北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

〒020-0021 岩手県盛岡市中央通3-17-7 北星ビル3F

TEL.019-621-1771

岩手・北東北など

弁政連岩手支部と県内の議員さん方との懇談会

2月20日に弁護士政治連盟(弁政連)岩手支部と県内の議員さん方との懇談会があり、参加してきました。

弁政連とは、事実上、弁護士会が作った政治運動?的な組織であり、同種のものは弁護士に限らず各士業で作られているものですが、他士業が自分達の職域拡大のため熱心に活動しているのに比べ、弁政連はそうした活動に積極的ではなく地元の議員さんとたまに懇談をする程度の活動に止まっている例が多いようで、岩手もその典型という感じではあります。

今回は、まず、総会の時間を利用し弁政連の会員でもある階猛議員から現在の国政に関する報告と題して階議員が取り組んでいる幾つかの事柄(憲法改正や財政、特定秘密法など)について、同議員の見解表明を含む問題意識に関する説明がありました。

続いて、各党の国会議員や県議会議員の方々が15名ほど出席された形で懇談会が始まり、震災問題が最重要テーマとして取り上げられ、陸前高田で活動する在間文康弁護士が、再建支援金(住宅)、援護資金貸付、各種給付金、災害公営住宅、災害関連死、被災ローン、造成地の瑕疵など、様々な話題についてご自身が取り扱った相談・受任事件などに基づく詳細な報告を行い、それに対し議員の方々が質問や意見を述べるというやりとりがあり、これで予定時間の大半を使った形になりました。

私自身は、在間先生が赴任される以前は陸前高田に当時あった相談センターなどに月1回以上のペースで赴いていたのですが、当時は他の被災地も含め、最も相談を受けていたものが「義援金等の受領者(世帯の代表者)が家族に配布せず独り占めしている」という内部紛争的なものでした。

そのため、当時から、立法?問題として世帯主に給付する形式はやめるべきで、内部的にも分配ルール等を定めるべき(不当な独り占めは不当利得返還請求等もできるものと明言されるべき)と感じていましたが、どういうわけか当時も今もこの話を問題にする方が誰もおらず、その点は今も不思議に感じています。

ただ、懇談の中で議員さん側から「賃貸アパートの貸主として生計を立てている人は、借主が支援金を受給するのに、自分は何も貰えず建築ローンのみが残って立ちゆかなくなった」という発言がありましたが、これは私も震災直後に宮古市などに赴いた際に何度か聞いた記憶があり、懐かしく感じました。

その際は、「多くの人が問題意識を共有しているので、何らかの制度が定まるまで待ってみては」とお伝えしていたのですが、結局、私的整理ガイドライン(いわゆる被災ローン減免制度)による銀行債務の一部免除以外にはさしたる制度ができていないように思われ、その点は残念に感じています。

他に、法曹養成制度(主に修習生の困窮)について弁護士側から議員さんに改善への後押しを求める陳情的な説明がなされていましたが、そこで時間切れとなり、私が準備段階の会合で取り上げて欲しいとお願いしていた「包括外部監査人など、政治部門(行政・議会)への地域の弁護士の関与の機会の拡大」というテーマには触れていただけませんでした。

以前にも書きましたが、私は「大雪りばぁねっと事件」に関する一連の民事訴訟に関わっている唯一の「岩手の弁護士」で、要のポジションにある方の代理人をしていることもあって、事後処理絡みを中心に様々な「残念な事情」を把握しています。

それだけに、できれば、守秘義務の範囲内でそうした話も交えつつ未然防止に関する制度改善や地域の弁護士の活用などの必要性を説明することができればと思っていただけに、残念に思いました。

そもそも、私が弁政連に加入したのは、狭義の政治運動(反政府闘争の類や業界権益絡みなど)に関わりたいからではなく、町弁業界が新人弁護士激増の受け皿となる「活動領域の拡大」(ペイに長期戦が必要なものを含む広義の「仕事」の増大)ひいては、それを通じた「地域社会への法の支配(法の正義を中心とする日本国憲法の理念を生かした社会形成)の浸透」について地道な努力をする必要に迫られており、地元の政治関係者への支援要請はそれに対する真っ当な方策ですので、そうした営みに汗をかきたいという理由からでした。

ですので、震災絡みであれ他の事項であれ、地域の様々な社会課題を取り上げ、かつ、「望ましい解決のあり方」を提言するというだけでなく、その解決の過程に「地域の弁護士を、このような形で活用してほしい」との提言、陳情を含むのでなければ、弁政連がそれを行う意義は乏しく、私が関わる必要もないと感じています。

そうした意味では、今回の懇談会が、上記の包括外部監査人のような「地元弁護士の仕事を増やすための陳情」よりも、修習生の窮状云々の説明という「業界への予算を増やしてほしいとか、弁護士の数を減らすべきという主張に親和性のある陳情」を優先させたことは、その文脈に照らしても残念な感じがしてしまいます。

また、この種の会合には常のことではありますが、様々な方が多様な論点や問題意識につき意見を仰るものの、百家争鳴して話は全く進まずという感は否めず、その点も残念に感じました。

根本的には、上述のような「弁政連(岩手支部)とは何をする組織なのか」という定義付けの問題があるのですが、多くの団体や支持者などと関わりを持たなければならないという意味で、時間が限られているであろう議員さん方との懇談の機会を持つにあたっては、個別実務に関する問題意識を説明するだけでなく、その改善を具体的に実現するための法律や条例などの案(改正を含む)や現行規定の具体的な運用案のような形(それを議員さんがそのまま議会等に持って行き、立法活動や議会からの行政への要望という形で伝達できる)で提言し、実現過程の協議まで繋げるような工夫が必要ではと思いました。

もちろん、問題意識そのものが浸透していない論点では意識喚起の説明だけで精一杯にならざるを得ないでしょうが、震災絡みの論点の多くは問題意識そのものは異論なしという話も多いでしょうから、なるべく各論(改善案)の話を進めていただければと感じています。

ところで、弁政連(岩手支部)は「不偏不党」という政治運動と真っ向から矛盾するような?スローガンを掲げていることもあり、開催にあたっては県内の国会議員と県会議員の全員の方々に参加依頼をしており、出席予定者に関しては、概ね各党の方々が参加を表明されていたのですが、どういうわけか、自民党系の県議さん(予定者3名)が当日は全員欠席となり、高橋ひなこ議員は参加されていたもののすぐに所用?で退席されてしまったので、結果として、階議員をはじめとする民主系と主濱議員をはじめとする小沢氏ないし達増知事系、旧地域政党いわて系列(いわて県民クラブ。平野議員は欠席でした)、あとは共産党と公明党と無所属の県議さんのみという出席者構成になっていました。

私は弁政連の立ち上げのときから参加しており(力のない窓際会員ですが)、私の記憶でも、議員さんとの懇談会は例年とも民主系列など(国政野党)の方は割と多く参加されるのに対し、自民系列の方の参加はいつも少ないという印象が強く、弁政連側のポリシー(特定政党に偏する支持はしていない)という点に照らしても、残念に感じています。

階議員の本来の職業が弁護士(しかも岩手会所属)であることや、その関係で弁政連側も階議員(や系列の民主県議の方)と懇意にされている方が割と多いように見える(逆に、自民系の国会議員さんや県議さんと親しくしている方は私の知る限りではあまりおられない?)ことも、そうした背景にあるのかもしれません。

