北奥法律事務所

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岩手・北東北など

独り立ちできぬ勝者なき岩手の政治と県民の課題

夏休みの関係で投稿が少し遅れましたが、先日、平野達男参院議員が岩手県知事選の出馬断念を表明するというニュースがありました。ご自身は、復興のあり方を争点としたかったのに、安保法案への賛否が投票動向を左右する事態になっていることが不本意だと表明する一方、報道によれば、自民党本部から、知事選と参院補選の双方の敗戦が危惧され政権に影響を及ぼす事態になるのを避けたいとの理由で、強い撤退要請があったとされています。

私は、平野氏が出馬表明した本年4月の時点で、「平野議員と達増知事の基礎票は拮抗しており、無党派層の動向で勝敗が決するのではないか」とブログで投稿したことがあり、無党派層の一人として、両候補の健全な政策論争を期待していただけに、残念でなりません。
→ 次の知事選(いわて夏の陣)と無党派層の決定的な影響力。

ただ、この4ヶ月弱の期間を見ると、平野氏が、挑戦者であり現職の達増知事よりも無党派層へのアピールを強く求められる立場のはずなのに、県内世論に伝播する方法で広く政策や政見を表明するような行動が全く見られない(要するに、存在感のない)状態が続いていたと思います。そのため、安保法案問題も相俟って、現状なら達増知事の勝利ではとの印象は私も受けていました。

とはいえ、岩手は沖縄と異なり、安保法案に関する国内世論が有権者の投票動向に決定的な影響力を及ぼすわけではありませんし、平野氏自身、安保法案や議論には関与していなかったのですから、県知事選を戦い抜きたいのであれば、県内世論の関心を喚起する論点、議論を次々に打ち出して、安保法案の動向に関係なく平野氏個人に投票したいという無党派・浮動層の開拓に努力すべきだったということに尽きると思います。

仮に、平野氏が、2年前の参院選の頃から、沿岸・内陸を問わず岩手の活性化のための様々な施策を独自に掲げ、無党派県民を巻き込み達増知事に議論を挑むような営みを地道に続けて、「平野党」を形成することができていれば、自民党本部から撤退要請がなされることもなく、あったとしても跳ね返すことができたのでしょう。

そうした観点からは、平野氏の知事選表明も、風だのみ、自民系の支援頼みという程度のものとの誹りや、政治家としての求心力、メッセージ性、或いはそれらの前提としての、千万人といえども我行かんという強い意志、知事として、岩手のため特定の事柄(政策その他の権力作用)を誰が何と言おうと実行したいという「政治家としての意地・執念」の不足という批判を免れないということになるのかもしれません。

選挙自体は、他に対抗馬も時間もないということで、達増知事の無投票再選が確実視されていますが、岩手の将来に関する色々な論点・実現のプランを、候補者等が多様な角度・立場から議論し、競い合い、それを県民が選択する機会が失われたという点では、民主主義(住民自治)の後退というほかなく、残念です。

達増知事にしても、無投票より選挙で民意の承認を得た方が、ご自身の政治的基盤の強化という点で遥かに価値があったはずで、現時点で勝利が有力視されていたという面から見ても、必ずしも今回の撤退劇の「勝者」と評することは出来ないと思います。

今回の撤退劇では、平野氏は政治家としての権威が地に落ちたと言わざるを得ないのでしょうし、自民党本部も、「撤退のごり押し」の印象を残し、岩手県民が中央政権への反感のDNAを有することに照らしても、選挙で負けるのに劣らないほど「敗者」のイメージを生じさせたと言ってよいと思います。

他方、達増知事も、小沢一郎氏の政治判断の追従者ないし信奉者というイメージの強い方ですし、県知事としても、特定の政治理念、政策を掲げて実現に邁進しているという印象が乏しく、震災絡みであれそれ以外であれ、県民世論や県当局が課題として取り上げた論点、政策を淡々と取り組んでいる方という感じがします。

例えば、初当選時に掲げた「いわて4分の計」は、当時の民主党が地方自治の単位(市町村)を大きくする政策を掲げていたことと関わりがあるのだと思いますが、震災後は聞くことがなくなりました。その後は、震災における「なりわいの再生」の強調に見られるように(漁業に関し、外資導入を指向して地元漁協と対立した宮城県と異なり、小規模漁協や零細漁業者の再興を重視しているのが典型ではないかと思われます)、小規模な地域・単位向けの政策へのウェイトが高くなっているように感じます。

そのため、達増知事にとって今回の選挙は、ご自身の政見や政策を再検討し、ポスト小沢氏時代に県政界をリードする政治家として、独自の政治理念、政策を県民にアピールし、求心力(権威性)を得る絶好の機会であったというべきで、ライバルを倒すというプロセスを経ない無投票再選が、その機会を奪ってしまう面は否めないと思います。

また、階氏などの民主党(岩手県連)勢力も、「平野氏を引きずり下ろした」などと言えるだけの役割を果たしたとは言えないでしょうし、ポスト小沢氏時代に向けて、選挙という達増知事側との分かりやすい関係修復の機会を失ったという点でも、勝者とは言い難いと思います。

敢えて言えば、平野氏が県知事選に出馬した場合に生じた参院補選について、階氏らが、もと生活党の畑氏(久慈出身)を強く推しており、他方で、小沢氏が、県南出身者を立てるべきと主張していた関係で、再度の対立劇を回避したという点では得るところはあったかもしれません。

しかし、平野氏撤退の原因とされる自民党の選挙予測からすれば、小沢氏勢力との軋轢を覚悟の上で、畑氏を担いで当選を実現させていた可能性も相当にあるように思われます。その場合、小沢氏の県内での影響力は、決定的と言ってよいほど低下する(それに代わって階氏らが県内政界の第一人者としての認知を受けた)のでしょうから、そうした機会を失ったという点でも、階氏らも勝者とは言い難いというべきでしょう。

このように、今回の平野議員の撤退劇は、勝者なき結末というに止まらず、平野議員は自民党本部から、達増知事や民主党は小沢氏から、独り立ちして闘う力があることを示すことができなかった、又はその機会を失ったという点で、「いわての政治」の未熟さを感じさせた面があるように思われます。

もとより、その根底には、県民が、広く県政のあり方を議論し、適切な指導者を押し立てて地域の新たな姿を切り開こうとする政治文化の不足があるというべきで、一部の政治指導者の方だけを非難するのが誤りであることは、申すまでもありません。その点では、自らの投票動向で知事を選び新たな政治潮流を作り出す機会を失った県内の無党派層こそ、己の力不足の必然的な帰結とはいえ、一番の敗者というべきなのだろうと思います。

