北奥法律事務所

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最後の福祉弁護人とドタバタ劇

先日受任した被疑者国選事件が、自宅に障害のあるお子さん(成人)が一人残されているとか、猫がいるものの面倒を見る人がいないとか、本題(被疑事実)とは関係のないところで色々と問題があり、保健所・医療施設・動物愛護団体など様々な関係先の方々と延々と電話でやりとりする等の作業に追われました。

幸い、猫やお子さんの保護に関する実働は関係機関に担っていただき、猫も残念な展開にならずに済んでおり、「猫の餌をやってきてくれ」などという国選の著名ジョークのような有様には至っていませんが、先日は迷路のような道路の先にあるご本人の自宅を訪ねて内部の残念な状況を五感で思い知るという出来事もありました。

最近は、後見絡みの受任が増えているほか、ご家族の障害などの問題を抱えた高齢の方からの財産管理などに関するご依頼(地域包括支援センターを介したもの)もあり、次第に「最後の福祉弁護人」といった感じになってきています。

10年以上前は、ヤミ金などの従事者と不毛な怒鳴り合いに勤しむ「最後のクレサラ弁護人」だったこともありますが、時代の流れを感じざるを得ません。

で、保健所のAさんや医療施設のBさんとのやりとりの一コマから。

A:お子さんが所持金がなく困っている。解決のため、被疑者に○○を聞いて貰えないか。
私:昨日も接見に行ったばかりなので、何とか他の方法で対応できませんかね・・
B:無理です。これがどうにかならないと、お子さんが食べていけません。
私:仕方ないですね・・今夜も行きますよ。

~で、接見して○○を聞いてきた次の日~

A:何とかなりました。○○の点が分からなくとも、大丈夫でした!
私:そうですか。昨日のうちに仰っていただきたかったですが、良かったですね・・
(こうした話の連続で急ぎの重い仕事が延々遅れており、内心ピギャー)

で、心の余裕がなくなるとロクなことが起きないというか、11時の法廷を勘違いして10時半に裁判所に行き、到着後に愕然としながら無為に30分を過ごす羽目になりましたとさ・・

どんとはれ。

ともあれ、この件では、当事者(特にお子さん)が悩ましい問題を抱えた状態が今も続いており、現在、関係者に検討・準備いただいているものを含め、様々な福祉的支援が必要であることは間違いありません。

現在生じている幾つかの看過すべきでない問題を解消するには一定の経費を要しますが、この件では特殊な手法を用いれば一定の費用回収ができることも間違いないと思われるものの、現在の法制度では簡単にできることではないことも確かです。

この場では具体的に書けなくてすいませんが、そうした問題について担保的な手法により最後に回収する目処を付けた上で、行政などが介入し問題の除去を図るという仕組みがあってもよいのではと残念に感じています。

天峰山と「知られざる北上高地」

前回の「岩泉での法律相談」の続きですが、岩泉から事務所に戻る途中、岩手山の好展望地として名高い天峰山に立ち寄りました。

恥ずかしながら、修習生時代(平成10年頃)は天峰山の存在自体を知らず、5年ほど前にようやくその存在を知ったものの、岩泉方面に赴く機会自体がほとんどなくなってしまい、今回が初訪問になります。

この日は絶好の晴天日で、真正面の岩手山はもちろん北の八幡平・安比方面から南の南昌山・焼石方面、また、奥(岩手山の西)にある秋田駒ヶ岳・乳頭山なども含めて非常に良好な展望を望むことができました。

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ただ、展望場所の東側は樹林帯となっており、北上高地の風景を望むことはできませんでした。途中の道路からは、展望地のすぐ東にある玉山牧場の広々とした牧場風景が広がり、遠くには早池峰山をはじめ北上高地の山々を目にすることができる場所もあっただけに、少し残念に思いました。

北上高地の特色として、「重畳たる山並みの頂上部分が草原(牧場)になっている光景(が幾つか点在していること)」が挙げられ、南部(106号線以南。遠野周辺など)には寺沢高原・荒川高原・種山が原など、そうした山上の大草原が数多く見られるのですが、北部はあまり多くはなく、観光客が気軽に立ち寄れる場所はくずまき高原牧場、袖山高原、高森高原くらいしか思いつかないのが実情だと思います。

それだけに、国道に面しておりアクセスに強い優位性のある玉山牧場について、観光客(一般人)が気軽に立ち寄って展望を享受できる=山上草原の美しさを感じることができる措置を講じるのが望ましいというべきで、例えば、東側を望む木製の展望塔などを整備しても良いのでは?と思いました。

