北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

〒020-0021 岩手県盛岡市中央通3-17-7 北星ビル3F

TEL.019-621-1771

公益活動等

東京電力と「放射性廃棄物」の処理に関する措置命令

産廃処理ないし原発事故絡みの廃棄物処理に関心のある方向けの投稿です。

先日から、「福島の製材会社が、放射性汚染のため、東電の賠償金を原資として木くずの廃棄処理を業者に委託したところ、その業者が滋賀県などに不法投棄したという事案」のニュースが流れています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014040402000128.html

この点、廃棄物処理法の一般原則からは、不法投棄の実行者たる処理業者及びその関係者が撤去責任を負う(法19条の5。具体的には、投棄先の都道府県を管轄する知事等が撤去措置命令を行う)ことはもちろん、委託した排出事業者(製材業者)に、その処理業者が不法投棄を行うことについて過失がある(投棄を予測し得ただけの事情がある)場合には、その排出事業者も措置命令の対象となります(19条の6。但し、伝家の宝刀的な規定で、未だ発出例がありません)。

その上で、仮に、この事件で、製材業者ではなく(だけでなく)東電にも、処理業者が不法投棄を行うことについて過失が認められる場合(例えば、処理業者の選定などについて東電が深く関与し、かつその業者の処理対応能力について疑義を持ちうるだけの事情がある場合など)には、木くずを廃棄処理せざるを得ない原因を作り出した東電にこそ、法19条の6に基づく撤去責任を認めるべきではないかという立論が成り立つように思われます。

また、仮に、この廃棄物が「汚染対処特措法」の指定廃棄物(1㎏あたり8000ベクレル超)に該当するのであれば、廃棄物処理法ではなく同法の適用対象になるのではないか、その場合は、同法51条に基づき国(環境大臣)が東電その他に措置命令を出すのか(できるのか)など、さらなる論点が生じてきそうな気もします。

少し調べてみたところ、この件では、処理業者とは別の業者が撤去作業を実施したとのネット投稿を見かけたので(双方の関係などは不明です)、東電の責任云々の出番はなさそうですが、膨大な量の「放射性廃棄物」の発生に照らせば、今後も似たような事件が生じる可能性もあります。

私は、県境不法投棄事件をきっかけに、廃棄物処理法の措置命令について少し勉強したことがあったので、今後もこの種の問題の報道に関心をもって見守っていこうと思っています。

 

県境不法投棄事件における県民負担と果たされぬ総括

日本最大規模の不法投棄事件と言われた、岩手青森県境不法投棄事件(平成11年発覚)について、ようやく現場の廃棄物の撤去作業が終了したという報道がなされていました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140326-OYT8T00737.htm

報道によれば、撤去等のため両県併せて708億程度の費用を要した一方、岩手県が回収できたのは8億程度に止まるとされています。

私の記憶では、撤去計画が承認された平成16年頃の時点で、青森県の見積が440億、岩手県の見積が220億程度(大雑把に言えば、青森:岩手が2:1)となっていましたので、岩手県については、最終的な費用は236億円程度になったと思われます。

そして、産廃特措法により、国が費用の6割を補助するはずなので、単純計算で県の負担額は94.4億円となり、上記の回収額を全額、県が補填できるのであれば、最終的な岩手県=県民の負担額は、86.4億円となります。

岩手県の現在の人口が130万弱だそうなので、単純計算で、子供も含む一人あたりの負担額が6646円強、4人家族なら2万6600円ほどの費用負担を、首都圏など全国各地から運ばれてきたゴミの撤去のため、県民が強いられたという計算になります。

もちろん、100億円弱もの巨額の資金があれば、震災復興であれ県北その他の振興や福祉であれ、地域のため相応に有効活用できたはずです。

県境事件は、今やすっかり風化し単なる公共事業のように思われているのかもしれませんが、上記の機会を県民から奪ったものだと県民には受け止めていただきたいと思います。

ところで、この事件の顕著な特徴は、主犯格の2つの産廃処理業者が青森と埼玉で営業する業者であり、被害拡大に関しては、青森県と埼玉県の監督不行届が大きかったのではないかと指摘されている(そのため、岩手県は当初から、被害県だとアピールしていた)点とされています。

