先日に続き、震災から2ヶ月を経過した平成23年5月中旬頃に大船渡の避難所に初めて相談に赴いたときのことを記します。
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この日は大船渡市への出張相談を担当しました。今回は青森・秋田・神戸からそれぞれ派遣された弁護士さんを私の車両に乗せ、4人で被災地に向かいました。
配属先は、市の中心部に近く大船渡では規模の大きい避難所となっている「大船渡地区公民館」と大船渡の観光名所(碁石海岸・穴通磯)にほど近い「末崎中学校」の2箇所でした。
1 指定避難所まで
4月の弁護士会(対策本部)の会議で「他会の先生を自分の車に乗せるのはイヤ(事故等のリスクが怖い?)」との意見があったそうで、5月から、他会の先生については、タクシーに乗車していただくという制度?が導入されることになりました。
しかし、他会の先生は岩手の弁護士から情報を得ながら現地に向かいたいと思うはずで、タクシーに分乗せよというのは止めた方がいい(事故リスクの問題はありますが)と思い集合場所で協議したところ、もう一人の岩手の若い先生がタクシー利用を希望されたので(私に気を遣ったのかも?)、結局、私が3名を自車に乗車させ、もう一人の先生はタクシー2台に他会の先生を乗せ、ご自身は一人(自車)で現地に向かうという、かなり変な感じになりました。
これまでの経験や、この間の岩手会MLでの担当者レポートから、今回も従前以上に相談者の来ない閑散とした展開が予測されたので、遠方からお越しになる先生方に、せめて観光地の外観だけでもと、今回は、遠野(千葉家)廻りのルートで行きました(あまり遠野に関心がなさそうな方々でしたが・・)。
1時間前に現地に着きましたが、大船渡地区公民館は高台にあるため、先に被災状況を視察していただいた方がよいと考え、盛駅~大船渡駅周辺を巡回した上で、公民館に向かいました。国道沿いは断片的な被害しか見られませんでしたが、高台を降りて海岸沿いに走行すると、宮古の鍬ヶ崎のスケールを大きくしたような惨憺たる光景が広がっていました。
2 指定会場での相談
結論として、大船渡地区公民館(秋田と青森の先生が担当)が2名、末崎中(私と神戸の先生が担当)は0名という有様でした。貼り紙はありましたが、末崎では、担当の市職員の方?から「相談会は聞いてない」との発言があったり、やはり現場での広報等に至らない点はあるようです。
どこでも同じことが言われているようですが、弁護士会が避難所で相談会を実施しても相談希望者が集まらない要因として関係者等から指摘されたのは、
①被災者再建支援法などの情報が広まり「行政支援等のアナウンス程度の相談」が激減したこと
②避難所の利用者がピーク時の半分以下(約1/3とのこと)まで減少していること
③同じ避難所で何度も相談会を行っており、現時点での需要を一応満たしたこと、などでした。
同行の先生からは、
「避難所相談の時期は過ぎた。これからは込み入った相談が増えるだろうからプライバシーを確保できる市役所等に1本化すべき」
「(相談者があまりないことが常態化しているため)行く意味があるのかと自分の所属弁護士会で議論になっている。視察することに意味がある、と超熱心な某先生に説得されて渋々継続しているのが実情」
「当会ではタクシー分乗は不評」などの話もありました。
3 その他の避難所等の巡回
そんな次第で前回以上に他の避難所を熱心に廻ることにしました。とりわけ、末崎を担当した神戸の先生に関しては、神戸から来て避難所の体育館で1日中ぼけっとしただけでした、では「おもてなしの盛岡が聞いて呆れる」と言われそうなので、末崎では、12時半に「2時半に戻ります」と貼り紙をして、私と2人で末崎地区の避難所巡りをすることにしました。
が、6箇所の避難所を巡ったものの、同じような境遇に立たされた他の先生がすでに制覇していたようで、岩手弁護士会ニュースは概ね具備されていました。
なお、岩手会本部が末崎地区に神戸の先生と私を配転したのは、こうした展開になった場合に碁石海岸・穴通磯にも案内してガス抜きをせよとの指示を含むものと勝手に解釈しましたので、計20分ほど「今度は観光で神戸の皆さんを連れてきて下さいね」と観光タクシーあんちゃんに徹しました。
予想通り、両者とも以前と何一つ変わらない光景で、「壊滅したのは人の作りしものだけで、自然は無傷だなぁ」と都知事のセリフを思い浮かべました。(今回は、ヨブ記を引用する方が適切だと思いますが)
避難所巡りの最後に、避難所として使用(開放)されている某教団の道場に恐る恐る?行くことにしましたが、カーナビで山中を巡っても辿り着けず、ひなたぼっこ中のご老人に「ダーツの旅」風に尋ねたところ、「おれ、そこの避難者」と、同乗・案内いただけることになり、山奥に向かう凄い道を通って、辿り着きました。
高齢者を中心に10名弱いらしたのみで、幸い?弁護士会ニュースも見たことがないとのことでしたので、前回同様の「ミニ説明会+雑談」をして退去しました。