展望塔に相応の高さを確保すれば、外山ダム湖岩洞湖、北の姫神山なども含めた360度の大展望が得られるのではと感じるだけに、関係者には検討していただきたいところです。

また、既存の展望場所(小さな広場)も、自動車が出入りする際に砂埃が立ちやすいのだそうで、コンクリート舗装するかはさておき、もう少し整備してもよいのではと思いました。

残念ながら事務所に速やかに戻る必要上、直ちに国道(455号線)に戻りましたが、国道沿いには天峰山の入口であることを示す表示などは一切なく、この場所は今も知る人ぞ知るの場所になっています(ですので、冒頭のとおり何年間も知らず、知った後も、どこが入口なのだろうと分からない状態が続いていました)。

それはそれで味わいがあるというべきかもしれませんが、これだけの展望地ですので、その良さを社会に伝える姿勢があっても良いのではと感じます。

玉山牧場は、ネットで調べたところ、くずまき高原牧場(の運営企業である、葛巻町が母体となっている公社)が管理しているのだそうで、それだけに、盛岡市がやる気を見せないのなら、葛巻町側が「北上高地北部の良さを世間にもっと伝えたい」という心意気を発揮していただきたいものです。

余談ながら、時間さえあれば、往路を戻るのではなく大川地区から櫃取湿原に向かいたいとも思っていました。櫃取湿原も修習生時代から行きたい、行きたいと思いながらも未だに足を踏み入れることができておらず(入口だけは2回ほど行っているのですが)、いつになることやらです。

龍が棲む町の宿命と「相続放置」に関する過疎地の現実

先日、岩泉町の社会福祉協議会が実施する法律相談事業に弁護士会から派遣されて担当してきました。

平成28年8月の「異常な進路を辿った挙げ句に岩手県の一部と北海道の十勝地方を襲った台風10号」によって岩泉町は甚大な被害を受けましたが、私自身は数年ほど岩泉方面に行く機会がなく、台風以来はじめての訪問となりました。

10時から12時まで3件のご相談があり、テーマは賃貸借や成年後見など様々でしたが、いずれの事案も相続が絡んでいる一方、相談者の方も高齢のため、ご自身での対処が難しいと見られるものもありました。

高齢者から込み入った事案の相談を受けた場合、残念ながら、様々な論点や幾つかの作業を必要とする旨を繰り返し説明しても、聞き手=相談者が高齢のため自身で作業をこなせないことはもちろん、当方の説明を理解できているかすら心許ないのが通例で、お一人で相談せず、ご家族や支援者と一緒にいらして下さいと説明するほかありません。

医療であれば、(例外があるにせよ)ご自身が当を得た説明ができなくとも、目視であれ諸検査であれ身体を診て病気を確認し、それに対し手術や投薬などの対処ができる=ご本人はそれを受け入れていればよいということが多い(と思われる)のに対し、弁護士への相談事項は、より高度で内実のあるコミュニケーションが構築できないと話を進めることができないものが通例です。

相談の対象が「問題の解決」という性質上、「依頼するか、説明された内容をもとに自分で対処するか」の選択から始まり(もちろん、相談内容や当事者の置かれた状況によりどちらが相応しいかは異なります)、受任業務の多くも、僅かな例外(過払裁判の一部など)を除き、弁護士と依頼者が様々な作業や意思疎通を重ねなければ解決できない事案が少なくありません。

とりわけ初動段階では、弁護士が「これこれの準備をして下さい(それを済ませていただけないと私=法律家が従事する前提を欠きます)」と幾つかの作業をお願いせざるを得ないことが多くあります。

主に、事実関係の説明やご自身の手持ち資料の整理、関係者の内部協議などになりますが、そうしたものについて高齢者の方がお一人で対処することは困難ですので、込み入った事案では、ご家族や相当な支援者のご協力が得られないと、先に進めるのが難しいと言わざるを得ません。

率直なところ、岩手に戻って十数年、高齢の方がお一人で込み入ったご相談を持ち込んできて、そうした残念なやりとりを余儀なくされることが非常に多いというのが実情です。

で、今回のご相談では、例えば、「不動産の貸主が借主の賃料不払等を理由に不動産の明渡を求めたいが、借主は既に亡くなっており、借主側の相続関係も不明である」といったものがあり、その場合には、前提として契約関係の明確化(内容確認)や所有関係など(不動産登記事項証明書)を行いつつ、本題というべき借主側の相続人調査などを行わなければならず、それらの一つ一つをとっても、様々な事務作業が必要となります。