ただ、旧地域政党いわて系の方々も例年よく参加されているように感じますので(平野議員も今回はたまたま急用とのことでした)、その点はよく分かりません(単純に、自民系の県議さん達は地元の弁護士は相手にしていないということなのでしょうか?)。

40年も前の話で恐縮ですが、私の祖父は自民系列の県議(二戸選挙区)として1期を務めており、残念ながら2期目で落選して引退になったのですが、どこまで本当かよく分からないものの、福岡工業高校を誘致したのは祖父だとか政治に手を出したせいで家業が倒産寸前まで追い込まれたとか、子供の頃は、そうしたことで色々な話を聞いたことがあります(なので父は政治に関わることを強く嫌っていました)。

それだけに、私自身が選挙と関わることはないでしょうけど(人気投票には適性なさすぎですし)、地域のニュートラル(やや保守系のノンポリ無党派層)な法律実務家として、与野党を問わず地域の課題抽出や立法過程などに汗をかいて欲しいと求められれば、お役に立ちたいとの思いを募らせつつ、そうした機会に恵まれないまま鬱屈した日々を過ごしているというのが正直なところです。

今回の懇談会も引き続き議員さん方との懇親会があり、上記の観点から地元の県議さんで私を必要として下さる方にお会いすることができればと思っていたのですが、妻が外せない飲み会があるということで、残念ながら弁護士側では私だけが不参加となり、この種の話がある際の通例として夕食は近所のスーパーで家族の割引弁当を買いに行くというトホホな夜になりました。

兼業主夫の宿命なのか高校進学時の呪いなのか分かりませんが、弁護士会であれJCであれ議員さん方であれ、もっと盛岡や岩手の方々と距離を縮める機会があればと思いながら、どういうわけか私には引力よりも引き離そうとする力のほうが強く働いてくるような感じがあり、そういう星の下に生まれたのだろうかと時に悲哀を感じながらも、まずは自分にできることを地道に模索し続けたいと思います。

ともあれ、弁政連関係者の一人として、ご参加いただいた議員の皆様に御礼申し上げます。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題⑥質問事項その5(アセス、地球温暖化、行政連携など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の5回目(最終回)として、県に提出した質問事項のうち、ILCに関するものなどを掲載します。

第7 その他、環境法全般(公害紛争、アセス、教育ほか)について

◎ 国際リニアコライダー(ILC)とアセスメント等について

本県及び宮城県が誘致に向けて盛んに活動している国際リニアコライダー(ILC)を巡っては、地下が主とはいえ巨大な施設であり高度で未知の研究の実践を伴うことから、ILCが建設された場合の建設中や操業時、稼働終了後に地域の環境に何らかの深刻な負の影響が生じる虞もあるのではと危惧する声も見られますが、それに対する対処については、報道などでもほとんど取り上げられることがないように感じております。

この点、大規模な公共工事などについては、環境に及ぼす影響を事前に調査・公表し住民に意見表明の機会を提供する制度として、環境影響評価法に基づく環境アセスメント制度がありますが、ILCは同法の対象事業には含まれておらず、ILCの設置が決まった後に、設置主体たる国際機関がアセスメントを実施するとか、それに先立ち貴庁が環境の影響に関する何らかの事前調査を行うとの報道を見かけるに止まっています。

実施されるアセスメントが、環境影響評価法に定めるアセスメントと同等以上のものであるか、県のものは岩手県環境影響評価条例に基づくアセスメントを実施するのか、住民には参加・関与の機会が与えられているのか、そもそも(設置するか否かの判断の前ではなく)設置が決まった後にアセスメントを行うということ自体が適切と言えるのか(この点は同法についても同様で、しばしば批判される点と認識しています)、推進の立場を強く表明している貴庁が実施するアセスメントに実効性があるのかなど、幾つかの素朴な疑問を感じないこともありません。

アセスメントに限らず、ILCにつき県民なかんずく建設予定地の周辺住民の理解のもと生活環境上の不適切な影響ないしリスクの発生を防止し安全な設置や運営を確保するにあたり、貴庁において特に課題として取り組んでいることや現行の法規制に関し改善を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

第8 地球温暖化問題について

○ 各種バイオマスエネルギーの普及などについて

地球温暖化問題が本格的に取り上げられるようになった十数年ほど前から、バイオマスエネルギーが注目され、近時も藻谷浩介氏の著書「里山資本主義」で国内外の取り組みが紹介されるなどしていますが、現在のところ代替エネルギーとしての利用等は僅かな比率に止まっているように思われ、昨年は木質ペレット製造等を営む県内の企業が破産を余儀なくされる事態も生じています。

広い山林を擁する本県における各種バイオマスエネルギーの普及などに関し法的な課題として貴庁が感じていることなどがありましたら、ご教示下さい。

○ 民生部門のCO2排出減の対策としての規制的手法について

地球温暖化問題については、これが盛んに取り上げられていた時期(震災前など)には、経済的手法(ガス発生抑制による事業者の受益など)のほか、規制的手法(店舗の深夜営業規制をはじめ何らかの電力利用規制をするもの)についても議論があったと思われます。

現在も民生家庭部門と民生業務部門で排出量の増加が顕著とのことですが(当県平成26年環境報告書8頁)、規制的手法の導入やそれに類する自主的取組みなどに関する県内世論の把握ないし貴庁のお考えについてご教示下さい。

第9 公害・環境問題などに関する当委員会ないし当会と県との協働などについて

◎ 公害・環境に関する県組織と弁護士会(当委員会)との連携について

県民生活の向上などを目的とした貴庁と当会との協働に関しては、例えば、岩手県民生活センターと当会消費者問題対策委員会、岩手県福祉総合相談センターと当会高齢者・障害者支援センター委員会などが連携して各種相談事業を行うなどの取り組みが代表例として指摘できると思われますが、公害・環境に関する分野(生活環境上の被害などを含む)については、これまでそのような取り組みは特段なされていなかったと思われます。

当該分野に関し、貴庁と当会が消費者分野や福祉分野のような何らかの連携・協働関係(例えば、公害・環境・生活被害に関する相談企画ないしその支援、規制基準などの照会対応・調査の協力など)を持つことができるか、仮に持ちうるとすれば、その窓口となる部署はどちらになるか(環境生活部か、岩手県環境保健研究センターか、各広域振興局か、それ以外か)、実施にあたり生じうる課題など、この点に関する貴庁のご意見をお聞かせ下さい。

◎ 県の審議会などへの委嘱について

現在、公害・環境分野に関する貴庁から当会会員への各種役職の委嘱については、公害審査会の委員として選任されている会員がおりますが、他には(当委員会としては)把握できておりません。

弁護士大増員政策の影響などから、本県で活動する弁護士の多くが公害・環境分野に限らず従前に弁護士の関与が乏しかったとされる様々な分野への従事を希望していますが、公害・環境分野における貴庁の業務ないし活動との関連で、弁護士の関与や就任などが望ましいと感じているものがあれば、お聞かせ下さい。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題⑤質問事項その4(湿地・自然災害・ダム、化学物質など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の5回目として、県に提出した質問事項のうち水環境に関するものなどを掲載します。

