北奥法律事務所

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ブログ

物損事故に関する賠償問題の実情と任意保険の義務化の必要性

半年前の話で恐縮ですが、モーニングショーで、「幹線道路を直進する車両と路外施設から進入した車両との衝突事故における賠償問題」を取り上げおり、この種の事柄は当方も日常的に取り扱っているため、興味深く拝見しました。

で、ドライブレコーダー搭載や弁護士費用特約の加入の必要性が強調されていましたが、見落とされている問題が二つあると思っています。

まず、この事故は加害者も任意保険に加入していたため確定した賠償額の支払が得られたようですが、現実には、加害者が任意保険に加入しておらず賠償金の回収が著しく困難になっている案件が少なくありません。

当方も、様々な手法を駆使して回収に至った案件もありますが、それが奏功せず関係者と困難な訴訟を闘うなどして非常に難儀し、1円の回収の目処すら立っていない案件もあるのが実情です。

人身被害には「せめてもの填補」として人身傷害補償特約がありますが、物損に関しては(自身の保険料増額等を覚悟して)ご自身の車両保険を利用するのでない限り、加害者に回収可能な財産等がなければ、いわゆる「泣き寝入り」になるほかありませんし、それを突き止める手段も、現行法では相当な制約があります(これに関して、現在、塗炭の苦労を強いられているのですが、その件はまたの機会に)。

結論として、自動車(という重大な危険物)を利用する者には、全て任意保険の加入を義務化する立法措置が必要だと思っています。

近年の選挙でも「中身があるのか無いのかよく分からない福祉・ウィルス云々対策」以上に、そうした具体的な被害の回復を抜本的に解決する立法論こそが語られるべきではと思っていますが、そのような議論を全く聞くことがなく、残念です。

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もう一つ、この事例では、様々な交渉の末に「進入車9:直進車1」で決着したとのことですが、番組では「この態様で被害者に過失あるのか?」というものとなっており、裁判所の現在の判断傾向そのものの当否が議論の対象になるのだろうかと一瞬期待しました。

かくいう私自身が、被害者から相談を受けた際、そのように言われることが日常茶飯事だからです。

が、玉川さんが「自分が事故に遭った際、「動いている車同士の事故は(追突などの類型を除き)100:0にはならないと言われた(これは業界で必ず言われる定型文句であり、私も毎回言っています)」と述べたあとは、誰も「被害者がかわいそうだ、裁判所が間違っている、ゼロでいいんじゃないか」などと熱弁を振るう方は誰もいませんでした。

(こうしたときこそ一茂氏の暴走に期待したかったのですが、他局ドラマ好き好き発言だけで終わってしまいました)

交通事故実務における過失割合は、裁判所が公表している基準本が実務を支配しており、これに該当する事故類型はすべてそれに従うことになっていますが、今回の事故のように、「動いている車同士の事故」でも被害者に本当に過失があるのか?と感じる事故は相応にあり、立法論による改善(幹線道路などを走行する直進車の優位性の明文化など?)を含めて、国民的な議論があればと思っています。

本当は、刑事事件より、こうした類型の方が裁判員裁判に馴染むのではとも思わないでもありません(司法委員なる方もおられますが、どこまで実効性があるのかよく分かりません)。

交通事故の保険義務化に関しては、以前に自転車の保険義務化について投稿したことがあり、参考にしていただければ幸いです。

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補足ですが、私の経験上は、任意保険に未加入の方の大半が、年齢層を問わず低所得の方です(だからこそ、岩手には多い)。

そのため、任意保険の義務化は、低所得者等に一定の条件を付して任意保険の加入費を助成等する制度などが不可欠だと思っており、可能なら、ふるさと納税などを財源として導入する自治体があれば、「事故に遭っても余所よりも被害回復がされやすい、暮らしやすい町」としてアピールできるのでは、と思っています。

そういう意味では、国政(法律による義務化)だけでなく地方自治体の施策の問題でもあると思います。

「田舎は自動車が不可欠」と言われるからこそ、自動車保険に加入するのが容易でない方々も含め、万一の際に全員が適切に責任を取ることができるような仕組みを構築することが、地方の社会には求められていると考えます。

ところで、この話を半年前にFBで投稿したところ、同業の先生から「自己破産の依頼者には、生命保険や医療保険は解約を促し、自動車の任意保険は絶対加入すること(無保険で事故を起こすと再度の破産が必要になるが免責されない可能性があること)を促している」とのコメントをいただきました。

