ゲスの極みの外部不経済に泣かされたり悩まされる人々(前編)

不貞行為絡みの慰謝料請求は町弁には頻繁に相談・依頼がなされる事件の一つであり、当方も、①被害配偶者、②加害配偶者、③不貞関与者のいずれの立場でも、少なからぬ取り扱い経験があります。

紛争の形は様々ですが、「夫の不倫により妻が不貞相手の女性を訴えた例」を受任した件(どちらの立場かは差し控えます)で、夫の言動に多くの問題があり、当事者たる女性(被害配偶者、不貞関与者)の双方から見て、「夫が一番悪い」と感じざるを得ないことは時折あります。

そうした「夫の身勝手過ぎる行動で女性達が本来なら無用の争いや消耗、憔悴を余儀なく光景」を見ていると、思わず、準備書面でも、「Aのような輩を昨今ではゲスの極みというのであろうが・・」などと書きたくなってしまいます(他方、妻の不倫事案では、不貞相手の男性や夫に問題又は残念な点があったり何らかの疾患を感じる例が多く、妻自身の人格に反社会性を感じることは滅多にありません)。

さすがに、そうした非難ありきの記載は自粛していますが、無用の争いが生じた挙げ句に、私自身が関係証拠を長時間分析し、事実関係や法的構成を文章にまとめる作業のため延々と深夜労働(毎度ながらの不採算仕事)を余儀なくされる日々を送っているせいか、「この男のせいで・・」という思いをどこにぶちまけたらいいのやらと、つまらないことばかり考えてしまいます。

詳細は書けませんが、その件では男性が複数の不貞行為に及んでおり、先行の不貞行為と後行の不貞行為は一定の期間を空けて生じ、不貞関与者同士(夫と関わった女性達)は互いに意思疎通がないため、いわば異時的不貞行為とでも呼ぶべきものでした。

このような事案で不貞関与者(特に後発関与者)の責任をどのように考えるべきかという問題があり、その点は理論的に様々な論点を内包し、法律論としては相応に奥深いものがあるため、相応に機が熟せば当事者にご迷惑をお掛けしない形でブログでも書いてみたいと思っています。

或いは、そうした営みを通じて「法律実務家として勉強を深めることができる」と思える(思い込める?)ことが、せめてもの慰めなのかもしれません。

ところで、不貞行為に基づく慰謝料の問題は事案によって色々な争点がありうる一方で、これまで基本的な法的構成や諸論点を整理した書籍が出版されることはほとんどなかったようで、昨年頃に出版された中里和伸先生の本が大いに参考になります。
https://www.amazon.co.jp/%E5%88%A4%E4%BE%8B…/dp/490449721X

ただ、この本にも、上記の異時的不貞行為の問題(過去に配偶者に有責行為があり夫婦の信頼関係が損なわれたものの、同居が継続された(と見られる)場合に、後発して関与した第三者の責任の有無・程度)にはほとんど触れられていなかったとの記憶であり、さらなる議論の深化が期待されます。

ちなみに、私が担当した案件では、そうした点について色々と検討したことを書きましたが、若い相手方代理人が議論に応じることないまま、早期解決のため裁判所の勧告を踏まえて相応の譲歩をした和解で終了するという結果になっています。

ちなみに著者の中里先生には私が合格した直後の時期にご挨拶する機会があり、とても誠実な方との記憶があります。
http://news.livedoor.com/article/detail/10390500/