第5 水環境・需給政策などについて

○ 湿地・湿原の保全について

現在、県内の幾つかの湿地・湿原が面積減少ないし消滅の問題を抱えていると言われており、近時の報道では、山田町の船越半島にある小谷鳥湿地の農場(圃場)造成による消滅(岩手日報平成26年4月9日論壇)、春子谷地湿原の土砂流入による面積半減(朝日新聞本年1月8日)などが指摘されています。

湿地・湿原については、生物多様性をはじめ生活環境の保全等の見地から多くの重要な機能を営むものとして、ラムサール条約をはじめ世界的に保全を重視する傾向が見られ、沖縄県の泡瀬干潟のように開発を巡って訴訟が生じる例もありますが、本件では全国的に著名な湿原などが見られないせいか、湿地の保全や利活用等について話題になることは少なく、上記のように僅かに残る小規模な湿地群も多くが消滅等の危機に瀕しているように思われます。

湿地保護・保全に関する貴庁の対策に関し特に紹介できるものや法的な検討を要する論点などがありましたら、ご教示下さい。

○ 豪雨被害などに関する原因や対策について(開発行為などの問題)

平成25年夏に県央部で大規模な豪雨災害が生じるなど、近時は他県を含め、内陸部でも水に関する自然災害が生じていますが、平成26年に広島市で生じた土砂災害のように、もともと災害リスクが高い土地に宅地開発がなされたこと自体に問題があったのではと感じる例も見受けられ、訴訟等に至る例も生じるのではないかと思われます。

豪雨災害に限らず、先の震災を含む自然災害による被害に関し、開発行為などがなされたことで被害が拡大したと見られる例や、そのことを通じて開発行為の規制(による既存の自然環境などの保全)の必要性を感じた例、現に今、その教訓を生かして取り組んでいる例などがありましたら、ご教示下さい。

○ ダム開発(脱ダム問題など)について

我が国ではダム開発を巡り数十年に亘り多くの反対運動などが生じ、近年では八ッ場ダム建設などを巡って事業の不要性や公金支出の違法性を主張する住民訴訟が生じたほか、一部の県知事や民主党政権が「脱ダム」を唱えて中止等に及ぶ例もありました。

他方、本県ではそうした動きはほとんど見られず、気仙川流域の津付ダムが平成26年に中止の発表がされたのを除き、胆沢ダムや現在も工事中の簗川ダムなど、大きな反対運動や訴訟等が生じることなく粛々と開発や建設が進んだ(進んでいる)ように見受けられます。

他県と本県とでそうした違いが生じた原因・背景のほか、ダムをはじめとする周辺の自然環境などに大きな影響を生じさせる大規模な公共事業に関する現在の法制度について特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

第6 化学物質・食品安全などについて 

○ 科学技術の発展に伴う新種の公害・環境被害について

かつて社会問題として注目されたシックウハウス症候群やアスベスト問題、近年に注目されている電磁波問題(携帯基地局周辺の被害申出)、風力発電やエコキュートなどに関し言及されている低周波騒音、農薬及び遺伝子組み換え食品など、科学技術の進展に伴い新たに開発される、化学物質をはじめとする身体に有害な影響を及ぼしうる物質等の利用に関して、県内で顕著な被害申告などが寄せられる例がありましたら、貴庁等で行われている対処、対策なども含めてご教示下さい。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題④質問事項その3(自然保護、景観など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の4回目として、県に提出した質問事項のうち、自然保護、景観に関するものなどを掲載します。

第3 自然保護(自然・生物保護、生態系、自然公園等、森林等の保全)について

○ シカ等の食害対策について

近時、五葉山や早池峰山などのシカ等の食害(農地や稀少植物の被害)が頻繁に報道され、狩猟従事者の減少や気候変化などが原因として指摘されているように見受けられます。野生生物保護と生態系や農林業被害の防止などの両立という観点から、現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

第4 大気・都市環境・生活環境・アメニティなどについて

○ 防潮堤建設による弊害(景観の毀損など)について

現在、本県沿岸被災地の各所で高さ十数メートル規模のコンクリート製防潮堤の建設が進んでいますが、防災等の実効性の存否や海岸が視界から外れることなどによる弊害(防災意識、漁業関係者の不都合、生態系などへの影響のほか地元民の海と共に生きる意識の減衰など)、景観問題などについて住民等の議論や関心が喚起され、政策形成等における住民参加のあり方や、急ピッチで建設が進んでいることの原因の一つとされる国の補助金支出のあり方なども問われているように思われます。

防潮堤の建設問題に関する環境生活部の関わりと、防潮堤の建設等に関して環境の保全(環境基本法)や良好な景観形成の促進(景観法)などの観点から現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

○ まち並みや農山漁村の景観等の保全について

近年、城下町・宿場町・門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存や復元などが注目され、現在は農山漁村の自然及び文化的景観を含め、地域の文化的アイデンティティへの貢献や外国人観光者・移住者なども視野に入れた地域固有の景観等の保全や利活用が求められていますが、他方で、地域内の著名建築物などが道路開発により失われたりマンション等に建て替わるなど、個々の地域内では保全よりも喪失に関する話題も珍しくなく、被災地の防潮堤も同様の問題を孕んでいるように思われます。

まち並みや農山漁村の景観等の保全或いはこれと私権とを調整する観点から、現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

○ 生活環境に関する新種の被害・紛争について

昨年は、大都市圏では住宅密集地に保育所を建設し近隣住民から騒音問題の苦情が出るなど、生活環境に関する紛争に関し、従前とは異なる新たな問題が取り上げられるようになってきたと思われます。

各種の生活環境(騒音、振動、悪臭、水質汚濁など水利用、土壌汚染など土地・地盤の利用ほか)に関し、ここ数年の貴庁の業務などを通じ、本県内で特に問題が生じていると感じる事項(分野・紛争類型)や現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

 

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題③質問事項その2(廃棄物関連など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の3回目として、県に提出した廃棄物関連などの質問事項を掲載します。

第2 資源循環・リサイクル・廃棄物関連について

○ 新クリーンセンターについて

昨年、いわてクリーンセンターの後継となる県の関与に基づく産業廃棄物最終処分場の設置について、八幡平市平舘地区を候補地とすることが定まったとのことですが、操業開始までに必要となる作業や権利関係の調整などに関し、法的な観点から、現在、貴庁が特に課題として把握又は認識されている点をご教示下さい。

○ 軽米町の産業廃棄物最終処分場問題について

軽米町で建設が計画され地元住民などの反対運動がなされている産業廃棄物最終処分場について、報道によれば、昨年末、事業者が貴庁に施設の設置許可の申請書を提出したととされています。

報道では、反対住民側は予定地が河川に隣接することなどを理由に設置又は維持管理に関する基準を満たさないと主張しているように見受けられますが、当該問題で貴庁が把握されている争点の概要などをご教示下さい。

○ 廃棄食品の転売問題と予防策について

先般、愛知県の産廃中間処理業者が大手カレーチェーン店から処理を受託した廃棄カツ類を処理せず他社に有価物と称して転売していたとされる事件が発覚していますが、本県内では同種事案を防ぐため実効性ある特別な取り組みがなされているのでしょうか。未然防止はもちろん、排出・生産抑制も含め、導入の必要があると考える制度などがありましたら、お聞かせ下さい。