土地の賃貸借であれば、そうした前提をクリアできた上で、最後に建物撤去という悩ましい問題があり、事案に応じたリスクやコストに関し依頼者との間で見通しや覚悟などの共通認識を得た上でなければ、弁護士としては軽々に依頼を受けられない面があります。

残念ながら「借主たる80代くらいの高齢者ご本人」お一人のみでは、そうした面倒な話に対処いただくことは困難で、一通り説明しても「何となくわかったけど、自分一人では何もできない、しない、それでおしまい」という、茶飲み話レベルの展開にしかならず、互いの時間の無駄と言わざるを得ません。

その件でも、同種の説明をして、町内で同様の企画(無料相談会)があれば、お子さんなどに同行していただくか、私への相談を希望されるなら、ご一緒に盛岡にいらして下さいと伝えるのが精一杯でしたが、お子さんは遠方に勤務しているので同行は難しいなどと言われてしまうと、私も何と言葉をかけてよいのやらという感じになってしまいます。

最近は、この種の「本題(賃貸借など)に加えて、前提として相続が絡み、かなり面倒な作業が必要になる可能性が高い(ので、誰もが嫌がって放置し先送りされ、次の世代が結局は迷惑する可能性が高い)事案」が非常に増えているとの印象は否めません。

そのため、建物登記の義務化(放置への不利益処分)、相続時に一定の期間内に遺産分割などがなされなければ暫定的に法定相続分登記の義務づけ(又は職権での実施)、それらの履行が困難な方のための支援などが必要だと感じています。

現状では、相続物件に絡んで利害関係のある第三者に面倒な負担が強いられる一方、その解決に対処した者に報いる面が薄く、放置した場合のペナルティもほとんどないため、とりわけ高齢者が権利義務の主体となっている事案では、先送りばかりが常態化しており、何らかの制度的な手当が急務だと思います。

そうした意味では、今回の相談は社会福祉協議会を通じて行われたものでしたから、相談者が拒否するのでない限り、担当職員が立ち会うなどして、今後の動線を支援する取組をすべきでは(それが、職員自身の今後のためでもあるのでは)と思わざるを得ませんでした。

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相談会が終わった後、帰路につく前に、大川地区の名所である「大川七滝」を見ていくことにしました。

大川七滝は、大川が階段状に傾斜している場所であり、メジャーな知名度はありませんが、それなりに見応えがあり周辺の雰囲気も良いので、一度は訪れる価値のある場所と言ってよいでしょう。

私自身は、4~5年ほど前に龍泉洞を訪れた帰りに大川七滝に立ち寄り、さらに奥の山深い道を進んで「北上高地の秘境」と言われる櫃取湿原の入口を通過して(日没のため湿原には行けませんでした)、区界高原から盛岡に戻るという休日を過ごしたことがあり、今回も七滝だけでもチラ見していこうと思い、会場となった複合福祉施設を北進しました。

すると、なんということでしょう。

ちょうど七滝のすぐ手前で道路が台風禍の土砂崩れでズタズタに寸断され、現在も復旧未了のままになっていたのです。

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そこで、仕方なく少し戻って小さな橋を渡り迂回路を進み、どうにか七滝自体には辿り着くことができました。

私が今回に通った道路で寸断されていたのはこの場所だけでしたが、周辺の細い道にも寸断されたままの状態になっている箇所が多くみられ、1年近くを経た今も台風禍の復旧は十分でないこと、また、川から10m以上の橋に瓦礫が散乱している光景から、当日の岩泉町内にどれほど激しい濁流が押し寄せたのかということが、多少なりとも感じる面はありました。

とりわけ、七滝の手前の道が寸断されたというのは、蛇行する川や七滝の姿が竜の化身のようなものだと考えると、「特別な場所に気軽に来ることができると思うな」と天に告げられているような印象も受けました。

そんなわけで台風禍に翻弄される「龍のまち」岩泉を思って一首。

大川におおかぜ来たりて龍となり 人の非力を現代(いま)に知らしむ

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岩泉の台風禍は、小本川沿いの福祉施設の被害があったとはいえ震災に比べれば人的被害が多くなかったせいか、人々の記憶から風化しつつある面は否めないのかもしれませんが、それだけに、土木工事だけでなく上記のような住民が必要としている人的サポートの拡充も含め、過疎地の復興へのご尽力を願ってやみません。