結局、現行制度の限界として、この点(青森県と埼玉県の監督責任)を法的な手続により問う機会は得られぬまま、この事件は幕引きを迎えてしまったのですが、果たしてそれでよいのかという点は、皆さんにも考えていただきたいところです。

この点に関し、平成22年の日弁連人権大会では、「A県の許可を受けた業者がB県で不法投棄事件を引き起こした場合、事情に応じてA県もB県が要した撤去費用の一部を負担する制度を設けるべき」という趣旨の提言をしています。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2010/2010_3.html

残念ながら、このような制度は未だ実現していないことはもちろん、公の場で議論の俎上にすら載せられていないでしょうが、少なくとも、岩手県民は、そのような制度がないことによって、上記の負担を強いられているのだという現実は、認識していただきたいところです。

もちろん、岩手以上に高額な負担を余儀なくされた青森県はもちろん、古くから産廃問題に苦しんできた埼玉県にとっても、有り難くない話だとは思いますが、そうした制度の存在が、行政の担当者に緊張感を与え(言うまでもありませんが、そのような形で自治体=住民に生じた負担については、事実関係によっては自治体の担当者や首長などが住民訴訟の形で責任を問われる可能性があります)、結果として早期の監督権の行使=被害の防止に資するという見方はできるのではないかと思います。

撤去完了により事件の幕引きが見えてきたという現状を踏まえ、岩手・青森両県の住民の手で、改めて、事件の総括を考える機会があってもよいのではと感じています。

 

岩手教育会館の建替と「歴史まちづくり法」

盛岡城址(岩手公園)の袂にある岩手教育会館(7階建)が、3年後を目処に4階建の建物に生まれ変わるという報道がありました。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20140319_3

盛岡では、古くより盛岡城(石垣)から岩手山を望む眺望を誇りとする市民感情があり、景観法(平成16年制定)が作られる遥か以前(昭和59年頃)から、「盛岡城址の石垣の上から岩手山を結んだ線よりも高い位置まで建物を立てるのは禁止」というガイドラインを作成していたそうで、実際、その後に、少し離れた中央通に計画された商業ビルが、市の強力な「行政指導」で高さ制限を受けたという例もあったと聞いています。

ただ、その話については、「盛岡城の石垣(二の丸~本丸)の真正面(岩手山が見える北東面)には、産業会館(サンビル)、教育会館、農林会館の3つの巨大建物がドデンと居座っており、それらのせいで岩手山の眺望がちっとも見えないじゃないか」と思わざるを得ないところがあります。

少し調べてみると、この「岩手山眺望阻害三兄弟」などと言ってみたくなる3つの建物は、いずれも昭和30~40年代に竣工された建物なのだそうで、反対運動的なものがあったかどうかは知りませんが、少なくとも、当時は、法令上の規制は言うに及ばず、行政指導すら無かったのでしょうから、その意味では、非難できる筋合いでもないのだろうと思います(時系列的に見れば、この三兄弟の出現が、上記のガイドラインの登場に一役買っているかもしれませんが)。

他方、上記のガイドラインは、現在、景観法に基づき盛岡市が平成21年に策定した景観計画に引き継がれており、法律上の明確な根拠がありますので、これに沿った形で教育会館が建て替えられることについては、上記の眺望(景観)に価値を感じる者の一人として、率直に歓迎したいと思っています。

折角なので、サンビルと農林会館も、余勢を駆って建替(或いは移転)を検討されてはいかがでしょうかと思ったりもします。ちょうど、岩手山の眺望問題をさほど考えなくてもよさそうな東側の岩手医大が移転することから、そちらに「新・産業農林会館」を、飲食店舗などを交えた複合施設として作っていただいてもよいのではと思わないでもありません。

ところで、教育会館の建替にあたっては、景観等の観点から、もう一つ、指摘しならない事柄があり、このことは、とりわけ盛岡市民の方々には、よく考えていただきたいことだと思っています。

