方も一定の微修正をしつつも基本的にその基準に準拠した価格設定を続けています(高額な費用設定をすれば誰もあんたには依頼しないでしょ、と言われそうですが・・)
ただ、こうした話(20年間に亘り、地元の弁護士が東京基準よりも大幅に割り引いた金額で同水準又はそれ以上の仕事をしてきたこと)を知る県民はほとんどいないはずです。
もともと、当時の消費者委員会の主要メンバーの方々には依頼者の重要な紹介元(供給源)になっていた、岩手消費者信用生協との協議に基づく金額だと聞いていたので、信用生協の関係者やを利用者の方々はご存知だったかもしれませんが、広く周知されているような話を聞いたことはこの20年間で聞いたことがありません。
(以下、後編へ)