弁護士の相談業務に関する利益相反問題と対策~当事務所の予防策と、変わらない?弁護士会~

先月の土曜に岩手弁護士会(盛岡)法律相談センターの担当日があったのですが、前日(金)に予約票を事務所にFAXいただくよう弁護士会のご担当にお願いしたところ、予約者の方の中に、以前に対立する当事者の方から相談を受けたのではないかと思われる方が含まていました

当事務所では、その種の相談会では前日に主催者(弁護士会など)から予約者リストについてFAXで提供を受け、私が以前に相談を受けた方との利益相反の有無(対立当事者から相談を受けていないか)を当方の事務局に確認して貰った上で相談に臨むことにしてます。

そして、今回は、金曜に弁護士会から送信されたリストに、それに該当する方(以前に私が相談を受けたAさんの対立当事者と思われる方=Bさん)が含まれていたので、弁護士会にお願いして、Bさんには、後日に来ていただくよう弁護士会事務局から伝えて欲しいとお願いして、その方にもご了解いただいたという次第です。

仮に上記の措置が講じられず、そのままBさんが土曜に弁護士会(私の面前)にいらした場合、私は、その場で「すいません、Aさんから相談を受けていました(ので相談は受けられないから本日はお引き取り下さい)」と答えることになったかもしれませんし、それどころ、私がAさんから相談を受けていたこと自体を失念していた場合には、Aさん=相手方にあれこれアドバイスをしていたにもかかわらず、今度は、Bさんに、Aさんと闘うためにアドバイスを披瀝するという事態(それが、客観的には弁護士としての職業上の義務に反することは言うまでもありません)になったかもしれません。

上記の予防措置は、以前にも投稿したとおり(引用ブログ参照)、私の過去の経験から当事務所の自主的取組として行っているのですが、本来であれば、弁護士会事務局が相談の受付時に、相談者と相手方の氏名を確認し、担当弁護士が過去に相手方から相談を受けた事実がないかを確認するという作業があってよいはずです。

とりわけ、今回に関しては、Aさんとお会いしたのも(いつどこなのかは差し控えますが)弁護士会が把握可能な相談会でしたので、なおのこと、弁護士会が個別の相談事業の相談者や相手方に関する情報をデジタル情報で管理していれば、弁護士会の受付段階で「土曜の担当は、貴方の相手方から相談を受けた弁護士である可能性がある」などと把握し説明して、来所日を変更していただくよう求めることはできたはずです。

現実問題として岩手弁護士会事務局の受理体制にも様々な限界、制約があり、そのような措置を講ずることとが容易でないことは承知しているつもりですが(だからこそ当事務所として自主的取組をしています)、「べき論」としては、主催者たる弁護士会において利益相反チェックを行うのが望ましい面があることは確かだと思います。

で、何のためにこうしたことを長々と書いたかと言えば、法律相談事業にはこの種の問題(担当者が相手方から相談を受けていた可能性があるというリスク)は避けて通れない問題ですので、ごく一部の不運な方がたまたま遭遇して気の毒でしたねで終わり、というのではなく、弁護士会であれ、その他の役所等であれ、そうした問題を回避する(なるべく少ない費用・労力で)ための仕組み作りをきちんとすべきではないか(利用者側も、主催者側の尻を叩く必要があるのではないか)ということをお伝えしたかったということに尽きます。

少なくとも、添付の投稿を含め、同じ問題意識を持っている(同種の経験をした)弁護士は相応にいるはずですが、岩手に関しては、弁護士会などが組織として動きを見せているという話は何も聞いたことはなく、利用者の便宜が蔑ろにされていると批判されてもやむを得ないのではないかと思われます。

我々の基本的な掟としての利益相反ルールそのものは変えようがない話だと思いますので、それを前提に、担当弁護士側の事情など何も分からないまま相談に臨む方々(ひいてはそれに相対する弁護士)に不合理な不利益を押しつけないためのシステムづくりについて、ITによる工夫も含め、業界全体の喫緊の問題として考えていただきたいものです。

余談ですが、以前に、私も参加させていただいているFBの同業者グループ内での投稿で、「以前に相手方から相談を受けたことを説明して断るのは守秘義務違反だ。だから、理由は言えないが断りますと説明するのが正しい」と他の同業の方が投稿していたのを拝見した記憶があります。

そのような考え方も間違いではないとは思いますが、断られた側からすれば、理由も何も説明が受けられないと、理由が分からず当惑することはもちろん、まるで自身の相談が弁護士に相談すべき事柄ではないかのような誤解を招くなど、弊害が生じかねないのではと危惧されます。

先に相談したAさんにとっても「後日に同じ弁護士にBさんが相談依頼の電話等をするかもしれない可能性」は潜在的にあるべき事柄なので、Bさんの納得という意味でも、保全事件など特に潜行性の要請の強い事案を別とすれば、「相手方関係者とやりとりがある(相談を受けている)」といった程度の告知は、相談依頼を断る際の説明としては、やむを得ない(Aさんにとっても内在的制約として許容されるべき)と考えますが、皆さんは、どのようにお考えになりますか?

