当方では毎冬に映画接待を求める強硬な要求がなされるため、不本意ながら?これまで妖怪ウォッチの映画は全て引率せざるを得ず、今年は大至急の仕事がさほど多くなかったこともあり、公開初日に拝見しました。
http://www.eiga-yokai.jp/index.php
ただ、このシリーズは、毎回「かぞくやともだち(自分と価値観を共有する内輪社会)との意思疎通をだいじにしよう(だから、そんな大切な人々を困らせる悪い奴は倒そう)」以上のメッセージを読み取ることができず、つまらないなどと安易に申すつもりはありませんが、早送りさせて欲しいなぁと感じる面はあります。
今どき、毒気というか、子供から大人社会への風刺や異議申立などを含んだ(かつ、家族向けの売れるエンタメとして仕上がっている)作品というのは、なかなか世には出ないんでしょうかね・・
本作品と同様に「鬼と人との対決」をテーマとする「岩手のヒーロー」ことガンライザーは、鬼=縄文人、人=弥生人という暗喩があり「人が鬼を歴史の彼方に追いやったので、鬼が世界を取り戻すため攻めてくる。両者の血を引くガンライザーが、人と鬼の調和を伴う新たな世界の創造のため、時に迷い苦しみながら闘っている」というメッセージが見え隠れするので、その点では、多少は見応えがあります。
大人の立場からは「身内を守るため相手を撃滅する闘い」ばかり描くのではなく、主人公が異質な他者が自分達と衝突せざるを得ない背景にあるものを見抜いて撲滅以外の解決のあり方を模索するような物語も見せてやっていただければ、と思わないでもありません。
まあ、そんな話は昔だってウルトラセブンくらいで、後は似たような勧善懲悪話ばかりだったじゃないかと言われそうですが。
そもそも、鬼や妖怪=弥生人(現代日本人)との闘争に敗れて歴史に消えた古い縄文人の暗喩という発想は岩手の専売特許ではなく、鬼太郎こと水木しげる氏の出身地である山陰など、縄文文化の歴史が息づくとされる地方では、よく言われていることではないかと思います。
「妖怪ウォッチ」が数年前に社会現象になるほど爆発的にヒットした背景にも、弥生的な同質社会の行き詰まりというか「社会の向こう側」に潜む多様な異界の存在との接触を欲するようなメンタリティが社会内(子供達)に存する(存した)ことの表れとみるべきかもしれません。
そうであればこそ、妖怪ウォッチには、「異質な他者が織りなす世界との接触による現実世界の再構成」というコンセプトがあってよいのではと思いますが、これまでの映画を拝見する限り「自分達の社会の平和を乱す悪い妖怪を倒す」という弥生的世界観ばかりが目に付くように感じ、残念に思います。
そもそも「僕達を苦しめる悪い妖怪や鬼」を描くなら、それに匹敵する「悪い人間」も登場させないと、妖怪達にとって不公平だと思わざるを得ません。
そこで、これまでの映画の一貫したパターンである「主人公ら+善良な妖怪vs悪い妖怪」という構図ではなく、敵側に人間も含め、しかも「敵側にもそれなりの事情があり、その事情の解決も物語の課題に含まれる」という味付けもすれば、大人にも見応えのある作品が作れるのでは、と思ったりします。
例えば、来年に予定される次回作は、こんなストーリーでやってみてはどうでしょう。
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主人公ナツメの住む街で先日当選した若い市長Aは、市内の様々な問題を矢継ぎ早に解決して多くの市民から熱狂的な支持を受け、間もなく国政に進出し将来は国の指導者になるのではと目されていた。
しかし、Aには裏の顔があり、多くの人の心を操り秘密組織や特殊な装置を作って人類を草木などに変え太古の自然と妖怪の世界に戻すことを計画しており、その背後には強大な妖怪BがAに力を与えて協力し、それに賛同する妖怪達も多くいた。
やがて、Aの正体に気づいたナツメは仲間と共にAの野望を砕くため立ち上がり、妖怪達も双方の勢力に分かれて闘うことになった。すると、Aが子供時代は善良な心の持主で、善良な妖怪と心を通わせていたが、悪い人間のエゴでその妖怪が無残な目に遭い、人間に絶望して滅びを望んだこと、その善良な妖怪が人間への恨みの果てに姿を変えたのがBであることが分かった。
激しい闘いの最後にBは倒されて闇の世界に消え、善良な心を取り戻したAが残った。Aは「Bを救わなければ」との思いで、闇の世界に向かおうとする。それを某大物妖怪がサポートを買って出て、Aと一緒にBを救うための旅に出た。
ナツメ達はAやBのような者を再び生み出さないよう人と妖怪が互いに幸せに暮らせる善良な社会を作っていく決意を新たにするのであった・・
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まあ、そんな戯言の類はさておき、今回の主人公が過去に救助されたことがあるとの下りは、あまりにも某作品の「そのまんま」過ぎというか、M監督から抗議が来ないのだろうか?と余計なことを思いました。
以上、あれこれ書きましたが、私の読解力の問題もありそうですので、同じ接待業務に従事された方がおられれば、異なる視点などもご教示いただければ幸いです。