北奥法律事務所

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個別の法的問題等

相続対策セミナーで「中高年のアイドル」を目指す弁護士?

明治安田生命さんのご依頼で、1月中~下旬に県内3箇所(盛岡、水沢、大船渡)にて「相続(争族)対策セミナー」を実施させていただくことになりました。

ここ最近、相続対策(納税や他の相続人への代償金の原資づくり)として、生命保険の活用が注目されており、そのような観点から、「保険が必要となる前提場面としての争族紛争などを知っていただく」という見地から、地元の町弁の私に白羽の矢を立てていただいたようです。

同社にあまり商売っ気がないのか大して期待されていないのか?ネット上では広告なさっていないようなので(営業の方々にお任せしているそうです)、テコ入れも兼ねて?今更ながら、末尾で予定などを告知することにしました。関心のある方は、同社盛岡支社をはじめ開催場所の営業所までお問い合せいただければ幸いです。

恥ずかしながら、私は大勢の方の前で話をするのは苦手なので、毎度ながらレジュメの棒読みのような講義になるかもしれませんが、奮ってご参加いただければ幸いです。

ところで、テーマの性質上、主に中高年の方がおいでになると思いますが、妻と会ったばかりの頃に「綾小路きみまろに似ている」と執拗に言われたことがあります。

そこで、いっそ、それをネタにして「オボマロ」などと称して仮装し「あれから40年、あの頃はあんなに小さかった我が子の手は、今や、相続はまだかまだかと崖の端まで伸びてきて・・」とか、「東京で暮らす子供からの電話は、オレオレに金を取られてないかという話ばかり」などと漫談してみたい誘惑に駆られないこともありません。

ただ、笑いを取るだけの力量はありませんし、講義では、過去に扱った紛争なども例に出して(もちろん守秘義務の範囲内で)、それなりに生々しい話もお伝えするかもしれませんので、ただでさえ似合わない毒舌トークなんぞ試みても、参加者の方に「帰れ!」と言われてしまいそうです。

それはさておき、こうした機会を生かして、レジュメを持ち帰るだけでなく、有益な話が記憶に残るよう、関心をもってテーマを拝聴いただけるような話芸を磨くことができればと思っています。

また、レジュメがA4版で25頁以上という「大作」になってしまったので、後日に今後の宣伝を兼ねて、項立ての中身についても少し投稿したいと思っています(自分で言うのも何ですが、このレジュメを貰いにいらっしゃるだけでも意義があるかもしれません)。

そのまま肉付けすれば、ちょっとした書籍が出来上がりそうなので、出版企画を持ちかけて下さる方がおられば大歓迎なのですが、泡と消える淡い期待で終わってしまいそうです(笑)。

【テーマないし項立て(予定)】

① 相続に直面するにあたって考えておくべきこと
② どのような場合に「争族」になりやすいのか
③  「争族」対策と、節税・納税策(生命保険)との関係
④  紛糾しやすい典型例と、個々の財産に関する一般的な取扱い
⑤ 生前の準備~遺言を中心に~
⑥ 相続の際に問題になりやすい幾つかの事柄と対処
⑦ 弁護士の上手な活用法

【日時・場所】

1月14日 13時半~15時 大船渡
1月19日 10時半~12時 水沢
1月28日 10時半~12時 盛岡

ラーメンのトッピングには依頼主の笑顔と事件解決を添えて。

昨日は大船渡(法テラス気仙)でしたが、今日は仕事で由利本荘に行きました。色々な難しさを抱えた離婚訴訟の期日でしたが、本日、依頼主が納得できる相当な内容での和解が成立して終了しました。

この件では、今年の3月まで在籍していた辻弁護士が、子の引渡というハードルの高い論点に挑んで、多大な奮闘の末に大きな成果を成し遂げた後、残務処理を私が引き継いだのですが、決裂か和解かの瀬戸際が相当あり、どうにか解決に至ったという案件でした。

11時半に開始した和解協議が2時半過ぎにようやく成立したのですが、裁判所の近くに、3時まで営業している、本荘を代表する?ラーメン店の一つと思われるお店があり、ギリギリセーフということで、大変美味しくいただきました(残念ながら、12月下旬に閉店となるそうです)。

ちなみに、第1希望だった本荘ナンバーワンとされる有名店は、2時半までの営業時間なので泣く泣く諦めました。依頼主はこの話を聞いて苦笑していましたが、裁判官にも和解成立時に同じ話をしたところ、軽口トークに慣れておられないのか、きょとんとしていました。

事案の中身は申せませんが、当方依頼主は、紛争を通じて2年ほど様々な艱難辛苦を余儀なくされており、最初にお会いした頃と比べて、とても強く、逞しくなられたと感じます。