この点に関し、日弁連では平成22年に本県で開催した人権擁護大会において、電子マニフェストを通じて廃棄物処理情報を追跡・把握するシステムの導入を提言していますが、そうした制度があれば、相当の期間内の最終処分業者への焼却灰の埋立委託の有無を委託主である排出事業者に報告する作業などを通じ、この種の偽装・横流し事件を防止できた可能性もあると思われます。併せてご意見をいただければ幸いです。

○ 処理未了の腐敗廃棄物を残して倒産する企業への対策について

平成26年に県内で家畜の死骸や動物性残渣などの処理を行っていた企業(東北油化㈱)が自己破産を申請し、事業所に残置されていた廃棄物の処理が問題となりました。報道によれば平成27年中に完了したとのことですが、仮に、処理費用を自ら賄うことができなかった場合、事業所の悪臭問題等の事情から行政代執行を余儀なくされる事態もあり得たのではないかと思われます(報道によれば、当初は、廃棄物処理の費用の捻出が可能かも危ぶまれていたように見受けられます)。

同種の問題の予防のほか処理業者の倒産による原状回復の公費転嫁の問題の対処として、現在、貴庁が取り組んでいることや制度或いは事業者側の実務の改善などを求めている点がありましたら、ご教示下さい。

○ 県境不法投棄事件の総括と跡地利用について

県境不法投棄事件については、廃棄物及び汚染土壌の撤去等については作業の大半を終えているとのことですが、産廃特措法に基づく特定支障除去事業の開始から現在まで、原状回復事業の遂行にあたり、法制度面で特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

また、排出事業者への責任追及など同事件に関してこの10年強の間に貴庁が取り組まれてきたことで、現行法の不備ないし限界として特に改善を希望する点などがありましたら、お知らせ下さい。

また、不法投棄現場の跡地利活用については青森県では同県サイトや地元紙などで植樹祭などが紹介されているのに対し、当県では報道などで取り上げられることがほとんどないように思われます。この点に関し貴庁の方針や従前の取組みなどで、特筆すべき点がありましたらご教示下さい。

○ 震災(大津波)に伴う災害廃棄物の処理と広域移動について

東日本大震災津波により生じた災害廃棄物については、国の支援により仮設焼却炉が設置されたほか、一部の廃棄物が遠方に搬出される(広域処理)こともありました。他方、広域処理については、受入側の住民に原発被害に付随する非難のほか処理費用そのものも割高ではないかとか仮設焼却炉についても短期間で稼働を終了させることなどに税金の無駄ではないかと主張する意見もあったように思われます。

一連の作業などを通じ、貴庁において特に制度改善を要すると感じた点、仮に同種災害が生じた場合に異なった運用を要すると感じた点などがありましたら、ご教示下さい。

○ リサイクル分野などに関する近時の論点について

その他、廃棄物処理、発生抑制、リサイクルなどの分野に関する県内の事業者の活動などについて、特に問題があると感じている例などがありましたら、お聞かせ下さい。近年は、食品廃棄物や家畜排泄物などからバイオマス発電等を行う事業なども開始されていますが、環境分野の法令との関係で問題となる事例や現行法制に改善を要すると感じる点などがあるようでしたら、併せてお聞かせ下さい。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題②質問事項その1(エネルギー、原発事故被害など)

前回に続き、今回から県庁との懇談会で使用した質問事項を掲載します(少し表現を修正しています)。

質問事項は、当委員会で今後の課題として取組みを検討・希望している事項の一覧を列挙したものですが、当日の懇談事項として特に優先させたものにつき、◎を付しています。

今回の目的は、県庁の特定の活動に疑問等を呈して議論を挑むことではなく、現在の様々な課題に関する県の取り組みを拝聴しつつ、現行の法制度の内容や運用に関する問題意識(改善を要する点やそのあり方)を質問するということに重きを置きましたので、問いの仕方もそうしたコンセプトに基づくものとなっています。

ですので、個々の質問内容については、食いつきが足りないというご批判もあるかもしれませんが、それはそれとして、県内で公害・環境などの分野に関心を持って取り組んでおられる方々に参考にしていただき、弁護士会との連携なども検討していただければ幸いです。

第1 エネルギー問題と原発事故被害(汚染廃棄物問題を含む)

◎ 自治体の原子力紛争解決センターに対する賠償請求

原発事故の被害について、貴庁及び県内自治体が原子力紛争解決センターにこれまで申し立てたADRについて、損害発生や因果関係の認定に関し、特に問題となった点(東京電力が強く争ったものの和解案で認められたものや貴庁が強く勝ち取りたかったものの退けられた点など)がありましたら、ご教示下さい。

◎ 岩手県内の民間被害などに関する実情と県の把握

原発事故の被害については、平成25年に原子力損害賠償紛争審査会から風評被害に関する第三次追補が公表された際、貴庁の主催などにより県内の事業者向けの風評被害の賠償請求に関する説明会も開催されたものの、その後は賠償請求の問題については貴庁らのADRを除き報道で取り上げられることがほとんどなく、被害及び賠償請求等に関する実情を掴みかねるところがあります。

当会内でも、当委員会や被害対策弁護団などが窓口となって無料相談事業や事件受任を行っていますが、件数としては大きなものとなっていません。

被害状況や賠償等の実情の把握に関する貴庁の取り組みや今後の課題などに関し特筆すべき点がありましたら、お聞かせ下さい。また、県内の民間被害(事業者・個人、県民・避難者などを問わず)の把握に関し、何らかの調査(アンケート等を含む)を行っている場合は、その結果などをご教示下さい。

○ 汚染廃棄物の処理や保管について

放射性物質に汚染された廃棄物の処理などに関する問題について。本県では8000Bq/kgを超える指定廃棄物の量は環境省サイトによれば475t(焼却灰が200t弱、その他275t)とされ、宮城県などと異なり最終処分場の設置も予定されていません。他方、焼却時に8000Bq/kgを超えると見込まれる汚染稲わら、牧草について、他の廃棄物と混合焼却して焼却灰を埋め立てているとの報道がありますが、混焼については有害物質の拡散であるとして焼却も含めて批判し、線量減衰まで焼却せず長期保管すべきとの意見もあると聞いています。

また、日弁連の平成27年の報告資料(人権擁護大会第三分科会の基調報告書156頁)によれば、宮城県では8000Bq/kg超の稲わらでも指定廃棄物の指定申請をせず県が厳重に管理するものがある一方、基礎自治体が国の委託で保管している指定廃棄物についてビニールハウス内で仕切り板等のない状態で置かれている例もあるとされています。他にも、埼玉県は指定申請をせず全て県が保管しているとの報道(日経新聞平成26年9月29日)もあります。

県内における指定廃棄物の処理(埋立)や混焼、焼却前の汚染廃棄物の保管などに関し、以上を踏まえ、貴庁の取り組みとして特筆すべき点や法的な課題として把握・認識されている点がありましたら、ご教示下さい。

○ 太陽光や風力による発電施設の設置や維持管理について

現在、県内各地で太陽光発電施設(メガソーラー)の建築が進むほか、風力についても県北や北上高地などで大規模な設置計画が構想されているとの報道を多く目にします。他方、これらについては、安全面の不安や運営企業が倒産等した場合の将来の撤去等の確保、景観・反射光・低周波音など周辺環境及び近隣住民との調和など様々な課題も述べられるようになってきたと思われます。