裏を返せば、左右などの立場を問わず、従来の政治的、利権的な枠組みの維持(変革の拒否)=政治の沈滞を希望する守旧的な勢力こそが、今回の撤退劇の一番の勝者というべきなのかもしれません。

実際、撤退劇に伴う「無党派層のしらけムード」により、県議選や盛岡市長選などは投票率が大幅に低下すると予測され、そのこともまた、投票率の増加(無党派層の政治的プレゼンスの増大)を希望しない勢力にとっては、歓迎する事態ということになるのでしょう。

それらとの対比では、「琉球人の意地」を背負って闘っているように見える翁長知事を擁する沖縄県や、保守層出身でありながら地域のアイデンティティを強力に主張し国と闘うリーダーを出現させている沖縄県の政治文化(その根底にある経済力)を、羨ましく感じる面があります(もちろん、その背景に沖縄の苦難があることも看過すべきではありませんが)。

岩手ないし北東北でも、琉球人ならぬ「蝦夷の末裔」としてのアイデンティティを掲げて「政府からの自立と興隆」を打ち出そうとする指導者の登場や県民個々の尽力をはじめとする政治文化の醸成を願うばかりです。

その意味では、「補助金に頼らず商業施設の地道な利潤による公的施設の運営コストの捻出」を旗印にしているオガール紫波は、その萌芽と言えるのかもしれませんし、これと同じように、中央の政治力や資金力、権威ある大物に依存せず、自身の信念と用意周到な努力により新たな価値を創出する営みが、広く求められているのだろうと思います。

早慶戦vs北東北トリコロール三国志

先日、野球の早慶戦に関して作成されたポスターが、鮮やかな赤と青の組合せ、構成の巧さや印象的なキャッチコピーなどを巡って、FBをはじめネット上で大いに話題になっていました。
http://www.asahi.com/articles/ASH5X552PH5XUTQP024.html
http://full-count.jp/2015/06/04/post12180/

これについて、ふと思ったのですが、

①赤と青に白を加えれば、フランスの国旗(トリコロール)になる。

②二戸地域は、北東北3県(の境目にある二戸や3県の周辺地域)を「トリコロールエリア」と称して、振興目的の雑誌を刊行している。

③他方で、増田県政の初期には、道州制論議なども絡んで3県の連携なども話題になったが、流行の廃れか県境不法投棄事件の影響?か、その後は連携気運が冷え込んだまま、現在に至っている。

④北東北3県は、地理的・歴史的な事情もさることながら、人口減少や自殺(自死)問題など共通の地域課題も多く、相互の連携ないしそれを前提とした一体となった地域づくり、アピールが必要なエリアである。

というわけで、北東北3県も、早慶戦ポスターの真似をして、二者対決ならぬ三つ巴の対決を演出して、共同して対外的なPRをしても良いのではと思いました。

その場合も、「トリコロール」ではピンと来ませんので、「北東北三国志」などと対決色をイメージさせるようなキャッチコピーを作ってはいかがかと思います。

また、3県の色の配分を決めなければなりませんが、青は「青森」でしょうし、秋田は「秋→紅葉」のイメージで赤でしょうから(県旗も赤色ですし、佐竹家の華やかなイメージがありますし)、残った白が岩手ということになりそうです。実際、岩手は3県の中でも一番、地味なイメージがありますので(ブランド力ランキングでも3県で一番下ですし)、白がお似合いというべきかもしれません。

余談ながら、前記の「トリコロール」という雑誌も、少し調べただけですが、北東北3県で色の配分をしているのか、よく分かりませんでした。イメージ戦略という点からは、なるべくカラーをはっきりさせて売り出すべきではと思います。

で、ポスターないし対決ごとのキャッチコピーですが、さしあたり、早慶戦ポスターを真っ正面から真似ると、チアリーダー対決編では、こんな感じになるでしょうか。

「のぞみん以来パッとしないわね、秋田さん」
「学歴自慢で炎上がお似合いよ、岩手さん」

青森は?というと、秋田が近いこともあり、いわゆる美人県のイメージは間違いないと思うのですが、著名人だと藤川優里市議しか思いつかず、若い女性タレントさんのイメージがあまりありません。ネット検索で、新山千春さんがいることを思い出しましたが、ケンミンショーで見かける以外に存じておらず、すいませんが、ネタとして思いつく話がありません。

あと、念のため付記しますが、上記はネット上で流布されているニュースをネタにしたジョークの類であり、他意はありませんので、当事者(まかさご覧になるとは思いませんが)及びファンの方々はご不快な思いをなさらないよう、ご寛容とご容赦のほどお願いします。

他にも、子供同士が自県の妖怪ネタ(座敷わらし、なまはげ等)をネタにして張り合うパターンも、妖怪ウォッチ全盛の現在、受けが良いのではと思います。妖怪自身が登場して早慶戦ポスターを真似れば、こんな感じでしょうか。

なまはげ「太平洋側のこども達の泣き叫ぶ声が、イチバンのごちそうだよ」
河童+座敷わらし「おどかす以前に日本海の大雪に埋もれないよう、ご自愛するのである」

河童+座敷わらしは、パッカー大佐と「ぼっこ」を採用してもよいでしょうし、余勢を駆って、「鉄神ガンライザーvs超神ネイガーvs跳神ラッセイバー」というヴァージョンを考えてもよいと思います。

あとは、知事に武将風の格好をしていただき、

「津軽(弘前)と南部(八戸)の内乱を煽動し、青森を弱体化させるのじゃ」
「岩手こそ、伊達(県南)を唆して南部(盛岡)を挟み撃ちじゃ」

といったパターンも考えられますでしょうか。早慶戦ポスターの真似にこだわるのなら、

青森県知事「トラウマになるまでホラ吹いてやる、岩手のことを」
岩手県知事「思うぞんぶんホラ吹かせてもらうよ、青森の空に」

といったところかもしれませんが、さすがに悪ノリ的で、無理がありますね。

あと、3県で全国トップを占める産物などがあれば、それをネタにすることも良いのではと思いますが、「3県で全国1位~3位を占める産物」というのも、あまり聞いたことがないように思います。

「3県で全国トップ独占」というと、自殺率や人口減少などという暗い話題をイメージしてしまいますが、後者はまだしも前者はコピーに使うのは賛否両論ある(よほど巧く作らないとバッシングの嵐になる、反面、巧く作れば自殺防止キャンペーンとしても生かせる)ということになりそうです。