この種の紛争は、弁護士にとっては不採算になることが通例で、この件も時間給ベースなどで見ると経済的には泣きそうな面はありますが、純然たるビジネス上の紛争などでは学びにくい、人間の業や人として生きることの深さを否応なく考えされられることが多いことは確かです。

ロータリーの標語に「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」というものがありますが、この事件も、その言葉を事実の重みをもって考えさせられるものがありました。

業界には「弁護士報酬と書いて、いしゃりょうと読む」という有名な言葉があり、この事件でも、私や辻先生に限らず担当事務局を含め今日までに色々と苦心惨憺がありましたが、今後もこうした事件を手掛けることができるだけの売上をいただけるよう、めげずに頑張っていきたいと思います。

最後に、締めの一句ということで。

その果てに 味わいを知る 和解麺

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当事者として申し立てる、はじめての原発ADR

先般、当方が破産管財人をお引き受けしている企業さんについて、福島原発事故に基づく被害があるものの賠償問題が未解決ということで、一旦は東電に請求したものの芳しい対応が得られなかったので、現在、原発ADR(損害賠償紛争解決センター)の申立を準備している案件があります。

単なる賠償に止まらない色々な論点がある一方で、会社のご担当がご年配とか他の問題でそれどころでなかった等の事情で、当方の関与時まであまり話を進めることができないまま今年に至ったようです。

平成25年春頃、岩手県の企業も風評被害の賠償請求ができるという第三次追補が出されたことや弁護士会の公害環境委員会が相談窓口を仰せつかったことをきっかけに、当時、県内の事業者の方などから多くのご相談をいただいたのですが、ADR等の手続を私に依頼したいという方には残念ながらお会いする機会がなく、その後は、岩手でも被害対策弁護団が立ち上がり、運営を他の先生方にお任せしたことなどもあって、原発被害問題からはすっかり遠ざかってしまいました(この点は、今年の1月に書いた別の投稿もご覧いただければ幸いです)。

そのため、福島からの避難者の方なども含め、この手続にご縁がない状態が続いていたのですが、まさかこんな形で原発賠償問題にご縁ができ、当時収集した資料に出番がくるとはということで、不思議に思っています。

さきほど、センターの和解解決例を久々に見たところ、当時ご相談を受けた会社さんが申立人と思われる事案を見つけ(ご相談の内容に特徴があり、すぐ分かりました)、ご相談の際に仰っていた希望も採用されたという趣旨の解説が付されていました。

その件の注釈を見ると弁護士費用の計上がされていないので、恐らく(私がイヤで他の先生に頼んだという類ではなく)ご担当の方が自ら作成して申立をなさったのだと思いますし、お会いした際のご担当の方の事務処理能力が高かったことも覚えていますので、その件ではそれがベストの対応だったのだと思います。

ただ、企業さんによっては、自ら申立書を作成するのが困難であるとか、作成はしたものの内容について確認を受けた方が望ましいという例もあるでしょうから、そうした方々は、適宜、原発被害向けの無料相談制度などをご利用いただければと思います(個人も企業も利用可能です)。

さすがに事故(震災)から4年以上を過ぎて、少なくとも「風評」に関しては通常であれば新たな被害は考えにくそうですし、私自身、ご縁がないまま終わると思っていた矢先に、こうした事案の配点を受けて驚いているというのが正直なところですが、冒頭の会社さんのように、何らかの事情で先送りの状態が続いている方もおられるかもしれませんので、そうした方には、上記の制度などをお伝えいただければ幸いです。

その事件は、損害賠償以外にも岩手でその問題に詳しいのは私を含めごく少数という特別な論点(詳細は差し控えますが、地域や公の利害にも関わります)が潜んでいる事案ということもあり、久々に「呼ばれた」という感覚を禁じ得ませんでしたが、ADRを成功させないと先に進むこともできませんので、まずは優しい仲介委員や調査官の方に配点していただけるよう、精一杯お祈りしようと思います。

企業の再建と倒産の狭間に揺れる「いのち」達と弁護士

前回に引き続き、旧ブログで中小企業家同友会の行事に参加した際の感想等を述べたものについて、あと1回、再掲することにしました。

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平成24年11月8日に、企業再建で有名な村松謙一弁護士の講演会が岩手県中小企業家同友会の主催で行われ、参加してきました。

田舎の町弁をしていると、企業の破産については申立代理人であれ破産管財人であれ、大小様々な案件を取り扱っていますが、企業の民事再生については様々なハードルのためか申し立てられる件数が少なく、私の場合、何年も前に申立代理人と監督委員を各1度だけ経験できたのみで、なかなかご縁がない状態が続いています。