非常に重要なアドバイスですが、恥ずかしながら当方の定型的な注意事項書には盛り込んでおらず、さっそく参考にさせていただこうと思いました。

ただ、従前に保険加入をしていない方だと、弁護士が言ったから加入するのかという問題はあり、いっそ、裁判所が免責加入を強力に勧告したり(加入を同廃の事実上の要件とするとか)、立法?で自動車保有者には加入を免責の要件とすることも検討されるべきなのかもしれません。

 

北上から呼ぶ声

半年ほど前の話になりますが、ホテルエース盛岡の昼食ビュッフェを調べていた際にホテルのサイトを見たところ、公式ブログ「盛岡放浪記」のトップ写真が盛岡ではなく北上市の風景になっているのに気づきました。
https://www.hotel-ace.co.jp/blog/?p=6987

盛岡のホテルなのにナゼ?と不思議に思った矢先に、北上の会社さんからご相談の問い合わせがあり、新規の顧問契約の申込みまで頂戴しました。

お話しによれば、以前から当事務所のサイトをご欄になって、いつかは顧問を頼みたいと思っていたところ、弁護士に相談したい出来事があり、それをきっかけに依頼されたと伺ったので、大変有り難くお引き受けしました。

当事務所では、主として県内の小規模な企業さん向けに月額3300円の顧問契約を定めており、私自身が「高額な顧問料を支払う有力企業から次々お声が掛かる大物弁護士」にほど遠いこともあって、当方の顧問先の大半も、このコース(A型)をご利用いただいています。

(っていうか、それ以外の顧問先はほとんどありません。幸い、ゼロではありませんが・・)

上記の契約(A型)では、タイムチャージ(採算単価)に準じて年間2時間を無料対応時間と定めていますが、瞬発力で済ませる電話はともかく、メール相談にあれこれ調べたり考えたり入力していれば、あっという間に所定時間になるため、多少のオーバーは気にせず、というスタンスで行っています。

さすがに、以前にA型でお引き受けしていた某自治体さんは、近年にご利用時間が激増し大赤字になったので、若干の追加料金+次年度の微増をお願いしましたが・・

顧問契約(をどれだけ増やせるか)は人気投票や男女交際に類する面があり、万年窓際族でボッチ系の私には、あまり向かない世界だと感じることはあります。

ただ、時には、今回の会社さんのように「貴方だからこそ頼みたい」と仰っていただける方との出逢いに恵まれることもありますので、腐らずに頑張っていきたいと思います。

そんな出来事があったこともあり、その後に伺ったエース盛岡の昼食ビュッフェは、大変美味しくいただきました。

現在、昼食ビュッフェは休業中とのことですが、いずれまた、お伺いしたいものです。

日本に留学したい方々が教わる、変な?日本語

先日、外国人留学生等に関するNHKの記事で、びっくりするものを拝見しました。
さよならニッポン、夢みた人たちの苦悩 | NHK | News Up | 外国人材

といっても、記事の中身の話ではなく、スペインの方が一生懸命学んだという日本語のテキストの画像の真ん中あたりに、

ひこうきはとしについらくだ(飛行機は都市に墜落だ)

という例文があるように見受けられるのですが、私の見間違いではありませんよね?

こんな例文でいいのか?日本語学習業界。飛行機で日本に来るはずの方々へのテキストなのに・・

あと、最後の例文も

この旦那が欲しいです

と書いてあるのかと一瞬思いましたが、こちらは見間違えで、

この本棚が欲しいです、というまともな例文でした。

あと、

りょうしゃのへやはおおきくない(両者?の部屋は大きくない)」

も、日本語としてはこなれてないというか、変な感じがします(両者ではなく寮舎なのでしょうか?聞き慣れない日本語ですが、留学生向けの宿舎を指すのであれば、彼らにとっては大事な例文かもしれません)。

日本のお爺さんは、壮年期よりも痩せる人の方が多いと思いますし。

ともあれ、ワクチン接種等もあって、なし崩し的?にウイルス禍に収束の兆しが見えていることもあり、日本に好意的な眼差しを向けて下さっている海外の方々を適切に受け入れる営みを、もっと盛んにしていただければと思っています。

