平成25年の業務実績
当事務所では、数年前から、毎年1回、前年度の業務実績の概要をブログで公表しています。ご一読いただき、当事務所へご相談等に関する参考としていただければ幸いです。なお、顧問先には、これに若干加筆したものをお送りしています。
(1) 全体的な傾向
本年は、交通事故を中心に、介護や保育の際の事故も含めて、事故の被害者の方からの賠償請求事件が大きな割合を占め(交通事故では大半の方が弁護士費用保険を利用されています)、離婚関係や相続関係などの家事事件も多数手がけました。反面、本年も債務整理・倒産等の業務は、全国的な傾向と同様、数年前と比べて大幅に減少しています。
(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援
数年前から手掛けていた、「大手企業による継続的取引の不当停止に対する下請企業からの賠償請求」で、勝訴判決を受けています。これは、首都圏から岩手に進出したY社から下請取引(食品加工の業務委託)を受注したX社が、自社に何らの帰責性もないのに、Y社から突然に取引停止を言い渡されたという事件でした。
また、建設工事や食品製造委託取引に関連し、契約当事者(注文者=債務者)が誰であるか等が争点となった事件などを担当しています。この種の紛争(受注時に発注者サイドに複数の関係企業が生じ、後日に誰が契約当事者か=誰に代金請求できるか等が争われる例)は非常に多く、貴社におかれても、新規の取引を行う際に複数の当事者が生じる場合は、ぜひお気を付けいただきたいところです。
その他、企業取引に関し、ソフトウェアの利用等を目的とする契約に関する紛争への対応、「下請かけこみ寺」事業に基づく無料相談のご利用による企業取引上のトラブルに関する相談などを担当しています。
企業内部の問題では、不況(リーマンショック)で業績が悪化した企業から早期退職者募集制度や整理解雇の進め方等についてご相談を受けた例などがあったほか、法人関係者の責任追及の当否に関する訴訟も受任しています。
(3) 債務整理と再建支援
過去に比べ大幅に受任件数は減りましたが、建設会社や消費者向け物販企業など幾つかの企業や経営者の方の申立代理人や破産管財人を手がけています。
小売業の企業の自己破産の申立に関し、受任時に十分な申立費用が確保できず、当事務所の関与のもとで、閉店セール等の換価作業を進めて費用を確保した後に、裁判所に申立を行うという例もありました。
個人の債務整理については、いわゆる多重債務事案(多数の消費者金融業者から多額の高利借入をしている方)の相談を受けることがほぼ無くなった一方で、信用情報登録を回避したい方から、金融業者に約定額を完済した後に過払金を請求するご依頼が多くなっています。
自己破産等に関しては、生活保護世帯など非常に低所得又は無収入の方からのご依頼の比率が高くなっており、格差や貧困の問題を感じさせるものとなっています。
(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援
本年も、交通事故の弁護士費用保険を通じて、被害者側での受任事件が増加しており、物損のみの事案や比較的軽傷の事案、重大な後遺障害が生じた事案や死亡事故まで、様々な案件を取り扱っています。
顕著な成果が生じたものとしては、専門性の高い仕事を行っていた方が被害を受けた件で、職務の性質上、自賠責保険の認定等級よりも高位の後遺障害が裁判で認定され、保険会社の提示より遥かに高額な賠償を受けることができたケースなどを担当しています。
保育・介護事故や対人トラブルに基づく傷害事件についての賠償問題なども担当し、いずれも穏当な形での訴訟外の和解を成立させています。
また、被害者代理人として加害者の資産調査や債権執行(預金等の差押)を行う例も増えていますが、現在の執行法制の不十分さ(債権者にとっての使いにくさ、回収の難しさ)を痛感させられることも少なくありません。
(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決
借地契約の終了に付随して当事者間で紛争が生じた事件(先日、勝訴判決を受けました)や個人間の貸金などの訴訟を扱ったほか、紛争性は低いものの、関係者との直接のやりとりを避けたいとのご希望から、円満処理のための調整業務をタイムチャージ形式でお引き受けすることが増えています。
後者の例として、「競売で落札された物件に居住(賃借)中の方が、落札した不動産業者から法律上問題のある要求を受けたので、その対応や退去時の調整等を依頼された件」や「自宅の隣接地の枝が自宅敷地に伸びてきたため、隣接地に立ち入って切除をしたいが、所有者が遠方に居住し面識がないため、所在調査や連絡調整、合意書作成等の依頼を受けた件」などがあります。
また、訴訟等に発展していないものも含め、不動産取引に関する相談(購入後に敷地内に廃材の不法投棄が発覚した例など)を受けることが増えています。埋設をした者が倒産している場合(倒産企業の所有地を購入した場合など)には責任追及に大きなリスクを抱えることになります。その種の取引を行う場合は、リスク調査(当職へのご相談を含め)を十分に行って下さい。
(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決
離婚に関し、「住宅の購入の際に妻の両親が多額の援助をした場合、離婚の際に夫は妻の両親に援助金の返還義務が生じるか(贈与か貸金か)」「退職まで10年以上の期間がある場合の退職金予定額に関する財産分与の当否」などが争われた訴訟を担当しました。
また、面会交流の調整が主たる争点となり、調停の場で試験的な交流を繰り返してルールを定めるなど、きめ細かい対応を必要とする例もありました。
相続分野に関しては、「死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成された件で、遺言者の意思に反することなどを理由に遺言無効の当否を争っている事案、数十年前に亡くなった方の相続が放置されたため、数十人の当事者が生じて不動産の相続処理に様々な論点が生じている事案、親子関係の存否等が問題となった事案などを担当しています。
その他、成年後見の申立や後見人の受任案件、被災地の出身の方の相続財産管理人として被災地の土地の権利関係の処理を担当している案件などがあります。
(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務
行政を当事者とする訴訟の受任はありませんでしたが、昨年までに受任していた事件を機に、県内のある基礎自治体(町)から顧問契約をいただき、自治体の業務を巡って生じた法律問題について相談を受けています。行政(別の自治体)を相手方とする相談も幾つか受けています(区画整理関係など)。
刑事事件については、若手弁護士の激増の影響で国選事件は大幅に減りましたが、私選弁護の受任が増え、長時間の従事を必要とする複雑な事件や起訴されずに釈放され短期間で終了する事件まで、様々な案件を扱っています。
その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(大船渡の法テラス気仙などの相談担当のほか、県内企業の風評被害を含む原発事故に起因して被った被害の賠償問題を対象とする無料相談制度などを担当しています。)。