早慶戦ポスターをそのまま拝借すれば、こんな感じでしょうか。

「岩手に勝つだけのワースト脱出など、したくない(秋田)」
「三県そろって皆が幸せな国になってこそ、意味がある(岩手、青森)」

特産品に関してはリンゴ(青森)も米(秋田)も1県が他を圧倒していますし、桜も世間的には青森(弘前)、秋田(角館)、岩手(北上)で順位が固定されており、対決形式としては盛り上がらないのかもしれません。

ただ、こうして幾つか見てみると、青森・秋田に比べると、岩手には自慢できるような1番がどれほどあるのか、心許なくなってきます。

すぐに思い浮かぶのは漆ですが、ネタの地味さもさることながら、他の2県では生産自体を聞いたことがありません。あと、岩手が生産量1位と言えば、アワビとワカメとホップくらいでしょうか。

これらも、「原料供給のみで、加工品として全国区のネタ(ブランド商品)が乏しい」という残念な実情のせいか、お国自慢のネタとしてはあまり盛り上がらないようにも思われ、そのことも、「地味な岩手」を象徴する事象というべきなのかもしれません(企業チックに言えば、下請ばかりで自社の有力PB商品がない会社、という感じに見えます)。白だけに、「オシラサマがお似合いよ」、とかチアリーダーに言われてしまいそうですが、逆転の発想で、「地味っぷり日本一」とでも叫んで売り出すのも、岩手の賢明な選択なのかもしれません。

私はケンミンショーが好きで、ビデオに撮って(お約束シーンに限らず全編をじっくり見る転勤ドラマ以外は)早送りで飛ばしながら見ているのですが、同じ「3県」でも、北関東3県は県民やタレントさん同士が元気に張り合うシーンがよく登場し、ある意味、羨ましく感じています(この3県は、平均寿命でも東海地方や沖縄と並んで上位に来るようで、塩分とアルコール取りすぎ三兄弟というべき北東北3県にとっては学ぶべきところが多そうです)。

「北奥」法律事務所の看板を掲げる身としては、ぜひ北東北3県の交流・連携を盛んにしていただきたいところであり、北関東3県などを見習い、互いに連携して盛り上げる努力を行っていただきたいものです。

少なくとも、

「我が県(県民)の繁栄(生活)しか、考えてない」
というのでは、全国の方々に、

「それは視野せまい」と笑われることでしょう。

盛岡市(岩手県)は、ウルシ(国際電波科学連合)の総会を誘致すべき

先月の日経新聞「私の履歴書」は、前・京大総長で現・理化学研究所の理事長である松本紘氏が執筆されていたのですが、6月20日の記事で、ウルシ(URSI。国際電波科学連合)という団体の会長を務めていたという話が取り上げられていました。

このウルシ(国際電波科学連合)という団体は、電磁波の研究者による国際的な学術団体とのことですが、エレクトロニクスや電波天文学、医療用電磁気学など、電磁波ないし電波に関する様々な領域を扱う団体で、宇宙研究とも関わりが深いのだそうです(そもそも、松本氏ご自身が我が国の宇宙科学の第1人者のようです)。

このように、「ウルシ」と「宇宙学」の2つを聞くと、二戸人としては、沸き立つような感情を抑えることができません。

すなわち、「ウルシ」は、偶然だとは思いますが、「漆」に通じるところ、二戸(浄法寺)が漆の日本一の産地であることは地元民は当然知っている(べき)事柄です。この点は関係者のご尽力もあり、その知名度は確実に上がってきていると思います。

そして、「宇宙」「電磁波研究」ですが、このブログでも何度か取り上げたとおり、我が国の物理学の創業者の一人である田中舘愛橘博士は、二戸の出身であり、とりわけ、宇宙学・地震学や後進の育成などで多大な功績を残したとされています。

例えば、松本氏のこの日の記事には、日本最初の文化勲章受章者である長岡半太郎博士(戦前の宇宙研究の第一人者)がウルシの副会長を10年間務めたとありますが、長岡博士は(wikiによれば)若い頃は愛橘博士のもとで学んだのだそうです。また、愛橘博士のwiki情報にも電磁気学の研究が取り上げられており、何らかの形で愛橘博士もウルシとも関わりを持っていたのではないかと思われます。

このように、二戸は、「ウルシ(漆)」と「宇宙学・電磁波研究」の双方に、大きな関わりがあるわけで、このような街が、ウルシ(国際電波科学連合)と何の繋がりも持たないのであれば、地元民(出身者)の素朴な感情としては、恥ずべきことだと言っても過言ではありません。

とはいうものの、さすがに、国際的な学術団体の世界会議(総会)を、二戸市が誘致できる力があるはずもありません(少し調べたところ、京都で開催されたことはあるのだそうで、松本氏が京大出身であることも影響しているのでしょう)。

これに対し、隣県の宮城(仙台)では、先般、国連防災世界会議という世界的な会合を誘致して成功を収めており、ウルシの総会の規模などはまったく分かりませんが、多分、仙台であれば、誘致先としては何の問題もないのだろうと思います。長岡博士は東北帝大の創設にも関わっているそうで、その点でも繋がりがありそうです。

しかし、二戸人ないし岩手県民としては、可能なら盛岡での誘致を目指して活動していただきたいところです。ウルシには10もの分科会があるそうですから、被災地(沿岸)なども含め、主会場と10の分科会を両県で分散させる形の開催も提案してよいのではと思います。

とりわけ、岩手・宮城は長年に亘りILCの誘致活動をしているわけですから、電磁波とILCにどこまで学問的な繋がりがあるかは分かりませんが、「宇宙つながり」或いは世界中の宇宙研究に取り組む科学者を誘致することの前哨戦という点で、両県が協力して取り組む意義が大いにあると思います。

さらに言えば、松本氏の連載によれば、宇宙に関する電磁波の実践的研究の一環として、「宇宙太陽光発電」というものが研究、計画されているのだそうで、これが実用可能になれば、原発や火力に代わる有力な電力調達の手段になるのかもしれず、脱原発という福島も絡めた形(被災地3県の連携開催)でも、話を膨らませることができるのかもしれません。

