北奥法律事務所

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「子供の貧困」と弁護士業界が真っ先に取り組むべき対策

5月5日(こどもの日)の各紙の社説が、いずれも近年よく取り上げられている「子供の貧困」や虐待問題などになっていることを紹介するネット記事を見かけました。
http://www.j-cast.com/2016/05/08266168.html

田舎の町弁をしていると、離婚やこれに伴う親権、養育費(及び離婚までの婚姻費用)の請求・申立をはじめ、経済的に厳しい生活を余儀なくされている母子の方との関わりを避けて通れない面があります。それらは大赤字仕事になることも珍しくありませんが、一期一会と思って腹を括って対応しています。

「子供の貧困」は、世間的にはここ2、3年で一挙に取り上げられることが多くなったように思いますが(その点ではLGBTに似ています)、日弁連はそれより何年も前から取り上げており、例えば、平成22年に盛岡で実施された人権擁護大会では、メイン扱いというべき第1分科会でテーマとして取り上げられ、その改善を求める決議(提言)もなされています。

ただ、この日弁連決議を見ると、保育施設の拡充や高校教育の無償化など、様々な貧困救済(公的給付)に関する提言がなされているものの、意地悪い見方をすれば、大新聞の社説などとあまり変わらないというか、弁護士でなくとも提言する(できる)ような内容の項目が多く、「個々の弁護士が実務で現実に見聞した痛々しい問題を集約して、その改善・救済を求める」といった印象はあまり感じられません。

提言内容そのものを批判する趣旨ではありませんが、「法律実務家の意見書」であれば、自身の実務上の経験、知見などを踏まえた事柄に力点を置いた方が、読み手に説得力があるのではと思います。

例えば、子供の貧困の多くは、離婚を典型とする「主たる稼ぎ手(いわゆる世帯主)が子の養育環境から離脱(又は養育放棄)すること」により生じるところ、我が国では、離婚後は非監護親(たる稼ぎ手。通常は父)は監護親(通常は母)に養育費を支払うべきとされていますが、裁判所が採用する養育費の計算方法は、一般的には義務者(非監護親)に手厚く、とりわけ所得が少ない層では子が現実に生存できるだけの額すら算出されないとして問題になっています(その根底には、典型的な世帯構成を前提とする「世帯主」の利益を優先し、他の家族の立場ひいては一人一人の個性ないし実情を軽視する我が国の現在の社会システムの問題があるのではないかとも言われています)。

これに対し、上記決議では、公的給付(役所=税金からの支払)を主眼としているせいか、残念ながら養育費の問題について触れられていないように見受けられます。

「子供の貧困」対策を弁護士会が語るのであれば、公的給付のような、本業との結びつきが弱く弁護士会が特段の政治的影響力などを持っているとも考えにくい事柄よりも、まずは、養育費のような、自身の取扱領域に属する事柄について具体的に問題や改善策を求め、その上で他の事柄も論じるという方が良いのではと感じます。

この点、私のような末端の町弁は、冒頭で述べたように低所得の監護親の方の依頼により法テラスの立替制度に基づき離婚や養育費、婚姻費用の支払等を求める事件を受任することが多くありますが、法テラスは生活保護等の事情がない限り「立替」=総額10~20万円程度(通例)に対し毎月数千円程度の返済を求めています。そのため、滞納せずにきちんと支払をされる方については、それだけ実質的な取得額が目減りする結果になります。

そこで、上記の養育費等に即して言えば、①法テラス受任による養育費・婚姻費用(が主要争点の事件)については、代理人報酬は原則として全額公費負担(本人=監護親の償還義務なし)、②法テラス経由ではない事件も、監護親が低所得等なら同種の公的補助をするなどといった提言と、それを実現するためのロビー運動をする方が、その必要性を支える具体的な事情を多くの弁護士が語ることができるはずですし、関係先にも影響力を発揮しやすいのではと感じます。

中には「弁護士の業界利益の主張だ」と批判する人もいるかもしれませんが、それが導入されて救済されるのは、サービスの利用者=監護親及びその親に養育される子供自身に他なりませんし、弁護士にとっても、自身を頼りにして下さる方々を守るための運動なのですから、それを実現することは業界の信用にも繋がるのではないでしょうか。

だからこそ、それを実現することができれば、社会的影響力を認められ、やがては公的給付のような「本業以外の論点」にも影響力を拡げる道が開けるのでは(それこそが廻り道に見えて近道である)と感じます。

