先日、年末年始休暇の一貫として、シンガポールに家族旅行に行かせていただきました。といっても、当方の予算や時間の都合もあり、正月明けに出発し、往路も復路も夜行便で現地に2泊という実質2日半程度の超駆け足旅行になりました。
恥ずかしながら、現在の私(当事務所)の収入では海外旅行などという贅沢に手を染めるだけの力はないのですが、それなりの理由があって、思い切って過去の蓄えを取り崩して行くことにしました(正月を外したので、費用面はかなり助かりました)。
理由というのは、長期休暇の旅にバックパッカーをしていた修習時代と異なり、新婚旅行(エジプト弾丸の旅)以来、平成22年の日弁連の韓国調査を別とすれば十数年も海外旅行がご無沙汰になっていたということもありますが、大きく2つの事情があり、①家族に海外の実体験をさせ視野を拡げると共に、英語学習の必要性などを感じさせたいということと、②シンガポールにこだわるべき2つの特別の理由があったことの2点があります。
②については、ご承知のとおり、シンガポールは、もともと僅かなマレー系原住民しか住んでいなかった小島(淡路島≒東京23区程度)を大英帝国が貿易及び東南アジア支配のための植民都市として開発し、出稼ぎ華人・マレー人・インド人などが入り交じる特異な他民族都市を形成していたところ、大戦を経て過酷な環境で独立を余儀なくされたという事情が影響しています。
すなわち、同国は、アジア有数の貿易都市のアドバンテージを有する一方、周辺国(マレー半島、インドネシア諸島群)とは全く異なるアイデンティティを形成し精神的な繋がりも希薄なため、周辺国が同胞意識を持って接してくれない「独りぼっちの国」という存続リスクも抱えた中で、リー・クアンユー首相らの強固な統制的指導のもと国を挙げて努力を続けて現在の繁栄を勝ち取った国であり、そうした「努力し続けなければならない宿命を負った国」に私も共感する面が多々ありましたので、同国の気風を家族にも学んで欲しかったという点が1つ目となります。
とりわけ、私自身が田舎の小さな商家の次男として、幼少期から「地元や実家に残れない、必死で勉強して自分の力で身を立てて人生を切り開いていなかければならない」ことを母に叩き込まれて育ちましたので、この国が自分と重なる面があるように感じたということも大きいです。
次に、シンガポールにこだわった(来訪に特別の意義を認めた)理由として、「二戸出身の学者さんが大戦期に同国の学術資産・文化財(大英帝国が長年に亘り築いた世界的財産)を守り、その代表例(シンガポール植物園)が世界遺産になった」ということを割と最近に知ったので、同郷人としてその先生(田中舘秀三博士)の足跡を訪ねたい、また、私が同国を訪れてブログなどで紹介するだけでも、博士の顕彰になるのではないかという点がありました。
この点は、帰国後に改めて博士のことを調べたところ、功績の大きさもさることながら、とてもユニークな人物(単なる善人ではない奇人ないし怪人ぶり)が見えてきて「この人の物語はぜひ映画化されるべきだ、誰もその旗を振らないなら俺がやる!」との無謀な感情が爆発し、おって1~2週間後にブログで連載するとおり、映画シナリオ案まで作ってしまいました(ぜひ、ご覧ください)。
ともあれ、前置きが長くなりましたので、以下では旅行の概略を説明します。
まず、夜行便で早朝に到着し、直ちにシンガポール植物園に向かうつもりだったのですが、夜行に慣れない家族からギブアップ宣言(爆睡状態)が出て昼過ぎまで足踏み状態を余儀なくされ、宿泊先ホテルから歩いて行けるラッフルズホテルに向かったものの、すぐに時間切れとなり、午後3時から夜間まで、予約していたリバーサファリとナイトサファリのツアーに参加しました。
2日目は駆け足の市内観光ツアーに参加し、最後に解散場所のマリーナ・ベイ・サンズの展望台に行きましたが(あの有名なプールは宿泊者専用ですので庶民には無理)、その後、ちょっとしたトラブルが発生し、ヒヤヒヤしながら一晩を過ごしました。