松本氏の記事によれば、ウルシの総会は、内部のプレゼンと投票により決定し、日本は(当時)米国に次ぐ票数を有しているのだそうです。二戸市も、大がかりな話は県庁などにお願いするにしても、例えば、浄法寺漆器を多数調達して、松本氏をはじめ、世界中のウルシの役員さんに贈答することから初めても良いのでは?などと思わないでもありません(当家でも愛用している夫婦椀や箸くらいなら、FIFAと違って?ワイロというほどの額でもないと思いますが・・)。

また、岩手県知事選・盛岡市長選の候補者(や支援者)の方々におかれては、ウルシの総会誘致を公約の一つに取り上げることも検討なさってはいかがでしょうか。

かくいう私も、亡父の命令で、二戸市の「田中舘愛橘会」の名ばかり会員になっているのですが(盛岡でいう、タマちゃんならぬ原敬を想う会のようなものです)、愛橘会の方々にとっても、活動内容(目標)の一つとして考えていただければと思っています。

復興支援やらなイカ~稼ぐ弁護士会が被災地を変える?~

先日、岩手弁護士協同組合(弁護士会ごとに設置されている協同組合の岩手版)の総会があり、タダ飯(弁当)が食えるというだけの理由で、毎年同様、出席してきました。

その際、災害対策本部のY先生から、「全国の弁護士に向けて、被災地(沿岸等)の特産品の販売事業を行い、被災企業などの支援をして欲しい。他県の先生からも、岩手でそのような事業を行って欲しいとの声が上がっている。」との提言がありました。

この点、各地の弁護士協同組合の中には、数年前から自県の特産品を全国の弁護士さん向けに販売する事業を行っているものが幾つかあり、かなりの収益をあげている県(組合)もあるのだそうです。

これに対し、岩手弁護士会では、そのような話は全く実現しておらず、理事の方が仰るには、数年前に生鮮品の販売を構想して生産者の方と協議するなどしたものの、話がまとまらず立ち消えになったのだそうです。もし、震災以前から事業を始めることができていれば、震災の年などには、全国の弁護士さんから膨大な「支援購入」があったのだろうと思うと、残念でなりません。

で、結局、その会議では、特段の異論もないものの具体的な実施手段などが話し合われることもなく、執行部(理事長さん達)にお任せするという程度で話が終わり、どうなることやら(たぶん、そのまま来年の総会を迎えるのかなぁ?)といった感じがしています。

その際、私も雑談感覚で、「今、地方絡みの物販で一番ホットな話題は、ふるさと納税なので、全国の高額納税者の弁護士さん(最近は激減したかもですが)に、ふるさと納税とタイアップした被災地特産品購入を売り込んではいかがでしょう」などと言ってみましたが、思いつきレベルの発言のせいか、あまり相手にして貰えませんでした。

ところで、弁護士協同組合の商品販売に関しては、京都の弁護士協同組合が日本酒や帆布などのオリジナル商品を展開しており、中でも、「やっこさんは白だな」は、ニュースで取り上げられるほどのインパクトを残しています。

私も、「他のお店等でも手に入るような商品の販売」とか「(被災地支援のみを強調するような)善意のみに頼った販売方法」などというのは下策というべきで、京都弁護士協同組合を見習い、世間的にもインパクトないし話題性があり、かつ、購買意欲に訴えかけるような、商品(ネーミングを含め)の開発に尽力すべきではないかと考えます。

というわけで、こんな商品群を考えてみました。「こんな特産品は嫌だ」(鉄拳のパラパラマンガ風に)などと仰らずに、ご覧いただければ幸いです。

商品① 「復興支援やらなイカ」

イカ徳利など、三陸のイカ関連商品のセット。復興支援の意欲をそそるような商品の組合せ又は開発について、岡口基一判事と津久井進先生(兵庫県弁護士会。阪神側の震災問題の第一人者)に監修をお願いし、パッケージのデザインは中村真先生(兵庫県弁護士会)にお願いする。兵庫会と岩手会は被災地支援の関係で繋がりのある先生も多く、全面協力間違いなし。なお、元ネタが分からない方は、こちらをどうぞ。

商品② 「二重ローンを無くし鯛、僕は体重減らしタイ」

鯛を素材にした低カロリー食品を開発して販売。パッケージには、岩手弁護士会を代表する被災者支援の専門家であると共に、当会きっての巨漢である某先生にご登板いただく。中村真先生にイラストをお願いするのも良策。

商品③ 「カキ休廷中に、裁カレー」

県内産の鯖と牡蠣(真牡蠣)を組み合わせた激辛カレー。開発担当者いわく「裁判所の夏季休廷と、真牡蠣の旬が冬であること(夏は休み)を組み合わせると共に、裁判官がいないはずの夏季休廷中に裁かれる(判決が出る)などという、びっくりするような話に着想を得て、食べた人の目が飛び出る激辛カレーを作ってみました。」とのこと。仙台弁護士協同組合も金華サバと桃浦カキで同じ名称の商品を販売準備中との噂もあり、不正競争防止法などの適用を巡って、岩手会と仙台会で紛争勃発の事態も危惧される。

商品④ 「けいじ弁護も忘れずに~ブル弁の皆様へ~」

月に数本とれるかどうかの最高級希少種である「鮭児」を、東京の高級料亭の全面協力のもと解凍後も旨味を損なわない技術(特許出願中)を開発し、豪胆に発売。贅沢品のため、弁護士登録から長年に亘って刑事弁護とはご縁のない大手渉外事務所などのブルジョワ弁護士さんや、セレブなヤメ検の先生でないと購入は無理。富裕層の方々に普通のチラシを送っても訴求力はないということで、ヤミ金を参考に漆塗りの電報で勧誘するのもアリかも。

また、複数食材の組合せによるセット又は加工品として、次の商品も考えられます(解説省略)。

商品⑤ 「ワカいがメでたく成立し、当事者も裁判官も、よろコンブ」

商品⑥ 「異議あり! しょウニんには、誤導をサケて、カレイな尋問を」

以上のほか、アワビ、ホヤ、ホタテ、サンマなど、岩手を代表する他の食材群も、皆さんの駄洒落、ではなく、智恵と工夫に基づく商品化をお待ちしています。もちろん、「森は海の恋人」ですので、コラボ商品も含めて、魚介以外の県産品もぜひご活用下さい。

商品名などは、facebookで怒濤のごとく駄洒落攻撃をされている「ハードボイルド弁護士探偵」こと法坂一広先生(実は、研修所の同級生。リハビリ中とのことで、早期のご快癒をお祈りしています)にお願いしても良いかもしれません。ついでに次回作品に商品も登場させていただき、宣伝にも一役買っていただければ、なお有り難いことでしょう。

