弁護士の相談業務に関する利益相反問題と対策~当事務所の予防策と、変わらない?弁護士会~

先月の土曜に岩手弁護士会(盛岡)法律相談センターの担当日があったのですが、前日(金)に予約票を事務所にFAXいただくよう弁護士会のご担当にお願いしたところ、予約者の方の中に、以前に対立する当事者の方から相談を受けたのではないかと思われる方が含まていました

当事務所では、その種の相談会では前日に主催者(弁護士会など)から予約者リストについてFAXで提供を受け、私が以前に相談を受けた方との利益相反の有無(対立当事者から相談を受けていないか)を当方の事務局に確認して貰った上で相談に臨むことにしてます。

そして、今回は、金曜に弁護士会から送信されたリストに、それに該当する方(以前に私が相談を受けたAさんの対立当事者と思われる方=Bさん)が含まれていたので、弁護士会にお願いして、Bさんには、後日に来ていただくよう弁護士会事務局から伝えて欲しいとお願いして、その方にもご了解いただいたという次第です。

仮に上記の措置が講じられず、そのままBさんが土曜に弁護士会(私の面前)にいらした場合、私は、その場で「すいません、Aさんから相談を受けていました(ので相談は受けられないから本日はお引き取り下さい)」と答えることになったかもしれませんし、それどころ、私がAさんから相談を受けていたこと自体を失念していた場合には、Aさん=相手方にあれこれアドバイスをしていたにもかかわらず、今度は、Bさんに、Aさんと闘うためにアドバイスを披瀝するという事態(それが、客観的には弁護士としての職業上の義務に反することは言うまでもありません)になったかもしれません。

上記の予防措置は、以前にも投稿したとおり(引用ブログ参照)、私の過去の経験から当事務所の自主的取組として行っているのですが、本来であれば、弁護士会事務局が相談の受付時に、相談者と相手方の氏名を確認し、担当弁護士が過去に相手方から相談を受けた事実がないかを確認するという作業があってよいはずです。

とりわけ、今回に関しては、Aさんとお会いしたのも(いつどこなのかは差し控えますが)弁護士会が把握可能な相談会でしたので、なおのこと、弁護士会が個別の相談事業の相談者や相手方に関する情報をデジタル情報で管理していれば、弁護士会の受付段階で「土曜の担当は、貴方の相手方から相談を受けた弁護士である可能性がある」などと把握し説明して、来所日を変更していただくよう求めることはできたはずです。

現実問題として岩手弁護士会事務局の受理体制にも様々な限界、制約があり、そのような措置を講ずることとが容易でないことは承知しているつもりですが(だからこそ当事務所として自主的取組をしています)、「べき論」としては、主催者たる弁護士会において利益相反チェックを行うのが望ましい面があることは確かだと思います。

で、何のためにこうしたことを長々と書いたかと言えば、法律相談事業にはこの種の問題(担当者が相手方から相談を受けていた可能性があるというリスク)は避けて通れない問題ですので、ごく一部の不運な方がたまたま遭遇して気の毒でしたねで終わり、というのではなく、弁護士会であれ、その他の役所等であれ、そうした問題を回避する(なるべく少ない費用・労力で)ための仕組み作りをきちんとすべきではないか(利用者側も、主催者側の尻を叩く必要があるのではないか)ということをお伝えしたかったということに尽きます。

少なくとも、添付の投稿を含め、同じ問題意識を持っている(同種の経験をした)弁護士は相応にいるはずですが、岩手に関しては、弁護士会などが組織として動きを見せているという話は何も聞いたことはなく、利用者の便宜が蔑ろにされていると批判されてもやむを得ないのではないかと思われます。

我々の基本的な掟としての利益相反ルールそのものは変えようがない話だと思いますので、それを前提に、担当弁護士側の事情など何も分からないまま相談に臨む方々(ひいてはそれに相対する弁護士)に不合理な不利益を押しつけないためのシステムづくりについて、ITによる工夫も含め、業界全体の喫緊の問題として考えていただきたいものです。

余談ですが、以前に、私も参加させていただいているFBの同業者グループ内での投稿で、「以前に相手方から相談を受けたことを説明して断るのは守秘義務違反だ。だから、理由は言えないが断りますと説明するのが正しい」と他の同業の方が投稿していたのを拝見した記憶があります。

そのような考え方も間違いではないとは思いますが、断られた側からすれば、理由も何も説明が受けられないと、理由が分からず当惑することはもちろん、まるで自身の相談が弁護士に相談すべき事柄ではないかのような誤解を招くなど、弊害が生じかねないのではと危惧されます。

先に相談したAさんにとっても「後日に同じ弁護士にBさんが相談依頼の電話等をするかもしれない可能性」は潜在的にあるべき事柄なので、Bさんの納得という意味でも、保全事件など特に潜行性の要請の強い事案を別とすれば、「相手方関係者とやりとりがある(相談を受けている)」といった程度の告知は、相談依頼を断る際の説明としては、やむを得ない(Aさんにとっても内在的制約として許容されるべき)と考えますが、皆さんは、どのようにお考えになりますか?

或いは「当方には差し支えの事情があるので余所に相談して下さい」と説明する方法なら、相談を受けたことを言わずとも上記の弊害がなく回避できると言えるかも知れませんが・・