まして、法的手段(民事再生)に依らざる企業再生、なかんずく金融機関等への救済融資などを求める交渉は、田舎の弁護士には滅多にご相談を受ける機会がなく、必然的にノウハウを培う機会にも恵まれません。

そこで、そうした論点に関する実務上の工夫などを少しでも伺うことができればと淡い期待を抱いて参加したのですが、NHKで既に2回くらい見ていた「プロフェッショナル」の番組が講演中にノーカット?で放映された上、番組で取り上げられていた企業の方に関するエピソードや倒産・再建実務を巡る理念的なお話が中心で、残念ながら、そうしたノウハウ的なことは取り上げられなかったように思われます。

まあ、弁護士向けの講義ではなく中小企業の経営者の方々向けの講演でしたので、どうしても理念的、総論的な話が中心となるのは致し方ないことなのかもしれませんが。

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それはさておき、村松先生が、企業倒産を巡る現場では、経営者が自死に身を委ねてしまう場面が非常に多いことを、ご自身の経験をもとに具体的に語られ、それだけは絶対にいけないのだと強調されていたことが、講演では最も印象に残りました。

私も、事件当事者のご家族にそうしたご不幸があったというお話を伺ったことが何度かありましたので、そのことを思い返してみましたが、私の場合、これまで実際にお話を伺ったのが3回で、いずれも従業員10~20名前後の小規模な企業の倒産が関わっている事件でした。

1件は、破産管財人を務めた県内の企業で、資金繰りに苦しむ状況の中で、高齢の社長の後継者で実務を担当していた息子さん(常務)が自死し、生命保険金の大半を運転資金に用いたものの、すぐに行き詰まり破産申立に至った事件。

1件は、同様に破産管財人を務めた県内の企業で、同様の状況下で熟年の社長さんが自死し、同じような経過で破産申立に至った事件。

1件は、申立代理人を務めた県内の企業で、数年前に創業者である社長(お父さん)が自死し、その際の生命保険金などで資金繰りを凌いできたものの、万策尽きて破産申立に至った事件。

私は平成12年から弁護士をしていますが、過労自殺など自死が関わる他の類型のご依頼を受けた経験がないこともあり、携わった事件に関連して当事者の方に自死があったというのは、この3件だけではないかと記憶しています。

その経験だけで一般化することはできませんが、企業経営に携わっている方々が、自死という問題に晒されるストレスやリスクを少なからず背負っていることは、もっと知られてよいことではないかと思います。

また、自死ではありませんが、「創業者(父)が亡くなった後、経営を引き継いだ兄が、資金繰りに困って、精神障害者(成年被後見人)である弟の預金(数千万円)を横領して運転資金に宛てたため摘発された事件」を扱ったこともあります。その事件では、横領したお金で取引先や従業員への支払を完済したそうですが、兄はあまりにも大きい代償(1審実刑判決)を払うことになりました。

敢えて尋ねませんでしたが、倒産を余儀なくされた場合でも、少なくとも労働者の賃金については8割相当の立替払制度がありますので、もし、その制度の利用で最低限の納得が関係者から得られるのであれば、倒産処理の途を選んでいただくべきではなかったかと悔やまれます。

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企業の経営者は、様々な責任感に押し潰されそうになる思いを余儀なくされることが多々あると思いますが、ご家族などを悲しませる行動にだけは及ぶことのないよう、孤独の淵に沈むことなく賢明に対処していただきたいと思わずにはいられません。

経営者にとって企業はご自身の子供のようなものだというお気持ちは、私も零細企業の経営者の端くれとして多少とも存じているつもりですが、そうであればこそ、「お子さん」が自らの力で生き続けることができないほど症状が悪化した場合には、終末期医療や葬儀を担当する弁護士という存在を適切にご活用いただき、最後を看取っていただくべきと考えます。

少なくとも、ご自身を投げ打ち「お子さん」の命を救おうとしても、残念ながら無理心中にしかならない可能性が高いという現実は、ご理解いただく必要はあると思います。

もちろん、投薬や手術で治療が可能な場合には、そうした面でも、弁護士を活用いただくと共に、再建関連法制の様々な使い勝手の悪い部分の改善にご協力いただければと思っています。

余談ながら、先日、士業向けに「中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関認定制度」が導入され、私は、(当時は)岩手県で認定を受けた恐らく唯一の弁護士ということになっています(といっても、興味を抱いて申請を出したのが私だけだったという程度の話で、特別の選抜をされたなどという類の話ではありません)。

どれだけ意味があるかよく分かりませんが、そうしたものも活かした形でお役に立てればと思います。

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ところで、上記の3つの自死事件は、いずれも死亡後に会社に生命保険金が支払われているようです。