平成20年に、城跡など歴史的な名所・旧跡を残した風景の保全やまちづくりの活用への支援等を目的として、「歴史まちづくり法」という法律が制定されています(正式名称は、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律)。

法律の内容や活用状況は、以下に引用した国交省サイト(パンフレット等)をご覧いただければと思いますが、代表例として金沢城趾とその周辺地域の整備や保全などが掲げられており、金沢市を手本として城下町整備をすべきと思われる盛岡城趾及びその周辺地域についても、この法律の適用を受け、景観の保全や充実化に取り組んでよいのではないかと思われます。
http://www.mlit.go.jp/toshi/rekimachi/toshi_history_tk_000003.html

そして、教育会館の建て替え(新会館の建築)にあたっても、「盛岡城址に隣接する主要建築物」としての教育会館のあり方・位置づけを再検討いただき、デザイン等はもちろん、会館の機能等のあり方も含めて(言うなれば、佐藤可士和氏的な発想で)、石垣等と調和し歴史的な風致の向上を強く支えるような会館を造っていただきたいと思いますし、場合によっては、そのプロセスには、会館の施工主や市役所以外の方(歴史的景観の保全等に知見等のある専門家や住民等)が関与してもよいのではと思ったりもします。

例えば、藩校(明義堂・作人館)の写真や図面等が残っているのであれば、その意匠をデザインに取り入れるのが、「教育会館」に相応しいと思わないでもありませんが、いかがでしょう。

残念ながら?、盛岡市は、まだこの法令に基づく「歴史的風致維持向上計画」の認定申請をしていないようですので、ぜひ、地元の各種団体等(某「明るく豊かな社会を作ることを目的とした団体」など)におかれては、そうしたことにも取り組んでいただければ幸いに思いますし、住民一般にも、この点に関心を寄せていただければと思っています。

 

廃れゆく第三者検証と田舎弁護士

「大雪りばぁねっと」事件では、岩手県が山田町に多額の補助金(税金)を支出した(のに回収不能となった)関係で、補助金の支出に関わった県の対応に違法不当な面がなかったか検証する趣旨の委員会が行われ、先日、報告書が出されましたが、「県の対応は一概に不適切とまでは言い難い」等の検証結果に対し、県議会では検証不十分との批判の声があがったというの報道がなされています。http://www.nhk.or.jp/lnews/morioka/6045634511.html?t=1393991536424 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140304-OYT8T01513.htm

「第三者検証」については、平成11年頃に発覚した岩手青森県境不法投棄事件の際、当時の増田知事の指示で県の対応を検証する第三者委員会が設けられており、これは、「第三者検証」としては初期に作成されたもの(恐らく、第三者検証がその後に流行するきっかけとなったものの一つ)と思われます。

その際は地元の大ベテランの弁護士の方が委員長となり、我が国の環境系の行政法学者の第一人者の一人である北村喜宣教授が委員の一人として大鉈を振るったとも聞いており、この事件では岩手県は被害者という色合いが強いものでありながら最後の時期の県の対応には権限行使(許可処分)について違法な点があったと断言するという点で、画期的と目された検証報告書が提出されています。

その後も岩手県では、競馬場問題など幾つかの県の政策課題で第三者検証委員会が行われていますが、私の知る限り、報道で大きく取り上げられたとか県政に相当な影響を及ぼしたという話は聞いたことはありません。

私は、県境事件の検証報告書のほか、その後に公表された幾つかの報告書も見ていますが、県境事件に比べると、あまり踏み込んだ検討をしていないという印象を受けた記憶があります(釜石の鵜住居センターの報告書はまだ拝見していませんが、相当に膨大なものだと聞いており、地元の気鋭の弁護士さんも関わっているため、例外に属するのかもしれません)。

全国的に見ても「第三者検証」が期待はずれと言われることも少なくないようで、現在は「第三者検証」ブームの廃れ?に伴い、検証に関する取組も、徐々に低調になっているように思われます。

今回の「りばぁねっとへの補助金の検証」では、過半数が県職員で、外部者は県内の大学の先生お二人だけとのことですが、その布陣に止まったのも、低調な潮流の流れの一環と理解した方が賢明なのかもしれません。