監護親(母親)の代理人として従事している末端の町弁の率直な心情としては、「(この程度の養育費等の額で)報酬をいただくのは誠に心苦しいが、もともと低い報酬なのにタダ働きで事務所を潰すわけにもいかず」と感じながら勤しんでいるという面は否めず、「低額報酬+立替制度」のままでは、関係者が互いに疲弊、消耗を繰り返して、結局は子供にしわ寄せが及ぶという印象は否めません(そのため、この種の業務で恒常的な大赤字に悲しむ身としては、従事者の報酬増額にも取り組んでいただきたいところではあります)。

もちろん、「養育費」は自助の問題であり、自助が不十分だ(社会内で機能していない)から公助(や共助)を拡充すべきだというのが、上記の日弁連決議の根底にあるのでしょうが、順番の問題として、まずは自分達の取扱領域から入り、その上で、「弁護士達が全国で取り組んでいる養育費の額や支払確保に関する負担の問題一つをとっても、自助が社会内で機能していないことは明らかだ、だから公助等を強化すべきだ」という論理を構築した方が、公助を論ずるにしても説得力が増すのではないかと思います。

そんなわけで、日弁連(弁政連)の偉い方々も、(このテーマに限らず)本業との結びつきが薄い政策提言や議員さんとの宴会に費やすエネルギーや暇とカネがあるなら、まずは、仕事に端的に関わり、子供の利益にも直結するようなロビー運動をなさっていただきたいと、末端で実務を担う田舎の町弁としては願うばかりです。

なお、日弁連は養育費の算定方法についても意見書を公表していますが、弁護士への依頼費用などにまで踏み込むものにはなっていないようです。

マンションの管理組合の理事長が集会決議を経ずに業務委託した場合の紛争

ここしばらく、自宅等で勉強している判例などの紹介ができていなかったので(入力等の作業はそれなりに進んでいますが、紹介文まで作る余力等がありませんでした)、表題の件に関し、久しぶりに1件ご紹介します。

建物区分所有法では、マンションの共用部分の管理に関する事項は管理組合の集会の決議で決する(保存行為は各共有者が行使可)とされています(18条)。

甲マンションのY管理組合の理事長A(規約で管理者と指定されている者)が、平成23年5月に、Yの集会決議のないまま、X社に建物の調査診断等を委託しましたが、Yの臨時総会で契約を白紙に戻すと決議しました。

これに対し、Xは受託業務の完了を理由にYに代金150万弱を請求し提訴し、Aの行為は有効(権限あり)だとか、否としても権限ありと信頼した正当な理由があると主張しました。

これに対し、裁判所は、本件調査委託契約が甲の共用部分の管理に関する事項に該当するので集会決議が必要で、これを欠く行為を管理者Aが行う権限なし(管理者は共用部分等の保存、集会決議実行、規約指定行為の権限しかない。法26条)として、契約を無効と判断し(Xは代表理事の権限を定めた一般社団・財団法人法77ⅣⅤの適用を主張しましたが、退けられています)、Aが権限ありと信じたことにXに過失ありとして、表見代理(民法110条)も否定し、Xの請求を全部棄却しています(東京地裁平成27年7月8日判決判時2281-128)。

私自身はマンションの運営などに関する法的問題のご相談を受けたことはほとんどありませんが、近年はマンション絡みの紛争に関する裁判例が雑誌に掲載されることが増えており、盛岡もマンションが林立していますので、今後は、都会で生じたような様々な問題が、盛岡ないし岩手のマンションでも生じてくることは十分見込まれることだと思います。

マンションの居住者で管理組合の集会への参加はご無沙汰になっているという方は少なくないと思いますが、こうした判決なども参考に、出席して集会の様子などもご覧になっていただいてもよいのではと思います。

医療事故に関するご相談と「専門家セカンドオピニオン保険」の必要

医療過誤がらみの事件には残念ながらご縁が薄く、未だに訴訟として受任したことがないのですが、年に1、2回ほどの頻度でその種のご相談を受けることがあります。

先日、「初診対応したクリニックの転医義務違反の成否」が問題となる例についてご相談があったのですが、その件については、少し前に判例雑誌で勉強した事案によく似ていたので、それをもとに問題の所在など基本的な事柄をお伝えしました。