10年以上前に、会社が従業員を被保険者として生命保険を契約し従業員が不慮の死を遂げた際に高額な保険金を受領することが社会問題視されたことがあったと記憶していますが、会社役員について同様の事態が生じた場合の当否については、議論があるのか存じません。

思いつきレベルで恐縮ですが、役員を被保険者、会社を受取人とする生命保険は上記のような弊害が大きいので、原則的には禁止すべきではないかとも思われます。

少なくとも、自死の場合でも保険金を受領できる契約にあっては、ご家族のみを受取人とするなど、弊害防止のための措置が講じられるべきではないかと思いますが、現在の保険実務はどのようになっているのか、ご存知の方はご教示いただければ幸いです。

中小企業家同友会の講義と企業経営という「地味な憲法学」の現場

数年前から岩手県中小企業家同友会に加入していますが、先日は11月例会があり、参加してきました。

今回は、広島県福山市で㈱クニヨシという鉄工所(船舶、道路、航空機などに用いる各種備品などの製造業)を経営する早間雄大氏の講演があり、厳しい状態にあったご実家の小さな鐵工所を短期間で大きく躍進させた企業家の方に相応しい大変エネルギーに溢れた講演で、大いに参考になりました。

同友会の例会は、1時間強の講演の後、休憩時間を挟んで、1時間弱の時間を使って、中小企業の経営のあり方などについて特定のテーマを与えられ、6人前後のグループでディスカッションして最後に各グループの代表が発表するというスタイルになっていますが、今回は早間氏から「自主、民主、連帯」というテーマで議論せよとの指示がありました。

で、私のグループでは、数人ないし十数人の従業員さん(同友会では、必ず「社員」と呼びます)を擁する企業や事業所の経営者や管理職の方がいらしており、例えば、「自主とは、自分をはじめ各人が、業務の従事者として必要十分な仕事を進んでできるよう身を立てること」、「民主とは、社員全員が、真っ当な従事者として行動できるような会社づくりをして、それを前提に社員一丸となって企業のよりよいステージを目指すべきこと」、「連帯とは、それらの積み重ねを通じて、社会全体に価値を提供し増進すること」といったことなどが、各人の業務や社内外の人間関係に関する経験談などを交えて、それぞれの言葉で語られていました。

法律実務家としては、そうしたお話を伺っていると、憲法学のことを考えずにはいられない面があります。

どういうことかといいますと、司法試験で憲法の勉強をはじめた際に、個々の制度や論点を学ぶにあたって、「自由主義(各人の人権と人格の尊重)」と「民主主義(多数派の合理的判断)」との対立と調和という視点を意識するようにという話を最初に教わったのですが、「自主と民主」という話は、それと通じる話ではないか、また、「連帯」は、憲法学的に言えば現代の福祉国家現象(広義の公共の福祉の増進のための国家や社会の役割の増大)に通じるのではないかと感じました。

憲法学は、「普通の町弁」にとって司法試験合格後はほとんど接する機会のない学問で、私の理解も十分なものではないでしょうが、今回の講義や討議は、「一人一人の多様かつ尊厳ある自由と、多数決などを通じた国家や集団による統一的な意思決定システムとの対立と超克を通じて、社会の健全な発展と人々の幸福(広義の公共の福祉)を目指すべき」という日本国憲法の基本理念を、中小企業の運営のあり方(苦楽の現場)を通じて学ぶといった面もあるのではと感じました。

以前、JC(青年会議所)が掲げているJCIクリード(綱領)について、日本国憲法との類似性を詳細に記載したことがありますが、私の場合、時の政権への反対運動のような憲法論やその逆(戦前回帰云々など)の運動といった類の「派手な憲法学」よりも、個々の現場での地道な日本国憲法の実践を感じる営みを発見、発掘し、私自身がその現場にどのように役立つことができるかを考える「地味な憲法学」の方が、性に合っているような気がします。

ところで、同友会の例会は「成功している社長さんによる創業から現在までの谷あり山ありの経験談を、社員さんとの関係づくりを中心に伺う」のが典型となっていますが、数十人~百人規模の企業の運営と、弁護士一人・職員僅かの法律事務所の運営や弁護士の業務を重ねるのは難しく、どのようなことを例会で学んだり討議で話したりするのが良いのか、今も試行錯誤というのが正直なところです(また、恥ずかしながら、私に関しては「本業の営業」には滅多に結びついていません)。

ただ、この仕事をしていると、中小企業の経営者や管理職の方から、実際に生じた事件、問題について様々なご相談を受けることはありますが、紛争とは離れた普段の中小企業の実情や経営者等の意識を学んだり肌で知るという機会は滅多になく、こうした場に身を置くことで、今後のご相談などにも深みのある対応ができる面はあるのでは、さらには、「顕在化していないニーズ」などを先んじて見極めて提案できるといったこともあるかもしれないと信じて、なるべく参加していきたいと思っています。

