ケージ監禁死事件と「里ジジババ」が子供達を救う日
私は購読中の判例雑誌に掲載された判例等の要旨を法令ごとに分類しエクセルに入力する作業を10年近く続けているのですが、判例タイムズにこの事件(幼児をペット用ケージに閉じ込めて死亡させた監禁致死等で起訴)の判決が載っているのを見つけました
http://www.sankei.com/affairs/news/160225/afr1602250029-n1.html
要旨ですが、両親A1とA2が次男Vを疎んじて外出時等にラビットケージに閉じ込めるなどしていたところ、Vが夜間に叫んだためA1がVにタオルを咥えさせて両端を後頭部で結び窒息死させ、荒川(or富士樹海。発見できず)に遺棄した監禁致死・死体遺棄で起訴された事案であり、AらはVの死亡を装って保険金・生活保護費を詐取したとして、懲役2年が確定済みとなっています。
Aらは監禁と死亡との因果関係や共謀を争いましたが(監禁とタオル結束を分け、A1は監禁+傷害致死、A2は監禁のみと主張)、裁判所はケージへの監禁とタオル結束が相まってVが死亡したと認定し、結束行為はAらの共謀による監禁の一環と評価して両名とも監禁致死が成立するとし、A1を懲役9年・A2を同4年としています(殺害行為の関与の有無などで差が出たもの)。
このような「親(保護者)の資質や生活環境に照らし子の養育などを健全に行うのが難しいと予測される家庭」については親権剥奪(子の保護)などの強制的な措置がありますが、当然ながら滅多に行われるものではなく、結局、悲劇の未然防止としても十分に機能しているとは言いがたい面はあるかと思います。
そこで、日常的な方策として、地域の行政機関の委託により地域の良識ある第三者に対し、当該家庭(幼児等を養育している家庭)に一定の関わりを持たせる制度・慣行(平時はカウンセリング等の支援、緊急時には監視や通報など)を構築してもよいのではと思っていますが、そのような議論が盛り上がらないことを残念に感じています。
この件では加害両親は被害児に生活上の問題行動(奇行)があったと主張しており、量刑上の考慮はともかく、彼らには対処できないような発達障害があったのかもしれませんので、そうした点でも「親だけで育てることができない子を地域が健全な態様で引き取る」仕組みが必要だと思います。
このような極端な事例ではないにせよ、日々、残念な相談を多く受けているしながい田舎の町弁の一人として、かつては多少は存在したはずなのに今はほとんど見かけない地域の共助(弱者保護等を目的とするソフトな相互扶助と相互監視)の再構築が、社会の喫緊の課題の一つではないかと感じています。
近時、児童虐待の対策として、里親制度の構築が取り上げられているようですが、里親(第三者)のもとで生活させる=実親の養育を全面否定せざるを得ないのは極めて例外的な場合でしょうから、そうした極端な例だけでなく、実親が様々なハンディを負っている場合に地域内に良質な里ジジ・里ババ・里オジ・里オバが登場して色々とフォローできるような仕組み・慣行があればと思います。
本件や大阪の2児放置餓死事件に限らず、「自分達だけでは子を育てる力がない残念な環境・境遇或いは能力・資質のもとにある親たち」は多く存在するでしょうから、子供達がそうした親などの犠牲にならないよう、公的な介入や第三者の関与・支援の機会を拡大することが急務ではと強く感じます。