3日目はアジア最大級のリゾートエリア・セントーサ島に行き、諸般の事情により水族館とセントーサ・マーライオンだけを駆け足で拝見した後、H.I.Sから頂戴した「チキンライスの名店のタダ券」を何が何でも消化しなければとオーチャード通りにある店舗で昼食をとり、ホテルに一旦戻った後、チェックアウトして、ようやく私にとっての第一目的地であるシンガポール植物園に行きました。
そして、そのまま時間切れとなり夜行便で羽田に強制送還されたという次第であり、とても海外に来たとは思えない、某「週末のシンデレラ」番組に負けないほどの超駆け足旅行でした。
たったそれだけの滞在とはいえ、海外に来ると感じることも多く、今回、何が何でも取り上げることにした「田中舘秀三博士の物語」以外にも、書きたいことは山ほどありますが、余力の問題もありますので、まずは簡単な紀行&感想編を3回取り上げ、4回目に今回の最終目的地となったシンガポール植物園に触れます。
そして、それを導入部として、「壮大感動巨編・シンガポールの魂を救った日本人~田中舘秀三物語~」の映画シナリオ案及び企画説明等を全11回の連載で行うつもりですので、ぜひ最後まで温かい目でお付き合い下さるようお願いいたします。
で、早速ですが、今回は1日目の観光について少し触れます。
まず、午前中にホテルで足止めを余儀なくされた際、どうせ待つならH.I.Sから頂戴した「トーストボックス」という同国で数十店舗を展開するコーヒーチェーンのタダ券を使いたいと考え、ホテルから一番近い地下モール内のお店に向かい、道に迷った末、同国名物「カヤトースト」とコーヒーのセットなどを購入し、家族の起床まで私も半眠状態でダラダラ過ごしました。
お店からホテル(詳細は次回)に戻る際、「日本占領時期死難人民記念碑」が帰路の途中にありましたので、手を合わせてきました。これは、大戦時に旧日本軍がシンガポールを侵略、陥落させ征服者として敗戦時まで君臨していた時代に行った華僑虐殺などの蛮行により命を落としたシンガポール人を慰霊するために1967年に建立された施設です。
半年前に沖縄に初めて行った(那覇地裁での尋問)際も到着後に真っ先に「ひめゆりの塔」と平和記念公園に行きましたが、今回もできればここに来て手を合わせたいと思っていたので、その点は何よりでした。
そして、午後になって家族が起床したため、前記のとおりラッフルズホテルに行きましたが、リバーサファリのツアーの集合時刻が午前3時前のため、シンガポール・スリングで有名な「ロングバー」を外からチラ見しただけで終わってしまい(店内にアジア人の姿は見えず、白人でぎっしりでした)、その点は残念でした。
リバーサファリは当家しか参加者がいなかったようで、日本語が堪能でおしゃべり好きなガイドさん(その方に限らず、同国は熟年女性がごく当たり前に仕事をなさっている光景をよく目にします)から色々とお話を伺いながら園内を歩きました(ガイドさんと話した内容などは、次々回に少し書きます)。
リバーサファリは、シンガポール動物園やナイトサファリと同じ地区にある(ので入口は皆、隣接しているという親切設計の)、平たく言えば「川の水族館(水辺の生物の動物園)」であり、ボートに乗船して動物を見たりクルーズ船もありますので、遊園地的要素も加味されている面があります。
http://singapore.navi.com/miru/155/
今回はクルーズ船(湖状の広大な貯水池を周遊するもの)は乗れませんでしたが、ボートには乗りました。これは、ディズニー(千葉のD国)のジャングルクルーズに似ていますが、当然のことながら人形の類ではなく本物の動物達を見ながら進みますので、D国のそれよりも遥かに乗船し甲斐があります(個人的には、激流下り的要素も足していただければなお良いのにとは思いましたが、少しだけその要素があります)。