宇宙旅行は自家用SUV車に乗って

20XX年、一般人にも宇宙旅行が手に届くようになった時代。

私は、地元TV局が主催する月旅行企画に当選し、SUV車様の宇宙船の後部座席に乗り込み、今まさに出発のときを迎えた。

先ほどまで、色々な事情でモヤモヤした思いを抱えていたが、車両・・もとい宇宙船が浮遊し、天空めがけてエンジンが点火された瞬間、それらはすべて吹き飛び、これまで経験したことのない、圧倒的な高揚感に包まれた。

そんな思いをFBに手短に書き、送信ボタンを押した瞬間、眩しい光に包まれながら、私の身体はグイグイと引きずられるように宇宙へと吸い込まれていった・・

***

と、そこで、目覚まし時計の喧しいベルが。

起床後もしばらくは宇多田氏?による軽快なテーマソングの破片が脳内を彷徨っていました。

ちなみに、その日の睡眠時間はジャスト2時間。

その夢を見た少し前に盛岡市動物公園に行きましたが、私も園内のイノシシのように、昼間から人目も気にせず寝そべり宇宙の旅を夢見続ける日々を送りたいものです。

夢の中で、発進直後に「こんなところで死にたくない、絶対に生きて帰ってやる」と、かなり生々しく(ほぼ半意識状態)思った直後に、目覚ましが鳴りました。

或いは、そんなことは考えずに高揚感に包まれたままなら、起床しなかったのかもしれません。

岩手弁護士会もオリジナルゆるキャラを作って欲しいの巻

折角の憲法記念日ですが、最近になってようやく、半年前にFBで掲載した文章をブログに転載できる余裕が若干できたということで、今回も、その一環の投稿です。

本日、FBには真面目な投稿をしましたので、関心のある方は、そちらもご覧いただければ幸いです(後日、ブログにも転載予定)。

【虚構新報いわて支部ほのぼのニュース】

先日、岩手弁護士会の非公認地下組織「第二広報委員会(通称・コホニ)」が、同弁護士会のオリジナルキャラクターを制作、発表したことが分かった。

キャラクターの名は「脛皮なもみん」。

岩手版のナマハゲとして知られる、県北沿岸の「ナモミ」と大船渡市吉浜地区の「スネカ」にヒントを得たもので、「なもみん」という可愛げな名前とは裏腹に、ナモミとスネカを組み合わせたような奇怪で恐ろしい形相をしており、一般的なゆるキャラとは全く異なる印象を与えるものとなっている。

委員会が発表したキャラ設定によれば、

キャッチフレーズは、「怖いぜ!裁判!泣かずについて来な!」。

尊敬するキャラは、名古屋のオレパンダー。

右手に定番の出刃包丁、左手には両皿天秤を持ち、正義の女神像(テミス像)を借用したものとなっている。

特技はマッサージ。20年ほど前まで、若い女性に「手相みてあげる、ボク若いんだよ」などと言っては手を握り揉もうとする悪癖があったものの、現在は封印されたとのこと。

コホニのオボナイ事務局長は、次のように、キャラクター制作の意義を語ります。

「ここ数年、弁護士会などがオリジナルキャラを発表する例が増えていますが、いずれも、世間のゆるキャラの真似というか、「僕たちニコニコ寄り添い隊」みたいな優しさを強調するものばかりですよね。もちろん、その目的が弁護士の敷居を低くしたい、というものであることは百も承知です。

でも、我々の仕事の本質は闘争であり、依頼する方々も弁護士が相手の理不尽な主張と厳しく闘うことを期待しているんですから、ゆるキャラばかりを強調するのは、依頼して下さる方々の気持ち、ひいては我々の仕事の本質に悖るのではないでしょうか。

だからこそ、敢えて、裁判の厳しさ、怖さを前面に打ち出すキャラクターを掲げるべきだと考えたのです。「まつろわぬ地」岩手の弁護士会だから、全国的な傾向とは逆張り路線で行くべきだ、と思った面もありますが。

ただ、怖いキャラだけだと全国の皆さんから抗議を受けそうな気もするので、相棒として、癒やし系の「蝦夷ちゃん(仮称)」の制作も検討しています。

ともあれ、目標は、今一番人気になっている大分の「ふくろん」の打倒・・・もとい、ふくろんのツィッターで引用していただくことです!」

元ネタは、下記の各サイトをどうぞ。

「ふくろん」の記事
なぜ法曹界で「ふくろん」が人気なのか? 大分県弁護士会の「ゆるキャラ」に独占インタビュー – 弁護士ドットコム (bengo4.com)

弁護士会ゆるキャラ一覧。東北・北海道はまだ未了のようです。ガンライザーが泣くぞ。
512_06.pdf (nichibenren.or.jp)