早間氏の講演でも、「営業しなくても仕事がやってくる企業や指示待ちではない社員の育成」、「企業の強み(専門性)を生かしながら幅広い業界のニーズに応える努力」といったことが強調されていました。

田舎の町弁業界は、数年前までは営業しなくとも仕事がやってくる典型的な寡占商売(極端な供給不足)の世界でしたが、それが様変わりした今こそ、多くの競争相手がいても本当に「営業しなくとも仕事がやってくる弁護士」になるため、考え、実践しなければならない課題があまりにも多くあるというべきで、今回の講義も、その糧にしていかなければと思っています。

葬儀会社と葬儀トラブルの急増

ここ数年、「多死」時代の影響もあってか、葬祭場の建設などが非常に増えているように感じますが、それに伴い、葬儀会社と利用者とのトラブルも増加傾向にあるようです。

1ヶ月ほど前、盛岡の某寺院のご住職(正式な肩書は違いましたが、要するに寺院の責任者の僧侶の方)から仏教に関する説話を拝聴した際、最近、葬儀業者から理不尽な被害を受けたと檀家さん?から相談されることが増えているとのお話を伺いました。

先日、葬儀業者からの不要・過剰サービスの「押し売り」による被害を伝えるニュースがありましたが、そのご住職が紹介された事例も、時期や期間などから必要ないと思われる「遺体保存のドライアイス」のサービスの押し売りのようなことをされて数十万円?を請求され、断り切れずに泣く泣く支払ったというもので、引用のニュースとよく似ています。

その件の当事者は古くから地元でなさっている業者さんではなく、最近になって進出してきたところとお聞きした記憶ですが、その業者かどうかはさておき、県外からの進出企業の中には内部のコンプライアンスに問題を抱えた会社もあるという噂話を聞いたことがあります。

何年も前ですが、県内の冠婚葬祭業者さんが倒産して管財人を担当したことがあり、その際、その企業の施設の購入を検討しているという多くの会社の方にお会いしたのですが、その中に問題があるとの噂を聞いていた企業さんがあり、色々と考えさせられる面がありました(ただ、その件では物件自体に様々な難点があり、任意売却はできず競売(破産財団からは途中で放棄)になりました)。

それはさておき、馴染みのない業者さんに依頼なさるのでしたら、引用記事のように、高額なお金が絡む売り込みが出た際に備えて、ご親族など信頼できる第三者の立会を求めるなどの予防策をとっていただいた方がよいのではと思いますし、私はまだ経験がありませんが、消費者契約法などで救済可能な事案も相応にあるでしょうから、次善(事後)の策として、弁護士等へのご相談も検討いただいてよいと思います。

ところで、葬儀や墓石等を巡っては、それぞれの家庭等で、どの程度の費用を投じてどのような規模の葬儀等をするのが賢明なのか、事前に学ぶなどの機会が滅多になく、利用者として相場観が掴みにくいという問題があるかと思います。

ただ、葬儀の方法・規模などは個人差が大きいでしょうから、全体の相場では参考としての意義が薄くなり、他方、個別のサービスごとに分けても細分化し過ぎて利用者サイドも馴染みにくいという問題があるかもしれません。素人感覚では、敷金トラブルのように?消費者庁や業界団体などが協議してガイドラインが作成されればよいのではと思いますが、裁判例の集積などがないと、議論がまとまりにくいかもしれません。

事務所にどんな本があるか確認したところ、このテーマをずばり扱っている本を見つけたのですが、一つ一つの項目を見ると、問題提起(論点拾い)はとても良いのですが、解決のあり方については抽象的というか、歯切れの悪さを感じる内容になっていました。恐らく、敷金などと違って、まだ裁判例が多くはなく、踏み込んだことを書きたくても書きにくいという面があったのではないかと推察します。

今後は、適格消費者団体と関わりのある弁護士さんなどによる差止訴訟などが増えていくのではないかと予想しますが、その集積を待つわけにもいかないケースも多いでしょうから、例えば、その種のトラブルに対応するための弁護士費用特約などが生命保険等に付された形で販売、普及されれば、「泣き寝入りの防止」という点では、良いのではと感じています。

無戸籍者問題と親子関係の存否確認などに関する弁護士の役割

弁護士会で、「無戸籍者の支援及び関連業務を行う弁護士の名簿を作るが、搭載には弁護士会の研修の受講が必須」との通知があり、先日、行われた研修に参加してきました。

といっても、日弁連の「子どもの権利委員会」が8月に行った2時半半の講義に関するDVD視聴研修で、講師の方も一方的にまくし立てるような話し方で、音声の問題もあって聞き取りにくく、大半の時間は配布されたレジュメを読んでいたというのが正直なところです。