或いは「当方には差し支えの事情があるので余所に相談して下さい」と説明する方法なら、相談を受けたことを言わずとも上記の弊害がなく回避できると言えるかも知れませんが・・

秋田八幡平の勿忘草と地獄谷

先日投稿した八幡平には仕事に関する野暮用で訪れたのですが、ついでに秋田八幡平スキー場で少しだけ滑ってきました(なお、前回述べたとおり、4月末頃の話です)。

リフト1基、2コースだけの小さなスキー場ですが、北東北で一番早い時期から最後まで営業しているため愛好者にはよく知られたスキー場なのだそうで、私も初めて来ましたが、十分楽しめました。

春山ですので雪質はやむを得ないところで、ハイシーズンに来てみたいのですが、八幡平山頂の開通までは安比の2倍以上の時間をかけて来る必要があり、岩手人にはハードルが高いです(泊まりがけでスキーできる身分に戻れるのはいつのことやらです)。

アスピーテラインを頑張って12月下旬頃まで通行可能にしていただければ、岩手方面から訪れる人も増えると思いますが、それはさておき、岩手人はアスピーテラインの開通直後に秋八スキー場で最後のひと滑りを楽しんでシーズンを終えるというのも粋なことなのかもしれません。

ところで、岩手県央部のスキー場の来客用施設(ロッジ類)は某岩山を除いて今どきの設備ばかりなのですが、秋八のロッジは数十年前に建てられたであろう古い施設のままで、いわゆる「昭和レトロの世界」と言えないこともありません。

子供の頃、当時の西岳スキー場や今は無き竜ヶ森スキー場で仕事をしていた方に連れられ、業務終了の時刻まで一人でほったらかしにされて適当に滑るという寂しい日々を過ごしていたのですが、秋八のロッジには岩手県央では感じることのできない、見知らぬ大人達とストーブを囲み暖をとった竜ヶ森や西岳の光景を懐かしむことができそうな面があり、そうした意味でも好ましく思いました。

今は、あの頃より少しは上達したとは思いますが、私に代わってボーゲンに勤しむ新たな初心者の姿に、変わりゆくべきものと変わらないでいて欲しいものをしみじみと感じたりもします。

そんなわけで一首。

春雪に勿忘草を見る山は あどけなき弧を今に伝える

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秋八スキー場から仙北市(田沢湖)経由で帰宅する途中、玉川温泉の地獄谷(自然研究路)に立ち寄りました。残念ながら、日帰り温泉は湯冷めするから嫌だと昔から主張する同行者の方針で今回も入浴はできませんでしたが、火山活動に伴う荒涼とした光景を楽しむことができました。

いわば「遠くのイエローストーンより近くの玉川温泉」といったところですが、間欠泉は北東北にほとんどありませんので、後生掛温泉の泥火山と黒玉子で勘弁して下さい。

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また、源泉から温泉施設に向かって流れる硫黄たっぷりの濁流は「遠くのベイサンズ(シンガポール)より近くの三途川」といった印象です。こちらは舟には乗れませんが昇天しそうな宿泊費を取られることもありません。

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周辺から硫黄が噴出し黄色に染めている光景は「ロード・オブ・ザ・リング」のクライマックス(火山の内部に入るシーン)を思い浮かべますが、悪の指輪を捨てるどころか、ガスの幻覚に襲われ?ご自身の結婚指輪を外す羽目にならないようご注意下さい(幻覚かどうかはともかく、残念な事態に陥った方のご相談は日々お受けしております)。

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ここで、同行者から「黒玉子を食べたい」との希望があり、玉川温泉と同じような雰囲気の後生掛温泉で売っているので、こちらにも当然にあるものと思っていたのですが、残念ながら玉川温泉では製造・販売なさっていませんでした(ので、「騙された」と恨まれました)。

ネットで調べた限り、黒玉子は、箱根の大涌谷と後生掛温泉、岩手側の藤七温泉でしか売っていないようですが、私の知る限り非常に人気のある商品ですので、玉川温泉に限らず、各地の温泉等でぜひ販売を検討いただきたいものです。