吉浜のスネカ。
ユネスコ無形文化遺産「吉浜のスネカ」 – 大船渡市ホームページ (city.ofunato.iwate.jp)

ナモミ。どうして、こちらは無形文化財の選出から漏れたのでしょう?
今年も縁起ものの「なもみ」が動きだした! | たびこふれ (tabicoffret.com)

みんな大好き、オレパンダー。
やっぱりキレイな缶バッジUCANBADGE:オレパンダーに会いに行こう! (u-canbadge.com)

 

過疎地自治体の空き家対策協議会の光景と残念なあれこれ

人徳も人望もありませんので「行政なんとか委員」を頼まれることはほぼ皆無の身ですが、地方の弁護士としては寂しいということで、弁護士会の募集に応じて「二戸市空き家対策協議会の委員」をしています。

で、半年ほど前、2年ぶりに会議があって出席してきました。まあ、2年に1回の会議で、多分に四方山話を聞いて終わり、という感じではありますが。

2年前の会議の際は11時半に終わり、駅のレストランで昼食をいただいて13時過ぎの新幹線で帰ったため、今回も同じパターンかと思い内職道具を持参したのですが、予想外に11時過ぎに終わったので、11時18分の新幹線で帰りました。

本当は、新規開店した「へのへの」で、あべどり・佐助豚・短角牛盛りだくさん定食をいただくのを楽しみにしていたのですが、2時間も書類仕事を放置するわけにはいかず、ということで、泣く泣く泣く泣く諦めて帰りました。

おまけに盛岡に戻った後も、昼食のことで、つまらない踏んだり蹴ったりが・・

というわけで、地元の方や二戸に昼間に行く機会のある方は、ぜひ、ご賞味下さい。

ところで、肝心の会議は市内の朽廃物件の幾つかを「特定空き家」と認定する旨の諮問をした程度で終わったせいか、市長さんから事務局の方々に「その先の作業(勧告等、代執行や求償その他)についてもっと具体的に考え、論点整理して会議で取り上げて欲しい」という趣旨の指示があり、私からも権利関係を整理する視点などについて若干補足させていただきました。

さらに欲を言えば、それらの物件が、どうして「朽廃状態が長期放置され、地域社会に負の影響を生じさせる空き家(特定空き家)になってしまったのか」という物件ごとの物語を調べて、背景にある人的な問題(地域社会の病巣)なども分析し、抜本的な解決や予防のあり方なども検討し市議会・市民などに還元できるような会議ができれば、なお良いのではと思いました。

まあ、それから半年経った現在でも市役所からこの件で何のご連絡もありませんので、結局、放置されているというか、言いっ放し・聞きっ放しという「会議あるある」になっているのかもしれませんが・・

私に関しては、事件受任をきっかけに継続的な相談対応などをさせていただいている小規模な基礎自治体さんが1つだけありますが、二戸市にも、空き家に限らず様々な課題が未解決のまま埋もれ続けているような気もしますので、本業の知見を生かして、もっとお役に立てることがあればと思っています。

多重債務を巡る「不毛な任意整理の費用負担被害」の問題について

長期に亘りブログの更新ができなかったので、最近は、半年ほど前にFBに投稿したものを掲載しています。

今回の投稿も、当時、受任した個人再生事件に関するものですが、この方のケースも、以前に書いた

都会の同業者(弁護士・司法書士)に『最初から無理のある任意整理(リスケ)』を依頼して多額のお金を払った直後に、支払ができない+彼らがアフターケアをしないため、当方に依頼がなされた=ご本人にとっては費用の事実上の二重払いになった事案

でした。少し具体的に述べると、依頼主は、

都会の同業者(今回は、かの東京ミネルバ法律事務所→倒産により都市圏の司法書士事務所に再委任)に、リスケのみを目的とする=元本減額は伴わない任意整理を依頼し、25万円以上を支払

→和解書を取り交わした=支払が終わった直後(半年程度?)に、支払困難

→受任者(司法書士側)に相談したが、ウチでは破産・再生は取り扱わないので地元の弁護士に依頼してと言われ、ご自身で探して当方に相談・依頼、

というパターンです。このような、

都会?の一部の弁護士・司法書士が、できもしない不毛なリスケ対応を受任し、半年程度、督促を止めて和解書を取り交わしただけで20~30万円を支払わせ、債権者への支払開始から間もなく『やっぱ無理』となって本人を放り出す