当方もまだ不勉強ですが、これらの構築物に関し廃棄物処理法のような詳細な設置及び維持管理の規制があるのか(設けなくてよいのか)など様々な課題が未整備ではないかと感じているところです(Webで検索する限りでは、一定面積を超える施設につき自治体への許可申請を要する条例があるとか、山梨県が設置に関するガイドラインを策定したなどの記事を見かけます)。

メガソーラーや風力発電施設の設置や維持などに関する法的な課題として、現在、貴庁が特に課題として把握又は認識されている点をご教示下さい。

○ 地熱発電に関する施設の設置について

地熱発電については、盛岡市繋地区や雫石町(八幡平エリア)などで発電所の設置が検討されているとのことですが、周辺環境の保全ないし乱開発などに伴う被害の防止、温泉業者をはじめとする利害関係人との権利関係の調整など、法的な観点から、現在、貴庁が特に課題として把握又は認識されている点をご教示下さい。

税金の不正使用の予防等に関する弁護士の活用と民主政治

会計検査院が岩手県庁と県内8市町に対し、平成20年から25年にかけて国の補助金で行われた緊急雇用創出事業に法律違反があったとして、約5700万円を国に返還すべきという趣旨の報告をしたとの報道がありました。

主に問題とされたのは、山田町を舞台とする「大雪りばぁねっと」事件と被災県などでコールセンター事業を展開したDIOジャパンの倒産事件の2件で、いずれも県内でも大きく報道されてきた事案です。報道によれば、前者が1300万円強、後者が4300万円強とされています。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20151107_3
http://news.ibc.co.jp/item_25716.html

恐らく、その全額又はかなりの部分について、県や関係市町は国に返還=支払をするのでしょうし、両事件とも事件当事者からの回収については悲観的な見方をせざるを得ないのでしょうから、それらの返還金については、県などが自ら支出した補助金と共に、県民に負担が重くのしかかることになります。

ところで、以前も少し触れましたが、私は大雪事件の関係者(岡田栄悟氏ではありません。仮に「Aさん」といいます。)の方の刑事裁判に途中から国選弁護人として関わり、特殊やむを得ない事情で、大雪事件を巡りA氏が関係する多数の民事紛争の処理(要するに清算を巡る後始末)までも引き受けざるを得なくなり、今も、その対応に追われています。

本件では、大雪の破産管財人、山田町に加え、前代理人との間でも訴訟手続が必要となり、最近は多少は落ち着いてきましたが、去年の初夏から秋にかけての時期は、多数の関連事件のため膨大な労力を投入せざるを得ず、民事事件では相応のご負担をいただいたとはいえ、必要な作業のあまりの多さに「時間給ベースでは、当事務所の開業以来最悪の巨額赤字事件」という有様で、泣きそうな思いで対応してきたというのが率直な実情です(峠は越したと思っていますが、まだ終わりが見えません)。

こう言っては何ですが、何人もの弁護士が登場する中、大雪事件の民事手続で現に関わっている「岩手の弁護士」は私一人ということもあり、会議とか抽象的な意見書の類や丸一日かけて誰も来ない被災地相談会に行くことよりも、こうした事件の適正解決に汗をかくことこそ地元弁護士の役割だという矜持のようなものだけで自分を支えているというのが正直なところです。

詳細は書けませんが、A氏のスタンスは、債権者への適切な配当のため管財人の管理換価に協力するのを基本としつつ、A氏自身が事件の処理や解決のため多額の自己資金の投入を余儀なくされたので、その回収を裁判所の理解を得た相当の範囲内で行いたいというものです(これは、裁判後の記者質問でも繰り返し説明しています)。

この点は裁判所も理解を示しており、「天王山」というべき訴訟では、これに沿った和解勧告もなされているのですが、管財人によれば、一部の債権者の反対があるとのことで、決着が進まない状態が続いています。

当方としては、少なくとも私が関与するようになってからは、それ以前とは一転して、動産の換価や某施設を巡る和解など管財人や山田町の作業が円滑に進むよう様々な形で協力しているだけに、残念に感じています(まだ書けませんが、やむを得ず、「窮鼠猫を噛むかのごとき、次の一手」を検討しています)。

ところで、何のためにこんなことを書いてきたかというと、Aさんは、この事件の中で大きな関わりをしたことと、本人に迂闊な面があったことは確かなのですが、自らの私利私欲を図ったわけではなく(現に、私が関わる以前から、「すっからかん」の状態でした)、詰まるところ、「巨額の税金が使用される事業に関わるには未熟すぎた(ので、留意すべき大事な場面で易きに流されてしまった)」という評価が、最も当てはまるのではないかと感じています。

また、岡田氏に関しても、さほど全体像を把握しているわけではありませんが、幾つかの不幸な偶然で、身の丈をあまりにも超えたカネ(税金)とヒト(部下)を与えられたため、結果的に身を滅ぼすことになったというべきで、少なくとも、初期の段階から「税金を食い物にして私利私欲を図ろう」との判断ではなかった(或いは、独りよがり云々の批判はさておき、本人の主観では、最後まで、一連の出費は彼の思い描いた「被災地支援事業」なるものを実現し継続させるためのものだったのかもしれない)という印象を受けています。

だからこそ、この件では、「使った側」の責任を問うだけでは全く不十分で、第三者の適正な監視、監督を欠いたまま、「公金を適正に使用する資格」を持っていない未熟な人々に高額な税金を渡し、使用させた(或いは、国を含め、その仕組みを作った)人々の責任が強く問われるべきであると共に、再発防止策に関し、事案の経過を踏まえた、より踏み込んだ手法の導入が図られるべきではないかと感じています。

そうした意味では、前者(責任追及)に関しては、住民訴訟が検討されてしかるべきではないかと思われ、そうした動きがないことが、とても残念です。一般論として、その種の住民訴訟は、いわゆる左派系の団体さんが行うことが通例と認識していますが、そうした方々に提訴のお考えがないのであれば、いっそ保守系勢力の方々がなさってはと思わないこともありません。

上記の観点から、地元行政だけを悪者にするのは間違いで、制度の構築等に関する国の責任も視野に入れるべきだと思いますし、その点で、十数年前に我が国を震撼させた大規模不法投棄事件における原状回復に関する国と自治体の費用負担などを巡る議論(とりわけ、私も関与した日弁連シンポの提言)は、参考になる点があるはずです。

また、後者(再発防止)に関しては、端的に、補助金の支給や費消に関して監視、監督する第三者(支給側である行政と受給側の事業者の双方から独立した立場で実務に携わる者)の関与を拡げる仕組みを作るべきだと思います。

具体的には、「一定以上の金額の税金(補助金)を受給して行う企業は、補助金交付の趣旨(その法律の趣旨)に即した支出をするだけの能力があるか、或いは、受給後に、その趣旨に合致する適正な使用等をしているか」について、例えば、弁護士や公認会計士、税理士などに、調査、報告等させる仕組みを作るべきではないかと感じています。