また、裁判所サイドからも、加藤新太郎もと判事(現・中央大ロースクール教授)にお出まし願えれば、業界内の話題沸騰という点で理想的と思います。

残念ながら、岩手弁護士協同組合が、自らこんな野心的企画?に身を投じる展開は期待できそうにありませんので、ぜひ、組合側に企画等を売り込んで牽引していただける企業さんに、ご登場いただきたいものです。

「まちづくり」の世界では、一世を風靡しているオガール紫波をはじめ、「稼ぐまちが地方を変える」と言われていますが、岩手弁護士会の「被災地支援活動」をML上で垣間見ると、相談者がほとんど来ない相談会に内陸から沿岸に往復で丸一日かけて若い弁護士さんを派遣するといった類の企画を散見するように感じられ、残念に思っています。

また、その派遣費用(担当者の日当)も、震災時に他県の弁護士さんなどから岩手弁護士会に寄せられた多額の寄付が原資になっていると思われ、それだけに、「他人のカネで、利用者=稼ぎがない企画を繰り返す」光景を垣間見ていると、「補助金を原資に一過性の企画ばかり繰り返しては、善意から従事する関係者を摩耗させ、衰退の道を辿っている全国の商店街」に類するものを感じざるを得ないと思っています。

現在、引用の書籍を拝読していますが、岩手弁護士会も、全国の弁護士さん達の寄付(いわば補助金)に依存して「支援活動」をするのでなく、自ら相応の収益をあげ、それを活動の原資とするだけの力がなければ、本当に社会を変えるだけの被災地・被災者支援はできないというべきなのかもしれません。

カリヨンの鐘と子どもシェルター

今月の日弁連会員誌「自由と正義」の冒頭で、東京弁護士会の坪井節子先生が主催されている「子どもシェルター」の記事が載っていました。

「子どもシェルター」とは、親の虐待などでやむなく家出し、寝泊まりする場所に困窮する未成年者を保護する施設です。

私は未成年者保護に関する実務に明るくありませんので詳細は存じませんが、児童相談所の一時保護制度が、主に幼児などを保護対象としている?関係で、高年齢の未成年者(いわゆるティーンエイジャー)の保護が十分でなく、性的虐待などこの年代に特有の被害を受ける未成年者の保護に力点を置いた施設が必要ということで、設けられてきたようです。

そのため、記事では、東京のシェルター(カリヨン)で保護した未成年者が、平成16年の設立以来、15歳から19歳まで延べ300人になったという趣旨のことが書いてありませいた。

で、現在は、関東や札幌、京都や中国地方、福岡などに設置されているとも書いてあったのですが、残念ながら、東北地方ではまだ未設置のようです。盛岡でも設置を考えていただきたいところですが、最低でも、仙台にあれば、東北各地の困窮する未成年者を保護することができるのではと思われ、早急に設置を検討いただきたいところです。

記事によれば、シェルターには2ヶ月ほど滞在でき、その間、食事や適度の遊びなどはもちろん、医療やカウンセリングを受け、児童相談所や福祉事務所、非行絡みの事案では家裁や保護観察所などと連携し、親権者・学校・職場と交渉し関係調整を図り、家庭に戻ることが困難な事案では、自立援助ホームに転居するという流れをとっているのだそうです。

私自身、東京時代には、坪井先生や川村百合先生などが主催されている東京弁護士会の子ども向けの電話相談制度に登録するなどしており、これまでも、いわゆるティーンエイジャーの虐待問題が絡んだ事案に関与したこともありますので、篤志家の寄付にばかり頼るのではなく、そうした福祉制度を充実させる方向で、税金の使い道を考えていただきたいと思います。

ちょうど、「自由と正義」の同じ5月号に、児童買春・児童ポルノ禁止法の平成26年改正(児童ポルノの単純所持罪導入など)の概説が掲載されており、その中に、「心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度の充実及び強化」が新設されたとのことですので、関係者におかれては、これを法的根拠として、子どもシェルターの設置などを働きかけていただきたいところだと思います。

追記 少しネットで検索したところ、仙台にも、少年院を出院した少年を受け入れる更生支援的な施設があるとのことです。こちらも意義のある活動ですが、ぜひ、子どもシェルターの設置等にもご尽力いただければと思います。
http://blog.rosybell.jp/

春の気仙みちと桃源郷

昨日は法テラス気仙の担当日でした。この日の岩手の桜前線(ソメイヨシノなど)は、盛岡は5分散り、花巻周辺はすでに散り際も多いものの、寒冷な遠野・宮守エリアの街道沿いの並木は満開~散り始めで、峠を下った住田町は散り際となり、大船渡に至るとほぼ葉桜、という状態でした。

反面、住田町内は新緑の開始時期で、山桜のほか芽吹いたばかりの新緑の淡い緑色や黄色、黄緑色などの多様なグラデーション(薄桃、薄紫の桜色を含め)が大変美しい状態にあるほか、街道沿いの民家には、桜かそれ以外(桃?梅?)か分かりませんが、満開になっている樹種も多く見られ、濃い桃色や赤みがかった花の様子なども楽しむことができました。

そのような空間を運転していると、視界全体に優しい色が広がり、優しさに包まれているような、まるで桃源郷にいるかの如き印象を受けました。

住田町は、観光地的な桜の名所というのは聞きませんし、ソメイヨシノ等の群木などもありませんが、狭隘な谷間を囲む山々の新緑のグラデーションは、春を描いた巨大な日本画の屏風絵を続けざまに見ているような印象があり、こうした美しい光景は、住田町に限らず、北上高地ならではという面があります。

住田町は、晩秋から冬にかけての気仙川の渓流も大変美しいのですが、こうした心地よいドライブコースは、もっと知られてよいと思いますし、見応えのある場所の展望場所の整備なども考えてよいのではと感じています。

昼食は大船渡の魚市場食堂でいただきましたが、デッキの間近では、冬はあまり見かけなかったような気もする無数の海鳥(ウミネコ又はカモメ)が羽ばたき、快晴の空や海の青さと鳥の白さのコントラストが心地よく感じられました。

桜並木が散った後の葉桜の光景は、どことなく寂しい印象がありますが、港町では、海鳥たちが、空に舞い散った桜の白い花弁が姿を変えたかのような趣で、その寂しさを慰めてくれるのかもしれません。