ただ、医療事故に関する賠償請求の当否は、「ガーゼ取り忘れ」のような素人目にも過失(医療水準違反)が明らかな事案を別とすれば、医師の対応が「医療水準に反すること」の立証が最大の難関になり、専門的知見をもとに水準違反を立証(証言)する協力医を得られるかという厄介な問題に直面します。

そして、私には日常的に医療過誤を取り扱っている方々のような人脈等がないので、「まずは、最寄りのお医者さんに当該問題(対象となった医師の対応など)が現在の業界(医療)の水準に悖ると言えるか聞いて下さい。もし、悖るというお話があれば、意見書その他の協力が得られるか尋ねて下さい」といった対応をするものの、残念ながら、そこで終わってしまうのが通例になっています。

そうした意味では、医療問題について、「ここに聞けば(調べれば)セカンドオピニオンを求める医師の先生がすぐに分かる」的なサイト等(さしずめ、「医療過誤ドットコム」とでもいうべきもの)があれば有り難いとも思うのですが、いずれにせよ、現状では高コストになることが多いと思われます。

この種の事案では、ご本人サイドのエネルギーの濃淡もまちまちで、この種の訴訟等にありがちな高額なコストを負担できない(その話が出ると一気に萎える)方も多いので、保険などを活用した無償・低コストで医療機関から簡易なセカンドオピニオンを得られるような仕組みがあれば、どちらの方針に進むにせよ望ましいのではと感じています。

もし、そのような保険(協力医保険)と弁護士費用保険がセットになって、保険制度を通じて協力医から簡易迅速に「当該医師の対応は医療水準違反だ」との意見書等が得られた場合に賠償請求等を自己負担なく(或いは低廉な負担で)行うことができるようになれば、医療事故などを巡る賠償問題に関する当事者の負担は大きく改善されることは間違いないはずです。

また、水準違反とは言えないという意見が得られて、そのことを患者側が受け入れる場合も含めて、そうした営みを通じて医療側の予防や説明等の仕組み、慣行も前進されるのであれば、社会的な役割も果たすことになると思います。

医療過誤は「専門」が強調される分野の筆頭格と言われますが、医療水準の議論で医師の協力が十分に得られるなど、医療絡みの高度専門的な議論について弁護士が自ら本格対処しなくとも済むのであれば、弁護士が医療自体に詳しくなくとも問題なく対応できることが多いはずですので、そうした仕組みが整備されてくれればというのが正直なところです。

24年ぶりの函館と、あの日みた景色

今年のGWは、前半に1泊2日で函館に行きました。私は平成元年4月から3年間、函館ラ・サール高校の生徒として函館に住んでいましたが、卒業以来ご無沙汰になっており、訪れるのは24年ぶりになります。

家族は初めての来函ですので、函館駅に到着後、朝市→ベイエリア→元町界隈や函館山、五稜郭など観光客向けの典型コースばかりを巡って帰宅しました。

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今の函館のB級グルメと言えば、ラッキーピエロのチャイニーズチキンバーガーということになるでしょうし、昭和62年創業とのことで、私の高校時代から存在していたのでしょうが、恥ずかしながら当時は全く知らず、今回はじめて食べました。

五稜郭も、中学の修学旅行で行ったせいかもしれませんが、高校時代はどういうわけか敢えて行きたいという気になれず(GWに帰省していたせいもあるでしょうが)、今回、修学旅行以来はじめて五稜郭に行きました。

函館は中韓などからの観光客も非常に多く、函館随一のデパートというべき「丸井今井」(盛岡の川徳に相当。なお、函館駅前の「棒二森屋」はフェザンと中三を一つにしたようなものでしょうか)にも、中国語の広告が大々的に掲載されていました。

五稜郭の桜は文句なしの満開状態で、タワーも奉行所も満足して巡ることができました。

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事前にネットで調べていましたので、街並みの変化にさほど心揺さぶられるところはありませんでしたが、それでも、和光や大門商店街のアーケードが無くなっているのを見ると、思うところはありました。

また、私自身は在学中はほとんど外食はしていませんが、例外として函館山の麓にある「カール・レイモン」が当時はレストランを経営しており、落ち着いた店内でドイツソーセージのランチを年に1、2回ほど食べるのがささやかな楽しみになっていたので、同社がレストランを閉鎖し物販と軽食に特化してしまったのは、少し残念に思っています。