なお、11日には日弁連主催の相談会が全国一斉に行われたそうです。

「無戸籍児」は、民法772条(離婚後300日の嫡出推定)の関係で、いわゆるDV夫から逃れるようにして離婚した妻が、出生届を機に、前夫に消息を突き止められるのを避けようとして生じるのが最も多いとされ、また、もう一つの典型として、婚姻期間中に他の男性の子を宿した方が、出生した子が前夫の子として取り扱われるのを避けようとして、出生届を出さないことにより生じることも多いとされています。

無戸籍者は、他のレアケース(認知症問題など両親が役所に届け出るだけの意思や能力等を欠く場合)も含め、法務省が把握しているだけで全国に600人以上いるとされ、推定で1万人に達するのではなどという見解もあるようです。

研修でも散々述べられていましたが、弁護士としては、超不採算の可能性の高い類型の仕事だとは思われるものの、「無戸籍」ではない方の親子関係などを巡る法律問題にも応用の利く事柄であり、それなりに関心を持って拝聴しました。

とりわけ、無戸籍の方を実親の戸籍に記載させるための「就籍許可の審判」については、今回はじめて知ったこともあり、色々と勉強になりました。

私自身、数年前に、「実母が、何らかの事情(婚外子?)で自身の戸籍に子を届け出ず、親族の子として届け出させた(との申出が、実母の死後、子からなされた)という事案」で、実母の財産に関する相続手続の必要から、親子関係を証明して相続手続を行いたいとのご依頼を受けたことがあります。

その件では、親子関係を証明する資料が乏しく(臍の緒はありましたが、DNA鑑定に用いることは無理だと言われました)、正面突破が難しいとのことで、他の方法に依らざるを得ませんでしたが、その際、親子関係の存否証明に関する立証方法について色々と調査、研究したことあり、レジュメにその点について記載があったので、懐かしく感じました。

「無戸籍」に限らず、数十年前の日本では様々な事情から真実の親子関係とは異なる届出がなされたことも多くあり、それが、今になってツケを払えと言わんばかりのように問題になるということは、決して珍しいことではありません。

まして、無戸籍者問題に見られるように、戸籍を巡って何らかの形で子が犠牲になる事態は現在も生じているわけで、そうした問題を放置せず解決に導くことは、少子化云々に触れるまでもなく、現代社会が取り組むべき事柄の一つであることは明らかだと思います。

そうした観点から、地域内で問題を抱えている方について、当事務所にもお役に立てる機会を与えていただければと思っています。

報道によれば、再婚禁止期間(民法733条)と夫婦別姓に関する憲法適合性を判断する最高裁の判決が近いうちになされると見られており、嫡出推定の問題も含む子の利益・権利のあり方という観点も交えて議論が深まってくれれば、なお良いのではと思います。

不倫問題などを巡るミニ講義~盛岡北RC卓話から~

先日も書きましたが、盛岡北RCの例会で卓話を担当することになり、「男女の愛と不倫を巡る法律実務~あるロータリー会員家族(架空)を巡って生じた、起きて欲しくない物語から~」と題して、以下の事例(設問)をもとに主要な論点や実務の考え方(相場観)をご説明しました。

その上で、法律の根底に「両性の本質的平等と個人の尊厳」(憲法24条、13条)があり、慰謝料の発生や算定は、これが損なわれ、踏みにじられていると裁判所が判断するかという点が大事であること、どのような事象がそれらの中核を成すかは時代により移り変わること、だからこそ、男女の関わりという愛や性など様々な欲と業が絡む問題について、「尊厳」を踏まえた上で、人の心の深淵の質を高める叡智と工夫、配慮が必要ではないかということを、まとめとしてお伝えしました。

ただ、「男女の愛と不倫を巡る法律実務」と題したのに、紛争を通じた「愛」のことまでお伝えするだけの時間はなく、その点は残念でした。

ご夫婦の性的な事柄が絡んだ事件で、「愛のカタチ」を考えさせられたことがあったので、そうしたこともお話できる機会があればとは思ったのですが、やっぱり、私の身には余るテーマというべきなのかもしれません。

テーマの性格もあり、私には珍しく笑い(苦笑?)の絶えない卓話になりましたが、離婚や不倫、男女トラブルを巡る法律問題は、田舎の町弁には「スタンダードな業務」の一つで、実務経験を交えてお話できることも多いので、セミナー講師のお誘いなどありましたら、ご遠慮なくお声掛け下さい(笑?)。