そんなわけで、最後に一句。

花ふぶき海鳥となる気仙桜

次の知事選(いわて夏の陣)と無党派層の決定的な影響力。

8月20日告示、9月6日投票の岩手県知事選は、ここ最近の下馬評のとおり、現職の達増知事と平野参院議員による事実上の一騎打ちという展開になりました(共産党系候補も出馬されるとは思いますが)。

小沢氏の民主離党直後に行われ、小沢氏系が「民主vs生活」の構図となった平成24年冬の衆院選に引き続く、ポスト小沢氏時代の宿命の対決編第2幕というべき選挙で、ある意味、大本命同士の対決と言っても良いのではと思います。

で、さすがに現時点でこの選挙の当落予測をしているマスコミ(地元紙)はないと思いますし、私も軽々に物を申すつもりはないのですが、平成25年の参院選の際に、過去の国政選挙などの投票動向をプチ分析したことがあり、その結果をもとに考えると、両者の基礎票が概ね拮抗しており、無党派層の投票動向で結果が決まると言ってよいのではないかと強く感じました。

そして、そのこと(自分達の投票が結果を左右するということ)は、棄権率も高い無党派層に投票を呼びかけるという観点からも、広く認知されてよいのではないかと思い、記載内容に色々とご批判もあろうかとは思いますが、議論喚起の趣旨で、投稿させていただきました。

以下、上記の理由を述べますが、まず、平成23年9月の知事選における達増知事の得票率は68%となっており、対立候補である高橋博之氏)の得票率は25%となっています。

この選挙の当時、民主党の内紛が始まっていたものの、小沢氏はまだ民主党に在籍し、県内の小沢氏系勢力は未分裂の状態でした。そのため、高橋氏(県議)は、自身が所属する地元勢力「地域政党いわて」と自民党岩手県連の支持を受けて闘いましたが、知名度不足のほか、高橋氏自身が割とリベラルっぽいスタンスのためか、自民党支持者の支持を集めることができず、民主党=非自公・非共産勢力が概ね一丸の状態のまま対決を余儀なくされたので、震災直後の厭戦ムードも相俟って達増知事が大勝し、高橋氏は上記の得票率に止まったのではないかと思われます。

次に、平野氏については、民主党を離党して挑んだ2年前の平成25年の参院選での得票率を見ると、概ね40%になっています(民主党在籍時の平成19年選挙では達増知事と同じく6割の得票)。ただ、今回の知事選では自公勢力の全面支援が見込まれるところ、この参院選での自公系候補(田中真一氏)の得票率は26%なので、これを足せば66%となり、上記の達増知事の得票率と同程度となります。

そのため、各選挙での政治情勢の違いがあるとはいえ、達増知事・平野氏の両勢力の過去の得票率は、ほぼ拮抗すると言ってよいのではと思います。

ところで、平成25年の参院選では、平成24年冬の衆院選まで一丸であった小沢氏系勢力の得票が、「平野氏:関根敏伸氏(生活党候補):吉田晴美氏(民主党候補)」に三分割され、その得票率は、概ね60:25:15となっています。現在の報道では、民主党岩手県連は平野氏を敵視しており、達増知事の支援に廻る層が相当に出ると見られますが、その場合でも、平成25年の参院選の得票状況が再現されるのであれば、平野氏が勝利することになります。

もちろん、平成25年の参院選の生活党候補の方と達増知事とでは、旧小沢氏系勢力の内部はもちろん無党派層や自公など保守系勢力からの得票能力にも大きな差があるでしょうから、単純に平成25年参院選と同じ得票状況になるはずがありません。

平成25年の参院選については、下記に引用のとおり直後に簡単な分析記事を書いており、その中では、平野氏が得た40%の得票のうち、概ね15%程度が浮動票(無党派層の支持が流れ込んだもの)と判断したのですが、平野氏と達増知事では、現時点でどちらか一方のみが無党派層の支持を集めているという印象は受けません。
→ 参院選・岩手選挙区結果を過去の投票結果と比較したプチ分析(H25.7.22再掲)

そうした観点も踏まえると、大まかな感覚的判断としては、平野氏(保守系地域政党+自公系)も達増知事(小沢氏系+現民主の相当部分)も、概ね4:4の基礎票を持ち、残り2割のうち1割弱が共産系の予測票で、1割強が「平野氏か達増知事のどちらかに投票する無党派浮動層」ということになるのではないかと感じています。

それは、言い換えれば、次の知事選は、その無党派層の投票動向で選挙結果が決まるということでもあります。

これまでの岩手県知事選は、過去2回の達増知事は言うに及ばず、当時、政界の華であった小沢氏の支援のもと圧倒的な強さで登場し3期を務めた増田前知事、そして、それ以前(プレ小沢氏時代)は県政の中心であった自民党が擁立した方々が知事を歴任しており、昔々(二戸出身の農民知事こと国分謙吉翁が官僚出身者に勝利したとされる初代知事選)はいざ知らず、現在の岩手県民にとっては、選挙前から結果が見えていた知事選しか経験したことがありません。

そうした意味で、今回の知事選は、少なくとも現時点では、結果の予測が難しい=浮動層(無党派層)が実質的な選択権を持った、初めて(又は数十年ぶりの)知事選だと言えるのではないかと思います。

この貴重な機会を岩手県民が生かすことができなければ、とても残念なことだと思いますし、それゆえに、今回の知事選を、政策の選択であれリーダーシップの選択であれ、大いに実りのある選挙にしていただきたいと願わずにはいられません。

そのような意味では、候補者や支援勢力の方々は言うに及ばず、マスコミやJCなど「選挙の意義を高めるための活動をしている方々」、ひいては無党派層の一般県民も含め、今こそ自分達の出番だという意識で、活動していただければと思っています。

かくいう私も、何で田舎の町弁がこんな文章を書いているのかと訝しく感じる方もおられるかもしれませんが、こうした構図の選挙で無党派層の関心を高めることこそ、日本国憲法が定める国民主権や住民自治の質を高めることに繋がるもので、それに資する取り組みを何らかの形で行うのが地元の法律家の責任の一つではないかという思いで、この文章を書いているつもりです(盛岡JCで公開討論会などを担当する委員会に在籍した関係?で、野次馬感覚が染み付いたことも影響しているかもですが)。