→その結果、本人は破産再生を受任する後任代理人への費用を含めた二重の費用負担を余儀なくされるので、前者=当初のリスケ依頼のカネは、ほとんど成果のない、ドブに捨てたも同然の結果になる

という問題については、5年以上前から何度も経験しており、以前にも、引用ブログのとおり投稿したことがあります

実感として、法テラス対応事案(最初からその種の依頼が困難な低所得者層)を除けば、ここ数年は、当方で受任した破産・再生の半分以上が、そのような「不毛経由事案」となっています。

率直に言って、それも一つの消費者被害ではないのかと思い続けていますが、日弁連云々であれ他であれ、誰もそうした問題提起を行う光景にお目にかからないことを残念に思っています。

まあ、その種の問題意識を持つような方は、当方のように、膨大な不採算案件の対応(受任)と零細事務所の資金繰りに追われるばかりで、そんな話に関わる(社会に問題提起し改善を促す運動?をする)だけの余裕がないのかもしれませんが・・

 

不動産の登記名義を理由とする課税制度の理不尽と解決策~相続放棄制度との不整合という問題~

先日、知人の司法書士の方が、Web上で表題の件に関する投稿をなさっていました。具体的には、以下のような内容でした。

「相談者A氏は、先般、自身が全く知らない土地甲につき、α市から固定資産税の課税通知を受けた。甲地はAの亡親Zが所有しているが、Aは、事情によりZとは断絶関係にあったが、自身の知らぬところで、相続人の一人として遺産共有の法定相続登記がなされたため、登記名義を理由に固資税の請求が来たものである。

Aは、Zの相続の意思がなく直ちに相続放棄の手続を行いαに固資税は支払えない旨を申し出たが、αは『登記名義人に課税するのが地方税法343条1項で決まっているので、Aの申出には応じられない(請求どおり支払え)』との対応を繰り返すばかりである。

Web上の記事を見ると、役所の取扱は一般的なもので、それを支持した裁決例が多々あるようである。

Zの共同相続人として甲地に登記された他の兄弟姉妹Bらは(Aの調査では)全員死去しており、その子など(第二次相続人)CらがBらの相続をしたのかは不明。

Aは「甲地の競売等には何の異存もないが、以上の理由から自分の個人資産(固有資産)への差押はしないで欲しい」と希望している。

Aは、固資税の負担を免れることができるか、そのための方法如何。」

***

税法は(行政法も)実質専門外ですが、それだけに?興味深いと思って少し調べたことを次のとおりご返事しました(文献を調べずに書いていますので、半分は戯言と思って聞いて下さい)。

論点1 固資税の課税を争えるか

この点は、残念ながら無理のようです。

紹介記事で引用された大阪地裁昭和51年8月10日判決は、(判例秘書で見たところ)不当利得返還請求という(この種の訴訟としては)不適切な請求原因となっているので、前例価値は疑問です。

が、同種の争点に関する処分取消請求訴訟である横浜地裁平成12年2月21日判決は、このようなケースの課税処分の適法性(名義人が相続放棄をした場合でも、登記名義人である以上は課税を行うべきであること)について、相応の理由を付した説示がなされており(私の勘違いでなければ、控訴・上告も退けられた模様)、恐らく、現在の裁判所がこれを否定する判断をすることは期待し難いと思われます。

論点2 課税を争えない場合の対処手段

相談者A氏は、実体上の所有権者(共有者)Bら(全員死亡とのことですので、その相続人Cら)に登記名義引取請求を行い、任意の対応が得られなければ、判決に基づき名義変更手続を行うほかないでしょう。

また、Aが支払を余儀なくされた固資税は、上記判決が指摘するとおり、B=Cらに求償請求するほかないでしょう(引取請求と併合)。

CらがBらの相続を放棄した場合には、相続財産管理人の選任申立を要するなど、さらに重い負担を要することになるかもしれません。

甲地は、恐らく、そうした費用や労力を投ずる価値の乏しい少額の土地だとお察ししますし、自治体に事情を説明して、A氏の個人資産への差押を保留するよう要請すること自体は、あってしかるべきかとは思います。

が、建前論として、彼らが「はい」と言うことはないでしょう(そのように聞いています)。

杓子定規に仕事をする担当者なら、個人資産への差押に及ぶ危険は否定できないかもしれず、その場合は、「税務の簡便迅速」の旗印のもとにA氏がこのような理不尽を強いられていること(第1)の当否も含めて、マスコミや司法書士政治連盟さんの出番(立法論)かもしれません(弁政連は期待できないので・・以下略)。