八幡平に現れる預言者と「出いわて」の記

GW前半の最初の休日に八幡平に行きました。秋田側に野暮用があり、その前の週にも向かったのですが、出発前にWeb情報を見ておらず、ゲートまで来て初めて通行止めになっていたのを知るという憂き目に遭ったので、敗者復活戦よろしく2週連続で八幡平に行くことになってしまいました。

この時期に山越えをするのは初めてで、アスピーテラインの雪の巨壁は、預言者が海を割って民衆を軍勢の追撃から守った光景に通じるものがあるようにも感じました。

ちょうど、「民族」という観念の発端が旧約聖書の出エジプトの物語にあるのだ(それが中世末期~近代の欧州で再発見・再構成されて「民族」という概念が世界に流布されたのだ)と説明する本を読んでいたので、それに触発されたのかもしれません。

そんなわけで一首。

雪分かつ道に申せど声しない樹海の底に潜む神々

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すいませんが、運転してましたので私自身は雪の壁の写真は撮影してません(ネットで検索してご覧下さい)。

余談ながら、10年以上前に新婚旅行でシナイ山の頂からご来光を拝見したことがありますが、私にはヤハウェの声は聞こえてこなかったようです。

峠の有料駐車場の先にある展望デッキは今も雪に閉ざされているため、皆さんザクザク上っていきます。

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が、ご覧のとおりの傾斜なので、お爺さんがすってんころりんなさったりしていました。

誰でも行ける気軽な場所ではありますが、反面、この状態で転倒事故が発生すれば工作物責任等を理由に管理者の賠償責任が認められる余地があるのではと思わないでもありません(500円も駐車料金を取られますし)。

連休期間中だけでも、雪をスコップで固めて簡易な階段状の道を作った方がよいのではと思いました。別に、市の観光協会?の顧問になりたくて言っているわけではありませんが・・・

石割桜に咲く、避けがたき喜怒哀楽の花

すいません、GW前くらいから仕事が山積みで相当に滞留しており、ブログ更新が厳しくなっています。

そうした経緯で、今更ながら4月中旬頃にFBに書いた話をこちらにも載せますが、この時期の盛岡地裁は花を愛でる方を喜ばせる季節となり、玄関前に咲く花を目当てに多くの方が集まります。

が、建物の中では庭の光景に関係なく、出廷した代理人に対し裁判所から「あれもやってね、これもやってね」という無慈悲な破滅的懲罰、もとい事件解決のため必要やむを得ない(らしい)要請が続けられているというのが現実です。

そんなわけで三首。

避けがたく春も作業が雪だるま 秋の実りが今も懐かし
老木は喜怒哀楽を日々喰らい もののあはれの心伝える
こき使う石割桜にカネ咲かず 今日もはげめと肩にひとひら

うち一首は、ある事件に着想を得たものですが、何の件かを述べるのは差し控えさせていただきます。

FBでは快晴日に撮影した写真を掲載したのですが、容量の関係でブログ掲載ができず、ブログ用に撮影しようとした日は雨天になってしまいました。

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折角なので、その日の午後に水沢支部に出張した際に撮影した水沢競馬場の桜も載せますので、まとめて「雨天の桜」を慈しんでいただければと思います。

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平成28年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚請求や関連紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、様々な立場の方から多数のご相談・ご依頼を受けています。被害者側の受任事案で、加害配偶者側が不貞を争ったものの、携帯電話の会話記録などを整理して不貞の事実を立証して賠償金が認められた例もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争離婚後に生じた子の引渡や親権の変更を巡る紛争など、親子の問題に関する事案の受任も複数あり、依頼主の希望をはじめ子の福祉など様々な事情を考慮し各種の調整を行い穏当な和解による解決に努めています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、遺産分割を巡って当事者間に激しい対立があり、遺産の評価や寄与分、特別受益など複雑な争点を伴う事案のほか、被相続人が死去の直前に親族に財産の一部を贈与する旨の書面を作成し、遺言としての様式は満たさないものの贈与としては有効になされているとして、法定相続人に請求した事案(法定相続人が要後見状態になり長期化した事案)などを手がけています。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、相続財産管理人やそれらの一貫として遺産の管理や付随する法的問題の対処などを行った事案もあります。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、急速に増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが紛争やトラブル発生の防止のため望ましいことが多いと思われますので、遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め、早期の対策などをご留意・ご検討下さい。

