人が居住する物件の競売に関するリスク
住宅ローンの支払途絶などにより住宅が競売される例は珍しくありませんし、大半は、平穏に立退が実現されることも多いのだとは思いますが、中には、居住者が退去を強硬に拒否し、競落人は難しい対応を迫られることもあります。
私自身は経験がありませんが、修習生の頃に、他の地方で修習していた方から、包丁を振り回すような居住者もいたという趣旨の話を聞いた記憶があります。
また、居住者が将来を悲観して室内で自殺するという事案も考えられますが、このような事態は、任意退去の拒否とは異なるリスクを競落人(買受人)に生じさせることになります。
例えば、他者に賃貸させる目的で、競売に出ているマンションを購入したところ、競落直後に居住者が室内で自殺するという事態が生じた場合、その物件を賃貸する際には、借受希望者にはその旨を説明すべき信義則上の義務が生じ、故意に告げずに契約をさせた場合には、借主に対し賠償義務を負うことになります。
先日の判例時報で、そのように借主の貸主への賠償請求を認めた例(契約の約1年前にそのような事実があったことを知り、解除・退去して賠償を求めたもの。認容額100万円強)が取り上げられていました(大阪高裁平成26年9月18日判決判時2245-22)。
その物件を競落・取得した貸主は、弁護士の方だそうですが、素人が競売に関わることのリスクを、改めて感じさせるものと言えるかもしれません。