折角なのでラ・サールも見に行こうということになり、湯の川温泉の宿から出発し、校舎や寮、グラウンドの外観だけをチラ見して戻りました。

ラ・サールは、私の在籍時は、開校以来の「港町らしい?ピンクに塗装した木造校舎(でもって、網走刑務所のように建物が放射状。冬は石炭ストーブ)」というアヴァンギャルドな建物でしたが、私が卒業した直後に現在の立派な校舎に全面建替となり、寮も現在は立派なものに建て替えられていますので(高校の寮は函館山からも確認できます)、良くも悪くも郷愁をそそられる要素は微塵もありません。

ただ、グラウンド(体育館も?)は概ね昔のままであるほか、旧校舎の一部が移築されており、その点はさすがに懐かしさを禁じ得ませんでした。

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在学中は函館山に登ることはほとんどありませんでしたが、高1か高2の晩秋の頃、夕方に学校から北側に片道30分か40分ほど、住宅街から荒地のような丘の上まで走って、いわゆる「函館の裏夜景」を見に行ったことがあります。

当時は、「裏夜景」を観光名所として口にする人はほとんどなく、それだけに、黒色の函館山と夕闇を背にした街並みの裏夜景は心に染みる眩しさがあり、そこに吹く海からの強風と共に、よく覚えています。

高校では「勉強もできず運動もできず、あやとりや射撃のような特技もない、のび太以下の田舎者」でしたので(日本史の成績だけが救いでした)、心中は身の置き場もなく鬱々とした日々を送っていたように思いますが、それだけに、一人だけでも特別な時間、光景を持てることを心の命綱にしていたのかもしれません。

そんなわけで、当事務所の近所で短い新婚生活を送った石川啄木に敬意を表しつつ?その時のことを懐かしんで一首。

黄昏の裏夜景こそかなしけれ 十六の胸 癒やす木枯らし 

函館ラ・サールには、英国の軍歌?に由来すると言われる「It’s a long way to La Salle High School」という学生歌があり(鹿児島も同様とのこと)、校歌は出だししか覚えていないがこの歌なら今もほとんど全部歌えるという卒業生は、私だけではないと思います。

高校1年のときは「商社に入りヨーロッパの駐在員として人知れず死にたい。日本(人)と関わりたくない」という厭世願望がありましたが、やがて社会との関わりを持って生きたいという方向に気持ちが傾いてきて、高校を卒業する頃に、ようやく司法試験を意識するようになりました。

もちろん、どのような法律家になりたいか、どのように社会と関わり何を尽くしたいかということまで深く考えていたわけではありませんが、暗中模索の日々は、今もさほど変わらないのかもしれません。

そんなわけで、次に訪れるときには何か答えのようなものを持ち帰ることができればと願って、最後に一句。

旅立ちの 夢は今なお ロング・ウェイ

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憲法記念日と日本国憲法の活かし方

5月3日は憲法記念日ですが、この日に憲法について取り上げられるニュースといえば、決まって、1番目が、いわゆる護憲運動を旗印にする左派勢力の集会で、2番目が、国家主義的な見地からの改憲を旗印にする右派勢力の集会というパターンだと思います。

取り上げられる発言も、それぞれの立場のアピール的なものに止まり、いずれも積極的に支持していない「無党派」の第三者にとっては、示威行動的な空しさばかり感じてしまいます。せめて、双方が対話、議論するような集会でも行ってくれればと思わずにはいられません。

私にとって5月3日は個人的な思い出がある日でもありますが、それはさておき、法律家の端くれとして、各自が日本国憲法とそのあり方、活かし方について考える日であって欲しいと思います。

私が日常的に拝見している他の弁護士さん方のブログを拝見したところ、憲法について触れているものは多くはありませんでしたが、淡路の蔭山文夫先生のブログでは、憲法の存在意義について、我が国の法律実務家(司法試験等で憲法学をきちんと勉強した人)にとってスタンダードな感覚、認識が述べられており、大いに参考になると思います。

その上で、落合洋司先生のブログで書かれているように、社会の変化・進展に応じて憲法のあり方を考えていく(その前提として、日本国憲法の制定過程と現代社会の有り様の双方をよく学び、感じ取る)必要もあると感じています。