離婚・親子・相続などの問題に関しては、昨年中は幾つかのセミナーを行う機会がありました。それらの分野に限らず、セミナー講師などのご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請し不許可となった方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟を自治体側の代理人として受任しています。

詳細は差し控えますが、その分野に関する長年の政策的な積み重ねの当否などが争点とされている事案であり、担当の方から様々なお話を伺うと共に、行政訴訟に関する基本的な法律論(取消訴訟の主張立証のあり方や行政裁量の問題など)の検討も積み重ねており、大変しんどい裁判ですが、固有のルールが複雑に重なる行政訴訟を手がける上では、学ぶところの多い事件となっています。

他にも、区画整理に伴う損失補償の問題に関する事件を手がけたこともあります。

刑事弁護については新人弁護士の増加により受任件数は多くありませんが、被疑者段階を含め、窃盗や覚せい剤事案など主な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

また、私選での少年審判の受任もあり、事件の背景や今後のあり方など少年の更生環境を検討したりご家族とお話しする機会がありました。

その他の業務としては、昨年に引き続き被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。数年に亘り大船渡の法テラス気仙など沿岸での相談を担当してきましたが3月に担当を外れ、本年は内陸部での相談が主となります。

平成28年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

争点としては、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案が多く、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案など、幅広い類型を取り扱っています。

事故直後など加害者側の示談案提示前の時期から受任し後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、実務では非常に多い「レントゲン等による所見が確認されない神経障害に関する後遺障害(14級9号)の成否」などについて、幾つかの例を通じ知見を深めることができた1年だったと思います。

また、本年は学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償請求訴訟(後遺障害の評価が主な争点となったもの)、若年者間のスポーツ事故に関する賠償責任や関係者間の求償(加害者側と施設管理者の責任割合など)につき検討を要した事案など、加害者(損保)側の立場での検討を含め交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛けており、特殊な事情から長期化したものの、先般、原子力紛争解決センター(ADRの手続)で相当な解決案が示されて無事に終了できました。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

個人間の貸金に関する紛争(授受の当事者双方が死去して貸主相続人が借主相続人に返済を求めたものの、相続人は双方が貸金に関与しておらず、領収書などの直接証拠が乏しく立証に課題のあった事件)、不動産の登記(古い登記の抹消など)に関する訴訟、労働審判(労働者側)など、多くの事件を手がけています。

不動産の賃貸借の紛争では、契約終了に伴う貸主からの借主への目的物返還や賃料などの請求を貸主代理人として扱った案件が幾つかありますが、中には、「貸主の相続人が借主に明渡等を求めたところ、借主が、被相続人から目的物を(廉価で)譲り受けたと主張し、被相続人と借主との間で売買契約が締結されたかどうかが争点となった例」もありました。

「被相続人(ご両親など)と相手方との間で何らかの問題が潜在し、相続の際にそれが噴出して相続人が法的対応を余儀なくされ、被相続人の真意や生前の協議内容などを巡る事実の立証などが問題となる事案」は、昔から非常に多くあります。ご高齢のご両親などが多くの権利関係を有するのでしたら、ご親族内部に相続紛争などの問題がなくとも、対外的に問題が生じる可能性があることも踏まえて、ご両親から事情を確認していただくなど適切な対応・ご準備を考えていただければと思います。

また、多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件など生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じており、大半の方が震災無料相談制度を通じて費用負担なくご相談いただいています。

(以下、次号)

平成28年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、1月か2月頃に業務実績を顧問先にお送りして、その後にブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成28年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

全般的には、①②は件数も多く論点も様々で、③④⑤は件数こそ多くないものの作業量や問題となる点が多い大型案件の解決に力を注いだ1年になりました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

①旧所有者による廃棄物の不法投棄に伴う撤去費用を請求した事件

A氏が建物の建築目的で岩手県内の某土地を不動産業者Bから購入しC社に建築工事を発注したものの、着工後まもなく土地の地下にコンクリートガラや廃材などの廃棄物が埋設されているのが発覚したのでC社が調査したところ、10年以上前に同土地でD社がコンクリート製の建物を建築して営業しており建物解体の際に不法投棄された疑いが濃厚だとして、D社の責任を求めたいという相談を、C社(A氏から相談を受けて被害解決の窓口役を担当)から受けたという事件があります。

直接の被害者はA氏ですが、瑕疵担保責任などの事情からA氏に土地を売却したB社にも被害が生じ、最終的にC社にも様々な損失が生じるおそれがあった事案で、実質的にはB・C社vsD社側の様相を呈しました。