3時前に末崎中に戻りましたが、予想通り相談希望者はなく、その後も閑散としていました。公民館チームも同様の展開と見込んだので、そちらに移動することにしましたが、勝手に引き払うと本部の先生に怒られそうなので、神戸の先生を残し、私一人で公民館に向かいました。
公民館では、1名を残し1名を連れて近隣を廻るつもりでしたが、閑散としていたせいか、到着前の私の電話で撤収と誤解されたようで、やむなく3名で近隣を廻ることにしました。
毎度のパターンですが、公民館も不在者ばかりでチラシ(弁護士会ニュース)配りをしても効果なく、「相談者が来なくて困ってます」とアナウンスをして貰っても効果なしだったので、撤収希望という面もあったようです。
これまでのパターンから、公民館付近の人数の多い避難所(大船渡中やリアスホール)はどうせ弁護士会ニュースが山積みされているだろうと考え、少し離れた盛地区に進攻することにし、まずは、盛駅前のカメリアホール(中央公民館)に行きました。
館長さんにお尋ねしたところ「弁護士会ニュースは一枚だけある。貰えるなら世帯分だけ欲しい」とのことだったので、世帯数+αを置き退去しました。他の先生は、役所の方と雑談的に「悪徳商法被害(リフォーム系)が多発しているようだ」などと話しており、末崎に2名配置するくらいなら、こちらに1名配置した方がよいのでは?と思いました(盛地区なら周知さえあれば近隣の方も来訪するでしょうし)
次に、近くにある避難所として指定された老人福祉施設に行きました。こちらも弁護士会ニュースは1部しかないとの説明だったので補充して退去するだけかと思ったところ、相談希望の方がおられるとのことで、急遽、弁護士3名で相談内容を伺いました(訴訟の可能性のある本格的な事件相談でした)。
結局、その施設で時間切れになったので5時半に末崎中に戻り、やはりゼロ件のままということで、そのまま退去しました。
遠方からいらした先生方も色々と思うところはあったかもしれませんが、最後にお連れした盛楼閣で、それらもすべて吹き飛んだことでしょう。
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以上、計3回に亘り、宮古・陸前高田・大船渡の3ヶ所で、震災直後に私が従事した「他県の先生を引きつれた避難所相談」の実情を掲載しました。
4月3日の釜石北部の避難所相談を含め、震災から間もない時期に、沿岸の自治体の大半を廻り、様々な光景を見たり、お話を伺ってきました。
とりわけ、大船渡は震災2年目から現在まで法テラス気仙の相談担当をしており、その後の被災エリアや街並みなどの変貌を目の当たりにしてきましたので、当時の光景などを思い返すと、色々と考えてしまうところはあります。
あと1回、震災の半年後に釜石で行った相談について掲載しようと思いますが、当時の被災地の惨状や現地の混乱ぶり、ひいてはそれを踏まえた今後の改善等に関する問題意識が多少でも伝わったのでしたら幸いです。
繰り返し書いてきたとおり、避難所では、私に限らず「相談者がいなくともとにかく押しかける」という光景が多く生じましたが、私としては、これを今流行り?の「アウトリーチ」などと賛美する気には全くなれず、弁護士会の無為無策ぶり(現場サイドへの戦力投入の稚拙さ)を示すものとしか思えません。
私は、「弁護士は勉強し、かつ働いて(させて)ナンボである。だから、相談者の来ない相談会に往復数時間を含めて丸一日、弁護士を従事させる時間があるのなら、何か勉強でもさせるか、被災地向けの法律関係の広報でも書かせて自治体等を通じて伝達させた方が人の活かし方として正しい。少なくとも、懸命に勉強した人間(の能力や熱意)をそうした形で生かさずに時間等を浪費させるのは、社会悪ではないのか」としか思えない面があります。
少なくとも「15年戦争(日中・太平洋戦争)って、こうして負けたんだろうなぁ」と感じながら何度も運転を続けてきたというのが、末端の兵隊の正直な気持ちであることは間違いありません。
また、弁護士業界内の有名なネタで、民事訴訟法の泰斗・高橋宏志先生の「成仏理論」というのがあり、「世の中の人々のお役に立つ仕事をしている限り、世の中の人々の方が自分達を飢えさせることをしない」といったことが語られているのですが、「誰にも必要とされない相談会や押しかけ相談事業に駆り出される若手弁護士の姿」は、成仏?に向かってまっしぐらという町弁業界の未来を感じて暗澹たる思いを禁じ得ないところはあります。
結局、そうした気持ちが勝ちすぎたせいか、事実上その後は弁護士会の支援活動なるものからは距離を置くようになっていったような面はありますが、他方で、業界環境の激変などもあり「私なりの支援」を実践するどころではない状況が続いているという有様で、他人様に面と向かって偉そうなことを言うこともできず、こうして、細々とブログで問題意識を共有いただける方があればと願っているというのが、恥ずかしい現実です。