ちなみに、山田町による検証報告書(こちらも地元のベテランの弁護士の方が委員をされています)もネットで概要版が公表されていますが、実務家としては、「補助金受領者の対応の検証」や「行政対応の検証」を目的とするのであれば、個人名は伏せるにせよ、受領者や関係職員等の具体的な作為・不作為を抽出し、それらに関わる法令・規則等も明らかにして、前者が後者に抵触しないかについて具体的に論及するような内容にした方がよいのではと思わないでもありませんでした(それがないと、何となく、行政の政策や執行のあり方に関する抽象的な見解に述べているに過ぎないように見えてしまいます)。http://www.town.yamada.iwate.jp/osirase/daisansha-iinkai/houkoku-gaiyou.pdf

もちろん、関係者の法的責任の有無の解明を目的とするか否かという前提の問題はありますし、私自身、検証のあるべき姿についてさほど心得があるわけでもありませんので、個々の作業に関し偉そうなことを言うつもりはありませんが(なお、通常は検証結果をもとに職員に対する懲戒等の処分をするはずなので、少なくとも、行政の担当者の作為・不作為(法適用等)が関係法令に合致したものと言えるかについて具体的な検討をする内容でなければ、やる意味がないのではと思いますが、その点の実情はどうなのでしょうか)。

ところで、弁護士会には「弁政連」という政治家の方への陳情等を目的とした別働隊のような団体があり、私も、名ばかり(昼飯穀潰し要員)ですが入っています。

岩手では「日弁連の偉い方々が掲げている憲法や人権云々の大きな話(集団的自衛権反対など)について、岩手の代議士や県議に陳情せよ」との指令?に基づき、年に1回くらい、議員さん達と懇談会をして、そうした話をしています。

ただ、そうした事柄もいいのですが、個人的には、個々の弁護士にも議員さん達一人一人にもさほどの影響力がない上記のような「大きすぎる話」ばかりでなく、陳情する側もされる側も一定以上の影響力を直ちに行使できる地元固有の事柄に、もっと力を注いだ方がよいのではないかと思わざるを得ないところがあります。

例えば、県議さんに対し、「県内で起こった、税金(県税)の使い道に関する大きな事件・問題の検証については、県職員や学者さんばかりに任せるのではなく、事実の調査や分析等に研鑽を積んだ(又は積む意欲のある)地元の若い弁護士に機会を与えて欲しい。(りばぁ事件のニュースで)県の幹部の方に、『県議自身が、検証委員は県職員で良いと選んだのだから、報告書を見て検証委員が県職員だから身内に甘くてダメだなんでいうのは間違っている』と言われるくらいなら、その方がマシではないですか」といった陳情をしてもよいのでは、と思わないでもありません。

とはいうものの、私が余計なことを口にしても皆さんに嫌な顔をされるだけなのだろうなぁと思って、会議・会合の類では毎度ながら貝になってしまうのがお恥ずかしい現実です。

個人的には、可能なら、岩手県に絡んで作成された過去数年ないし十数年の第三者検証委員会報告書を全部集めて、法律家の立場から、それらの精度を検証するような(いわば第三者検証ランキングのような)レポートを、意欲のある弁護士が作成して公表してもよいのではと思わないでもありませんし、私もそうした試みに関わってみたいという気持ちがないわけではありません(まあ、岩手弁護士会については、以前に身内で起きた大事件の検証もしていないじゃないかと言われそうな気もしますが)。

ただ、私自身、今や業界不況の真っ直中のせいか、事務所の運転資金のための労働と兼業主夫業で精一杯というお寒い現実があり、大言壮語を吐く資格が微塵もない有様で、ただただ嘆くほかありません。

少なくとも、「第三者検証なんて何の意味もないね、やっぱり警察に捕まえて貰うしかないじゃないか」という形で世論がまとまるのであれば、民主主義を標榜する社会としては寂しい限りというほかなく、関係者の奮起と国民・住民一般の後押しを期待したいところです。