また、展示中の生物の生息域の地図が図示されるなど、英語が分からなくともある程度のことは分かるため、とても良いと思いました。さほど金がかかることでもないでしょうし、その生物のことを知ったり関心を持つ最初の手がかりになることでもありますので、日本の動物園や水族館なども生息域の図示を必ず行うべきではないでしょうか。
あと、ハイライトの一つである、マナティ達が泳ぐ「アマゾン浸水の森」は、まるで腐海の底ではないかと思いました。きっと、こうして人々の汚れた心を浄化し続けているのでしょう。
リバーサファリのあと、夕方から開演となるナイトサファリに移動しました。こちらは、多くのツアー参加者と一緒に行動することになり、最初に円卓での「チリクラブ」付きの簡単な夕食をとった後、夜行性の小型~中型動物がまとまって展示されているエリアを30分ほど歩き、次いで、幾つかの動物のパフォーマンスを紹介するショーを30分ほど見た後、最後にトラム(周遊車両)に乗り大型動物の展示エリアを45分ほどで廻って終了、というツアーでした。
http://singapore.navi.com/miru/11/
チリクラブはシンガポールの名物料理の一つで、味自体は良好ですが、私はカニの殻を自分で処理するのがとても苦手で、「最初から剥いて出してくれればいいのに・・」などと文句を言いながら美味しくいただきました(ネットで調べると、皆さん同じことを仰っています)。
動物のパフォーマンスショーは、当然のことながら英語で行われ、英語能力が皆無の面々が雁首を揃えた当家は全く司会者の軽妙トークを理解できないまま終わってしまいました。
司会者は冒頭で「この国(語圏)の人は来てますか~」と声を掛けており、日中韓の三国からいずれも多数の人が参加していましたが、これらの三国には私と同レベルの方は大勢いるでしょうし、小さい子供も多く来ていますので、「言葉の壁」に関する対策を考えていただきたいとは思いました。
欲を言えば、イヤホンを支給して同時通訳をしてくれればベストでしょうが、それが無理でも、毎回の司会者の説明(プログラム内容)は大体同じでしょうから、美術館のような補助解説テープを希望者に支給して、それを聞きながら拝見できれば、理解度が大分違うと思います。
これは、日本に来る外国人観光客など、世界中に当てはまる話でしょうから、日本の旅行会社がソニー?などと組んで開発して各国の外国人旅行者向けに提供すれば、日中韓人はもちろん世界中で喜ばれるのではと思いますが、いかがでしょう。もちろん、最後に「次は英語を勉強してまた来てね」の一言を添えれば、親が家庭でわめくよりも子供への教育効果がありそうですし。
トラムは、ネット情報では「見えない動物も多く、イマイチだった」などと酷評する意見も幾つか見られるようですが、私自身はそれなりに見応えがあったと思います(もちろん、動物を適切な方法でトラムに近づけるような工夫は園側にも考えていただきたいとは思いますが)。あと、「どうして北東北人が南国に来てツキノワグマを見なけりゃならんのだ」との不条理感を抱いた場面もありました。
最後に、こんな容器に入ったマンゴージュースを買って、飲みながらホテルに戻りました。理由は分かりませんが、現在の同国ではこのタイプの容器が流行しているようで、マーライオンの近くの売店などでも同タイプのもの(象さんは付いてませんが)を拝見しました。
個人的には、注射器の類のように見えますし、ゴミの量も多くなるので、デザイン的にも環境面でもセンスが良いとは思いませんが・・
その他、書きたいことはまだまだ尽きませんが、まあ、あまり詳しいことを書くと今後に旅行される方にとって面白味が減るでしょうから、ぜひ、ここに書かれていない多くの醍醐味を現地でご覧になっていただきたいと思います。