なお、憲法のあり方、活かし方を考える上では、小林正啓先生が仰るように、「日本国憲法が時代にそぐわないのではなく、現代の社会がようやく日本国憲法に追いついてきた(が、昔の価値観のまま放置された法令が残っているので、それらは時代が「追いついた」時点で違憲判決を受けている」という視点も、欠かすべきでないと思います。

私にはこの方々のような見識を示す力はありませんが、法に関わる人々の真摯な営みの積み重ねの上に、現行憲法の理念を実現する道が開けるものと思いますので、時に自省を深めつつ、実務の一端を地道に担っていければと思っています。

春の気仙みち~H28版~

ここしばらく諸事に追われ、ブログの更新が滞ってしまいました。この間も、メモ的なものは書いているのですが、文章として仕上げる時間が取れず、ネタがやや古いものもありますが、その点はご容赦いただければと思います。

2週間以上前の話で恐縮ですが、4月12日に毎月1回の法テラスの担当日で、大船渡に行きました。が、4年ほど担当してきて初めて「予約もなく当日の飛び込み相談もない」という完全ゼロの日になりました。

反面、桜がすでに開花しており一部は満開状態でしたので、昼の時間を少し長めに外出し、碁石海岸まで足を伸ばしてレストハウス周辺の桜や「乱暴谷(らんぼうや)」の写真を撮って戻りました。

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帰途も三陸道経由で陸前高田の竹駒地区などを廻って盛岡に戻りましたが、こちらも週末~翌週に満開になるのではと思われます(っていうか、この投稿の時点ですでに葉桜ですが)。

以前に投稿しましたが、私は震災があった平成23年の4月下旬頃(5年前の今頃)に大船渡や陸前高田の避難所を廻って「被災者向けの押しかけ無料相談会」をしたことがあり、津波被害による凄惨な光景の傍らで満開の桜を目にしていたことをよく覚えています。

それだけに、この時期に気仙地方(とりわけ、大船渡の盛~末崎半島、陸前高田の中心部や竹駒地区)に来て桜を見ると、震災直後の光景を思い出さずにはいられない面があります。

震災直後(3月上~中旬)は花の咲いていない季節であり、地元(被災者)の方々にとって、震災から1ヶ月を経過した4月は、避難所生活などで疲労が蓄積する一方で、はじめての「自然からの癒やし」として梅や桜に接したという方が多いのではないかと思います。

そうした意味で、まちを彩る草木が地域に存することの意義、価値を改めて感じさせられる面がありました。

そんなわけで、久々の一句

「あの街」の記憶を癒やす 気仙桜

4月14日には熊本で大地震があり、その後も余震が続くなど深刻な被害が生じていますが、九州も桜の代わりに様々な花の季節を迎えているでしょうから、人命救助や各種の被災者支援等に止まらず、そうしたものにも目を向けていただければと思います。

昨年の4月に法テラス気仙に出張した際は、散り際の桜の花弁をカモメに見立てた一句を作りましたので、こちらもご覧いただければ幸いです。
→春の気仙みちと桃源郷

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の第一印象

本日、弁護士会から標題のガイドライン(以下「被災者債務整理GL」といいます。)が日弁連や銀行業界などの協議により策定されたとの告知がありました。

全銀協のサイトなどからも確認できますが、おって、実際に激甚災害が生じた場合に当該GLに基づき債務整理の作業を行う担当弁護士の登録に関する募集がなされるものと思われます。

岩手では、東日本大震災(平成三陸大津波)により住宅ローン返済中の自宅の被災などで生活の基盤を大きく奪われた沿岸の方々を対象に「個人版私的整理ガイドライン」が策定され、私も平成23年から26年頃にかけて計6件ほどの配点を受けて、破産手続に依らない債務の減免に関する業務を行ってきました。

このGLに関する業務は、沿岸で執務する弁護士さんを中心に配点したようで、私への配点は多くありませんでしたが、様々な論点が生じたという話は聞いていましたし、私が配点された業務でも悩ましい論点が幾つかあったと記憶しています。

上記のGLが、上記の「震災に関するGL」の業務がほぼ収束したことを踏まえて策定されたものであることは間違いないと思われます。ただ、ざっと見た限りでは、弁済を要せず手元に残すことができる自由財産の程度(算定)のようなデリケートな(肝の)部分については、あまりきちんと触れていないのではと感じました。