なお、不倫など男女トラブルを巡っては、以前にも投稿したことがありますので、関心のある方は参考になさって下さい。

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盛岡市内の某RCの会員であるA氏(60歳)は妻のBさん(58歳)と二人三脚で会社を経営し、市内有数の事業家として大成した。

AB夫妻には、長男C(37歳)、長女D(33歳)、次男E(28歳)の3人の子がおり、A氏の事業を支えるCは、妻F(30歳)との間で2名の子G、Hを授かっている。

Dは、夫I(39歳)と10年前に結婚し、子Jと3人暮らしである。Eは独身だが、K女(23歳)と3年ほど交際している。

(1) Cは、半年ほど前から取引先のL女と情を通じ、出張名目でLと旅行に行くなどしていたことがFに発覚し、Fは、子G、Hを連れて実家に戻り別居した。

FはCに対し、①離婚、慰謝料、財産分与、離婚後の子の親権・養育費の支払を求める調停、②離婚までの生活費(婚姻費用)の支払を求める調停を起こしたが、CはLと不倫をしていないと主張して離婚を拒否し、①の調停は不調に終わった。Fは、Cに対し上記①の各事項、Lにも慰謝料の支払を求めて訴訟提起を予定している。

Fの立場で、C及びLへの請求内容や立証を巡り検討すべき点を論じなさい。

(2) 時を同じくして、Dの夫Iにも、先日、同僚のM女と情を交わしたことが発覚した。Iは、不倫は認めた上で、Dとは5年以上前から口論などをきっかけに険悪になり、家庭内別居と性的関係を欠く状態が続いており、婚姻関係は破綻し賠償責任はないと主張し、Mとの再婚を希望してDに離婚を求めてきた(不和については、一方のみに責任があるのではなく「お互い様」というべきもの)。

これらの事実に争いがないことを前提に、I及びMのDに対する慰謝料支払義務の存否や程度(金額)、IのDに対する離婚請求の当否について論じなさい。

(3) 1年前、KにEとの交際に基づく妊娠が発覚し、Kは出産を望んだが、Eの頼みでやむなく中絶したことがあった。Eは、嘆き悲しむKを慰めることもないまま、一方的に連絡を絶ち、他の女性と交際を開始したため、Kとしては、Eに慰謝料の支払を求めたい。Kの請求は認められるか。

(4) Aは、これらの事態がきっかけでBと不和になり、いわゆるクラブに入り浸るようになって、ホステスNと懇意になった。Nは、Aには全く恋愛感情は無かったが、客として頻繁に来店して欲しいという営業目的で、Aからの性的関係の求めに応じ、その際も対価のやりとりをしていたが、不倫旅行などはせず、時折、ラブホテルを利用した関係が続いたのみであった。

数ヶ月後、探偵に調査を依頼しその事実を知ったBは、Aとの離婚は希望しないが放置もできないとして、A及びNに慰謝料と探偵費用などを請求したい。Bの請求は認められるか。

労働災害における安全配慮義務と労使の保険の普及について

先日の県内ニュースで、本年1月から10月末までに労災事故で亡くなった方が計16人、4日以上の休業を余儀なくされた人が968人に上るとの報道がありました。昨年の同じ時期より131人減ったとのことですが、例年、労災事故で10人前後の方が亡くなり、1000人前後の方が一定の休業を要する傷病を負っているということになります。

労災事故では、国の労災保険の給付がありますが、これは、休業損害や後遺障害又は死亡に伴う逸失利益について、保険制度の範囲内で一定額を支払うというもので、慰謝料は給付の対象にならないなど、「被害者の損害の填補」という点では、十分なものではありません。

もちろん、使用者に何らの落ち度もないものであれば、その責任を問うことはできませんが、劣悪な就労環境で労働者を追い込んで事故等を誘発したというのであれば、いわゆる安全配慮義務違反を理由に、労災保険では賄われない損害について、賠償請求するということが考えられます。

残念ながら、私は労災事故絡みの紛争にはほとんどご縁がなく、何度かご相談を受けたことはあるものの、訴訟事件として本格的に争ったということは、労使いずれの立場でも、ほぼありません。

ここ数年続けている判例学習(裁判例のデータベース作り)では、港湾労働者のアスベスト被曝から過労自殺などの問題まで、取り上げられることの多い類型であり、多少は勉強していますので、受任の機会をいただければと思っています。

ただ、労災問題については、交通事故との比較で、色々とハードルの高い面も幾つかあると思われ、それらをどのようにクリアしていくべきかという点は、悩ましいところだと思います。

まず、交通事故のうち人身被害が生じたものであれば、軽微なむち打ち症のみの事故であっても事故直後に警察に申告すれば、自動車運転過失傷害事件として捜査対象になり、交通事故証明書や実況見分調書などで、事故の事実と態様の大半を証明できます。

