はれのひ事件の背後にあるものと弁護士業界の現在

「はれのひ」の騒動(被害)について、着物ビジネス業界の実情に照らし出現は不可避だったという趣旨の投稿を拝見しましたが、以下の点などは、弁護士業界もよく似ているように感じます。
http://diamond.jp/articles/-/155406

・(裁判が)ほとんど一生に一度のセレモニー

・何度も利用するわけではないので、一般の方には(弁護士の)質の良し悪しや価格の相場などがわからない。

・業界環境の激変と競争激化により、(倒産や廃業が相次ぐとまでは言えないが)業界内の所得格差が拡がっており、脱落者の中には、費用の過大請求や預かり金の横領など暗黒面に墜ちる者もいる。

・赤字仕事で窮する「昔気質の業者」がいる一方で、新規参入者(経験年数の浅い世代)の中には、派手な宣伝活動の裏側で、業界の一部に昔からある「ぼったくり気質」を引き継いだり、(低料金戦略をとっているわけでもないのに)良識ある業界人が目を背けたくなるような仕事の仕方(受任に関する悪質な選別や丸投げ、極端に練度の低い仕事ぶりなど)を平気でする者もいる。

とまあ、そんなところですが、弁護士を「普段づかい」するかどうかはさておき、法(の根底にある健全な良識や社会的責任)に対する理解と、それを踏まえて解決されるべき様々な問題がご自身や周囲に多く存在していること、そして、深刻な状況になる前に相談し、賢明な事前準備などをしておくべき必要などは、皆さんにも認識いただければと思っています。

「日常的に弁護士を利用する庶民文化」は過去も全くありませんでしたが、弁護士以外のツール(親族、近隣や会社その他の善良な有力者などを通じて帰属社会の内部で問題を解決する仕組み)なら相応にあったでしょうし、それが今や大きく崩れてしまい、弁護士をはじめ第三者(外部者)の支援を要する状態にあることも確かだと思います。

また、かつては、弁護士の助力を必要とする問題自体が生じない(内部の保護や抑圧を通じて生じにくくする)仕組みが社会内に色々とありましたが、今はタガが外れたというか、法意識の向上による真っ当な権利行使だけでなく、家庭や地域など様々なコミュニティが崩壊した結果として、法律家が関与しないと問題を処理できない(コミュニティ崩壊がなければ、自分達で問題を解決できたり問題自体が生じなかったはずなのに、それができなくなった)ケースや事柄が非常に増えていると感じます。

そうした点でも、弁護士業界の本質的な意味での「身近さ」と「アクセスや業務などに関する質の向上」が強く問われているでしょうし、当事務所も、そのことを踏まえて努力を重ねたいと思います。