論点3 来年以後の固資税

既述のとおり、登記名義人になっている限り、固資税の納税通知(請求)を受けることは避けがたいと思われますが、相続放棄済みであることを資料と共に自治体に説明し、来年からはBらの相続放棄をしていない他の相続人Cらに請求書を送付してもらうことは、交渉次第で、可能ではないでしょうか?CらはAには按分請求できないでしょうし。

(この点は、関わったことがないので、分かりません。期待混じりのコメントです)

これが上手くいけば、今年限りの負担で済むのでしょうし、巨額の不動産で多額の請求を受けているというのでなければ、許容範囲の出費で済むかもしれません。

これが無理なら、あとは、論点2末尾のとおりというほかなく、立法的解決が待たれます。

函館で輝く?タレント司法書士さんと田舎の町弁の野望

先般、所用で函館に行きましたが、現在この街では、各所で

シホシホシヨシ シホ~ショシ
シホシホシヨシ シホ~ショシ

という呪文のようなCM?が流れています。

ショコショコ感と言ったら怒られるかもしれませんが、一度聞いただけで忘れられない中毒性があり、Web上でも同じような感想が述べられているのを見つけました。

で、当事務所もこれに対抗(模倣)して

ベンベンベベベン ベンゴシガ~
ベンベンベベベン オタスケス~

などというCMを、盛岡駅前や大通などで延々と流してみたい・・

との誘惑にかられましたが、同行者から

品位を欠く非行になるので却下

と、ダメ出しを喰らいました。

このCM、Web上でも公開され、話題になっているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=BnyFFyn4Isc

東京のクレサラ司法書士法人あたりの仕業なのだろうかと思って調べたところ、地元の司法書士さんが制作されたもののようです。

ご本人は大阪のご出身とのことで、かのラッキーピエロのように、大阪と函館は何か相性がよいのかもしれません。
https://ebi-hakodate.com/profile/

そういえば、函館には「東大卒業後、思うところあって山籠もり?をしていたものの、一念発起して2年だけの勉強で司法試験に合格し、縁もゆかりもない函館に第一志望で修習し、今も函館法曹界の要として活躍されている九州出身の弁護士さん」もおられます(司法研修所の同じクラスの方で、私のすぐそばに座っていました)。

函館は、ぶっとんだ東大生の方とも相性がいいのかもしれません。

メガソーラーの廃墟化(運営放棄・倒産等)による大規模不法投棄の危惧と対策

ごく一部の方にしか知られていませんが、こう見えて、4年ほど前に日弁連公害対策環境保全委員会・廃棄物部会の部会長を2年だけつとめていました(モチ名ばかり)。その際、

「今、日本各地の辺境に大規模メガソーラーが作られているが、運営企業の中には、実体が不明瞭なものも珍しくなく、災害で大規模な破損が生じたり、耐用年数が切れたときなどに、責任をもって廃棄等の対処をせず、放置=大規模不法投棄を全国各地で生じさせる(≒県境不法投棄事件の拡大再生産になる)危惧があるのでは。今のうちに日弁連として何かできることはないか」

と考え、部会内で議論したり、環境省・総務省や太陽光発電の関係協会の方からお話を伺うなどしたことがあったのですが、ほどなくしてプラスチック海洋汚染の話で世論が沸騰したため、まだ顕在化していない太陽光よりそちらに取り組むべきとなって部会の取り組みは一旦終了し、今に至っています。

先日、太陽光発電の廃棄問題について触れたWeb記事を拝見しましたが、私自身は、当時から、この記事の学者さんが仰っている

太陽光パネルも発電事業者がリサイクルを進めるように促す法律を整えること」に加え、

事実上の不法投棄(使用済み・破損等パネルの大規模放置)の未然防止や、地元自治体(住民)に事実上の処理負担が押しつけられないようにするための費用担保(保険等)の制度

を主張する意見書を作成できればと思っていました。

が、肝心の私自身が当時も今も本業で首が廻らず、具体的なことは何もできていない状態が続いていることに、懐かしいというか、力及ばずお恥ずかしい限りです。

記事では岩手県(奥州市)の事業者さんが取り上げられているので、できることなら、そちらの視察(見学)にも行ってみたいものですが、多数の締切に終われる現状では、夢のまた夢というトホホな有様です。