追記(3/6)

この投稿をfacebookで紹介したところ、「友達の友達」である学者の先生から、預り金の信託に関する判例(最判H14.1.17及び最判H15.6.12)の紹介がありました。

私自身、十分に咀嚼できていませんが、例えば、自治体(金員交付者)がNPO法人(金員受領者)と信託契約を締結し、交付金を他の財産と区別して管理させる(特定の口座に預金させ目的外の預金払戻等もさせない)ことを徹底しておけば、仮に、法人が倒産しても、その交付金(預金)が特定され保全されていれば、破産の効果(総債権者による差押)が及ばず(信託法23条?)、取戻権のように全額を自治体が返還請求できるということもありうるかもしれません(後者の判決の補足意見参照)。ただ、信託は残念ながらご縁がなくほとんど勉強もしていませんので、まだ思いつきレベルです。

まあ、今回(りばぁ事件)は、自治体側の監視等の不行届が著しそうなので、そのような話をする前提すら欠いているということになるかもしれませんが、少なくとも、自治体が補助金を交付する例に限らず、預り金なども含め、返還の可能性を伴う高額な前払金を交付する場合には、信託的手法の活用も意識すべきことになるのかもしれません。

 

法テラス気仙と「くもじい」

先日2ヶ月ぶりに法テラス気仙の相談担当で大船渡市に行きました。今回は相談が2件しかなく、うち1件は無料相談には避けて通れない「ある種の心の病を抱えた、コミュニケーションに困難を伴う年配の方からの、不毛さを感じずにはいられない、実質的に事件性のない相談」でした。

ここであれこれ書きませんが、少し前に担当した岩手弁護士会の電話相談でもこの種の相談者に遭遇したほか、私以外の弁護士の方がその種の話に接したという話を聞くことも増えているせいか、そうした相談者の増加(社会の他の部門で対応できていないという点も含め)といった問題から司法資源や公金の運用のあり方まで、色々と考えずにはいられないものがありました。

大船渡の相談担当の際には、必ず、昼休みに末崎半島の手前で国道を降りて大船渡駅周辺などの激甚被災エリアを車窓から拝見して戻るというコースを辿っているのですが、昨年くらいから、漁業や加工関係の大小様々な建造物が建ち並ぶようになってきました。

建設中と思しき正体不明の巨大建造物も幾つか見られ、水産業界等に知見の乏しい山国育ちの身には、不思議な光景と感じるものも少なくありません。

漁業関係の会社事務所や加工場が立ち並んでいるエリアには、司法書士さんの事務所もありました。弁護士の場合、このような場所に事務所を作ることは到底考えられないこともあって、この先生はそれらの企業の人達から登記に限らず様々な書類作成業務を独占的に引き受け、それを原資に経営をしているのだろうか?と興味をそそられました。

ところで、当家ではテレビ東京系の「空から日本を見てみよう」という番組(日本の様々な地域を空撮を交えて取り上げる番組)を録画し視聴するのが習慣になっているのですが、私の知る限り、この番組で被災地を取り上げたことは、未だほとんどありません。少し前に、八戸~十和田を取り上げた際に、八戸の港が少しだけ出ていましたが、被災状況や復興等にはさほど焦点が当てられていなかったとの記憶です。

さすがに震災から間もない時期であれば、この種の番組で被災地(沿岸)を取り上げるのは不謹慎との批判を受けるのかもしれませんが、震災の風化が叫ばれる今こそ、このような番組で被災地を取り上げて、復興に向けて悪戦苦闘している被災地に新たに出現した「変なもの」に光を当てるなどして、ニュースや真面目なドキュメンタリーとは違った角度・視点から、全国の人々の関心を喚起していただければと思っています。

いっそ、県知事や地元市長さんなどがテレビ東京にトップセールスをなさってもよいのではと思うのですが、いかがでしょう。

 

地球温暖化対策プロジェクトチーム

平成16年から18年頃まで、日弁連公害対策環境保全委員会の「地球温暖化対策プロジェクトチーム」に所属していたことがあります。

日弁連の公害環境委員会は、私が所属する廃棄物部会のほか、水部会、化学物質部会、環境法部会、自然保護部会、原子力・エネルギー部会など、7つの部会に分かれて活動しています。