現在の社会では、弁護士の出番は、「第三者委員会」に見られるように、事後的なものばかりが中心となっていますが、食えない弁護士(公認会計士も?)が増えたとされる今こそ、薄給でいいのでそうした仕事をしたいとの供給サイドの要望はかなりあるのではと思われますし、日弁連なども、「行政は被災者に援助せよ」といった意見書も結構ですが、そのような仕組みの導入(と地元弁護士の働き口の創出)にも尽力していただきたいものです。

何より、そうしたものを導入させていくには、結局のところ、その必要性を理解し、人々に訴えていくだけの「政治=民主主義のチカラ」というものが育たなければ、どうしようもないのだと思っています。

民主主義(議会制民主政治)というものが、「公権力に税金を取られること」に対する自主権の獲得を発端として始まったことは、誰もが教科書で学ぶことではないかと思います。

しかし、「取られるかどうか」だけで使い道はどうでもよいというのが民主主義の社会でないことは、言うまでもありません。

「投票するときだけ主権者」という社会では、国民主権・民主政治とは言えないのと同様に、税金の使い道をより良くさせるための仕組みの構築や運用に人々が関わっていくことこそが、本当の民主主義の実現の道なのだということにより多くの方の共感が得られればと、願ってやみません。

と同時に、そうした営みに積極的にサポートすることが現代社会の弁護士の役割の一つになるべきだとの認識で、そうした場面に必要とされるよう、今回の件も僥倖なのだと感謝し、まずは地道な研鑽を重ねていきたいと思います。

琉球王国と北奥政権の栄光と挫折、そして再起するものたち

以前の日記でご紹介した、JCC出版部「絵で解る琉球王国~歴史と人物~」という本について、琉球と北奥という2つの地域について考えたことを交えて、お伝えしたいと思います。
http://www.jcc-okinawa.net/books/

7月の那覇出張の際、夜の食事場所に困って国際通りを彷徨った挙げ句に、店先で案内をしていた民族衣装姿の美人女性の姿に惹かれて?、「首里天楼」という琉球舞踊を観覧できるお店に入りました。
http://www.suitenrou.com/

引用した運営企業のサイトでお分かりのとおり、店内が琉球王国時代の出来事や人物を描いた壁画で埋め尽くされていたのですが、会計の際、この本がカウンターに置いてあり、「今、沖縄で一番売れている本」といった宣伝文句が述べられていたので、ホンマかいなと思いつつ、琉球王国について少し勉強して見たいということで、深く考えずに購入しました。

本書は、琉球王国の歴史や文化に関するトピックを、素人向けに解りやすく絵柄付きで解説した本ですが、よく見ると、出版元が、このお店(首里天楼)の経営企業となっており、冒頭部分や同社のサイトで、沖縄(琉球)の歴史と文化の意義を伝えていくことが自社の理念であり、飲食店経営も出版事業も当該目的の達成のため行っているものである、という趣旨のことが述べられていました。

これを読んで、北奥(北東北)地域も、沖縄と同じく中央政府と異なる独自の歴史、文化を育み、「蝦夷の末裔」としての誇りを持って生きるべき「クニ」でありながら、そのような姿勢で、人々の心に広く訴えるような親しみやすい手法(飲食店であれ、一般向け書籍の出版であれ)で事業展開をしている企業が、当地に果たしてどれだけ存在するのだろうかと、感じずにはいられないものがありました。

伝統芸能舞踊付きの居酒屋なら、さんさであれ鬼剣舞であれ岩手でも幾らでもできそうですし(秋田では「なまはげ居酒屋」を都心などでやってますから、河童や座敷わらしが飛び入りしても良いでしょうし)、私自身は、以前から、「北東北の玄関」たる盛岡駅の付近に、そうした商業施設を作るべきではないかと思っています。

それこそ、三県の様々な郷土芸能などを集めて演目等を月替わりなどにすれば、毎月のように新幹線で訪れるリピーターも獲得できるかもしれませんし、郷土芸能に限定せず、「九戸政実武将隊のディナーショー」とかもあって良いと思います。いっそ、AKBに倣って、年末年始に月替わりの12チームの総選挙を行って、その結果をもとに入替をするなどというのも話題性があって良いと思います。

県内などで同種事業を営む(或いは、その志がある)方は、ぜひ、この会社さんにお話しを伺うなどして、岩手でも実践していただければと思っています。

ところで、本書を拝見して思ったのは、沖縄=縄文系の血が多く残っているというイメージが強いのですが、本書のイラストで載せられている歴代の琉球王の顔立ちが、必ずしも縄文系(彫りの深い濃い顔)ではなく、弥生系を思わせる平板な顔立ちの方も少なくないという点で、特に、琉球の基本原理というべき「万国清梁の鐘」を掲げた第一尚氏の尚泰久王や、第二尚氏の創始者・尚円王の絵は、弥生人そのものという感じがします。

そこで、自宅に戻ってからwikiなどで少し調べたところ、琉球王国の成立(第一尚氏による琉球統一)は1429年(足利義持~義教期)で、それに先立つ10世紀から12世紀頃(平安期)に農耕に従事する人々(弥生人)が沖縄に移住し、その後、ほどなく三山時代(3つの国家に分かれた時代)が生じ、琉球王国に統一されたという記載がありました。

それを読んで思ったのは、琉球(沖縄)に国家という概念をもたらし社会の規模(単位)を拡げたのは、平安期に九州から移住した弥生人たちで、その移住が無かったら、地元民というべき縄文系の琉球人は、北奥の蝦夷たちのように、国家を持たずに暮らしていたのかもしれない、言い換えれば、国家を作り組織(人々のまとまり)の単位を大きくしていく気質は、縄文系には乏しく弥生系にこそ富んでいるということなのかもしれないと思いました。

この本の登場人物達の肖像画は、出版企業の関係者の方が独自に描いたもののようで、その元ネタ(昔から伝わる肖像画など)があるのか分かりませんが、ざっと見た印象として、歴代の王族は弥生系のすっきりした顔立ちの方が多く、家臣の方が、沖縄っぽい縄文系の濃い顔立ちの方が多いような印象も受けました。

そうしたことも、弥生と縄文の関係や特質などを考える上で、参考になるかもしれません。

ところで、私が中学生くらいの頃、大河ドラマで、1年を半分に分けて、奥州藤原氏の興亡などを描いた「炎立つ」と、琉球王国が島津氏の侵攻を受けた時代を描いた「琉球の風」を連続して放送したことがありました。

恥ずかしながら、当時は沖縄に関心が薄く、受験期ということもあり、琉球の風はほとんど視なかったのですが、今にして思えば、どちらも、弥生人の子孫(の本流)が作った大和国家とは別の政体を我が国の辺境(但し、見方によっては東アジアの要というべき地)に作ったもので、しかも、北奥政権(安倍氏・清原氏から奥州藤原氏まで)も琉球王国も、土着勢力(縄文の血が濃い人々)と移住した弥生系人種とが混血ないし一体化する形で作られた勢力であること、双方とも、最初は勢力分立(安倍氏と清原氏、三山時代など)から始まり、やがて統一国家が形成されたことなど、類似点が多いことに気付かされます。