ところで、一時代を築いた小沢氏の勢力の栄枯盛衰という観点から見れば、小沢氏陣営が分裂して保元の乱のように相争った平成24年の冬の衆院選は、「いわて冬の陣」と呼ぶに相応しいものでしたが、今回の知事選は、小沢氏直系の本丸であり、失礼を承知で申せば小沢氏系の最後の大物とも表現することもできそうな達増知事が、生き残りを賭けて元同胞である平野氏と頂上決戦とも言うべき対決に及ぶものですので、「いわて夏の陣」と評しても良いかもしれません。

現職知事が再選出馬する場合、その選挙は信任投票の色合いを帯びますが、達増知事の場合、スキャンダルの類はもちろん、とりたてて知事個人の失政と呼ぶべきものも思い当たらず(土下座事件で物議を醸した競馬場問題は前知事やそれ以前の時代のツケでしょうし、大雪事件など幾つかの補助金問題も広義の監督責任はさておき知事個人が関与したものではないのでしょう)、震災後の対応も概ね堅実になさっていると感じたり過去の圧倒的勝利を覚えている県民も多いでしょうから、そうしたことは、今回の選挙でも有利な要素として大いに働くのではないかと思います。

他方、知事個人が震災対応に関し、華々しい成果を挙げたりリーダーシップを発揮したなどという話もあまり聞かないように思われ(マンガ政策云々も、票に結びつくかは懐疑的です。「そばっち」も知名度がないと思いますし)、「震災復興」に取り残された被災者や、それとは逆に、開発促進を希望する自公系の地元関係者などからは、批判票を受けることもあるかもしれません(その点は、復興相であった平野氏も同様かもしれませんが)。

また、達増知事に関しては、小沢氏全盛期には敵対する政治勢力への辛辣な言動が多く見られたと思いますし、平野氏の出馬表明に対しても、裏切りの政治だなどと敵意を露わにする言動をされていましたので、そうした敵味方を強い言葉で峻別する姿勢が「控え目な人柄」とされている岩手県民にどのように評価されるのかという点も、興味を感じます。

また、民主党陣営のうち階議員などの勢力は、達増知事とは岩手1区の選挙で対決した過去もあり、どのような対応をされるのか、興味深いところです。この点、知事選の直前(8月下旬)に予定されている盛岡市長選では、階議員の有力支援者である内舘茂氏が立候補を表明し、現職の谷藤市長(無所属ですが、地盤的には自公系と言ってよいと思います)と対決することが予定されており、市長選の動向が大きな影響を及ぼすことは確かでしょう。

素直に考えれば、谷藤市長が自公系である以上、平野氏とは手を組めないという前提で、達増氏陣営の支援を見込んで達増知事の支援に廻るという可能性が高いと見るべきなのだろうとは思います。

ただ、仮に、市長選の直前頃に出るかも知れない知事選の事前予測で平野氏優位の報道がなされた場合、それが市長選に影響する可能性もありますので、達増知事と命運を共にするという選択は、内舘氏にも大きな賭けになり、最良の策と言えるのかは私には分かりません(敢えて中立を保つことで、市長の若返り等を期待する若手保守層の得票を期待し谷藤氏陣営の切り崩しを狙うという高等?戦術もあってよいのかもしれません)。

全くの余談ですが、もしも、市長選が知事選よりも後に来るのであれば、敢えて平野氏が当選してくれた方が、「知事選は自公系を勝たせたので、市長選は民主系を勝たせる」という無党派市民のバランス感覚(投票動向)を期待するという高等?な選挙戦略もあり得たかもしれません。

裏を返せば、達増知事にとっては、盛岡市長選でどちらが当選するのが自身の得票にとってプラスになるのか悩ましい面はあると思われ、そうした微妙な論点・判断も、達増氏・階氏(内舘氏)の両陣営の動向に影響を与えるのではないかと思われます。

上述の理由から、盛岡や一関、被災地などの無党派層の動向が選挙結果を左右すると思われるだけに、政策論争もさることながら、そうした選挙関係者の利害得失の面も含めて、本年の岩手・盛岡の大型選挙の様相を興味深く見守っていきたいと思っています。

ともあれ、今回も大変な長文になってしまいましたが、ご覧いただいた皆様には御礼申し上げます。

震災復興とインフラツーリズム

昨年10月の日経新聞で、新たな旅行形態(ニューツーリズム。産業施設観光やエコ・グリーン系、健康・医療系など)の一つとして、土木構造物の建設現場を見学する「インフラツーリズム」なるものが取り上げられており、例として、高速道路のジャンクション建設現場のツアーが紹介されていました。

それを見て、すぐに思い浮かんだのは、被災地では、現在、三陸道や防潮堤、嵩上げ工事や高台の造成、各種建造物の復旧・新造など、至るところで様々な工事が行われたり計画・準備されたりしていますので、それらを見学できるツアーを現地で提供しても良いのではということでした。とりわけ、震災の風化や関心低下等が叫ばれて久しい状況にあるのですから、そうしたことで遠方の方々の関心を喚起する意義は大きいのではないかと思います。

また、インフラ見学に限定する必要はないでしょうから、建設現場と地元の自然景観等の鑑賞を交えたツアーを販売しても良いと思います。私は法テラス気仙の担当のため月1回のペースで大船渡に行っているのですが、大船渡湾は、嵩上げ等の復興土木工事現場だけでなく、太平洋セメントの巨大工場もありますので、これを洋上から鑑賞したり被災廃棄物の焼却等を見学するツアーでもあれば、「期間限定」の希少価値も相俟って、工場萌えの人々が押し寄せるのではないかと思います。

また、湾岸クルーズ船のコースとして、大船渡湾の牡蠣養殖棚を間近で見学したり(いっそ、その場で食べさせたりとか?)、余勢を駆って大船渡のシンボル・穴通磯なども間近で鑑賞できれば、そうしたものを見たい人にも大いに需要があると思います。国道45号線に沿って坂の上に街が広がる大船渡町周辺の光景も、参加者に心地よさを提供することでしょう。

もちろん、本格的にインフラツアーをしたい方には、三陸道の工事現場や隣の陸前高田の一本松のすぐ隣で大々的に行っている巨大コンベアーや嵩上げ工事現場なども視察し、本気度の高い方々にはオプションで地元関係者との意見交換企画なども付加すればよいと思います(冗談抜きで、地元関係者の会合を見学し議論に参加できるツアーなどもあってよいと思います)。

例えば、地元自治体などが企画して最初に地元や首都圏などのカメラマンや旅行業者、学術関係者などを対象にツアーを行い、宣伝して貰ってもよいのではないかと思うのですが、どうでしょう。