そして、それとは別に、部会横断的なテーマや新たなテーマを取り扱う場合に、有志がPTを作って、調査・意見書などの活動をしており、地球温暖化、水俣病、低周波音、東アジアの環境問題などを取り扱っています。

私は、平成16年に地球温暖化PTが発足した際、廃棄物部会からも一人を出向させよとの話があり、当時、部会では一番下っ端(若手)だったため、拝命に抗うこともできず、参加していました。

主力の先生が京阪神の方々だったため、何度か大阪に出張し会議に参加したほか、経団連や東京都庁への聴取に参加したことなど、懐かしい思い出です。

私自身は、地球温暖化の専門家などと言える身ではなく、主力の先生方の議論を拝聴し、意見書のごく一部のパートを担当するのが精一杯でしたが、当時、排出権取引(キャップ&トレード)や自治体の取り組みなど、地球温暖化を巡る様々な論点に関する資料を頂戴し、多少は勉強させていただきました。

地球温暖化PT自体は、平成18年に意見書を出して一旦解散し、その後、平成20年?頃に第二次PTが編成されたのですが、そちらは参加を辞退させていただいたため、平成18年以後、地球温暖化問題には全く縁のない状態が続いています。

最近、事務所の古い記録の整理(廃棄)を始めているのですが、温暖化PTの記録も、あれから出番がないまま、先日、ようやく当時の記録の大半を廃棄することになりました。

その中には、当時、温暖化問題を巡って議論されていた様々な関連テーマに関する新聞記事や欧州の温暖化対策法制など、地球温暖化問題に本腰を入れて取り組んでいる方にとっては、資料としての価値が相当にあるものも多く含まれていました。

そのため、県内等でそうした方にお会いする機会があれば、お渡ししたかったのですが、機会に恵まれず、残念というほかありません。

地球温暖化以外にも、公害対策環境保全委員会の関係者が作成した、日弁連等の様々な意見書も、平成10年頃から現在のものまで、ある程度は保存していますが、出番のない状態が続いています。

当事務所としても、古い記録の廃棄等が必要な段階に来ていることもあり、どうしたものやらです。

弁護士を15年も続けていると、何年も前に、色々なことと関わっていたことを思い返すことがありますが、現在まで何らかの形で続いているものは必ずしも多くはなく、その点は残念に思います。

時代の変化なのか、社会が大切なものを置き去りにしているのか、自分でもよく分からないというのが正直なところです。

岩手における「政弁交流」と復興法制に関する議論の様子

岩手弁護士会では、数年前から年1回ほど?の頻度で地元選出の国会議員さんや県議さんとの懇談会を行っています。都合の付かない方などを別とすれば、毎回、全政党・党派の方々がいらしています。

私自身は下っ端の一人として末席で協議を拝見するだけなのですが、一応は主催団体(弁政連岩手支部)の会員である上、今回は震災絡みの話題が豊富であることや、政官ならぬ「政と弁」のコミュニケーション自体には関心がありますので、なるべく参加することにしています。

で、先日、その会合があったのですが、時間の大半を震災問題、とりわけ高台移転などの土地収用・区画整理の問題に費やしていました。例えば、「相続人が膨大で事務作業が進まない事案が多い」などといった、問題点の報告がなされていました。

ただ、まだ実務の動きが進まないせいか、具体的な処方箋(大量相続人の事案で、例えば、不動産の遺産分割手続を省略し、行政主導による相続分の換価供託で済ませるような特別法など)について、あまり議論が煮詰まっている印象は受けませんでした。

まあ、私自身が、その種の議論と縁が薄く、話の中身を理解できていないだけなのかもしれませんが。

個人的に、強く印象を受けたのは、被災地で執務する方(弁護士)の報告として、現在の仕組みは、被災地の復興を担う主力となるべき、ある程度の収入、稼働力、資力のある40代前後の世代に対し冷たい仕組みになっているという話でした。