敢えて違いを言えば、奥州藤原氏の成立には大和政権が深く関わっているのに対し、琉球王国の成立には全く?関与していないこと、前者には他国との緊張関係は全くない(渤海やオホーツク方面との交易はあったようですが)のに対し、後者は中華帝国との強い関わり(大和政権との二重服属)が必要になった(反面、大和政権からの侵略には江戸幕府の成立まで無縁で済んだ)ことという点が、挙げられるかもしれません。

こうした違いを踏まえつつ、2つの政体が共に「大和政権に侵略される姿と時代に翻弄された人々の様々な想い」を描いたという点で、炎立つと琉球の風を同じ年に制作、放送した意義は大いにあったのだと想いますし、改めて、時間があれば琉球の風を視てみたいと思っています。

あと、余談ですが、私が訪れた那覇の居酒屋さんは、たかが2件とはいえ、いずれも日本酒が無く、泡盛や焼酎などしか提供していませんでした。私は、刺身などのお供には、日本酒(なるべく、端麗辛口の冷えた大吟醸。典型は南部美人です)が最適と感じており、その点は大いに残念に感じました。

ぜひ、岩手の酒造メーカーさん達も、「縄文つながり」などと称して積極的に沖縄に売り込んでいただければと思いますし、達増知事におかれても、ちょうど、知事さん同士が反自民路線?で共闘できる関係にもあるでしょうから、そうした観点も交えて、日本酒に限らず、首里城の修復に使用するための漆を浄法寺から調達して持参いただくなどして、岩手と沖縄の繋がりを深めるようご尽力いただければと思います。

ダークツーリズムから学ぶ、いわての社会と歴史

社会の負の歴史に関する施設や現場の痕跡を訪ねる「ダークツーリズム」が注目を集めているとの記事が流れていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150901-00000038-mai-soci

数年前も「負の遺産ツアー」という言葉を聞いた記憶があり、その際も提案したのですが、岩手でも、「誰かの尻拭いのため、巨額の税金の負担を強いられた例」として、次のような企画が考えられます。

【岩手県・税金ダークツーリズムの旅・1泊2日案】

・朝に、二戸駅集合→県境不法投棄現場(両県で撤去費600億以上)を見学

・午後に、松尾鉱山へ移動→地下水の中和処理施設(稼働に毎年数億円)と廃墟を見学→八幡平泊。

・翌日、盛岡競馬場(存続のため330億を公費融資)へ移動→貴賓室でレースを堪能しながら心ゆくまで黒字化に貢献下さい。

各事件についてご存知でない方は、次のサイトなどをご参照下さい(主に、公費負担を明示しているサイトを選びました)。

・岩手青森県境不法投棄事件
http://www.town.takko.lg.jp/index.cfm/9,1024,70,219,html

・松尾鉱山問題(鉱毒水処理)
http://www.jogmec.go.jp/mp_control/matsuo_mine_001.html

・岩手競馬問題(巨額赤字と存廃)
http://www.city.morioka.iwate.jp/iwatekeiba/keiba/006661.html
http://blog.goo.ne.jp/umaichi_news/e/7b11d380daf37594f0d63a5253014c06

ただ、県境事件に関しては、すでに現地での撤去作業はほぼ終了しているようで、青森県HPを見ても、植樹などの話ばかりになっていますので、私が平成15年(着工前)や20年(工事の真っ最中)に見たような、これぞ不法投棄現場というような光景にはほど遠く、「集客」という点からは、時機遅れなのかもしれません。
http://www.pref.aomori.lg.jp/nature/kankyo/kenkyo-archive-toppage.html

当時は米国の例に倣って、不法投棄現場の一部を保存して「酷い状態」が博物館的に見学できるようにすることも提言されていたように記憶しているのですが、結局、遠隔地(二戸市街など)も含め、不法投棄の有様を視覚的に伝える施設等は作られておらず、その点は些か残念に思います。

また、「人命が失われた」という意味での負の遺産なら、震災(津波被害)がすぐに思い浮かびますが、まだ悲しみの癒えない沿岸は、「復興・インフラ」ツーリズムには相応しいですが、現時点で「ダーク」を冠するのは適切ではないのだろうと思います。尤も、3年以上経過しても更地状態が続いているエリアは、別の意味で、ダークなのかもしれませんが。

人命絡みでは、上方軍の謀略で城内の数千人が皆殺しにされたと伝えられる九戸城も立派な「ダークツーリズム」遺産かもしれませんが、さすがに、現在の風景から凄惨な光景を想像するのが難しいでしょうね・・(公園のように整備される前の鬱蒼とした時代なら、そうしたものもイメージできたかもしれませんが)

税金絡みの不祥事(ダークな事件)では、「大雪りばぁねっと事件」も記憶に新しいところですが、「御蔵の湯」が撤去され、当時を偲ばせるものもほとんど残っていないのではないかと思われます。

「負の遺産」は、人命系(戦争、天災、公害など)、人道系(強制労働・隔離など)、環境破壊系、税金系(税金が酷い使い方をされたり後始末のため巨額の公費負担を強いられたもの)などが挙げられると思います。

秋田の鉱山では強制徴用があったと聞いたことがありますが、岩手でもそのような話はあったか聞いたことがなく、上記の観点から、地域の歴史や社会を勉強することも意義があると思います。

また、こうして見ると、負の遺産が分かりやすい姿で後世に残ることは必ずしも多くはないように思われます。県境不法投棄のように、全てを残すことは難しいのでしょうから、地域の博物館などのリニューアルに際し、「負の遺産コーナー」的なものを作ったり、いっそテーマパークのような再現的なものを考えてみるのも意義があることではないかと思います。

達増知事マニフェストのバランス感覚と「書かれざる政策」から見えてくるもの

9月に予定されていた岩手県知事選は、対立候補の出馬がなく、達増知事の無投票3選で決まりましたが、少なくとも、当選した達増知事の公約について県民が議論したり当否を判断する機会がなかった(知事にとっても、ご自身の公約が県民の強い負託を受けたものであることを明らかにする機会がなかった)という点では、残念というべきだと思います。

先日、達増知事がブログで「マニフェスト」と題する公約集(のようなもの)を公開されているのを拝見しました。

「具体的な施策や数値、財源等が記載されていなければマニフェスト(有権者との契約集)とは言えない」などという話はさておき、「主権者」たる県民には、この公約集(スローガン集)を読んで、過去や現在、将来の県政のあるべき姿を考える責務があるのでは(でなければ、投票権を付与するに値しないのでは)と思わないこともありません。

で、人に偉そうなことを言うなら先に自分がやれということで、少し考えてみましたが、この公約集は、「達増知事が取り組みに意欲を示すテーマ集」と考えれば、ある意味とてもバランスがよく、色々な課題に目配りがなされていると感じる反面、「あの課題・分野には触れていないのか」と感じるところもありました。

以下、理由を述べますが、まず、県も一個の政府のようなものですから、公約集を見る上での視点としては、取り上げられている個々の政策テーマが、国の1府13省庁のうち、どの官庁が取り扱う事柄なのかを考えると、分かりやすい面があります(官邸サイトwikiなどで参照願います)。

このような観点から見ると、まず、「1.本格復興の推進とその先の三陸振興」は、復興庁や経産省、国交省(の取扱分野)ということになるでしょうし、被災県としては、このテーマが冒頭に来ることは、異論のないところだと思います。

