ここ1、2年に読んだ本⑤~ビジネス~
前回の投稿に引き続くプチ書評シリーズの第5回です。
【ビジネス全般】
ゴジラやウルトラマンをはじめとする「特撮の神様」円谷英二の孫である筆者が、偉大な祖父の死から一族全員が経営から排除された最近の出来事まで、円谷プロの同族経営を巡り生じた様々な出来事や問題点を、ご自身の実体験をベースに赤裸々に述べたものです。
筆者は長男家の子で、英二氏の死後、最初に経営を継いだ長男の一(はじめ)氏は、良質な作品の供給と経営との両立に苦しみながら若くして夭折し、続いて社長となった次男の皐(のぼる)氏は、経営存続を重視し作品の質より既存の名作を商売に生かし(著作権・キャラクタービジネス)、制作も自前ではなく外注とする路線をとったものの、経営手法などに問題があり、最終的には不祥事などを伴う内部対立が生じ、良質な作品を作る力を失ったまま、資金繰りに窮した挙げ句、怪しげな人物が救済名目で介入し、経営権を奪取されて大企業に転売され一族が放逐されたという形で、円谷プロが辿った道を説明しています。
この本は、①経営(カネ廻りの確保)への十分な配慮もなく制作に巨額の費用を投ずることの怖さ、②経営理念・手法を異にする者同士が強力なコンテンツを持つ企業を共同或いは承継して経営する場合に生じるリスク、③独裁的な権力を持つオーナー経営者が経営権を濫用した場合に生じる問題など、企業経営に関して生じうる様々な論点を学ぶケーススタディとしても、大いに参考になると思います。
私自身、過去に、中堅企業の同族紛争を巡る訴訟や、「質の高い作品を作るものの経費を掛けすぎてしまう制作畑の方が、大企業(元請)の担当者との間で十分にカネなどの協議をせずに仕事を請け負った後、多数の作業スタッフを集めて質の高い作品を作り上げたものの、元請側の提示額を大幅オーバーしてしまい、元請とスタッフ(孫請)の双方との間で厄介な紛争が生じた事件」に関わったことがあり、そうした事件との異同を考える上でも、色々と感じるところがあったと思います。
●見城徹・藤田晋「人は自分が期待するほど自分を見てはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない」講談社
角川の大物編集長から一代で大手出版社を作り上げた見城徹氏が、サイバーエージェントの藤田晋氏と組んで平成23年に出版してベストセラーになった「憂鬱じゃなければ仕事じゃない」は、私も買って読みましたが、曲がりなりにも「たたかう仕事」をしている身にとっては色々と身に染みるところが多く、満足して読み切ることができました。
本書はその続編として刊行された本で、前作と同じように、見城氏がご自身の人生哲学的なことを短文で述べ、藤田氏が同じ分量でご自身の実体験などに基づく感想や見解を述べるという構成が中心になっています。
私の場合、facebook上でブログで書いた記事を紹介したり考えたことを即興で投稿することもありますが、実社会で様々なネットワークを持ち「らっきょが転んだ、あはは」と書いても「いいね」が怒濤のように付くような著名人や地元アイドル(?)の方々と異なり、長文を書いてもほとんど「いいね」をいただけないことも珍しくありませんので(冗長だからかもですが)、それだけに、タイトルに用いられた言葉を痛感せずにはいられないところはあります。
今後も、経営者、表現者は皆、孤独だという気持ちで、腐ることなくたった一人でも熱狂し、その積み重ねで、いつかは私なりの「ヒット」を目指そうと思っています。