様々な検討の結果、D社側に賠償責任を問うべき案件として請求したところ、D社は「残置物は自分達の建物の解体物ではなく埋設もしていない」などと全面的に争ってきたため、D社側を相手に賠償請求しました。

D社側が全面対決の姿勢を示し「埋設された物はどこから来たのか、どうしてその土地の地下にあるのか、個別の埋設物とD社建物との結びつきはどうか」などの様々な問題について広範な主張立証を余儀なくされたほか、撤去費用の相当性なども争点になり、2年以上を経てようやく裁判所から和解勧告が出て、完全な満足ではないものの埋設物がD社建物から生じたものであるとの前提でD社側が相当の費用(解決金)を支払うという当方の主張を十分に酌んだ内容の勧告をいただき、協議がまとまりました。

膨大な労力を投入せざるを得ず、消耗の大きい事件でもありましたが、不法投棄問題に関しては日弁連の活動を通じ廃棄物処理法のルールを多少は存じており、その知見を活かすこともできたので、その点は何よりでした。

②業務委託契約で途中で問題が発覚し頓挫した後、報酬や損害の負担が争われた例

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として対応し、当方の請求を認める判決をいただき無事に回収して終了したものがあります。

受注した事業に関する行政手続上の不備(Aが事業のため用意した設備に関するもの)で事業が途中で頓挫したため、Bは「契約時のAの説明に問題があった」と主張して支払義務を争い、Aに賠償請求しましたが、契約の締結から事業の破綻までにいたる事実経過を丹念に説明し、双方の尋問結果も踏まえ、Aの対応に特段の問題はなかったとして、Bの主張が退けられました。

ただ、A側も事業の準備のため多額の経費を投じたものの経費を賄うだけの売上を得られたわけではなく、両社痛み分けに終わった面もないわけではありません(A側にも見通しの甘さなどの反省点はあったと思います)。

この件のように受発注の対象となった事業の継続性に何らかのリスクが内在する場合は、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じることが非常に多くあります。

事前にリスクを予め検討して明確化すると共に、そのリスクが現実化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかを予め契約書などで明示しておくことで、裁判等による紛争の長期化、高負担化を避けることができます。

契約前にそれらのリスクや不安を具体的に弁護士に説明いただければ、それに見合った文言などを整備し紛争に備えると共に、問題が生じる可能性や生じた場合の帰結を互いに意識しておくことで、リスク発生を防ぐよう互いに努力する契機とすることもできますので、事業者の方々におかれては、「ご自身が従事する事業に内在するリスクの確認と対処(弁護士への相談を含め)のあり方」を強く留意いたきたいところです。

③その他の紛争としては、「Bビルに入居していたA社が短期間でCビルに転居した際に、Bビルの入居時に差し入れた敷金の返還(破損部分の修繕を除いた残金)を求めたところ、AB間の契約書に壁紙やカーペットなども全面的に取り替える趣旨の特約(通常損耗負担特約)が含まれていたため、Bがそれらの交換費用等を理由に敷金全部の返還を拒否し、Aが納得できないとして返還請求した訴訟」をA代理人として対応しています。

事業者間の紛争であるため消費者契約法が適用されないものの、敷金に関し過去に積み上げられた議論や最高裁判決の趣旨などを踏まえ、本件では通常損耗を借主に負担させる合意は成立していないと主張し、それを前提とした勝訴的な和解勧告をいただき解決しています。

他に、中小企業庁が行う「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の不当対応についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は、「総債務額が極端に大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方(生活保護の方を含め)」からの依頼が増えており、社会で広く言われている格差や貧困の問題を実感させるものとなっています。

企業倒産(破産申立)に関しては、約10年前に民事再生の手続の依頼を受けていた会社さんが様々な事情から法律上の問題が顕在化し、それらの整理・解決のため本年になって自己破産の申立を余儀なくされたという事案があります。

企業に関する破産管財業務では、平成27年に管財人に就任した製造業を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復作業などの事務処理や法的手続が必要となり、本年に受任した建設関係の会社についても多数の不動産の任意売却や賃借関係の処理、労働債権の対応など様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で、それ以外にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受けて、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せずに債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現すべく、現在も交渉している案件があります。

他に、個人の方の破産管財人を受任した事案で、破産手続前に親族への無償譲渡行為があり、否認権を行使すると共に、債権者への配当原資の確保のため様々な工夫を行ったケースなどがあります。

(以下、次号)