次に、「2.若者女性活躍支援と「生きにくさ」の解消」については、女性活躍云々が安倍内閣(内閣府)の看板政策の一つであることは確かですし、「若者と女性」が人口減少、「生きにくさ」がそれを含めた自殺(自死)問題などを射程に入れているのだと理解できます。そして、これらが県政の重要課題として広く認識されていることも確かなことだと思います。

また、コメントは省略しますが、「3.地域医療の充実といきいき健康社会」が医療と福祉を中心とする厚労省の所管分野、「4.学び、文化、スポーツの振興」が文科省の所管分野であることは明らかです。

そして、「5.地域資源を活かした産業の発展」では、一次産業県だけに農林水産省の所管分野が広く取り上げられ、経産省分野(ものづくり、中小企業対策)、国交省(インフラ整備)、総務省(通信、IT)が列挙され、外務省的なこと?(海外セールス)も一応触れられており、「6.環境保全と再生可能エネルギー振興」も、環境省や経産省の所管であることは申すまでもありません。

最後に出てくる「国際リニアコライダー」、「いわて国体・ラグビーW杯」は、省庁(文科省?)というより、現在の岩手固有の政策課題ないしイベントと言うべきでしょうが、知事が取り組むテーマとして挙げることに異論を挟む人は少ないでしょう。

他方、「政策テーマを省庁的に仕分けする」という作業をすれば、あの省庁(をイメージする政策課題)が出てこないな、と考えることができます。

真っ先に思いつくものが、県の財政再建(財務省)であり、増田県政末期や達増県政初期に、競馬場問題などが絡んでこの点がしばしば議論されていたこと、その後も、県の財源対策の基金が間もなく枯渇するとの報道がされていることなどに照らしても、違和感を覚えないこともありません。

復興対策、医療や福祉の充実、教育やスポーツの施設維持や振興、各種産業支援(公共事業や補助金)、ILCなどに関連するインフラ整備など、知事が推奨する政策の多くが、多額の税金投入を必要とするようにも見えるもので、他方で、その財源の裏付けに関する記載を見かけないため、「財源の裏付けがないのに政策話を打ち上げているのでは(結局、財源(又はその調達能力)の不足を理由に、さほどのことはしないのでは)」とか、「県債=巨額の借金で賄うことになるのでは」などという批判を向ける余地があるのかもしれません。

また、「省庁」という観点からすれば、他にも出てこない省庁(の所管分野)として、法務省(法務・司法関連)、防衛・警察(治安)が挙げられると思います。外務(対外関係)や総務ないし内閣府(県組織、地方自治制度全般)に属する分野についても、ほとんど触れられていないと言ってよいでしょう。

もちろん、法務(司法・検察)分野は、県(地方行政)には権限が付与されていない面が強い領域で、県知事が取り上げるのに馴染まないことは確かです(裏を返せば、「司法の地方分権の推進という視点を持つべきではないか」という問題意識はあってよいと思いますが、そのような議論ができるほど、日本の地方自治は成熟していないのかもしれません。私のようなL型法律家にとっては、隠れた重要テーマなのですが。)。

警察関連については、最近の岩手では世間を震撼させる凶悪犯罪をあまり聞かないことも影響しているのかもしれませんし(話題と言えば、オレオレとか大雪とか、財産被害系ばかりのような気もしますし)、防衛分野も、岩手には沖縄のような「国策との衝突」という地域問題は聞きませんので、やむを得ないことなのでしょう。

ただ、「法務」についても、県が行う様々な法執行の適正の担保(言うなれば、県庁という企業の法務部門に属する仕事)という観点で見れば、大雪事件などを例に出すまでもなく色々な課題が潜んでいるように思いますし、県組織や地方自治制度全般のあり方という観点で考えると、「大阪都構想」とまでは行かなくとも、道州制(北東北等の連携)という対外的な話から、広域振興局の再編や公務員組織のあり方など対内的な話(省庁的に言えば、内閣府や総務省に属する事柄?)について、県組織のトップである知事から特段の公約や構想に関する表明がないことは残念というべきなのだろうと思います。

敢えて穿った見方をすれば、達増知事は小沢氏の一番弟子で、小沢氏は田中角栄首相の最後の弟子というべき方ですが、達増知事が「内需喚起のための財政出動(税金投入)を重視し、財政の健全性(緊縮財政)を重視しない」のだとすれば、いかにも田中派の系譜を引く方だということになりそうです(仮に、借金路線となった場合には、小渕首相をイメージしてしまいます)。

といっても、過去2期の達増県政を見る限り、大盤振る舞いで県財政を悪化させたという類の話も聞きませんので(時代の違い=パイの消失という面も大きいのかもしれませんが)、その点はよく分かりません。

ただ、上記に述べた括りからすれば、法務系の話題が出てこないとか、特定のポリシーを強調するよりも様々な県内需要を取り込もうとする(田中派も、陳情処理に関し「総合病院」と呼ばれたことは、覚えている方も多いと思います)点など、何となく、「田中派的なもの」と親和性を感じないこともないという面はあります。

もちろん、知事は1人しかなれませんが政策を語るだけなら誰でもできるのですから、「法務分野の話題がなくて寂しい」などとケチをつける暇があるのなら、弁護士ないし弁護士会側で、「法に関するいわての課題」などと題し、県政で取り組まれるべき法務分野の事柄を発表すべきだということになるのかもしれません(私個人は、以前にブログで書いたように、包括外部監査の点に関心があるのですが、良くも悪くも今はまだ夢のまた夢です)。

また、県知事の公約等に関心がある方は、折角なので、他の知事との比較もしてみてもよいのではと思います。

例えば、青森県の三村知事秋田県の佐竹知事のサイトで表示された公約集等を見て、その異同について考えてみるのも参考になると思います(宮城の村井知事についても調べたのですが、HP等が見つかりませんでした。私の調査力の不足かもしれませんが、知事さんは少なくとも在職中は、サイトを設置するなどして選挙時の公約をネット上に表示すべきだと思います)。

自公系など敵対サイドの県議さんはもちろん、生活系(や民主系)など与党サイドの県議さんも、こうした観点から達増知事の政策を研究し、議論を挑んだり補強を図ったりなさるのも良いのではと思います。

ところで、達増知事については、「個人として、県政に関し何がやりたいのか見えない」という類の批判を聞くことが多いように思いますが、折角の3期目ということもありますので、米国大統領が二期目の後半にレガシー作りに勤しむように、ぜひ、達増知事らしさ(カラー)をより鮮明に打ち出していただければと思っています。

そうした意味で、達増知事が外務官僚のご出身なのに、県政にその点を生かしたという話(例えば、ILC推進や県なりの国際交流に関し外務省を上手に使ったとか官僚時代の人脈を生かしたという話)をあまり聞いたことがないように思われ、残念に感じます。

先日の再選時のインタビュー記事で、外務官僚を目指した動機などが書かれていたように記憶しているのですが、ぜひ、「外務官僚出身の知事」として、県知事の立場で、岩手県(ないしそのアイデンティティ)の存在感を世界に伝えるような取り組みをしていただければと思っています。

県民ないし県政に従事する方々も、そうした観点から、内政ないし国政絡みの権力闘争にばかり目を向かせるのではなく、前向きな形で達増知事の背中をより広い世界へと押していただければ良いのではと思います。