労災の場合、死亡などの重大事故であれば警察の捜査がなされる可能性が高いとは思いますが、交通事故に比べれば、捜査対象になる程度は遥かに低いのではないかと思われ、事故態様の立証の問題に直面することは多いと思います。とりわけ、単発的な事故ではなく、過労死など様々な事象が積み重なった事例では、「使用者の義務違反」に関する立証の課題はハードルは相応に高くなると思います。

もちろん、労災認定の際に作成された記録などを用いることができれば、相応に役立つのではと思いますが、使用者の安全配慮義務の問題まで踏み込んだものとなっているとは限らないのではないかと思われます。

また、交通事故であれば、大半の加害者が賠償責任保険に加入していますが、小規模な企業や個人事業主などでは、使用者が労災(安全配慮義務違反)の賠償責任保険に加入していない可能性が高くなるでしょうから、支払能力の問題にも直面するかもしれません。

また、現在の自動車保険では、人身傷害補償特約や弁護士費用特約が普及していますので、被害者は、相手方の支払能力や過失相殺などの問題がある場合には、自身が加入している保険会社から人身傷害補償保険の給付を受け、残金について、弁護士費用特約を用いて加害者に賠償請求するという方法をとることができ、かなりのリスク軽減ができることになっています。

そうした意味では、少なくとも、ある程度の危険性を内包する業務に関しては、人身傷害補償特約や弁護士費用特約を備えた「労働者自身のための労働保険」を保険会社が販売して、就職の際にそれに加入するという文化が励行されてもよいのではと思います。

ちょうど、冒頭のニュースと並んで、県内の山林で、作業員の方が伐採した木の下敷きになって亡くなられたとの報道がなされていましたが、以前、被災地の法テラスで、林業に従事する作業員の方が、作業車の転倒で大怪我を負い重い後遺障害を負ったという事案についてご相談を受けたことがあり、色々とハードルがあることをご説明し、誰に依頼するか(地元の先生にするか)も含めてお伝えしたということがありました。

労災は、「純然たる第三者同士」の事故である交通事故と違って、労使という継続的な人間関係が絡んでいるため、訴訟等の対立関係に及ぶのを躊躇する事案も多いかとは思いますが(そうであるがゆえに、逆のパターンもあるでしょうが)、少なくとも、明らかに安全配慮義務違反が認められるような事案では、人間関係が良好であるとしても、賠償の問題は分けて考えた方がよいと思いますし、そのような事案で、対人関係の亀裂を避けて適切な救済やそれに向けた議論を行うためにも、保険の普及が望ましいのではないかと思われます。

震災以後、被災地では復興特需で工事が増えているせいか、労災事故に関するニュースを目にすることが多くなったように思われるものの、訴訟が多く起きているという話は聞いたことがなく、私自身も上記のとおり事件受任の機会に恵まれていません。

そのため、あまり知識がない中で本も読まずに書いていますので、少し見当違いのことも書いているかも知れませんが、その点はご容赦下さい。

盛岡北RCからの卓話依頼(男女問題など)

次の水曜(18日)の盛岡北ロータリークラブの例会で、急遽、卓話を担当することになり、某会員の方の熱烈なご要望?により「男女の愛と不倫を巡る法律実務」をテーマとすることになりました。当クラブの方は申すに及ばず、市内等の他のRC会員の方におかれても、ご参加いただければ幸いです。

当日は、「あるRC会員の家族(架空)を巡って生じた、起きて欲しくない物語」などと題して、壮年のごきょうだいの各人に、離婚や不倫、交際などを巡ってトラブルが起きたという想定で、代表的な論点や裁判所の一般的な考え方などをご説明したいと思っています。

RCの卓話は実質20分強しかありませんので、当日は論点紹介に止まるでしょうが、1時間とか90分などのバージョンでお話することもできますので、セミナー?などのご要望などがあるようでしたら、ご遠慮なくお声掛け下さい。

ちなみに、前回は、県内でCMソングなどの制作やナレーター等に従事されている菅原直子さんの卓話を拝聴しました。ホームセンター「サンデー」のテーマソングを歌っている方なのだそうで、冒頭でご本人のナマ歌をご披露いただき、ささやかな感動を味わいました。

他にも、世界的な話(ヴェスビオ火山ケーブルカーの件)から県内ネタ(岩手川、ペコ&ペコなどベーシックな話から近時の「焼き冷麺」、ドンドンダウンなど)も交えつつ、コーポレートアイデンティティや商品ポリシーの重要性(それを確立している企業ほど良いCMをすぐに作れる)を伝える内容になっており、大変勉強になりました。