この種の問題を抱えた方については、全く資産のないような方ばかりでなく、中には数百万円規模の資産を有しつつ、それを遥かに上回る債務(数千万円規模の金融機関の借入や連帯保証など)があるため債務整理を余儀なくされる方も少なくなく、そうした方にとっては、どれだけ手元に資産を残すことができるか(特に、居住場所の確保などの関係で)が重要な関心事で、とりわけ「天災」などで唐突に債務問題が現実化してしまった方は、被害者意識もあり一定の配慮を求めたいところではないかと思います。

そうした点については震災GLの際にもかなり議論がされており、それらの知見を生かしたり当事者の窮状に配慮する形での解決が深められればと思っています。

ただ、今回の被災者債務整理GLの策定に携わった方々(「研究会」メンバー)の顔ぶれをみると、震災GLの策定に従事された方々を多くお見受けするものの、その方々は、企業倒産の処理に関する大家の弁護士さんであるとか、銀行など金融機関の利害を代弁する立場の方(銀行等の関係者や、銀行側の代理人として従事している大企業専門の弁護士の方)などが中心で、例えば、日弁連の災害対策委員会などで「被災者側の利害を代弁する立場」で活動しているという弁護士さんやその他の関係者を全く見かけることができません。

これでは、「裁判外の手続での解決」といっても、金融機関などの利害を重視して策定されたもので、被災状況を重視してドラスティックな債務免除を行うような類の解決は期待できないのではという印象は拭えません。

このことは、裏を返せば、そうした「日弁連の災害族」とでも言うべき被災者サイドの立場・利害を鮮明にして活動している「人権派」的な方々(岩手でも、そうした方が被災地等で尽力されているという話は色々と耳に入ってきます)の「政治力」の低さ(或いは、債権者側との協議を困難とする「断絶」の深さや信頼関係等の希薄さ)を示すものというべきなのかもしれず、その点も含めて残念に感じます。

末端の現場で様々な利害に直面しながら調整を図ることになる「ちっぽけな実務家」の立場としては、できることなら債権者側と債務者側の双方の利益代弁者のほか、中立的な一歩引いた立場で救済のあり方を考えることができる方々などを交えた形で、債務免除や自由財産の保持のあり方などを個別の実情に照らして弾力的に定めることができるルール作りがなされてくれればよかったのではと思わざるを得ないところはあります。

平成27年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。芸能人の報道で話題になったように、当事者のデジタルの会話記録を入手、整理して不貞の事実を詳細に立証して高額な賠償金が認められた例もあります。

概ね、半年から1年程度の審理を経て和解する例が通常ですが、中には、子の引渡しや親権をはじめ不貞行為などを含め夫婦間に厳しい利害対立があり、2年以上に亘り様々な訴訟手続を行い争いを繰り広げた末に和解が成立し終了したという案件もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻し母との接触を拒否したため、母の代理人として子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの、その逆に、別居した母が子と同居する父に子の引渡請求を行い、父側で受任したもの)も何件か受任しており、昨年に従事した事案では、当方依頼主の主張が認められています。

子を巡る紛争は、面会交流を含め近時は著しく増加しており、裁判所は子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、自筆遺言証書に基づく財産相続を受けた方から、その内容を遵守しない他の相続人にやむなく訴訟提起し、遺言の内容(効力)が争われたものの、無事に当方の主張が認められた事案や、きょうだい間で不和が生じ当事者間で対話が難しい状況にある方のご依頼で遺産分割を行った例などがあります。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、多数の親族関係者の意向調査や利害調整を伴う遺産分割や預金払戻などを手掛ける機会もありました。

昨年も、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、裁判所の要請で相続財産管理人に就任し権利関係の処理を行う事案が幾つかあったほか、関係者のご依頼で、特別縁故者に対する財産分与の申立を行った例もあります。

今後、身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案は増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

この点に関し、1月に明治安田生命(盛岡支社)さんのご依頼で相続や遺言に関するセミナーを行う機会がありました(現在も第2弾の真っ最中です)。相続に限らずセミナー講師等のご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘り区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、整理事業の実施に伴う建物等の撤去により自治体が提示した損失補償額に不服があるとして、県庁(収用委員会)による損失補償額に関する裁決手続を行った例があります、

また、先般、岩手県庁の依頼で、ある行政訴訟(県の行政処分を受けた方が不服があるとして取消請求している事件)を県の代理人として受任した事案があります。

他にも、特殊な事例で国に対する国家賠償請求訴訟を手掛ける機会もありました。

刑事弁護については、新人弁護士の増加により受任件数は減少傾向にありますが、被疑者段階を含め、窃盗や傷害など主要な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(当職は大船渡の法テラス気仙などを担当しています)。