なお、この程度のことは、既に多数の人が考えているのだろうと思ってネットで「インフラツーリズム 被災地」と入力して検索したところ、残念ながらというか、国交省の東北地方整備局の文書が出てきた程度でした。
http://www.thr.mlit.go.jp/Bumon/B00097/K00360/guide-tohoku/guide-t3.pdf

先日、法テラス気仙の担当日で市内を少し自動車で廻った際、屋形船が就航しているという看板を見つけました。今年の3月から始まった企画とのことですが、単なる観光事業としてだけでなく、上記のような「震災復興のインフラツーリズム」のツールとしての活用や小型船の導入なども考えていただければと思います。
http://www.55027104031.com/

地元関係者の奮起を期待したいところです。

縄文の遺跡群と北東北のオリジナリティ

「太陽の塔」などで有名な芸術家・岡本太郎は、縄文文化とその出土品などに対し高い芸術的価値を認め、その息吹を伝える北東北や沖縄の人々にも、特別な思いを感じていたことは、よく知られています。

私も、10年ほど前に東北新幹線の車内誌で「岡本太郎が発見した北東北」といった内容の特集を読んでから、岡本太郎への関心が深くなり、ちょうど岡本太郎の再評価の動きが高まってきたこともあって、平成23年にはNHKで放送されていた自伝的なドラマを見たり、東京に泊まりがけで行く機会があったので、青山の岡本太郎記念館に立ち寄るなどしていました。

さきほど、昨年8月10日の日経新聞に掲載されていた縄文文化特集で、パリで民俗学の泰斗に師事した後に欧州から帰国した岡本太郎が、日本独自の文化を求めて最初に京都・奈良を訪問したものの、京都は過去の遺物の集積で奈良は中国のコピーに過ぎないと失望し、縄文土器に接してはじめて、日本独自の文化を感じたという趣旨のことが書かれているのを見ました。

その記事を読んで、ふと思ったのは、京都・奈良については既にその価値が広く認められ、何年も前に世界遺産登録がされているのに対し、縄文文化に関しては、その痕跡を残している場所などが世界遺産登録されたという話を聞いたことがない、そのことは、岡本太郎に言わせれば、真に日本独自と言える文化が世界に紹介され価値が認められていないものに他ならず、とても嘆かわしいことではないか、ということでした(沖縄については琉球王国の文化は世界遺産登録されているものの、縄文文化絡みの登録は無かったと思います)。

そのように考えると、現在、世界遺産登録を目指している「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、縄文文化に関し世界遺産登録を目指している唯一の存在という意味では、これを成就させることは岡本太郎の遺志にも沿うことではないかと思います。

これまで、上記遺産群の運動をしている方々が、岡本太郎(の関係者)側に協力を要請するといった話はあまり聞いたことがありませんが、芸術的な観点を交えて文化の価値への理解を広めるという意味では、大いに意味のあることで、ぜひ、取り組んでいただきたいと思っています。

ところで、上記の記事で取り上げられていた土偶は、長野県茅野市や群馬県で発見されたものでしたが、それらの地域が世界遺産登録を目指しているなどといった話はこれまで聞いたことがないと思って検索してみたところ、最近になって、そのような動きが出てきたようです。
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=33288

私見としては、信州などで著名な土偶が発見されていることは確かですし、地域おこしではなく縄文文化の価値を世界に認めて貰うことが目的でしょうから、「明治の産業遺産群」で北九州などと釜石(橋野高炉跡)が一括りになっているように、北海道・北東北とタッグを組んで、一緒にまとめて世界遺産登録を目指して良いのではと感じますが、いかがでしょう。

安積疎水と朝河貫一、そして新渡戸稲造 ~H21再掲~

前回と同様、平成21年に郡山を訪れた際に作成した旧HPの日記の再掲です。

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前日分の続きですが、「開成館」を出た後、少し離れたところにある「安積歴史博物館」に行きました。ここは、旧制安積中学の校舎を博物館化した建物で、鹿鳴館の様式を模して作った?とのことで、相応に価値のある建物だそうです。旧制中学は現在の安積高校の前身だそうで、隣接して高校の施設がありました。

展示内容は、開成館と重なっている部分があったり、OB向けの展示等もあり、概ね地味な印象でしたが、安積中学の出身者である歴史学者の朝河貫一博士に関する展示については、強く惹きつけるものがありました。

朝河博士は、明治末期から昭和初期にかけて活躍した歴史学者で、若いうちに米国に渡り日本人初の米国大学(エール大)の教授になり、学者として業績を残しただけでなく、日露戦争の際、「調停役」となった米国内で日本の立場や米国が調停をなすべきことなどについて盛んに説いて廻るなどして、戦争終結を背後で支えたり、太平洋戦争直前には、要人向けに開戦回避の努力を重ねていたなど、多大な功績があったのだそうです。

私も、お名前はどこかで聞いたことがあるような気がするのですが、業績等について知ったのは初めてで、その点は大変有意義に感じました。

朝河博士は、開拓途上にあった安積平野の一角の貧しい家庭に生まれたものの、早くからその才能が見出され、篤志家等の支援もあって、旧制安積中学から早稲田大学に進み、海外に亘って才能を開花させたとのことですが、明治新政府の集大成が日露戦争であるとの観点に立てば、明治政府が尽力した安積疎水による開拓が、巡り巡ってこうした形でも花開いたのかと、歴史の深さ、さらには郡山という街が歴史の中で果たした役割というものを感じずにはいられませんでした。

ところで、朝河博士とほぼ同時代に活躍し、同様に日露戦争などの際に米国内で尽力したとされている国際人として、盛岡出身の新渡戸稲造博士の存在を挙げないわけにはいきませんが、残念ながら、上記の博物館では、朝河博士と新渡戸博士との交流の有無等に関する記述は見受けられませんでした(この点は帰宅後に気づいたことなので、見落としたかも知れませんが)。

明治政府が造った開拓地郡山から生まれた朝河博士と、明治政府に散々な目に遭わされた敗戦国盛岡から生まれた新渡戸博士。同時代に国際人として活躍するという点では、同じような生き方をし、同じような業績をあげながら、その2人のバックグラウンドは、対極そのものということができます。

この点の比較研究をすれば、面白い本が一冊書けると思いますので、どなたか頑張っていただきたい(すでにあるということであれば、ぜひ教えていただきたい)ところです。

余談ついでに、7月上旬の岩手日報の夕刊に、朝河博士の特集記事があり、メジャー級といってよい新渡戸博士と同様、もっと知られるべき人だと改めて思いました。