少額管財を巡る死屍累々の通帳群(資源の無駄捨て事情)と口座開設費用を巡る物語
今回は、前回までの投稿のオマケとして、債務整理に関連する「個人の少額管財における管財人口座の開設に関するよもやま話」をします(業界人以外にとっては単なる雑談です)。
数十年以上前から、裁判所は破産申立事件で破産管財人を選任する際、管財人に対し必ず専用の口座を開設するよう命じ、予納金(実質は報酬の担保であり全部又は一部が管財人報酬になります)も原則としてその口座で受け入れることになります。
ただ、いわゆる少額管財事件(配当可能な財産は無いものの、本人が浪費をしていたなど書面審理だけで終わらせるべきではない=債権者集会など正規の手続をとるべきだと裁判官が判断した事案)では、予納金(10~20万円)の入金(と報酬決定後の払戻)以外に口座の利用(履歴)がありません。
ですので、私は少額管財事案を引き受けることになった20年以上前から、
たった2行だけの記帳のために口座開設するなんて、資源の無駄・冒涜だ(銀行にとっても迷惑だ)
と腹立たしく感じており(2行しか履歴のない通帳を説明書と共に延々捨てるのは、心底気が滅入るものです)、15年前から5年ほど前にかけて3回位、私が業務で使用しているメインの預かり金口座ではダメなのかと裁判所に交渉したことがあります。
が、最初の頃は問答無用で却下、最後には「仙台高裁に確認したが前例がないと言われたからダメ」というお役所丸出し?の回答しか得られず、溜息をついて終わっていました。
すると、3~4年前から、facebookで加入している「弁護士さん達が法律論を語り合うグループ」で、
東京などでは、管財人の口座開設に銀行から1万円前後の手数料が必要になった=(報酬が目減りするので)どうしよう、困った
という有料化の話題が出るようになりました。
私は、粗末に扱われていた数多の通帳(+つまらぬ手間を強いられた行員達)の怨念が、ようやくそうした形で顕現したのだろうと得心していたのですが、2年ほど前、そのグループの某先生から、
自分はこういう方法(破産専用口座という趣旨の名義で開設)で対処しており、裁判所のクレームも受けていない。ただ、裁判所が正面から認めるか期待薄なので、余計なことは言わず、履歴のみ出す形にしている
との事例報告があり、私も2年前に受任した少額管財で同じやりかたで開設し、2件目となった事件(先般まで投稿した案件=前編の事案)でも、その口座履歴(前年=1・2行を墨書し、今回=3・4行のみ)を提出し、裁判所から何も文句は言われませんでした。
私が昔、裁判所に照会した際に言われた記憶では、口座問題は管財人の本質(管理機構人格説?)が絡んでおり、そうした屁理屈で、管財人がその事件のためだけに開設(利用)する口座でなければ受入を認めない、というのが裁判所の長きに亘るスタンスのようでした。
(管理機構たる管財人が法律上は別人格?である弁護士=なかのひとは同じ=の預かり金口座に報酬審判まで10万円を預けたっていいじゃないか、と思わないでもありませんが、頭のいいひとって、頭固いですよね・・)
そのため、上記のように「1件ごとに受入+報酬審判後の払戻で終了」(その後に少額管財の配点があれば、受入+払戻、の繰り返し)に用いるなら、ギリギリセーフとの理屈になるのではと、事例報告されていた先生が仰っていたような記憶があります。
言い換えれば、少額管財(だけ)が1年に1回あるかないかという、落ちぶれ弁護士の私にとってはそれで必要十分なのですが、現在も毎月のように?次々と少額管財の配点があるであろう、支部や裁判所の覚えめでたき弁護士さん達には、役に立たないやりかたなのかもしれません。
ともあれ、前回の投稿(事例報告等)を消費者委員会MLに行った際、折角なので、私と大差ない受任頻度になっている方がおられれば、上記の方法で費用と資源の節約を図っていただくこともご検討いただければと、この件についても併せて報告しました。
すると、私の投稿自体に対しては例のごとくレスポンスがありませんでしたが、それから間もなく、裁判所が上記とほぼ同じ形での取り扱いを認める運用に変更した、との報告がML上で他の先生から送信されてきました。
そのため、私がほとんど関係しないところで、この問題が一応解決した形にはなりましたが、裁判所であれその他の方々であれ、どうせなら数年前から私の言うことにも聞く耳を持っていただければと残念に思わざるを得ませんでした。
当方は多忙その他もあって弁護士会の会務や委員会活動にほとんど関わらない状態が延々続いたため、同業者とはすっかりご縁も薄くなってしまいましたが、前回までに投稿した件では、α社の対応に非常に疑問があり何もせずに終わらせるのは正しくないと感じ、関連する事項も含め、僭越ながら、長文投稿した次第です。
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余談ながら、先般、新たにお引き受けした相続財産清算人(旧・相続財産管理人)の事件処理のため、通例に従い専用口座を開設したところ、1万数千円の開設手数料を銀行に要求されました。
これも管財口座と同様の措置と思われ、銀行の対処自体はやむを得ない(受け入れるほかない)のでしょうし、相続財産清算人は「履歴が2行だけで終わる事件」ではないので、さして異存はないのですが、相続財産管理(清算)案件は、管財事件と違って?数件に1回(以上)は「限られた報酬であまりに膨大な労力を強いられる案件」が時々あり(過去に複数回経験済み・・先日も裁判所に最後に愚痴書面を出しました・・)、大赤字事件でそうした形で実質報酬が目減りするのは心底堪えるなぁ、というのが正直なところです。
要は、裁判所が「あまりにも酷い無理仕事」を我々に強いないなどの実務改善を図ればよいのですが、裁判官と書いて「ぎゃくた(中略)しゅみのひと」と読む経験を何度も余儀なくされているので、今後も溜息ばかりの日々にならざるを得ないのでしょうね・・