平成27年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案のほか、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案も含め、幅広く取り扱っています。

また、学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償事件など交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内の企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛ける機会あり、先般、原子力紛争解決センターに対するADRの申立を行っています。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

不動産の賃貸借(契約終了時の貸主の目的物返還請求、借主の保証金返還請求など)や金銭貸借に関する紛争、不動産の登記に関する訴訟に関する紛争などを取り扱う機会がありました。

また、後述の震災無料相談制度を通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害近隣トラブル労働事件など日常的に生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じています。

本格訴訟としては、自宅建築目的で購入した土地で過去の所有者による不法投棄が判明し、証拠上、投棄への関与や監督責任があると認められる企業に賠償請求した事案を取り扱っています。相手企業側が強く争うことから投棄行為の立証のため様々な資料の提出を余儀なくされており、2年以上も続く難事件となっています。

その他にも、貸主側(貸主の相続人)の代理人として借主の賃料不払を理由に賃借物件の明渡請求をしたところ、借主側から、被相続人との間でその物件を購入する合意をしたとの反論があり、当否(売買契約の成否)が争われた事案(1審勝訴で相手方が控訴中)、数十年前に売買がなされた土地で、法務局に備え付けられている公図の表示などに問題があり、現在の登記などの状況では売却が困難であるため、当時の土地の使用状況や名義人の相続状況などを詳細に調査して取得時効による解決(移転登記請求)を図った事案(1審勝訴で完了)などを取り扱っています。

他にも、対人トラブルに起因する名誉毀損絡みの訴訟に関するご依頼もありました。

(以下、次号)

平成27年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。1月には昨年(平成27年)の業務実績を顧問先にお送りしていますが、遅まきながらブログでも掲載することにしました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し3回に分けて掲載します。

(1) 全体的な傾向など

平成27年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の事業や内部事務に関する紛争の3分野が業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として受任しています。受注した事業に関する行政手続上の不備で事業が頓挫しており、AB双方とも「契約時の相手方の説明に問題があった」と主張して賠償請求したという事件で、現在も訴訟が続いています。

このように、受発注の対象となった事業に何らかのリスクが内在する場合には、そのリスクが顕在化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかという点を予め契約書などで明示しておかないと、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じる可能性が高くなりますので、リスクを予め確認し責任の所在を明確化すること(弁護士の活用も含め)にご留意下さい。

内部紛争の例としては、ある協同組合の内部で問題を起こした組合員に対し組合が除名処分をしたところ、組合員が処分の無効を求めた訴訟について、組合側代理人として担当し当方(組合)の主張が全面的に認められて勝訴・確定したという例があります。

また、ある財産がA法人とB法人のどちらに属するかなどを中心に様々な法律上の争点が生じて複数の訴訟が係属している事件、転職した従業員が元の勤務先の顧客情報を転職後の営業活動に使用したとして賠償請求された事件などを手掛けています。

昨年も、中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっており、「高利業者との取引に基づく過払金請求」も法改正等の影響でほとんど無くなりました。

企業倒産に関しては、数年前は倒産分野の多数を占めた建設業界に代わって、IT関連のサービスを展開する企業高齢者向けの弁当配達事業を行う企業の方から破産申立のご依頼があったほか、「燃料等に用いる木製ペレット等の製造・販売を営む会社」の破産管財人に選任され、企業施設の譲渡や債権回収など様々な論点・事務の対応に従事しています。

近年、「金融機関以外には負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)向けに、一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い額を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)」が導入されており、これによる解決が可能か模索するご相談を受けたこともあります。

個人の債務整理については、昨年同様に過払金請求のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くなく生活保護やそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からの自己破産のご依頼が幾つか見られます。中堅所得者の方からの個人再生のご依頼(住宅ローンを維持して他の負債を減縮することを含む)も幾つか見られます。

破産管財人を担当した方では、親族の保証人となった関係で破産を余儀なくされ、所有不動産の処理(売却。関係者の支援を含む)などの問題が生じたケースや、小規模な個人商店を営んでいた方が親御さんの代から長年続いていた高額な負債や事業不振などの問題を解決するに至らず倒産のやむなきに至ったという事案などを担当しています。

(以下、次号)