具体的には、その類型にあたる人は、住宅等の被災でローンが残存しても、ある程度の高収入があるので私的整理GLで救済(減免)が拒否されてしまうとか、その世代は一刻も早く自宅を再建したいのに、前提というべき高台移転等が整わないので、建てたくとも建てられず、さらに生活再建支援法に基づく加算支援金の期限も迫っているなどの点が挙げられていました。

そして、要するに、現在の被災地に適用される法や実務スキームが、勤労の意欲と能力のある復興の主力担い手層に冷たい形になっており、これでは、この層が次々に内陸に移住せざるを得ないのではという指摘がなされていました。

また、ある議員さんから土地の境界問題の迅速解決の必要性が強く述べられていましたが、その点について、現在の状況や処方箋などを述べる方がいなかったことが、少し気になりました。

私は筆界特定制度が導入された10年近く前、少しだけ筆界調査委員をやらせていただいたことがあり、その際、筆界特定制度の有用性(境界確定訴訟と比べた使い勝手の良さ)を感じる一方、法務局の方々が多くの手間をかけて非常に厳密な調査をしており、これを大量にこなすことは無理だろうと感じたことがありました。

思いつきレベルですが、筆界特定に関する特区制度のようなものを設けて、法務局や筆界調査委員の主導で、通常よりも簡易迅速な方法で筆界を定めて、不服がある者は自己の費用負担で通常型の処理を申し立てることができるといった制度を設けてもよいのではと感じました。

これと上記の未分割不動産の簡易買取制度をセットにすれば、境界及び相続未確定の不動産の区画整理などは、ある程度、迅速に行えるのではないかと思いますが、どうでしょうか。

この点は被災地における実務の実情を踏まえた判断になるでしょうから、詳しく調査、レポートする学者さん?などが登場いただければと思ったりもします。

ともあれ、このような政弁交流に限らず、ここ1、2年は、岩手弁護士会と県庁の方が協議することも頻繁に行われているそうで、これも震災前にはほとんど見られなかったことです。

私自身は、今や事務所の運転資金を稼ぐことに汲々とする身のため、そうした営みに参加する余力が乏しく、残念に思っているところですが、具体的に実働の出番が必要となれば、いつでも取り組めるようアンテナだけは張っておきたいと思っています。

被災地等に対する広報を通じた弁護士の関わり方について

先日、法テラス気仙の相談担当で大船渡に行きましたが、予約ゼロで当日飛び込みの簡単なご相談が1件あっただけで、ほぼ一日、内職等に潰して終わりました。

法テラス気仙には約1年前から月1回の頻度で通っており、毎回4名前後の方が来所していたので、このような経験は初めてでした。

ただ、法テラスは国?の資金で強力な宣伝活動を行っているので、ゼロ件となるのは滅多にないのですが、弁護士会や県(沿岸の出先機関)が主催の被災者向け相談事業などでは、宣伝力の格差のせいか、ゼロ件になることが以前から珍しくありませんでした。

集客できないなら規模縮小すればよいのにと思わないでもないのですが、仕事を減らせと安易に口にするわけにもいかず、集客等につなげる工夫をもっとできないのだろうかといつも思ってしまいます。

例えば、全戸配布される各自治体の広報やタウン誌、或いは地域内の業界団体等の広報などに簡単な連載コーナーを設けていただくことはできないでしょうか。

そして、被災関係に限らず、地域で取り上げるべき法的トピックについて、弁護士が執筆して説明したり、読者のアンケート等で要望があったテーマも積極的に取り上げつつ、記事の末尾で地元の窓口も紹介すれば、多少は集客力も向上するのでは?と思うのですが。

私は、岩手弁護士会の原発被害賠償に関する支援活動に関与しているのですが、この件も同様に集客力(相談等のアクセス)のなさに喘いできたので、可能なら岩手日報などで他の震災関連も含めた連載などの企画を採用していただければと思ったりもします。

他県の取り組みなどはまったく存じませんので、そうしたものが行われている例などご存知の方がおられれば、ご紹介いただければ幸いです。