マンションの管理組合の理事長が集会決議を経ずに業務委託した場合の紛争
ここしばらく、自宅等で勉強している判例などの紹介ができていなかったので(入力等の作業はそれなりに進んでいますが、紹介文まで作る余力等がありませんでした)、表題の件に関し、久しぶりに1件ご紹介します。
建物区分所有法では、マンションの共用部分の管理に関する事項は管理組合の集会の決議で決する(保存行為は各共有者が行使可)とされています(18条)。
甲マンションのY管理組合の理事長A(規約で管理者と指定されている者)が、平成23年5月に、Yの集会決議のないまま、X社に建物の調査診断等を委託しましたが、Yの臨時総会で契約を白紙に戻すと決議しました。
これに対し、Xは受託業務の完了を理由にYに代金150万弱を請求し提訴し、Aの行為は有効(権限あり)だとか、否としても権限ありと信頼した正当な理由があると主張しました。
これに対し、裁判所は、本件調査委託契約が甲の共用部分の管理に関する事項に該当するので集会決議が必要で、これを欠く行為を管理者Aが行う権限なし(管理者は共用部分等の保存、集会決議実行、規約指定行為の権限しかない。法26条)として、契約を無効と判断し(Xは代表理事の権限を定めた一般社団・財団法人法77ⅣⅤの適用を主張しましたが、退けられています)、Aが権限ありと信じたことにXに過失ありとして、表見代理(民法110条)も否定し、Xの請求を全部棄却しています(東京地裁平成27年7月8日判決判時2281-128)。
私自身はマンションの運営などに関する法的問題のご相談を受けたことはほとんどありませんが、近年はマンション絡みの紛争に関する裁判例が雑誌に掲載されることが増えており、盛岡もマンションが林立していますので、今後は、都会で生じたような様々な問題が、盛岡ないし岩手のマンションでも生じてくることは十分見込まれることだと思います。
マンションの居住者で管理組合の集会への参加はご無沙汰になっているという方は少なくないと思いますが、こうした判決なども参考に、出席して集会の様子などもご覧になっていただいてもよいのではと思います。